「ジブリールに急に追い出されたと思ったら30分経ってから入ってこいとか、よくもまぁ新しいいじめを思いつくもんだ」
「そろそろか……入るぞジブリール」
ガチャ
「こんこんきーつね!飛べないブタはゴミのようだ!月に変わってマスタースパーク!」
バタン
「……」
「……俺は真の混沌を見た気がする」
「なんなんだアレは。ジブリールがキュアホワイトの格好して決め台詞の融合体みたいなの口にしてたが……というかアニメ作品ですらないのもあったし……」
「……開けるか」
ガチャ
「ええっと……聖なる泉を汚す者よ!あこぎな真似はおやめなさい!」
「ニアミスになった」
「いやいやまてまて。何なんだこれは」
「マスターがプリキュアを好きだという情報を得まして。僭越ながら姿かたちだけでも似せさせていただきました。似合っておりますでしょうか?」
「……まぁ、似合ってるんじゃない?色々サイズあってなくてミスマッチなところとかあるけど。なんならセリフすらミスマッチだったけど」
「空様に教えていただきまして。なんでも、決めセリフはあのように言うのが最適だと」
「……間違ってるから教えてやるよ。作者に失礼だし、いろんなとこから言われそうで怖いし、後普通に見たい」
~♪
『デュアルオーロラウェーブ!』
『光の使者 キュアブラック!』
「光の使者 キュアホワイト!」
『ふたりはプリキュア!』
「闇の力のしもべ達よ」
『とっととお家に帰りなさい!』
「どうでしょうか?」
「惚れた。結婚しよう。キュアホワイト」
「エロいことがしたい」
「帰れ」
俺の座った位置の目の前の席に着き、ゲンドウポーズで重々しく口を開いたかと思えば、そこからは性欲発散がしたいというただの低俗な個人的願望。拍子抜けしたのはジブリールも同じであろう。
「妹にすら話すことができない、重大で深刻な話があるからって言ってたが、納得したわ。そりゃ話せんだろうな。わざわざジブリールに遮音の魔法までかけてもらって、どんな話するかと思ったら……」
空と白は一定距離離れられない。当然、この場にも白はいるのだが女子禁制のこの話題を持ち出すために、ジブリールに頼んで白には俺達の会話を聞けないようにしてもらっている。
口の動きで会話の内容がバレないようにと白は目隠しをして空の膝の上に座っている。ちょこんと座るその姿はマスコットキャラのようでこの場で唯一の癒しだ。
「待ちたまえよ八幡君。確かに低俗で猿みたいな発言をしているのは認める。もし俺がお前の立場で、お前から同じような発言を聞いていたら即座に縁を切っていたことだろう。だが俺は気づいてしまったんだ。これは俺達にとっては死活問題だと」
空は姿勢を変えず、くだらないと吐き捨てた俺の発言を聞いても、いつものへらへらとした態度を見せない。真剣な眼差しで、口調も厳しいものとなっている。その様子からして察した。ただからかいに来たとかではなく、本当に深刻に考えているようだ。内容が内容なのであまり信用はできないが。
「……聞くだけ聞いてやる。だが、問題ないと判断したら即刻追い出す」
「ああ、悪い。そんでもって、話をする前に二つ確認したい。決してやましい気持ちで聞きたいわけじゃないから、正直に答えてくれ。お前、性欲は強い方か?」
「もうこの時点で追い出してぇ……。特段強くもないし、弱くもない…と思う。人並なんじゃねぇの?他の奴らがどうだかわかんねぇから何とも言えないが」
「そうか。じゃあ、
「……小町を除けば
「そうか…それを聞いて安心した。その二つが俺と同じ認識なら問題ない。どっちかっつーとその認識そのものが問題の原因ではあるんだが」
空はポリポリと頭を掻いた後、ため息をつく。質問の意図が全くといって読めないが、この事実が原因の一端を担っているらしい。どのようにして「エロいことがしたい」という発言を正当化するものに繋がるのか、逆に興味が湧いてくる。
「で、本題は?」
「……前回の
そこから空は、一息おいて一言。
「これ、異世界クリアするまでヌけない、と」
やっぱり追い出そうかしら。少なくとも俺に関係なさそうには思えるし。聞き流すのが得策か?
「白の目を盗んだとしても…あまりに障害が多すぎる。嗅覚と聴覚が優れた
机を強く叩き、心からの叫びを放つ空。その歪んだ顔は、致せないことへの苦しさからか、悔しさからか、はたまた虚しさからか。あと、一応音が遮断されているとはいえ、ここ図書館。静かにしろよ。
「八幡!お前も他人事みたいな顔してるが同じ状況に追い込まれてんだぞ!?ジブリールが常に側にいる分その難易度は俺の比じゃない!危機感を持てッ!」
「いや……そんなの我慢すれば……」
「無理に決まってんだろ!?さっきお前が認めた通り、中身はともかく外面は美形揃い……ただでさえ性欲を抑えるのが厳しいってんのに、本人たちは自覚なしときた……オマケに、見ろ!ジブリールを!」
空が指し示すまま、ジブリールへと視線を向ける。ちなみにジブリールは魔法を使う関係上、俺たちの会話が丸聞こえなのだが男の会話であることを察してか、彼女は先ほどから大人しく本を捲るのみであった。しかし、いきなり会話の矢面に立ったことからすこし驚いた表情を見せていた。
「ヘソは丸出し、太もも二の腕は素肌!胸はブラからはみ出てエロニーソにミニパンツ!半裸なんてもんじゃない、8割裸だ!しかも
…やめろ。その手の話はもう何度もジブリールとした。馬鹿正直に「お前を見てるとエロいこと考えちゃうから服を着てくれ」とは言えないので、目の毒だから服を着ろと、他のやつの視線を気にしろと別の理由をつけて何度となく命じた。しかしなぜかかたくなに服を着たがらない。何か服を着れない理由でもあるのかと聞いてみたら、「いえ、特には。強いて言えばファッションでしょうか。マスターはご存じないかもしれませんが、
「落ち着け。別にジブリールだって誘惑しようと思ってこの格好してるわけじゃない。単純に文化の違いってだけで、それに
「ならば問おう!お前はあれを見て何も思わないのか!?手を伸ばせば届く距離に半裸の美女がいるんだぞ!?しかも俺と違ってお前はご主人様だッ!多少のエロいことどころかジブリールならABC超えてZまで許してくれる可能性があるというのにそれでも今後一切そういうことをしないと言い切れるのかッ!?」
……それを言われると弱い。
ジブリールは中身はともかく見た目は美しく可愛い。天使と形容して差し支えないほどに。普通の人間なら、一目惚れして玉砕覚悟で告りに行っちゃうレベル。そんな女の子がご主人様と慕って引っ付いてくるのだ。エロいことを考えるなって言う方が難しい。
確かに空の言う通り、多分、手を出しても文句は言われないだろう。自らの欲に従い赴くままに貪り尽くしたって彼女はこれからも変わらず「マスター」と慕い続けるに違いない。
しかし思い返して欲しい。こうなった理由を。ジブリールは誰でも彼でも身体を許すようなやつじゃない。なんならいのさんとかが抱きつこうものなら一瞬で殺されるんじゃないかって思える。
彼女が俺に身体を許してもいいと思っているのは、俺が「特異な人間」だからである。この世界の住人ではなく、上位種である自らを下した珍しい人間に興味があるからだ。常日頃身体を押し付けてきたりするのは、俺の反応が面白いから。
というか、そうじゃないとおかしい。初めて会った時には嫌悪感丸出しだったことを思い出して欲しい。それが手のひらを返したようにこうなっているのは、果たして他の理由があるのだろうか。
間違っても「俺に気がある」なんて考えてはいけない。好きだなんだと言われようと、愛してますと言われようと、はたまた体を押し付けてこようと、その言動が俺の思うそれと同じだなんて証拠はどこにもない。身体を許したらそいつのことが好きだなんて、考えが甘い。もしそうならばセ○レは皆相手のことが好きだということになってしまう。
彼女の俺に対する感情は「敬愛」と「関心」であって、「情愛」と「好意」などではない。そんな関係性で、甘さに付け込んで、果たしてそれは満足できるものなのだろうか。
ちらりとジブリールに視線を向ける。それを受けてジブリールは俺に向けてニコリと微笑みを返してくれる。話の流れからして数十秒後に「ヤらせろ」と命じられるかもしれないのに、動揺した様子も見えない。…それが余計に虚しさを増す。
「愛がない性行為はオ○ニーと同じ」と言う名言を聞いたことがあるだろうか。ちなみに俺はない。即興で思いついたにしてはいい表現だと思う。割り切れば簡単なのだろうが、残念ながら折角初めてを捧げるならお互いに愛し合っている人が良いと考えるくらいには童貞を拗らせているので、そう易々と行為にいたりはしない。そんな状態でやったって悲しくなるだけだ。だから、如何にジブリールが誘惑してこようとも、ぐっと堪えて我慢する。今まではそうだった。
だが今後一生、その生活に耐えられるかについては全くの別問題で、そこに関してはハッキリと言えるが無理だ。したいかしたくないかで言えばしたいに決まってるし、めちゃくちゃにしてやりたいかと言われれば即答でYESだ。というか、はよ告れ。もう嘘でもいいから。異性として好きですと言え。俺だって年頃の男子なんだよ。意識しちゃうだろ色々と。
なんだかんだと色々頭の中で感情をこねくり回していると、空は俺が考えあぐねていると判断したためか、こんなことを言いだした。
「わかってる……わかってるんだ!俺が勝手に舞いがって、暴論を口にしているなんてことは……ッ。そして、その上で、もう一度言う!エロいことがしたいと!
机を激しく叩き強く息を吸って、無理やり冷静になろうと努めつつ、空は机に突っ伏してぼやいた。
「どんなに可愛かろうと、美しかろうと、エロかろうと……元の世界なら、手出しゃ終わりだ。詰むとわかっているなら、我慢するしかない。だが、出来るんだよ。
「おい、まさかお前…」
盟約を逆手に取り、手を出すというのか。盟約に誓って行われた賭けは絶対順守。勝利してしまえば、嫌がる女性を無理やりにでも行為に引きずり込むことができるだろう。しかも、合法的に。
「お前も察する通り、本気でヤりたきゃ……ステフに「負けた方が勝った方の言うことをなんでも一つ聞く」って内容でゲームを叩きつければまず間違いなく出来る。手を出せないという
なるほど。確かに、一応筋は通っている。自分が愚かな行為に及ぶ前に、発散させておいてそれが起こる可能性をすこしでも下げようというのだ。
「話はわかった。要はバレないように一回ヌきたいって話だろ?…バカバカしいにも程がないか?これ」
「どんなに馬鹿馬鹿しかろうとも今の俺にはお前を頼る他ない。こっちの世界の唯一の男の知り合いとして知恵を貸してくれ」
知り合いが性的犯罪者になるかもしれないのを知っていて、本当にそうなってしまったら気分が悪い。はっきり言って拍子抜け甚だしい内容ではあるが、知恵を貸すだけで済むらしいので適当にいくつか案を提示しておかえりいただくとしよう。
「はぁ…前提条件は?」
「知り合いにバレない、白が近くにいても問題なく、かつ非人道的手段を用いなければOKだ」
…無理じゃね?白がいる時点でもうだいぶ苦しいが、協力者がいればなんとか誤魔化せるかもしれない。しかし知り合いにバレないようにとなれば、協力者を募ることもできない。詰んでるだろ。
しばらく2人で頭を捻り考えてみるも、良案は一切浮かばない。
「そもそも元の世界でも白が一緒に居ただろ。その時どうしてたんだよ」
「白が寝てからするに決まってんだろ。知り合いが押しかけてくることもないからな」
なるほど、そりゃそうだ。元の世界で引きこもり極めているこの男にはその手法しか取れないだろう。
何か取っ掛かりがないか聞いてみたはいいものの、あまり役に立つ情報ではなさそうだ。万事休すかと思われた矢先、隣に座っているジブリールがスッと手を挙げた。
「どうしてもとおっしゃるならば、方法がないこともございません」
「言ってみたまえ、ジブリール君」
「空様の知り合いを、全員別の場所に集まるように呼べば良いのでは?幸いなことにそれほど知り合いの女性も多くありませんし、適当に用件をつけて3日ほどその場に縛り付けておけば、その間は空様と白様の2人きりになります」
「なるほど。要は空の知り合いを排除してしまえば、元の世界と同じ条件になると。そしたら白が寝てる間にやりゃいいだけだし。確かに悪くはないが、全員を呼び出す嘘の理由も、3日も別の場所に縛り付けておく用件もそう簡単に用意できなくね?」
空の知り合いといえば、俺、ジブリール、ステファニー、クラミー、フィール、いづな、巫女さん、いのさん、アズリール、プラム、ライラとその他の
「問題ございません。『マスターが賭けを伴わない平和なゲームをしたがっているのでアヴァントヘイムまでお越しください。強制されているわけではありませんので逃げるのでしたらどうぞご自由に』とでも言っておけば全員やってくること間違いなしでございます」
「問題しかないんだよなぁ…。勝手に俺がゲームしたがってることにされてるのは目をつぶるとしても、その要件じゃ3日も拘束できないだろ」
「3日かかるゲームを用意すればよいだけの話でございます。もし本当に行うのであれば、準備含めたもろもろはすべて私にお任せください。マスターが天上のシミを数えている間に用意させていただきますので」
「いやいや‥‥やらないから。まず空のためにそこまでするつもりないし、そのメンツで勝てるわけないし、そもそもそんなカオスな状況でゲームやりたくないし、あと何より面倒くさい」
自分の有能さをアピールするジブリールには悪いが、思い出して欲しい。あくまで俺は知恵を貸して欲しいと言われたからしぶしぶ話をしているだけで、空を助けるだとかそういった類の要求を受け付けたつもりはない。
これがこの世界の攻略につながるならまだしも、ただ空の性欲処理の手伝いをしているだけ。そんなもののために体を売るつもりは毛頭ない。
「……わかった。ならばギブアンドテイクでいこう。もし今回協力してくれるというのなら、今度お前の要求を無条件で一つだけ飲む。一人になりたいのならジブリールやアズリール他もろもろ同じ手法で俺のところに集め時間を確保してやるし、場所が欲しいなら王城の一室を貸してもいい。知恵を借りたいというのならいくらでも貸すし、人手が足りないならステフも付けてやる。要するに俺の出来る範囲で協力することを約束しよう」
マジか。この男、仮にも一国の王であるという立場のくせして自分の欲望のためになんでもするとかぬかしやがった。俺がとんでもない要求したらどうするつもりなんだろうか。そうだな‥‥白ちょうだい、とかか?‥‥なんか自分がロリコンに見えるのでやめよう。
「……本気か?諦めたほうが身のためだと思うぞ?お互いに」
「それぐらい切羽詰まってんだよ察しろ」
「はぁ……今回だけだからな。マジで気が乗らねぇ……」
そこからはあれよあれよといううちにジブリールが準備を進め、今度空の知り合い全員を連れてオーシェンドへと向かうことになった。ライラが海から出られないので当然と言えば当然なのだが、まさか早々に二回もあんな場所に向かうとは思わなかった。
次回、「ドキッ♡女の子だらけの学園生活~みんな俺のことが好きすぎて困っちゃう~」