既に内容を知っている人からすると退屈に感じるかもしれませんが
ご了承ください。
異世界に転生した俺、比企谷八幡は。
何としてでも元の世界に戻ると意気込んで昼寝をしていた。
やはり今日はいい天気で、ゆっくりと眠ることができていた。
しかし、いかついおっさんたちの登場により、俺の安眠は妨げられた。
寝ている俺の横で大きな声で騒ぎまわり、無理やり俺を起こした後、メンチを切りながら「身ぐるみ全て賭けてゲームしろ」と脅してきた。
もう何が何だかわからんかったが、おそらく彼らは盗賊なのだろう。テトの定めたルールにのっとって、ゲームで俺のすべてを奪う算段らしい。
『十の盟約』のその一に略奪を禁ずるとあるから、彼らが生きるにはゲームを吹っ掛けるしかないのだろう。
だが、俺にそんなゲームを受ける気はない。なぜなら、俺にとって全くと言っていいほどメリットがないからだ。盗賊の所持しているものすべて奪ったとて、何の足しにもならん。
つまり、俺が今ここで取る選択肢はたった一つ。
「いや、悪いけどゲームは受け「あぁん!?聞こえねぇなぁ!?」る気になりましたぜひやらせてください」
うん、断るなんて無理だわこれ。そもそも、前の世界でもヤンキーに絡まれたボッチ陰キャは財布を出すしか選択肢などなかった。
「弱くない?」
吹っ掛けられたゲームはポーカーだった。なぜ盗賊たちがトランプを持っているかわからんが、この世界では必需品なのかもしれない。
戦績は7戦中7勝0敗。ご丁寧にチップも用意されており、フォールドも許可された普通のポーカー。なお、戦績はゲーム回数についてのものではない。人数換算である。
つまり、盗賊7人全員と戦って、それぞれの所持しているチップすべてを巻き上げた。別に俺がすごいわけではない。盗賊たちが役なしのブタにもかかわらず、はったりだけで乗り切ろうとバカスカチップを賭けていたのだから。
よくよく考えてみると、盗賊というのはまともに生きていけなくなった集団が、落ちに落ちた末にたどり着く職業である。ゲームですべてが決まるこの世界での落ちこぼれ集団と考えれば、納得できそうな気がする。
「じゃ、ゲーム終了な。俺もう行くから」
もう少し昼寝したかったが、正直に言って、無理やり吹っ掛けられたゲームの対戦相手と長居したくはない。はした金ではあるが、盗賊から巻き上げた金銭をつかえば、一泊くらいはできるだろう。
「ま、待ってくれ!せめて、せめて服だけは勘弁してくれ!」
「いやいらねぇよ。おたくらが勝手に賭けて負けて差し出したもんだろうが」
そう。こいつら、身ぐるみ全て賭けてゲームしろと要求してきたとおり、衣服も含めた全てを勝利報酬として差し出してきやがった。盗賊の服なんぞ欲しくもなんともないが、『十の盟約』は絶対順守らしく、今は俺のもの扱いらしい。
もうこれ以上関わりあいたくなかったので、必要になりそうなもの以外は全て返した。一度衣服などを奪ったうえで、貸与という形で返すことにした。これなら、所持者は俺だし盟約には反しない。言ってしまえば、借りパクならぬ貸しパクである。
盗賊たちと別れたその後、俺は一番近くにある都市に来ていた。その名をエルキア。今現存する人類の都市はここのみであり、国王選定ギャンブル大会なるものが開かれているらしい。ちなみにソースはあの盗賊たち。
できれば自分でも情報収集はしたかったが、あいにくと看板などの文字は日本語では書かれていなかった。まぁそりゃそうか。
というわけで、文字が読めない俺はなんとか知識を増やそうと、情報がたくさん集まりそうな酒場に来ていた。なお、俺がこの酒場にたどり着くまで何人もの通行人に話しかけ、そのたびにメンタルをすり減らしていたのは言うまでもない。
酒場の端っこでちびちびと無料の水を飲みながら、聞き耳を立てて情報を集める。食事もついでにとりたかったが、盗賊たちから奪った金はあまり多くない。加えて、この酒場に料金表があるわけではないため、うかつには手が出せなかった。
いまこそ、長年にわたって培ってきたステルスヒッキーの出番である。
一時間ほど聞き耳を立てていたが、だいぶ多くの情報を得られた。
まずはここの都市の金銭の相場である。思ったより高くはなかったが、元手が少なすぎるので稼がなければ3日と持たない。あと、バーテンダーのおっさんは常連でなければかなり料金を吹っ掛ける。食事を頼んでいようものなら、懐は空になっていただろう。
次にこの世界の現状である。軽くしかわからなかったが、この世界には人類以外にも、知性があると定められた種族がいるらしい。テト以外の神である、位階序列第一位の
他にもいろいろいるらしいが、とりあえず知ることができたのはこの三種族のみだ。おそらく、他の種族とはあんまり関わりがないから、話題に上がらないのだろう。知らんけど。
最後に、国王選定ギャンブル大会についてである。亡き前王の遺言により、玉座に座ることができるのは最も強いギャンブラーのみであるとのことで、人類最強のギャンブラーを決定しようとのことらしい。現時点での最強は紫色の髪をした、おかっぱ気味の女性。名をクラミーというそうだ。
今もなお、そのギャンブル大会が行われており、ポーカー勝負によるクラミーの独壇場であった。
見ていて思ったが、あまりにも引きが強すぎる。相手の手が中途半端にいいときに限って、ストレート、フラッシュ、フルハウスを引く。逆に負けるときはとことん悪い手を引く。まるで運勢を補正するかのように。
そうでなくとも、基本的に初期手札の入りがいい。今のところ、100%二枚以上が絵札かつスーテッド(同じマーク)なのである。イカサマでなければ、間違いなく神はギャンブルの王者を彼女にしようとしているだろう。
ちなみにイカサマの可能性について言及したが、その可能性は低い。何回か見ていたが、パーム(手のうちに隠す)だったりの仕込みや、シャッフル時の不正などは見られなかった。
つまり、もし俺が挑んだら、盗賊たち相手と違い、ほぼ確実に負ける勝負である。ちょっと国王になりたくはあったが、負けると分かっている勝負はしない。これ、重要な。
ある程度の情報を得ることができたので、俺はとりあえずそのまま酒場に備え付けられている宿泊所を借りて休んだ。当然のようにバーテンダーのおっさんにぼったくられそうになったが、「俺の前に支払いをしている人の金額と違うんですけど」というと、しぶしぶ正規の値段で貸してくれた。というか、正規の値段なんだから貸すの渋るなよ。
ベッドの上でゴロゴロしながら、明日は町でも探索するかと思案し、長いことこの町に歩いてきたときの疲れが出てきたのか、そのまま眠りについてしまった。
クラミ―と接点を持たせてもいいかなとは思いましたが、
あんまり話す内容がなさそうだったのでやめました。
次回はついに、テト以外のノゲノラのキャラが長いこと比企谷八幡と会話することになります。