やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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感想が付きました。

執筆の励みになります。

ありがとうございます。


間違いが悪であるとは誰も証明できないはずである

ジブリールとゲームをした、次の日。

 

もはや所持金など関係なく、住む場所も、食事も、加えて先生役まで手に入れることができたこの俺は。

 

少しだけ、うん、少しだけ浮かれていた。

 

だから、これからお世話になるジブリールの住処である、王立図書館の扉を開いたとき、俺が変になってしまったのだと思い込んでいた。

 

「ひゃっはろー☆比企谷君昨日ぶりだねー☆元気してたー?」

 

バタン。

 

俺は思いっきり図書館の扉を閉じ、外で深呼吸した。

 

落ち着け。今のは幻覚だ。あれはジブリールではない。まず、口調も違うし、あんなにフレンドリーな性格ではなかったはずだ。

 

だが、見た目は完全にジブリールだった。様子こそ雪ノ下陽なんとかさんと酷似していたが、外見は間違いなくジブリール。誰だよ陽なんとかさんって。

 

うん、いやー、俺もつかれてんだな。一人で考えすぎだ。あれだ。異世界に来てからいろいろあったから幻覚の一つや二つ見てもおかしくない。むしろこの世界そのものが幻覚であってほしい。そして早く元の世界に戻してほしい。

 

最後にもう一度大きな深呼吸をして、再び扉を開ける。

 

「ちょっと、外で何してたのー?お姉さんを待たせるなんて罪な男だねー。あ、もしかしてお姉さんにみとれt」

 

バタン。

 

俺は思いっきり図書館の扉を閉じ、外で深呼吸した。

 

落ち着け。今のは幻覚だ。あれはジブリールではない。まず、口調も違うし…あれ?このくだりもうやったよね?

 

俺が外で混乱していると、今度は内側から扉が開かれる。

 

「おなじくだりを何度もされると面倒なので、そろそろ中に入ってきてもらいたいのですが」

 

「ああよかった。今度は俺の知ってる人、いや天使が出てきたわ」

 

「私の図書館の外で気色悪い行動をされて評判が下げられたくないので、ごちゃごちゃ言ってないでさっさと入ってきていただいてもよろしいでしょうか」

 

「すまん、やっぱり悪魔だったわ。というか待て。さっきのあの対応はなんだ」

 

「?はて、何のことでございましょう。身に覚えがございません」

 

「可愛らしく頬に指をあててしらばっくれるのは止めろ。あざとい。さっきのひゃっはろーについてだ」

 

「ひゃっはろーとはなんでしょう。あなたを呪い殺すための呪文でしょうか」

 

「やめろやめろ。すぐ俺を殺そうとするな。それはただの挨拶だ。多分。俺も使ったことないからわからんが。というよりマジで言ってる?俺本当に幻覚見ちゃってる?」

 

どうしよう。さっきの半分冗談で言ってたんだけど。異世界で過ごすのがあまりにもストレスだったのか?まぁ確かに、今のところボッチには過酷なイベントしか起こってないかも。

 

「まぁ、かわいそうなのでそろそろネタ晴らしをすると、あなたからいただいた小説にそのような人物がいたので、トレースさせていただきました」

 

「おい、脅かすなよ。ついに俺にもストレスという概念が追加されてしまったのかと思ったじゃねぇか」

 

「この女性は、男性すべてを虜にするほどの魅力的であるとのことで。実践してみましたがしょせんは創作物の空論といったところでしょうか」

 

「なめるな。俺は普通の男と違ってそういうやつにコロッと引っ掛かりなどせん。そういうやつは、たいてい男を都合のいい道具としてしか見てねぇっていうのを知ってるからな」

 

俺じゃなければ、さっきのジブリールの対応が出てきた瞬間に告白して無残にも振られるだろう。ご愁傷様。

 

しかし、いくら異界の書とは言え、創作物にリアリティを求めるのは間違ってんだろう。そういうのは野暮ってもんだ。…ん?異界の書?

 

そこで、俺ははっと気づく。

 

「おまえ、俺の持ってた小説読めたの?」

 

そう。ゲームの報酬としてジブリールに昨日渡した、本の数々。学校に行く途中のかばんに俺は小説も入れていたので、それぞれの教科の教科書と、小説5冊を昨日渡したはず。そしてそれらはすべて日本語で書かれている。

 

わずか一日足らずで、未知の言語を解読したというのか。

 

「はい、ある程度は。音声言語は一致しているのでさほど難しいわけではありません。さすがに全てとまではいかず、未知の概念だったり、理解不能の表現技法だったりは把握できませんでしたが」

 

「なにそれちょうすげぇ」

 

バケモンかこいつ。こいつがやったことはつまり、前知識なしで古文の問題解くみてぇなもんだぞ。むしろそっちのほうが簡単まである。

 

だが、これはうれしい誤算だ。日本語が分かれば、こっちの人類種(イマニティ)語との翻訳ができる。俺もスムーズにこっちの世界の言葉を覚えられるってもんだ。

 

「まぁいい。じゃ、これから人類種(イマニティ)語の授業よろしく」

 

「気が乗りませんが、承知しました」

 

そうして、俺達は図書館でみっちりと勉学に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリールに勉強を教えてもらってから、三日が経過した。

 

言い換えれば、俺は三日の間、ジブリールに養ってもらっていたのだが。

 

俺は絶望していた。

 

理由は三つ。

 

一つ。勉強がスパルタすぎて体がもたん。養ってもらっているからにはここで寝食を共にするわけであるが、こいつ、休憩という概念がない。

 

ほぼ無尽蔵に体力があるため、寝ることなくぶっ通しで本を読んだりしている。精神的気疲れはあるようだが、それも毛が生えたようなもんだ。実質ノーダメージである。

 

そんなわけで、朝起きたら夜寝るまでぶっ通しで授業を受けている。受験期でもこんなに勉強はしていなかった。きちぃ。

 

その割に人類種(イマニティ)語の理解はイマイチときたら、もうやってられん。

 

二つ。寝れない。ここは元図書館。ベッドなんてものはあるはずないのである。

 

さっきも言った通り、ジブリール君は寝るという行為そのものをあまりしない上に、寝るときもぷかぷか空中に浮いて寝るからベッドなんてものは必要がない。

 

そうなると、俺は固い床で寝るか、椅子に座ったまま寝るかの二通りしかないのだが、当然それでは快適な睡眠を得られることはなく。

 

心身共にボロボロだ。

 

三つ。これが最大の理由だが、こいつ、俺を養うための()()()()のである。

 

彼女にとって食事とは、必ずしもとならければならないものではない。加えて、住む場所は図書館(ここ)と確定している。したがって、何かを購入するための金を稼ぐ必要がないのである。

 

だが、俺はそうではない。少なくとも、俺は飯を食わなければ死ぬ。

 

というわけで、金がないジブリールは俺を養うため、転移魔法で自然に群生している食べれるものをとってきてくれるのだが。

 

まずい。食えなくはないが料理が必要なレベル。察しのいい人なら気づくだろう。料理器具なんぞここにはない。つまり、全ておいしくない生で食うしかない。

 

こいつにゲームで勝利したときの俺は、まさかこんなことになるとは思っていただろうか。

 

性格はあれだが、見た目はいい女の人に、養ってもらえる。そんな風に浮かれていたっけ。

 

現実は甘くなかった。orz

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな過酷な状況で、俺は、何とか生きるため、ジブリールに土下座していた。

 

「頼む!せめて、キッチン作ってくれ!」

 

最大の問題は、やはり食。勉強時間が長いことと、睡眠の質の悪さはある程度目をつむれるが、食だけは体調とやる気に直結する。

 

「調理道具と、いくつかの調味料、皿とコンロがありゃ十分だ!最悪、ガスバーナーとかでもいい、魔法でチャチャっと作ってくれ!」

 

電子レンジや、オーブントースター、炊飯器などはなくてもいい。加熱できりゃ十分だ。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、この世界には魔法が存在する。この間精霊がどうのこうの言っていたが、そいつを使って魔法を使うらしい。これは授業のときに教えてもらった。

 

面倒といいながらも、ジブリールはこの世界の一般常識なども教えてくれた。

 

よくわからなかった位階序列。これは魔法適正の高さで決定されており、普通は序列が高いほど魔法の威力だったり汎用性が上がったりすると考えていいらしい。一概にそうとはいえんらしいが。

 

なお、人類種(イマニティ)は最下位の十六位。天翼種(フリューゲル)は六位。最下位の人類種(イマニティ)は魔法の感知すらできんというが、微小の精霊すら体内に保持してない俺は序列十七位になるんですが。

 

また、最終ゴールも確認できた。テトが言うには、

 

『蛮力と暴力と武力と知力の限りを尽くし、屍の塔を築く知性ありしと自称する者ら、答えよ!己と知性無き獣の最後を!知性ありしと主張する十六の種族よ!理力と知力と才力と財力の限りを尽くし、知恵の塔を築き上げ、自らの知性を証明せよ!』

 

と。

 

つまり、十六の種族で力を合わせて、テトに挑みましょうってことだ。終わった。勝利条件がボッチ殺しの不可能条件だった。

 

それに、現在エルキア、すなわち人類種(イマニティ)最後の都市だが、ここもそろそろ危ういらしい。魔法でインチキされ続け、負けに負けた結果、首の皮一枚つながってる状況なんだと。

 

こりゃー、人類最強のゲーマーじゃないと一発逆転なんかできないわな。そういえば、あのクラミーとかいう豪運少女。あいつ国王になったんだろうか。ま、どうでもいいけど。

 

 

 

 

 

おっと。話が脱線しすぎた。まぁ、そんなわけで位階序列第六位様はキッチンくらい魔法でパパっと作ることができるんですが。

 

面倒といってやってくれないのだ。

 

「あのですね、魔法を行使するのも大変なのでございます。それはもちろん指の一振りで解決する問題ではございますが、私にメリットがございませんゆえ」

 

「ちゃんと俺を養え。盟約違反だぞ」

 

「はて。三日とはいえ、生きながらえているのは私のおかげなのでは?最低限度の施しは与えているはずですが」

 

くそっ。最低限度の養いがこんなに厳しいものだとは思わなかった。それと、俺はあくまで養われているのだ。施しを受けているわけではない。

 

「たのむ!なんでもする!」

 

切羽詰まりすぎて、うっかり口を滑らせてしまった。

 

「今、何でもするとおっしゃいましたね?」

 

ジブリールがにやりと笑みを浮かべる。やばい。すぐに訂正しなければ。

 

「いや、それはあくまでも一般的に俺に可能であることだけで、前向きに対処するといいますか…」

 

「今、何でもするとおっしゃいましたね?」

 

「まぁ、言ったけど、言葉の綾というか、流石に常識的に考えてなんでもはむr」

 

「何でもするとおっしゃいましたね?」

 

「だかr」

 

「おっしゃいましたね?」

 

「……はい」

 

「そうですか。何でもと言われれば不詳、このジブリール、指の一本くらいはあなたのために使って差し上げます」

 

そういって、指を一振り。

 

すると、あっという間に要望通りキッチンが出来上がる。すげぇ。

 

だが、まったく嬉しくない。30秒前まではうれしかったはずなのに。

 

「さて、あなたにしてもらうことを考えるとしましょうか♡」

 

俺は、明日を無事に迎えられるのだろうか。

 

 




八幡は何をされたのでしょうか。

次回にご期待ください。
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