「ちょっと?前書きだからって何でも言っていいわけじゃないのよ?男の人にそういう勘違いさせちゃう言葉を投げかけるのは止めようね」
「いえ、私はきちんとあなたのことを愛しています。興味のあるものを愛するのは私に限らず皆同じではないでしょうか」
「ああ、うん、そういう意味ね。知ってる知ってる。わかってたって。というか、あんまり長いこと話してると、どこからが本編かわかんなくなっちゃうでしょ」
「ですが、前書きは我々のコミュニケーションをちょっと書くようにする、との伝達があったもので」
「え?マジ?これシリーズ化すんの?ネタとか大丈夫?」
「そのことに関しては投稿頻度を下げるそうで。さすがに一日一本ペースは体がもたないと」
「大丈夫?筆者も気になるけど、読者もどんな反応するか不安なんだけど」
「まぁ、筆者ありきの読者ですから、生意気な反応は全てゴミ箱に捨て置けばよろしいかと」
「やめて、筆者が本当にそう思ってる感じになっちゃうからやめて」
「では、本編をどうぞ」
「唐突だなおい。あと、フォローしてからやってそういうの」
「私と、私の言う条件でゲームをしていただきます♡」
うっかり口を滑らせて、何でもすると言ってしまった結果。
俺はジブリールとゲームをすることになったみたいだった。
「え、なに。逆にそんなんでいいの?」
奴隷になれとか、今すぐ山から飛び降りて来いとか、それこそ死んでくれとかいうのかとおもった。
「仮にそのようなことを要求しても、強制力がないもので。どうせ頼んだところで、なんやかんや理由をつけて先延ばしにするに決まっておりますゆえ」
「ちょっと?心の中読むのやめて?魔法ってそんなことも出来んの?」
ジブリール先生には魔法のことは概念的に教えられただけで、どんなことができるとか、逆にできないとかは教えられていない。だから、予想以上に何でもできる可能性もある。というか、そんなことできたらすべてのゲームにおいて必勝だろ。
「いえ、あなたのその間抜け面から予測したまででございます。誓って魔法は使っておりませんし、これから行うゲームでも魔法の使用と、不正はしないと宣言させていただきます」
「ああ、そりゃありがたい」
私の言う条件で、というからには魔法使用OKの必勝ゲームでも吹っ掛けてくるのかと思ったが、そうではないらしい。
あと、罵倒に耐性があるからって、そう簡単に人をいじめちゃだめよ?俺じゃなかったら泣いて逃げ出すレベル。
「なお、賭ける内容も私が決めさせていただきます」
「まて。それアリにしたら本当に俺殺せちゃうだろうが」
『盟約に誓って』ゲームをすれば賭けの内容は絶対順守。負けたら死ぬという賭けの元、ゲームで負けたら本当に死ななきゃならん。口約束とはわけが違う。なんやかんや理由をつけて先延ばしできなくなっちゃう。
「まぁ、何でもすると言う約束を反故にすると言うなら、仕方がございません。本来、ゲームの内容や賭けるものは相手次第なので、拒まれればどうしようもないのでございます。ですが、ご安心ください。仮に約束を反故にしたとしても、あなたの要求したキッチンはそのままにしておきますので」
「……」
やられた。約束を反故にしたときにキッチンをなくしてくれれば、俺は間違いなくこのゲームを断っていた。
しかし、何度も言うが俺は養われる気はあっても施しを受ける気はない。こっちは何もしないのに
だが内容が内容だけに、二つ返事で受けるわけにもいかん。それこそ、俺が前にやった通り、負けたらジブリールに殺され、勝ったら自殺なんていうどっちも結果おんなじみたいな賭けでゲームするなんて言われたら、ポリシーに反してようが何だろうが断らなきゃならない。
「とりあえず内容を聞く。受ける受けないはその後で決める」
「まぁ、ひねくれたあなたを
そういうと、ジブリールはこないだ使ったチェス盤を取り出す。
「ゲーム内容は、この間と同じチェスでございます。ルールもこの間と同じく、本来のチェスにのっとり、引き分けの場合勝敗が付くまでやりなおすものとします」
ふむ。ここまでならまだ受けてもいい。必勝ゲームじゃないなら、まだ考慮の価値ありだ。まぁ、俺相手じゃ実質必勝ゲームみたいなとこあるけど。
「そして、あなたが気になる賭けの内容ですが、私が勝利した場合、今後私の命令を無条件で実行、かつ生涯を私のために捧げ、そばで私に仕えてもらいます」
おっも。え?これつまり死刑宣告だよね?いや、何なら死刑より重い。つまるところ、負けたら私の奴隷になれということだ。
「や、それはやめたほうがいいんじゃない?ほら、一緒にいるとまずいんじゃないの?俺あれだし。あれがあれでよくないと思うし。そうだ、目も腐ってるし、ひねくれてて何言ってるかわかんないし」
しどろもどろになりながら、なんとかやめさせようとするが、ジブリールの腹の内はもう決まっているようで。というか、それこそが目的であったようで。
「いえ、むしろそれが私の望みなのです。確かにあなたは目は腐っていて、ひねくれていて、何を言っているかよくわからなくて、たまに腹の内をのぞいてみれば独特すぎて笑えない自虐だったりジョークを言っていて気色悪いですが」
「おい、聞き捨てならんのが聞こえた。ねぇ時々俺の心覗き見てんの?黒歴史とかバレちゃってんの?」
「あなたは私にとって、未知の生物であり、今までの
だからこそ、とジブリールが一言。
「未知を既知に変えるには、未知との接触が不可欠。興味を無関心に変えるには、それを知り尽くすことが必要。すなわち、ある程度長い期間、そばで観察する必要があるのでございます」
「でも一生は長すぎだろ。長くても一年とかでよくね?」
「ご安心ください。我々
くそっ。このチート野郎。だめだ。すぐ断ろう。
「なお、私が負けた場合。万が一にもあなたが私を降した場合。その時は、私があなたに生涯をささげることを誓いましょう」
……な、んだと?
それは、つまり、
「おい、それじゃ、お互いの生涯を賭けた、対等なゲームになっちまうじゃねぇか」
「その通りでございます。無論、今までの説明と条件に間違いはいたってしておりません」
俺は、てっきり、あの時と同じように、俺がしたように、
一応、ないわけではない。俺をそばで観察したいというこいつの言葉が本当なら、勝っても負けても俺のそばにいることはできる。だが、万が一負けたときのリスクをそこまで背負う必要はない。
俺がこのゲームに乗らないことを危惧するなら、勝利時の報酬を下げておきゃよかった。今後一生観察する許可を与える、とかなら、俺は多分乗っていただろうしな。
「その条件は止めとけ。つーか、本当にその条件にするつもりか。もっと思考をこらせ。自分にだけメリットがあるように仕込めるだろこの状況下なら」
「おや、私のことを心配してくださるので?ご安心ください。万が一にも負けることはありませんし、この条件を変えることはありません。それに、この私があなたのようにゲーム外での姑息な仕込みを行うとお思いで?」
ジブリールはにっこりと笑って返答する。ちくしょう。笑顔がまぶしいぜ!
よし、この条件なら、このゲームには乗らない。お断りしよう。俺のポリシーには反するが、致し方ない。うん、俺は悪くない。
そう思えたら、どれだけよかったか。
俺には、このゲームに乗るしか選択肢はなかった。条件など関係なく、乗るしか。
しょうがない。そうできれば、どれだけよかったか。
心の中で言い訳しても、何度断ろうと思っても、口からその言葉はついぞ出なかった。
ジブリールは、俺がこのゲームに乗ることを確信している。事実、そうだ。俺という人間は、このゲームに乗る。理由は単純。そういうやつだからだ。
俺は俺の思うやり方を曲げることはできない。人との関わりを極力減らし、面倒ごとを避け、最も効率的に物事を進めることを良しとしてきた。
義理を果たす。約束を守る。そういうことは必ずしてきた。そういうのをいい加減にすると、人間関係のいざこざにつながり、面倒ごとが増えるからだ。
俺がここでこのゲームに乗らなければ、俺は俺の考え方を曲げることになる。
俺の考え方を曲げるということは、今までの俺を否定するということだ。
今までの俺を否定するということは、俺は俺ではなかったことになる。
もしそんなことになるなら、俺は俺が許せない。
だから、ゲームに乗るしかない。
だが、乗ってしまえば、どちらかの破滅が待っている。
だったら。
結論は決まった。
「わかった。その条件でゲームをしよう。やるなら早く終わらせたい。準備を頼む」
「おや、案外あっさりとしているのですね。もう少し考えるものとばかり」
「まぁな。結局のところ、勝てばいい。勝てばベッドも追加され、完全に養われる体制が整うことになる。やるしかねぇだろこんなもん」
「……そうですか」
嘘だ。
このゲーム、俺は負ける。俺のほうが弱いとかいうわけじゃない。俺が、俺の意思で負けるんだ。
どっちがか不幸を被るなら。どっちかが破滅を迎えるなら、ダメージが少ないほうがいい。こいつはチートすぎるくらい優秀で、俺は比較にならんくらいの才能しかない。生きる時間もこいつのほうが長い。どうせ俺は一度死んでいる。もう一回死ぬ位わけない。だったら、どっちを残すかは明確だ。
チェス盤の前に向かう。俺が黒で、ジブリールが白。前回と同じ。
「では、宣言を」
「ああ」
「「
ゲーム開始から十分ほど。
おかしい。
俺はそう感じていた。
盤面の数はほぼ互角。どちらかが駒をとれば、駒を取り返す。そんな状況が続いていた。
俺は当然、負けるつもりで動いている。なのに、互角なのだ。もちろん、負けるように動いているとは知られないよう、ちょくちょく駒をとったりしてはいるが、それにしてもジブリールの手は弱い。
「お前、手抜いてない?」
「はて、これからの生涯が決まるゲームで手を抜くはずがございませんで。おっと。とうとう二駒ずつまで減ってしまいましたか。なかなかやりますね」
盤上にはそれぞれのキングと、白のクイーン、黒のナイトのみが残った。
ここまできたら、仕方がない。ばれないように立ち回ってきたが、俺はついに死地に足を踏み入れる。
ナイトを動かし、相手のキングにチェックをかける。
だがしかし、その線上にはクイーンが存在し。
俺のナイトがとられたら、逆にこっちがチェックメイト。そんな今までに例をみないほどの大悪手。
「……」
ジブリールは、クイーンを手に取って、
俺のキングに、
俺のナイトは健在で、いまだチェックをかけたまま。俺がナイトを動かせば、俺の勝ち。
「お前……!」
「おおっと、私としたことが、ナイトがチェックであることに気づかず、悪手をとってしまったようでございますね。ですが、すでにもうあなたの番。これはまずいですね」
「ふざけてんのか。このままだとお前負けんぞ」
「もうすでにあなたの勝利でございます。さぁ、駒を動かしてください」
ふざけるな。こんなことがあっていいものか。
俺はナイトを動かさず、キングのチェックを外した。
「おっと。俺も手が勝手にキングを動かしてしまった―(棒)」
「そうでございますか」
すぐさま、クイーンを動かしチェックに戻す。
これを繰り返した結果、千日手の判定となり、引き分け。最初からになってしまった。
「お前、さっきのどういうつもり?」
「それはこちらのセリフでございます」
ジブリールをにらむ前に、逆ににらまれてしまった。やっぱ怖い。
「『どっちかが破滅を迎えるなら、ダメージが少ないほうがいい』でしたか。なんともまぁ自分勝手な自己犠牲でございます」
「おい、ゲーム中に魔法で心を読むな。一字一句あってんだから魔法使っただろ。さっきゲーム中に魔法は使わねぇって言ってただろうが。あと、自己犠牲じゃない。そっちのほうがメリットが高いからだ」
「このセリフはゲーム開始前のセリフでございますゆえ、嘘は申しておりません。加えて申し上げますと、
駒をもとの位置に戻しながらジブリールは告げる。
「私がなぜゲームを持ち掛けたか、お分かりですか?」
「そりゃ、俺を常に観察したいからだろ。それを賭けてゲームしてんだから」
「意趣返しのようですが、あなたはもう気づいているはずです。私の本当の狙いが、あなたと対等に勝負がしたかったからであるということに。でなければ、賭けの内容を私に一方的に有利な内容にするはずだと、気づいていましたね。前回、私は、目的のためとはいえ、あなたに勝ちを譲られました。そのような勝利に何の価値もございません。私は、ただ、あなたと真剣勝負がしたい。そこまで気づいていて、なお、自ら負けようと動いている。ふざけるなはこちらのセリフでございます」
語感が威圧的になっている。どうやら、本当に怒っているようだ。そして、今の言葉のすべてが真実であると語っている。
「私のために、負けるなんて私が許しません。そのような打ち方をするうちは何があっても引き分けにします」
「だったら、何回でも引き分けにすりゃいい」
いずれ限界が来る。先に俺のほうが力尽きるだろう。そのとき、ゲーム続行不可能となり、俺の負け。それならそれでいい。
「本気でおっしゃっているのですか」
「ああ」
「そうですか。ならば、言葉を曲げるようで癪ですが、賭けるものを変更します。本来であればゲーム中に賭ける内容を変更はできないのですが、同意の元なら例外です。今回は私がすべての決定権を所持しているので、変えさせていただきます」
「まぁ、いいけど。どう変更するってんだよ」
よかった。賭けの内容が変われば俺も対等に勝負できる。それなら、問題ない。
「次に引き分けた場合、あなたの負け。加えて、あなたが負けた場合、あなたが私の奴隷になると同時に、わたしもあなたの奴隷となります」
「はぁっ!?」
なんだそれは。こいつ、自分の体を売ってまで。
「お分かりですか。もうあなたには、勝利するしか方法がないのでございます」
これで、前提が覆された。こいつだけが、不利益を被るか、二人で、不利益を被るか。
いや待て。後者なら、お互いがお互いの奴隷である以上、実質ノーダメージ。別に不利益というわけではな――
そう考えた俺の前には、悲しそうな表情を浮かべたジブリールがいた。
「ここまでしても、あなたは勝負を受けてくださらないのですね」
その言葉は、俺の心にぐさりと刺さった。
その顔は、俺の脳を大きく揺らした。
その目は、俺の体を強く貫いた。
俺は、メリット、デメリット。リスクヘッジなどを考えすぎて、ジブリールの、ただ真剣勝負がしたいという、思いを踏みにじっていたことに気が付いた。
そもそも、全ての元凶は、あんなゲームを吹っ掛けた、俺のせい。
ならば、その責任をとる必要が、俺にはある。
いまさらと思うが、やらねばならない。
都合がいいと思われても、やるしかない。
俺は、うつむいて駒を動かすジブリールに言葉を投げかける。
「悪かった。お前がそこまで俺との勝負を望んでるとは、思ってもみなかった」
まずは、謝る。次に必要なのは。
「そして、賭けの内容の変更は認めない。俺が負けたとき、お前が俺の奴隷になるのは、どう考えてもおかしいからな」
対等な条件に戻すこと。そうしなければ、これで勝っても意味がない。
「そして、本当に聞くが、いいんだな?俺が勝っても」
そういうと、ジブリールは、うつむいた顔を正面に戻し、少しだけ顔を明るくして、
「もちろんでございます。もっとも、負けるつもりはありませんが」
と返す。
「悪いな。お前は負ける。なぜなら、珍しく俺が本気で相手するんだからな。賭けの内容などしったことじゃない。全力で叩き潰す」
「口だけは威勢がいいようで。以前のゲームをお忘れで?」
「過去の栄光にすがってると、新時代の星に笑われるぞ」
俺はチェス盤に向き合って、この世界に来てから、本当のゲームを始めた。
「いかがだったでしょうか。結果私が勝つことになりますがご了承ください」
「いきなり嘘は止めて。まだどっちにするか決めてないからって、筆者さっき言ってたから。あと、あとがきもやんの?このコーナー」
「いえ、あとがきは今回だけだそうです」
「なんでだよ。別にやりたいわけじゃないけど、どうせだったらどっちもやれよ」
「あと、投稿頻度は二、三日に一度くらいになるそうで」
「まぁ、現実的なんじゃないの?つーか今まで頑張りすぎてたまである」
「では、次回も私と下僕の愉快な日常をご期待ください♡」
「だから急だって。もっと前振りとかあるだろ。あと下僕って言うな」