せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
続くかは分かりません。
人生何があるか分からない
『インフィニット・ストラトス』というライトノベルをご存知だろうか。
ふんわりと説明すると女性しか操縦できないはずのパワードスーツ的なマシン、インフィニット・ストラトス、略してISを何故か起動させてしまった主人公(男)・織斑一夏が女性しかいない学園でラブコメしたりバトルしたり陰謀に巻き込まれたりする王道の物語である。
『ボーダーブレイク』というゲームをご存知だろうか。
これまたふんわりと説明すると、元は資源採掘用に作られた人型ロボット『ブラスト・ランナー』でドンパチする3人称のシューティングゲームである。
私は中学生の頃にIS、15~20代前半にボーダーブレイクにドハマりしていた。ISは主人公のあまりの鈍感さと中々新刊が出ない事でシリーズから離れ、ボーダーブレイクは元々ゲームセンターに置いてあったアーケードゲームだったのだが家庭用ゲーム機に移植。据え置き機を持っていなかった私は泣く泣く引退を余儀なくされた。
何故このような事を語っているのかって?
平凡な会社員、田村だったはずの私が、いつの間にかレオ・シキシマなる中学生になっていたからである。
――いや、マジでどういうこと?
※※※※※
話は数日前に遡る。
「……ぉ、ぁ?」
プッ、プッという音が聞こえる。あれ? 私は今確か
(やっべ右折の信号!?)
帰宅途中の通勤路、そこそこに混む国道の右折待ちをしていた筈だ、右折の信号に変わり私が前に行かないから後続車からクラクションを鳴らされたのだろう。
私は車を発進させようとして、今いる場所が薄暗い車内ではなくベッドの上である事、そもそも身体がほとんど動かない事を認識したのである。
(え、何これどういう事?)
相変わらず聞こえてくるプッ、プッという音、テレビで聞いたことのあるこの音はもしかしなくとも心電図なのでは?
(ということは、ここって病院? なんで?)
病院に運ばれるような大病も大ケガもした覚えなんてない。
ひとしきり困惑していると、病室の扉が開き、白衣の男性が現れた。
「目が覚めたみたいだね、吐き気やめまいはあるかい?」
「ぃ、ぃえ!?」
いいえと答えようとして声が出せないことに気が付く。というか喉がカラッカラだ、お水が飲みたい……
「無理に応えなくて大丈夫だよ。1週間も意識を失っていたんだから、声が出にくくなっているはず。大丈夫だよ、一時的なもので少しすれば治る」
(1週間!?)
もしかして私は帰宅途中にとんでもない大事故に巻き込まれてしまったのかもしれない。……起こした方じゃないだろうな?
そして(やけにフレンドリーなお医者さんだな)なんて考えていると、そのお医者さんは爆弾を投下してくれやがったのである。
「あぁ、シキシマ君のご家族にも連絡はしてある。今こっちに向かっているそうだよ」
(ん?)
シキシマとは誰ぞ?
私の苗字は田村であり、シキシマ姓に変わった記憶なぞ当然ない。
苗字の謎が解明する前に、私に更なる爆弾が投下される。
「レオッ! ……あぁレオ、起きたのね!」
「無事で良かった……ッ! ありがとうございます、先生!」
私の姿を見るなり泣き崩れる女性と、涙を浮かべつつお医者さんに頭を下げる男性。って
「ぁの、だれ……?」
後悔先に立たず。凍り付いたその場の空気に、私は心底からやらかしたことを実感したのである。
※※※※※
「ぁの、わぁし……」
「大丈夫だよ、こういう事はたまにあるんだ」
凍り付いた室内で真っ先に我に返ったお医者さんは、一旦後から入ってきた男女を部屋の外に出した。
「さて……レオ・シキシマ君。落ち着いて聞いてほしい。
君は1週間前に大きな事故に巻き込まれたんだ。
複数の死傷者が出た大事故でね、君自身も命に関わる程の重傷を頭部に負ったんだ」
そして私の近くまでやってきたお医者さんは懐から手鏡を取り出すと、おもむろに私の顔の前まで持ってきた。
「ショックかもしれないが治療のために髪の毛は剃らせてもらったよ。大丈夫、すぐにまた伸びるから。
ただね、頭部に大きな衝撃を受けると記憶や言語に一時的な混乱が――」
そこから先のお医者さんお話は正直聞こえていなかった。
確かに私はショックを受けていた。
しかしそれは髪の話ではない。
(私が、私じゃない――ってかこの顔!?)
そう、鏡に映っていたのは見慣れた冴えない顔ではなく、散々やりこんだアーケードゲーム、ボーダーブレイクで私がプレイヤーキャラにしていた『熱血』の顔だったのである。
(待て、待って)
そうなると私は、
あの中々にハードなボーダーブレイクの世界に何らかの原因で転生してしまったとでも言うのか!?
結論から言うと、ボーダーブレイクの世界は勘違いだった。自力で歩けるまで回復する頃には周りの設備とかがボーダーブレイクの世界にしては現代的すぎると分かったからだ。
しかし。
「シキシマ君が眠っている間にISを動かせる男子が見つかったみたいなんだ。
それで今全国で他にもISを動かせる男子がいないかテストしているんだよ」
「あっ――そうなんですね、それは凄い」
(え、ここIS世界なん!? いや待て本来女性しか動かせないISを織斑一夏が動かせたのは織斑が織斑だったからでつまるところ私には関係ないな、ヨシ!)
「それじゃあこの板みたいな物に手を付けてね」
「はい――ッ!?」
「こ、これは!?」
「間違いない、起動してます!!」
拝啓、数日前の私。
何見て「ヨシ」って言ったんです?
そして私こと、『レオ・シキシマ』は
10年くらい前にハマっていたライトノベルの世界で、何の因果か生きる事になってしまったのである。
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