せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
UAが8,000を超えたので初投稿です。
評価を押してバーに色を付けてくれてもええんやで?
少し離れてはいるが、その少女が『鳳 鈴音』なのはハッキリ分かった。
さて、おつかいを頼まれている身としては早く戻るのが任務ではある。が、異国の地で道に迷っている様子の女性を放っておくのも忍びない。
ならば、
「ねぇ、そう、ボストンバッグを持った君。
転校生かな? 行くところは分かる?」
「……」
不審者を見る目で見られてから、自分の言葉のチョイスのアウトさに内心頭を抱えた。
「あぁいや、私服の子が大きな荷物とメモっぽい紙を持ってたから何となくあたりを付けただけだよ。
君が良ければだけれど、軽く案内くらいはできるんじゃないかな」
「まぁせっかくの親切だし受け取っておくわ。
このメモに書かれたここって、どの辺にあるの?」
「あぁここか、それなら――」
「あの建物の1階ね。助かったわ、ありがと」
「どういたしまして。どのクラスか分からないけれどこれからよろしく」
「こちらこそ。
あぁ、アタシは鳳 鈴音。中国国家代表候補生よ。よろしく、レオ・シキシマ」
「おや、私の事をご存知でしたか」
「そこら辺のヤツはどうか知らないけれど、少なくとも代表候補生に選ばれるようなIS乗りが『2番目』の事を知らないなんてありえないわよ」
「……それもそうですね」
「それじゃアタシはもう行くわ。ありがとね」
とまぁ原作キャラとの邂逅は特に何事もなく済んだのである。
※※※※※
――翌朝
『1年1組のレオ・シキシマ君、至急職員室まで来てください。繰り返します――』
「え、私?」
「レオ、何かあったのか?」
「いえ、分かりませんね」
「身に覚えのない以上行ってみるしかありませんわ。授業もありますしそこまで時間もかからないと思いますが」
「それもそうですね。ちょっと行ってきます」
突如呼び出されたものの心当たりが全くない。だがセシリアさんの言う通りで行ってみるしかない。私は席を立った。
※※※※※
「失礼します、1年1組のレオ・シキシマです」
「あぁシキシマ君、こっちです!」
いざ職員室に入ると、山田先生が手をぶんぶん振りながら私を呼んでいた。今日も笑顔がまぶしい。
「シキシマ君、とうとうできましたよ! 良かったですね!!」
「? えっと、話が良く見えないのですが……」
「あぇっと、シキシマ君は以前から自身の専用機用の飛行ユニットを申請していましよね?」
「はい……まさか」
「そうなんです! ついに試作機が完成したみたいで、メーカーから連絡が来ました!」
「おぉ……! ぃょしっ!」
山田先生の言葉を理解するのと同時にガッツポーズをしていた。
信じられない、私の機体が、
――私も、空を飛べるんだ!
「先生! その試作機はどこに!?」
「既に学園に搬入されています。午後の授業から動かせるようにフィッティングを行っています」
「午後……!」
こんなにワクワクしたのなんて、子供の頃のクリスマス以来だ。本当に、待ちきれない。
ここしばらくで一番のお礼を山田先生に告げて、私は職員室を後にした。
※※※※※
「お、レオおかえり……って、どうした? 何か嬉しい事でもあったのか?」
教室に戻って早々織斑に声を掛けられる。嬉しい事でもあったのかだって?
「もう最ッ高だよ!! ようやく俺の機体の飛行ユニットが届いたんだ」
「マジか! 良かったな、これでレオも飛べるようになった訳だ」
「まぁおめでとうございます、最初の内は飛ぶ感覚に慣れないと思いますがそこは練習あるのみです」
「うむ、おめでとうシキシマ」
「ありがとう!」
クラスのみんなから祝福の声をもらう。午後の授業までの4時間ちょっとが、人生で最も長く感じられた。
※※※※※
「自分の前に円錐を思い浮かべる……??」
「うん、分かんないよな」
「そうでしょうか……?」
待ちに待った昼休み。セシリアさんから軽いレクチャーを受けながら、私たちは食堂へと向かっていた。
ちなみに私はブラストを操作する時、アーケード版のように右のマウスで視点移動や射撃、左のジョイスティックで移動するようなイメージを持っている。というか、脳内でそう動かそうと思ったように機体が動くのだ。今は一番動かしやすいやり方を採っているものの、その内考えるより先に動かせるようにならないといけないなとも思う。
「時に一夏、今朝の女は一体何者なのだ?」
「ん? あぁそういえば箒はちょうどいなかったんだったか。
あいつは鈴。箒が引っ越した後に知り合ったまぁ幼馴染だな」
つまり君に惚れてるって認識で良いよね?
いやだってさぁ……。ただでさえ人たらしな織斑と数年間も一緒にいた女子が彼に惚れないとは思えないのですよ(名推理)
やはりというか彼女は鳳 鈴音であり、織斑曰く『セカンド幼馴染』であるとのこと。篠ノ之さんがもの凄~く警戒している。
「見つけたわよ一夏!」
「鈴? どうした急に」
食堂に着くなり噂の本人に声をかけられた。ただし織斑が。
そして始まるキャットファイト。一夏と一緒にいるのは私だ杯、出走のお時間です。私とセシリアさんは普通に離れてていいかなぁ?
「一夏は『どうしても』私にと言ったのだ!」
「ふーん? これでもアタシ代表候補生なんだけど。アタシの方が教導役にぴったりだと思わない?」
かーっ! 見んねセシリア! 卑しか女ばい!
でも織斑も困惑してるし周囲の目もある。ここは助け舟を出すとしようか。
「部外者がしゃしゃるなって言うかもだけど、せめてどこかに座って話さない?」
周りも気になってるみたいだし、と付け加えると流石に状況のアレさに気が付いたのか、2人はそれぞれの昼食を取りに向かったのであった。
おい織斑、あからさまにホッとした顔をするな。お前が始めた物語だろう。
※※※※※
せっかくのお昼休みだったのだが、なかなかにハードな時間になってしまった。鳳さんが織斑の隣を巡って篠ノ之さんとドンパチやる分には(良いとは言わないけれど)まぁ予定調和だったのだが、セシリアさんが自身の経験も踏まえて「代表候補生だからと増長しては痛い目を見るから気を付けようね(意訳)」と忠告したのに対し彼女は、
「ISを触って数か月の素人に負けかけた代表候補生が言うと説得力が違うわね。でも大丈夫、アタシ強いから」
と、五条悟かよと言わんばかりの煽りの呼吸で返したものだからさぁ大変。
笑顔ながら『ゴゴゴゴゴ』と擬音が聞こえそうなほど怒ってらっしゃるセシリアさんと刀があれば抜刀しそうな篠ノ之さん、上等だまとめて叩き潰してやるといった雰囲気の鳳さんと同じテーブルにいた私はかすかに痛んだような気がしたお腹をさするしかなかったのである。
「しっかし鈴のやつなんであんな事言ったんだろうなぁ。
確かに昔っから勝気なやつだったけどあんなに煽らんでも」
「負けたくない相手に舐められたくなかったんじゃないか?」
「負けたくない? 初対面だろ?」
「篠ノ之さんはまた違った意味になるけど、セシリアさんとは代表候補生同士だろう? そうなると肩書的にも負けられなくなるんだよきっと。
言っておくけど織斑もいずれそうなると思うぞ? 世界初の男性IS操縦者にして日本の第3世代機を任せられてるんだ、正式に言われてないだけで、半分くらいは代表候補生みたいなものだろう」
「うへぇ……」
げんなり顔の織斑だが私としてはこの認識は当たらないまでも完全に外れではないんじゃないかと思っている。
今現在、各国のIS開発は第3世代機が最先端だ。そんな最新鋭機をポンと渡すほど、日本政府が何も考えていないとは思えない。かといって脅しとか後ろ暗い手段を取ろうものなら世界最強の姉が黙ってはいないだろうから、『最新鋭機を任せるから日本にいてね?(意訳)』というのが今の政府の方針なんじゃないだろうか。
しかし鳳さんの登場って確か原作1巻とかだったよな? なんで1巻からこんな政治とか裏の事情とかがチラチラしているんですかねぇ……
(ハッ! いかんいかん、待ちに待った飛行ユニットの試験じゃないか。こんなジメジメした話は後だ後)
山田先生の話ではメーカーのテストパイロットによる試験等は特に問題なく終了しているらしく、後は本パイロットの私が実際に使ってみて、何か意見があればそれをフィードバックするそうだ。
今更ながら、今の私は国内複数のIS関連メーカーのテストパイロットという位置に収まっている。ISの機体パーツや武器だけでなく、ISスーツの試作品などの関連用品についてもテストを行い、世界で2例しかない男性搭乗者のデータを提供し続けている。
完璧とまでは言わないがリスクがかなり低減された試作機を自由に使ってね、何か気になることがあれば直すから教えて! あ、お給料は弾むよという最高の状況である。織斑とアリーナへ向かいながら、私のテンションは上昇していった。
※※※※※
「おぉ……! これが!」
「はい、飛行ユニットを装着した新型シュライクです!」
織斑と別れてピットに着くと、山田先生や整備科の生徒の皆さんが機体の最終チェックを行っている所だった。
展開した状態のその機体の外観は、見た所そこまで大きな変化はない。
だが、それまで腰部にあったスラスターが二回りくらい大きくなった上で独立したユニットとしてフヨフヨ浮いている。すごく、ISっぽいです(小並感)
「早速ですがこの機体の操縦について……」
感傷に浸るのは止めだ、私はメーカーの担当者の説明をメモを取りながら聞いた。
※※※※※
『こちらIS学園管制室。聞こえますか、シキシマ君。
これより、飛行ユニットの運用試験を開始します』
「シキシマより管制室。しっかり聞き取れます。
機体のカタパルトへの固定確認。
飛行ユニット、稼働開始します」
フィー……といった感じの音と共に飛行ユニットに火が入る。音はだんだんと強くなり、それと共に炎の色はオレンジから青へと変わっていく。
「データ上に異常なし。目視でも異常は認められません」
『こちらでも確認しました』
視界に投影された出力はどんどん上がっていく。それが80%に到達してから、私は試験項目通りにその状態を維持させた。
『……出力80%の状態で120秒経過。異常はありません。
試験項目を発進シークエンスに移行します』
「了解、出力を上げます」
飛行ユニットが発する音は更に大きくなり、出力の値はあっという間に100%に到達した。
「出力100%、機体を発進させます!」
『管制室よりシキシマ機、発進を許可します。
――いってらっしゃい』
その声に見送られ、私は大空へと飛び出した。
※※※※※
ヒトは昔から、空を飛ぶことに憧れてきた。
より高く、より早く、より遠くへ、より自由に。
ライト兄弟が空を飛んだ時にどう思ったのかは分からないが、もしかしたら『もっと飛んでいたい』と考えたのかもしれない。
だって、
『こちらIS学園管制室。
シキシマ君、調子はどうですか?』
「もう最ッッ高ですよ!!」
上昇、下降、右旋回に左旋回。全ての動作に異常は無い。飛行ユニットの出力が少し高く感じるが、それだって予想された誤差の範囲内だ。
ふとデジャヴを感じて、心当たりに思い当たった。私がまだ学生で、自転車で通学していた頃、坂道を自転車で駆け降りる時の感じに似ているのだ。もっとも、気持ちよさは自転車の比じゃないけれど。
『ようこそレオさん、こちら側の世界へ』
『良かったな、レオ!』
一足先に上昇していたセシリアさんと織斑からも通信が入る。
あぁ、本当に。困った事も窮屈な思いをした事もあったけれど、
(――この世界に来られて、良かった)
どうせなら飛行上限高度まで昇ってみようと私は機体を操作し――
爆発と共に飛行ユニットが吹き飛んだ。
やっと空を飛べたよ、良かったねレオ君!
これまで飛べない事で色々苦労してたもんね。いやぁ良かった良かった。
じゃあ次は緊急時の対応をやってみようね。ぶっつけ本番だけど君なら大丈夫だよ。
ダメでも下は海面だから潰れたトマト(比喩表現)を撒き散らさずに済むし、安心して逝ってね!