せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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UAが1万の大台に行きそうなので初投稿です。

読んでくれてありがとう。


※レオの一人称は素だと「俺」

「織斑先生」

 

 深夜。職員室には間もなく日付が変わろうかという時間になっても作業を続ける人物が2人いた。

 

「何か分かりましたか、山田先生」

「えぇ、こちらを見てください」

 

 普段は童顔とどこか小動物じみた雰囲気から生徒たちに人気の山田だが、もし今の彼女を生徒が見れば別人と疑ったかもしれない。それ程までに険しい雰囲気を彼女は纏っていた。

 端末を受け取り、中身を確認した千冬も、自分の顔が険しくなるのを自覚する。

 

「これは……」

「メーカーでのテストのデータには特に異常はありませんでした。ですが、今回納品に来た技術者や営業など、複数人が『本来納品の時刻にはここにいないはずの人間』でした。

 何者かがメーカーの人間になりすましてIS学園に侵入、シキシマ君の機体に破壊工作を行った可能性が高いです」

「……嘗められたものだ」

 

 怒りに拳を握る千冬だが、事はそう簡単ではない。

 

(実行犯はおそらく下っ端、仮に捕らえられたとしてもまともな情報は出てこないだろう。

 IS学園のセキュリティを抜き、ISに対して破壊工作を仕掛けられるスキルを持った構成員を下っ端として切り捨てられる人間あるいは組織? そんなもの、数こそ少ないが面倒な相手だ……)

 

 世界有数の超大国の諜報機関や、超大国のバックアップを受けた組織ならおそらく可能だろう。

 レオを狙い撃ちにしてきた事を考えると、女尊男卑思想主義者の線もあり得る。何せ過激派など『いくらでもいる』。使い捨てられる人間も多い。

 あるいは――と千冬は考え、その可能性は低いかと思い直した。

 

(アイツなら、もっと派手な方法でシキシマを殺そうとするだろうしな)

 

 夜は、まだ明けない。

 

 ※※※※※

 

 事故があろうと授業は止まらない。

 演習場に被害が出なかったこともあり、ISの実機訓練ももう再開されている。まぁ私のシュライクは当分の間修理なんだけどね!

 

「はぁ……」

 

 ため息も出るというものだ。もう5月も目前のこの時期、日差しはそこまで強くなく、北へ引っ込む寸前の寒気が送り込んできた少し冷たい風と相まってまさに絶好のピクニック日和。おまけにこの時期に飛んでくる黄砂も今日は大したことないレベル。

 こんな日こそ飛びたい! また自由に空を飛び回りたい!

 

 でもそれはできない相談だ。あの事故で装着予定だった飛行ユニットは爆発四散、機体も重度のダメージを受けて現在修復中。かろうじて部分展開ができるくらいなのだ。

 

 そんな訳で色々と制約のかかってしまった私だけれど、ただ授業を見学するだけなのももったいない。せめて今できることをやろうと、展開の時間を短縮するべく、ひたすら展開と収納を繰り返していた。

 

 ――コール、ネイルガン

 ――リリース

 ――コール、索敵センサー

 ――リリース

 

「レオレオは部分展開の練習かな~? 精が出ますねぇ~」

「のほほんさん」

 

 近づいてきたのはクラスメートの一人、布仏(のほとけ) 本音さん、通称のほほんさんである。この授業はISの実機訓練のはずなんだが、なぜか着ぐるみで、しかも織斑先生から何も言われない。いや本当になぜ……?

 

「今日も着ぐるみなんだ……」

「ぬっふっふ~、これがわたしのISスーツなのだ~

 それとも~、レオレオは私のカラダが見たいのかな~?」

「違う、そうじゃない」

「♪ふふんふふん、ふふん、ふふふふ~ん」

「待って、今どこからサングラス取り出したの?」

 

 まさかISのパススロットに登録してるの? うそでしょ……?

 

「セッシーが気になってるみたいだから冗談はこの辺にしまして~」

「えっ」

 

 思わず辺りを見渡してしまうが、セシリアさんの姿も、ブルー・ティアーズの機影もない。

 

「見ちゃうよね~」

 

 どうやらまたからかわれたみたいだ。からかい上手ののほほんさん……アリだな。

 

「レオレオの機体って色々と不思議だよね~」

「えぇ、何でも資源採掘用の機体の試作機みたいで。昨日ようやく飛べたと思ったんですがねぇ……」

「命が無事で良かったよ、アレ死んじゃっても不思議じゃなかったんだからね?」

「えぇ、全くです、よ」

 

 待て。昨日の事故の詳細は教職員の他には現場にいた織斑やセシリアさんなどごく一部にしか開示されていない。

 なぜそれを彼女が知っている?

 

 そこまで考えが及んで、背筋が一気に凍り付いた。

 彼女から少しでも遠ざかろうと足に力を篭め――

 

「布仏、からかうのも大概にしろ。シキシマ、布仏は味方だ」

「ビックリさせてごめんねぇ~」

 

 いつの間にかそばにいた織斑先生が私を抑えたのであった。

 

「あはは、ごめんね~」

「心臓に悪いんで勘弁してください……

 ですが織斑先生、彼女が味方とは一体どういう事でしょうか?」

「詳細は言えない。これはお前を守るためでもある。

 ……先ほど過激派から学園あてに脅迫文が届いてな。犯人の捕縛までの間だが、学園の外への外出は控えろ」

「……脅迫? 私に?」

「レオレオは世界で2人しかいないISを動かせる男の人だからね~、おバカさんの中にはレオレオの事が邪魔だって思う人もいるんだよ」

「私の家族は!?」

「既に日本政府にも連絡し、対策を行ってある。守りを固め、同時に送り主の特定も進めている。おそらく2~3日で捕まるだろう」

「そう、ですか……」

 

 一気に力が抜けた。思わずその場に座り込んでしまう。

 

「しかし……」

「? どうしたの?」

「あぁいえ、布仏さんって何者なんだろうと思いましてね」

 

 失礼ながら、布仏さんが生身での戦闘ができるようにはとても見えない。もしかしてISでの戦闘に長けているとかそういう感じなのだろうか。

 

「ふふふ、乙女には秘密が多いのだ~」

「……まぁ、聞かないでおきますよ」

 

 にっこり微笑む布仏さんは何も言わないが、それが却って恐ろしくもあった。

 

「そういえば織斑先生、質問があるのですが」

「何だ」

「IS学園ってそこまで安全なんでしょうか? いくら海の上にあるとはいえ、軍事基地みたいにガチガチに守られているようには見えなくて……」

「……そもそも各国の代表候補生や私を含む先生方がいる時点で、そこらの軍事基地以上の防衛戦力があるぞ」

「……あっ」

 

 そういやそうか。馬鹿な事聞いてしまった。

 

「すみません、なんでもないです」

「他に何もなければ私はもう行くぞ」

「はい、お時間を取らせました」

 

 そうして織斑先生は去っていき、私は何故か布仏さんに見つめられながら、部分展開の練習を再開したのだった。

 

 ※※※※※

 

 社会人になって心から思ったのは、学生でいられる時間のなんと短い事か、という事である。

 世の社会人の皆さんの結構な割合から同意してもらえると思うけれど、学生、というか子どもでいられる時間はあまりにも短い。まして私は学力がアレだった上に奨学金という名の借金を背負いたくなかったのもあって高校を卒業すると同時に就職したのもあって、なおの事である。

 まだ学生の皆さん、どうか後悔のないよう毎日を過ごしてほしい。他の人に迷惑がかからない範囲ならバカやって失敗したって構わないと思う。

 だから、そう――

 

「最ッッッ低! 女の子との約束も覚えてないとか、男の風上にもおけないヤツ!! 犬に噛まれて死ね!!!」

 

 涙目の鳳さんにビンタされた上で面罵される織斑も、それを為した鳳さんも、いつか笑って話せる日が来ると思うんだ。

 

 それはそうとして織斑貴様今度は何した。

 

 ※※※※※

 

「はぁぁぁ~~……」

「い、いや、何もそんな大きなため息つかんでも」

「ため息は嫌かそうか、なら言葉で言ってやろう

 こんの鈍感野郎! 唐変木!! 後でラノベ貸してやるから読め!!!」

「えぇ……」

 

 被告人の証言によると、数年間一緒に過ごした異性の友達(被告人視点)が彼女の母国に帰る前に「毎日酢豚を作ってあげる」と約束されたため、約束の履行を求めただけである。よって無罪。との事らしい。

 

 異議あり!!

 

 いやマジでそうはならんやろ。『毎日味噌汁を作る』っていうプロポーズをご存じない? 中学時代は家計の助けになるためバイト三昧でエンタメなんて見てる余裕無かった? そっかぁ……

 

「織斑さんや、友達として、あと同性としてアドバイスしておこう

 お前はもっと自分のスペックの高さを自覚した方が良い。男の私から見ても織斑はイケメンだし、筋肉だって程よく付いてて背丈も高い。挙句に家事も得意ってなんなんだよ。さてはオメースパダリだな?」

「スパダリ?」

「スーパーダーリン、少女漫画かってくらいのハイスペックマンの事」

「俺が? いやいやいや」

「はーいクラスのみなさーん! 織斑がスパダリだって思う人~!!」

 

 クラスにいた女子のほぼ全員から手が上がる。ほれ見ろ。

 

「とまぁこんな感じで、お前が思っているより、お前を好意的に見ている人は多いんだよ」

「うーん……」

「何も『俺ってイケメンだからさ!』とか思う必要はないさ。自分の事をもう少し好意的に見てもいいってだけだよ」

「そっか……そうかもな」

「よし、分かったなら次は勉強な」

「え?」

 

 本当なら当事者に事情を説明してもらうのが一番早いのかもしれないけれど、流石にそこまで非人道的なことはできない。「君の好きな人は君の告白の意味が分からなかったみたいだから説明してあげてね」とか物語の悪役ですら『人の心とかないんか?』って言うだろう。

 という訳で、私はまず目の前の朴念神(誤字にあらず)に鈍感の罪深さを教えるべく、自分のコレクションを思い返すのだった。




車長、織斑の奴自分がモテないと思っているみたいですよ。
ならば教育してやろう。


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