せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

17 / 85

今さらだけど、広いアリーナ全体を覆うようにISのシールドを貼るって相当なエネルギーが必要なんじゃ……

原作で語られてたら申し訳ないけど、そのエネルギー源ってどうなってるんだろ。


1巻の山場だけど主人公の機体修理中なんですよねぇ

 誰かが頑張る姿に胸を打たれる。それは多くの人が一度は経験する事だろう。

 世界大会で奮闘するアスリートに興奮し、運動会で走る我が子に声を上げ、絶望的と言われたケガから復帰した競走馬の走りに涙する。それぞれの体験は幅広いものがあるだろうが、その本質は変わらない。

 

 

 宇宙開発という願いをもって生みだされたISは、しかしその圧倒的な性能から各国の戦略兵器になり、どす黒い思惑が幾重にも絡んだ結果今はスポーツに落ち着いている。

 故にこのIS学園にも、試合を行うためのアリーナが存在していた。

 

 

 

 ※※※※※

 

 

 

 ISによるバトルやレースが行えるよう設計されたこのアリーナには普通じゃ見られないような設備がてんこ盛りだ。

 

 

 例えば試合中、銃弾や爆発物にレーザー、最悪の場合機体そのものが吹っ飛ばされることもある。そうした流れ弾が観客席に飛び込んだら大惨事間違いなしのため、コートと観客席の間には強力なシールドが張られており、並大抵の攻撃じゃあ小さな穴も開けられない。

 

 

 ISバトルに出るパイロットはもちろん、そのエンジニアたちも各国の重要な人材だ。そして試合の観戦となると国のお偉いさんが来ることだって珍しくない。そんな国の重要人物たちが一度に集まる場所、テロリストにとっては涎が出るような獲物だ。故に防犯対策も完備。襲撃を受けても籠城できるように全ての出入り口には分厚い鋼鉄製のシャッターがあり、有事の際はこれが作動し外部からの侵入を防ぐ。災害時の避難場所でもあるため非常食の備蓄も充分だ。

 

 

 

 他にも色々とあるのだがここでは割愛する。これだけの設備があるから、観客は安心して観戦を楽しめるのだ。

 

 

 ――のだったのだが。

 

 

 

「外から入れないなら、当然中から外へも出られないんだよなぁ……」

 

 

 

 赤い非常灯が点灯したアリーナの廊下、閉じ込められた多くの生徒と共に私は身動きが取れないでいた。

 

 

 ※※※※※

 

 

 

 ――場面は20分ほど遡る。

 

 

 

 アリーナの中央、織斑と鳳さんが向かい合う。何か話し合っているらしいが、中身までは分からない。

 

 そしてやって来る試合開始時刻。さぁ、カウントダウンだ。

 

 3、実況の放送委員が声を張り上げる。

 

 2、極限にまで高まる緊張に会場から音が消える。

 

 1、 両者が身構えて――

 

 0と同時にそれぞれの獲物がぶつかる衝撃音が響いた。

 

 初手と取ったのは鳳さんだ。彼女は敢えて近接武器を選択し、織斑に斬りかかる。遠くからでも彼女の機体が相当のスピードで突っ込んだのが見えた。斬りかかられた織斑からしたら、いきなり目の前に鳳さんが出現したように見えたかもしれない。

 IS込みの鳳さんの身長よりもまだ長い彼女の獲物をバトンのように軽々と振り回し織斑を攻めたてる。

 

 

 対する織斑はというと、冷静に彼女の攻撃をさばいていた。青龍刀とでもいうべきだろうか、重量級の武器の一撃は、中途半端なガードでは効果が無いだろう。

驚くべきことに、彼女の攻撃を見切っている。まともに受けるのではなく、流すように逸らす。闘牛とマタドールの関係がふと頭に浮かんだ。

 

 

 近接戦ではラチが明かないと見たのか、鳳さんは少し距離を取り、――彼女がどこか嬉しそうに見えるのは私の気のせいだろうか――彼女の機体『甲龍』の肩パーツが展開して。

 

 銃砲の類とはまた違う、でも重い音と共に織斑の機体が吹き飛ばされた。

 

 

「!? なんだ今の、攻撃なのか?」

 

 

 銃火器の攻撃? いや違う。発砲炎も、第一に武装を展開した様子すら無かった。

 何かしらの罠? それもない。ISを吹き飛ばすような威力となると相応の爆発とかだろうが、今の攻撃では『何も起きていない』。爆発も何もなしにいきなり織斑が吹き飛んだ。

 なら何だ、今のは。

 

 混乱する私だったが、その答えは隣のセシリアさんが教えてくれた。

 

 

「アレは『衝撃砲』ですわね」

「知っているんですかセシリアさん」

 

 

 セシリアさんは鳳さんから目を離すことなく、私にいろいろと教えてくれた。

 鳳さんの武装は『龍咆』、中国製の第3世代機だ。

 その攻撃方法は空間そのものに圧力を加え、押し固められた大気を砲弾として射出する――

 

 

「砲身も砲弾も目に見えない空気砲。かなり厄介ですわ……」

「嘘でしょ……」

 

 

 ISって大概チートだとは思っていたけれど、流石にそれはあんまりだと思うの。

 ていうか織斑がマズい。昨日までの訓練はあくまでも『相手の銃口の先にいなければ攻撃は当たらない』という理論の下にやった訓練だ。そもそも銃口がどこを向いているのか分からないんじゃタコ殴りにされてしまう。

 

 

「一夏……」

 

 

 近くの篠ノ之さんも心配そうだ。そりゃそうだろう、想いを寄せる相手が超兵器になぶられる様子なんて好んで見るようなものじゃない。

 

 けれど。

 

 

「大丈夫ですよ。射撃の回避はこっちでみっちり仕込みましたし、織斑の剣は篠ノ之さんが見たんでしょう? そう簡単に織斑がやられる筈がありません」

「あ、あぁ。そうだな!」

 

 

 その証拠にほら、織斑はもう見切り始めてる。

 

 

 ※※※※※

 

 

 レオ考案の回避訓練の中で俺はいくつか気が付いた事がある。

 セントリーガンの射撃はメチャクチャ正確だ。でも、『俺がいる場所』に銃弾を撃ち込んでくるから、ランダムに回避し続ければそこまで怖いものじゃない。

 本当に怖いのはオルコットさんみたいな上手い人の射撃だ。『俺が避けるであろう場所』に正確に攻撃してくるし、絶好のチャンスも頭を使って邪魔される。

 でも、人間だからこその弱点もある。『相手を見なけりゃ当てられない』って事だ。

 砲身も砲弾も見えない大砲、確かにおっかないが――

 

 

「撃つ時は絶対に俺を見る!」

 

 

 来る、と思って右に跳んだ瞬間、一瞬前まで俺がいた空間を何かが通り過ぎていく。襲い来る風の壁。

この感じには覚えがある。アレだ、駅で特急列車が通り過ぎていく時の風圧に似ているんだ。

 

 

(って事は見えない攻撃の正体は空気砲みたいなもんか!)

「この『龍咆』の正体をもう見破ったんだ、やるわね一夏」

「不利には変わりないけどな。

 けど鈴、ここからは本気でいくぜ」

 

 

 箒と千冬姉にしごいてもらったおかげで急加速、急停止の近接戦闘機動はなんとかモノになった。

 レオとオルコットさんのおかげで射手の挙動からある程度弾道が読めるようになった。

 

 みんなにこれだけ協力してもらったんだ、絶対に負けられるか!

 

 

「っ、あ、当たり前でしょ。

 てかアンタ、今まで本気じゃなかったってワケ?」

「少しばかり腰が引けてたかもな。でももう大丈夫だ」

 

 

 話はここまで。そう示すために俺は雪片を再度構え直した。鈴も青龍刀を一振りして身構える。

 こっちがいくら本気になろうとも、機体特性はどうしようもない。『白式』の武装は雪片一本で、でも俺にはこの数日で身に着けた新しい武器がある。

 

 

(距離があるから空気砲で削られるんだ。なら鈴が反応するより速く距離を詰めて斬る!)

 

 

 普通ならまず無理だ。でも『瞬時加速』を使えば話は変わる。

アリーナはISで戦うには狭い、100メートルもない距離でなら文字通りあっという間に距離を殺せる!

 

 

(何使ってくるか分かんないけど、一夏の武器は『あの』千冬さんが使っていた物と同じ。ならどうにかして距離を詰めに来る。だったら!)

 

 

 俺が動くと同時に鈴の攻撃が襲い掛かってくる。弾も何も見えないのに、何故か直撃コースだと分かってしまった。

 

 

(ヤバい、これは当たる――)

 

 

 この戦闘が始まってからずっと、俺は高揚とか緊張でメチャクチャな精神状態で、考えるのと行動するのが同時くらいだった。

 でも、後から思えばその瞬間、俺は考えるより先に身体が最適解を出していた。

 

 

(バレルロール!? あんな地面スレスレでなんて無茶すんのよ!)

(抜けた! 行ける!!)

 

 

 そして俺は雪片を振りかぶって――

 

 

 ※※※※※

 

 

 ぞわり、と。

 織斑の機動に全身の毛が逆立った。

 なんだ、あれは。

 

 機体制御をミリ単位間違えれば地面に叩きつけられるであろう狂気のバレルロールもそうだが、その前後の突撃の姿勢も『イカれてる』。

 

 ISに限った話ではないが、人の形をしたものがスピードを出そうとするなら、前に傾いた姿勢になるしかない。その方が空気抵抗を減らせるからだ。

 

 今の織斑の姿勢は前傾どころの騒ぎじゃない、もはや地面と水平に飛んでいる。剣先が地面に擦れそうなほどの超低空でだ。

 

 

「噓だろ……織斑アイツ、本当にちょっと前まで素人だったのかよ?」

 

 

 独り言が漏れてしまうがどうか許してほしい。今の彼はそれほどまでキレにキレた動きをしているのだ。

 そして悟る。これは決まったと。

 

 ロボゲーに限らず、近接攻撃をする時、攻撃モーションに入ったと同時くらいに『これは当たるな』と確信する瞬間がある。相手の硬直時間とか、着地の瞬間とか、こちらの攻撃が確実に入るタイミング。

 その感覚があった。あと1秒後には攻撃が当たり、3秒後くらいにはゲームセットのアナウンスが流れる。そう確信していた。

 

 だから、轟音と共にアリーナの天井をぶち破って落ちてきた『それ』に対し、私は全く反応できなかった。




ゴーレム「ごめん、待った?」

お気に入り登録、評価、感想をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。