せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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この土日で驚くほどお気に入り登録や評価、そしてUAが伸びてビビり散らかしました。

取り敢えず第1巻はこの回で終わりです。


俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ!

 走る、走る、走る。

 

 赤色灯の灯った廊下を、今の自分に出せる最速で駆けていく。

 

 今の私に戦うチカラはない。機体をちゃんと展開することもできないし、反動を受けきれないから銃もロクに撃てやしない。

 でも、反動とかを気にしなくていい武装なら、扱える。

 

 

「織斑ァ!」

 

 

 ピットに飛び込むと、ちょうどセシリアさん、鳳さんが2人がかりで織斑を運び込んできたところだった。

 

 

「織斑の様子はこちらでもモニタリングしている。後はこちらに任せろ。

 シキシマ、ひとまず織斑の機体を最低限修復しろ。絶対防御が抜かれなかったのが不思議なくらいの損傷だ、これ以上の損傷は搭乗者に危険が及ぶ」

「分かりました」

 

 

 機体を部分展開した手に持ったリペアユニットのコントローラーを操作し、修復ユニットを織斑の元へ飛ばす。

 その時になって、私は織斑の状態をよく見ることになった。

 

 端的に言って、酷い有り様だった。

 

 彼の機体の特徴は、何といってもその『白さ』だ。眩しいほどの白さは、織斑自身の純粋さや曲がった事が嫌いな性格も相まって、刀のような、あるいは騎士の鎧のような印象を受ける。

 そんな彼の『白式』は、大気圏に突入したのかと思うようなダメージを受けていた。傷ついていない場所の方が少なく、まともにビームを浴びたであろう部分に至っては少し変形している。もしかして1回熔けて冷え固まったのだろうか?

 

 機体のあちこちからスパークがあがり、若干ながら煙も出ている。織斑先生の言った通り、よくぞこれだけのダメージを受けてなお機体が持ったものだ。

 

 メーカーや整備部の人が見たら顔をしかめるどころか青くなるであろう損傷。修理費用なんて目玉が飛び出てどこかに飛んでいくレベルの額になるかもしれない。

 

 

 でも、私がいれば話は変わる。SPの残量にもよるけれど。

 配線を修復。スパークは収まるが、発火した部分は直しきれないので鎮火させるだけ。申し訳ないが熔けて固まった装甲板とかは機体の動きを阻害しない程度しか直せない。

 

 SPが少し余ったので、センサーで一通り『白式』を観察し、特に大きな損傷箇所を直す。とは言っても損傷レベルが5段階あるとして、一番酷い『5』の損傷を『4』にするくらいしか今の私にはできない。

 

 SPの残量が空になった。これでしばらくの間、私はリペアユニットを使えない。うーん、不甲斐ないなぁ……

 

 

「織斑先生、申し訳ありませんが今はこれが限界です」

「いや、十分だ。気にするな」

「ですが……!」

「いいかシキシマ。私の知る限り回復系の武装や能力を持つ機体はお前だけだ。今この場で最も戦力になったのは、お前だ。

 お前がいたからこそ織斑は望み得る最上の状態で医療施設に繋ぐことができる。

 誇れとまでは言わんが、俯くな」

「……はいっ!」

「どうやら3年連中が上手くやったようだ。システムのロックが解除され脱出が可能になった。シキシマ、クラスの連中を率いて戻れ。今日はゆっくり休め」

「わかりました」

 

 

 思う所は山ほどある。力不足も、友だちがピンチの時に傍にいられないもどかしさも味わった。

 でも、俯かない。止まらない。

 駆け出すのは難しいけれど、前を向いて歩くくらいはできる。

 

 

 

 ※※※※※

 

 

 

「ISの修復とかもの凄い事言ってる自覚あるのかしらアイツ……」

「あの技術だけでも各国が欲しがると思うのですが……」

「2人とも、分かっているとは思うが、この件は別命あるまで口外を禁ずる。シキシマの事も含めて、だ」

「「わかりました(わ)」」

「それと、男子2人もそうだが突然の実戦に巻き込まれた訳だ。心身ともに不調を感じたら即座に相談しろ」

「「はい」」

「よし。だが問題はこちらの方だ。既に政府から詳細な報告をよこせと来ている。全く、これだけの事が起きたというのに休ませてももらえん」

 

 

 敢えてため息をついて見せた千冬の仕草に、セシリアも鈴音も笑みを浮かべる。が、それが本来の物からはまだまだ離れている事を千冬は見抜いていた。

 

 

「オルコット、鳳。今回は2人ともよくやった。

 教員の助けもなく、手持ちの戦力は少なく、挙句に連携の経験も少ないとないない尽くしの状況下でよくぞ持ちこたえて見せた。

 これは『世界最強』として言わせてもらうが、お前たちの実力は少なくとも同世代からは頭一つ抜けている。これからも気張れ。

 ……それと、鳳。これは教員ではなく『織斑一夏の姉』として言うが、アイツの朴念仁さは一筋どころか十重二十重だ。私がもっと近くにいてやれれば良かったのかもしれないが、過ぎたことはどうにもならん。女は度胸、くらいの勢いで行け。

 そしてオルコット、シキシマについては私よりもお前の方が対処法を知ってそうだな。……まぁどう青春しようともお前たちの勝手だが、在学中の妊娠は流石に勘弁してくれ」

「ちょっ……千冬さん!」

「……つまり妊娠しなければセーフ?」

「アンタはアンタで何言ってんのよ……え、ガチ?」

「冗談ですわ。ブリティッシュジョーク」

「完全に本気の目だったから説得力ないわよ」

「なんのことやら」

 

 

 固さがとれた2人を見ながら千冬は笑う。笑いながら、正直セシリアは焚きつけ過ぎたかもしれないと、やってしまった感を感じてもいた。

 

 

 その頃シキシマは謎の寒気に襲われていた。

 

 

 

 ※※※※※

 

 

 

 やはり『絶対防御』。『絶対防御』は全てを解決する……!

 

 ISのシールドをワンパンで消し飛ばすビーム砲に満身創痍の状態で正面から突っ込んでいったというのに、保健室に担ぎ込まれた織斑は2時間とかからずに目を覚ました。君本当に人間? それとも織斑家の面々がヤバいのか? いやでも織斑先生が現れるまで世界最強って言われていた世界大会13連覇とかいうやべー人もいるしなぁ……

 

 とか思っていたら織斑の野郎、『絶対防御』のエネルギーも『零落白夜』に回して、ほとんど素の状態で衝撃砲を背中に当てさせ、その勢いで超加速したと聞いて私は宇宙を背負った。何でそれで打撲で済むの……?

 

 そして3人がかりでなんとか仕留めた無人機の映像を見て再度ビックリ。なるほどこれは確かに無人機だからできる機動だ。鳳さんの攻撃に対処しながら死角を突いた織斑の攻撃に神速の反応を見せて全身のスラスターを噴射することでかわす。

 何度見ても『人間の反応速度じゃない』。

 

 一番近いのはアレだ、動画サイトとかに『チーター視点のFPS動画』とかあるだろう。そんな動画に出てくるオートエイムの気持ち悪さに似ているんだ。

 もちろん研鑽を積めばある程度はヒトの領域を超えられるだろう。でもチートを使った時の『吸い付く』エイムは案外見れば分かるものなのだ。

 

 

(わぁ……なんだコイツやってんなぁ。しかも織斑の攻撃がヤバいと判断して鳳さんの衝撃砲はワザと受けたりしてる。めちゃくちゃ賢いAI積んでるかも)

 

 

 でもまぁ、その辺りの分析は織斑先生を筆頭に先生方が血眼でやっているだろう。

 

 

 

 そんなこんなでやってきました保健室前。織斑が目を覚ましたと聞いて、お見舞いにと適当にジュースを見繕ってきたのである。

 ――が、

 

 

「な、なんでもない! ではな!」

 

 

 バンッと勢いよくドアを開けて出てきた篠ノ之さんを見て私はこの後の事を察した。これ絶対鳳さんも来るやつだ。

 

 そうなるとこの後どうしたものか。鳳さんが来る前にササッとお見舞いして出るのも手だが……ん?

 

 ふと、視線を感じて辺りを見渡すと、いた。IS学園広しといえど、あの改造制服とツインテールの組み合わせは鳳さんくらいしかいない。

 

 

「鳳さんも織斑のお見舞い?」

「え、えぇそうよ。シキシマはもう終わったの?」

「私はまだ。もしアレだったら先に入る?」

「順番でいいわよ「ちなみにさっき篠ノ之さんが出てきたよ」……それならお言葉に甘えさせてもらうわ」

「そっか。ならいってらっしゃーい」

 

 

 鳳さんを送り出した私の顔は菩薩になっていたと思う。

 

 

「あら? レオさんも織斑さんのお見舞いですか?」

「セシリアさん。今はちょっと違いますがね。

そういえば、先ほどは見事な狙撃でしたよ」

「まだまだですわ。結局仕留め損なってしまいましたし」

「アレを初見で見抜けって方が無理な話です。少なくとも私はあの状況で最高の一撃だったと思っていますよ」

「……そうですわね。今回の教訓は次に活かすとしましょう」

「その意気です」

「時にレオさんは何故ここで立っていたんですの?」

「……今は鳳さんが入っていまして」

「あぁ……察しましたわ」

 

 

 それは何より。

 

 と、そんな風にしばらく談笑していると、

 

 

「そ、そそそれじゃあお大事にぃぃぃい!!!」

 

 

 とんでもなく挙動不審な鳳さんが飛び出てきた。うーんデジャヴ。

 

 

「鈴さん、どうされたんです?」

「うぅ……セシリアァァ……」

 

 

 半ベソな鳳さんが言うには、何とか織斑も鳳さんと昔交わした『料理が上達したら毎日酢豚を作ってあげる』という約束を思い出したらしいのだが、

 

 

『てっきり毎日味噌汁を~みたいなやつかと思ったけど、いくらなんでも違うしなぁあははは』

『そ、そそうよ! あ、あははははは!』

「何否定しちゃってんのよアタシはああぁぁ!! せっかく『あの』一夏にちゃんと意味が通じてたっていうのに、なんでヘタれちゃうんだろ……

 うぅ……アタシのバカァ……」

 

 

 これは……ご愁傷様ですとしか言えない……

 せっかくの大チャンスをフイにしてしまったと灰になっている鳳さんには悪いが、私は苦笑いが浮かぶのを抑えきれなかった。

 

 ここは『インフィニット・ストラトス』の世界だ。

色々と闇が見えることもあるし、今日やこの前の墜落事故の時みたいに命が危うくなることだってある。

でも、みんなと頑張って、こんな締まらなくて思わず苦笑しちゃうような愛すべきラブコメの日常を守るために、

 

 

 これからも、戦っていこう。

 

 

 

 それはそうと、

 

 

 

 せめて量産機でもなんでもいいから、

 

 

 せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?




勝った!第一部完!


※続きます。

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