せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
さて、原作である物語で主人公である織斑一夏がIS起動後、IS学園に入学するまでに何をしていたのかと聞かれてすぐに答えられる人はいるだろうか。
答えられるというあなたは立派なファンだ。二次創作を書いてもええんやで?
ちなみに私はうろ覚えである。確か電話帳みたいな分厚い操縦マニュアルが送られてきたとか、個人情報保護のためにガチガチに守られるのだったっけか?
ウカツにもISを起動させてしまった私の周囲は当然大騒ぎになった。
日本政府のお偉いさんの名刺を貰える日が来るとはこのリハクの目をもってしても(以下略)
病室の前には銃を持っていないものの明らかにただ者ではない感じのお姉様が2人門番のように立ち、部屋から出ようとすればトイレにもついてきて先に中の安全を確認する。窓から外を見れば中庭や周辺の道路にも似たような感じのお姉さま方がいて周囲に目を光らせている。
どう見ても待機状態のISを持った警護要員ですわ。こんなん息が詰まるに決まってる!(ネットワーク経由での身バレ位置バレを防ぐため携帯やPCも渡されなかった)
かくして私の入院(というより軟禁?)生活は、備え付けのテレビと、頼めば用意してくれる本以外、これといった娯楽もないまま過ぎていったのであった。
ちなみにIS関連の参考書は滅茶苦茶難しかったです。これ、大丈夫かな……
※※※※※
「おぉ……ここがIS学園」
月日は流れて4月。ようやく自分が『田村』ではなく『レオ・シキシマ』であることに違和感が無くなってきた頃、私は東京湾に造られた人工島に立っていた。
そう、今日はいよいよIS学園の入学式――ではなく、入院だの個人情報保護(軟禁)だのの都合で結局できなかった、『実機でのIS起動訓練』を行うためにやって来たのである。
思えば私にはISの適正があるとしか言われていない。適正ランクとかは不明なのである。
(どうしよう、適正があるってだけで待機状態から起動するのに10秒くらいかかりますとかだったら泣くぞ)
あいまいな記憶だが、原作で主人公の姉でIS学園の教師、織斑千冬が熟練のISパイロットはISの展開まで1秒もかからないみたいな事を言っていたような気がする。
これからの不安はあるものの、かつて好きだった物語の当事者に自分がなりつつある、その事実が私の胸を熱くしていた。
――だからこそ。
「え、これ本当にIS?」
「シキシマ君、その場から動かないでください! 織斑先生! 至急第3アリーナに来てください!」
何の変哲もない第2世代IS『打鉄』を起動しようとした自分に起きた事が信じられなかった。
※※※※※
事件発生60分前
「レオ・シキシマ君ですね、初めまして。
私はこのIS学園で教員を勤めています山田と言います」
ソレはあまりに大きく、狂暴であった。
「どっ、どうも。レオ・シキシマです。今月からここでお世話になります」
「?」
失礼とはわかっているが、彼女、山田先生の方をまともに見られなかった。
(コレは、無理だ。どうやっても視線が吸い寄せられるッ!)
男児なら(一部の女性もかもしれないが)この双丘、いや丘どころではない天山から目を離すなど不可能! いくら離そうとしても視線が吸い寄せられるまさにブラックホール!
しかも本人が小柄な事も相まって自然とこちらを見上げる表情になり……あぁ、いけませんお客様、待って、止まれー!(この間0.1秒)
「どうかしましたか?」
「いいえ、何でもありません」
笑顔は良い。使いどころを誤らなければそうそう相手に悪印象を与えることもない上に、目を細める事で視点を誤魔化す事もできる。
「それでは、更衣室に案内しますね」
「分かりました」
この後普通に起動訓練の説明を受けた。
※※※※※
「ではシキシマ君、これが今日君に動かしてもらうIS、打鉄です」
「おぉ、これが……!」
目の前に鎮座する機体、いよいよ本当にISに乗れる。これから乗るんだ!
(あんまり覚えてないとはいえ、好きだった物語の世界にやってきて、しかもそこでロボットに乗れるんだ、ヤバい、興奮する……!!)
「それではここに触って、頭の中で良いのでISを起動する自分をイメージしてみてください」
「はい」
(イメージ、イメージ……
そう言えばアニメのOPで一夏が崖からジャンプしたら何か光って、それでISを起動してたなぁ。あんな感じかな?)
浮かれていたのは間違いない。興奮状態にあったのも事実だ。
それでも、私はその時、確かにISを起動させようとしていたのだ。
「ぇ、うわっ! 何だコレ!?」
※※※※※
第3アリーナにて発生したIS実機訓練中の事故について(報告)
1.4月〇日午前10時30分ごろ、第3アリーナにて実機でのIS起動訓練を実施していた生徒(以降生徒Aと呼称する)が第2世代型IS『打鉄』(ISコアNo○○○)を起動した際に、当該機体の装甲等が突如消失し、その後フルスキン型の装甲等が展開された。(別添資料1 当該機体の画像)
2.指導教官(記録者)の権限で当該機体を緊急停止させようとしたが、当該機体はアクセスを拒否したため、緊急時に備え織斑教諭を含む緊急対応部隊が展開した。(別添資料2 緊急展開部隊名簿)
3.――
5.生徒Aについては現在生徒寮にて待機中である。
※※※※※
こんにちは、私レオ・シキシマ! 何の因果かこのIS世界にやってきた転生者! 私は今――
IS学園の寮で軟禁されてるの(白目)
救いはないのですか……?
おかしい。ここはIS世界で、私が起動しようとしたのは日本製第2世代ISの『打鉄』だったはず。
なのに――
私がISを起動した瞬間、打鉄を構成していた全てが突然光る粒子になって一度消え、かと思ったら物凄い勢いで全く別物の機体が私の脚から構成されていったのだ。
いや、普通に恐怖体験である。トラウマになったらどうしてくれるんだと。
それだけでも大問題なのであるが、私的にはそこで現れた機体の方が問題である。
(いや、アレ間違いなく『シュライク』だったよな?)
『シュライク』。それは私が前世の青春と、社会人になって何年かを捧げたアーケードゲーム、『ボーダーブレイク』に登場する機体1つである。
『ボーダーブレイク』の戦闘については別途語るとして、プレイヤーは複数種類がある『ブラスト・ランナー』と呼ばれるロボットの機体や武装、機体性能を向上させるチップを自分好みに組み合わせ、その上で4つの兵科を選択して戦いに赴く。スピードを重視して前線を抜き、相手の本陣を強襲する軽装甲機体や、逆に鈍重ながらもちょっとやそっとじゃ倒れない重装甲機体で全線を押し上げるスタイル。
『シュライク』は、軽装甲タイプながらもスピードはトップクラスとまでは行かず、ただし制限ありの特殊兵装が使いやすいことから、味方を修復させたり索敵を行う支援兵装として使う人が多い機体だった。
もっとも、初心者向けの機体なので性能はそこそこ良い止まり。仮にシリーズ最上位の『シュライクV』でも普通に上位互換の機体があるという中々に不遇な機体なのである。
しかし私はそんなシュライクが好きだった。上位互換? 確かに良い機体だった。大変お世話にもなった。
しかし始めたての頃、右も左も分からない中で初めてシュライクに乗った時の爽快感が忘れられなかったのだ。ただし本気で戦う時は上位互換の機体を使うが。
問題は、ここが『インフィニット・ストラトス』の世界である事、この1点に尽きる。
シュライクが展開された時、理屈抜きで悟ってしまったのだ。私はおそらくこのコアでしかISを展開できない。実験で起動することはできてもISを身にまとう事はできないだろう。
それはそれで大問題である。ISを展開できない男女はこの世界にいくらでもいるが、『限られた機体しか展開できない男性操縦者』(しかもISですらない)はこの世界に私1人なのだ。ぶっちゃけ『1人目』の織斑一夏の下位互換である。
その上、ボーダーブレイクのロボット、ブラスト・ランナーは、あくまでも陸戦兵器。なんなら基になったのは資源採掘用の機体だ。空だってビュンビュン飛びまわるISと戦って勝てる気がしない。
あれ、コレ私詰んだ……?
現行兵器を鉄クズに変えたISに少し先程度の兵器で挑むってマ?
書き始めてから思ったけど厳しくね?