せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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誤字報告に感謝ですわ!

過去最長なので初投稿です。

ちなみに作者は原作の読み込みが9巻で止まっています。それ以降に描かれていたらしいシャルの家庭のアレコレについては、wikiおよび各種二次創作の知識になっていますので、不確定な部分もあります。

誤っているところがありましたら、ご指摘いただけると幸いです。



※この物語は学園ハイスピードラブコメです。

 シャルル・デュノアさん。本名はシャルロット・デュノアさんか。

 フランスの代表候補生にして欧州を代表するISメーカー・デュノア社の社長の子ども。

 そのルックスと声、性格等々併さった結果、原作キャラの中でも屈指の人気を誇る。というのが彼改め彼女の大体のプロフィールだ。――シャルロッ党員が聞いたら「そんなんじゃ足りねぇ!」と怒られるかもしれないが。

 

 

 確か彼女は当初デュノア社からのスパイとして日本に送り込まれたとか言われていたような記憶がある。目的は織斑の機体データだっけ?

 それでしばらく同部屋で暮らし……織斑の『いつものアレ』で女性であることがバレ、その後はよく覚えていないが、最終的に織斑ガチ恋勢としてヒロインの仲間入りを果たしたんだったよな。

 

 

 よし、回想終わり。グッバイ現実逃避、ハロー現実。

 

 私は目の前で頭を下げる織斑に向き直った。

 

 

 ※※※※※

 

 

 今さらな話だが、私は寮では一人部屋だ。織斑と同部屋じゃない事に原作の『主人公は絶対にヒロインとイチャイチャさせる』という鋼の意思を感じるが、私は私で女子と同部屋だったら絶対に気まずいしそれ以前に仮にも教育機関として問題しかないだろう。やっぱりこの学校おかしいよ。

 

 そんな訳で夜は基本一人である。様々な意味で若さ溢れる10代の男としては色々と好都合だが、今日は違った。

 

 

『レオの部屋行ってもいいか? 大事な話があるんだ』

 

 

 これは、『どっち』だ?

 

 私は織斑に対し、割と切実な疑いをかけている。

 

 もしかして彼は、女性に囲まれる日々のストレスから、衆道に目覚めてしまったのかもしれない。

 

 女性に興味がないわけではないのだろう。先日も更衣室でISスーツの持つエロさについて熱く語り合った仲だ。

 でも、その割には女子の好意を避けてる気がするんだよなぁ。

 

 もし、もしもだ。仮に織斑がソッチの趣味に目覚めてしまい、その意味での『大事な話』をしに来るのなら、私は今すぐにでも防衛ラインを引き、事の次第によっては拳で抵抗することも辞さない。

 

 そんな私の緊張は、続いて送られてきた一文で氷解した。

 

 

『シャルの事で相談したいんだ』

 

 

 ※※※※※

 

 

 『俺だ、入れてくれ』

 

 

 織斑からメッセージが届き、私がドアを開けるとデュノアさんが入ってきた。

 

 

「え、は?」

「悪い、説明は入ってからする」

 

 

 デュノアさんの後ろにいた織斑が周りを確認しながら続いて入ってくる。

 

 

「その座布団に座っておいて、2人とも麦茶でいい?」

「サンキュー」

「ありがとう、いただくね」

 

 

 麦茶を淹れながら、言いようのない違和感に襲われた。

 何だ? 何かがおかしい。でも『それ』が何かがイマイチ掴めない。

 

 部屋の様子? いや、確かに多少整えはしたがおかしな所はない。

 織斑? 違うな、緊張している様子は見られるけれど普通の範囲内だろう。

 

 麦茶の入ったコップをテーブルに置き、話が始まる前に軽く喉を潤す。

 

 飲み物を飲んでいる2人を見て、違和感の正体に気が付いた。

 

 

「あ、デュノアさん女子だってことが織斑にバレたのか」

 

 

 コンマ2秒後、私は織斑とデュノアさんが噴き出したお茶を被る羽目になった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「「すみませんでした……」」

 

 

 数分後、着替えてきた私に織斑とデュノアさんが揃って頭を下げる。私は謝罪を受け入れ、とりあえず本題に入ることにした。――おおかたの予想はつくが。

 

 

「えーと、どうしてシキシマ君はボクが女だってことが分かったの?」

 

 

 さて、それほど難しくはないが第一の関門である。まさか「前世から君のことを知っていました」なんていう訳にはいかないが、彼女の場合色々とポカをしすぎていると思うの。

 

 

「確定的な証拠があったわけじゃないですよ。ただ不自然な点が多すぎました。

 まずデュノアさんの転入当初、織斑や私にIS適正が判明した当初世間は大盛り上がりでした。当然ですよね、女性しか乗れないはずのISに適性を持つ男が2人も現れたんですから。海外メディアも速報を流していましたよ。

 ですがデュノアさん、あなたが転校してくる前後でそういった情報は全く出てこなかった。フランス、またはデュノア社の事情で存在を秘匿するメリットは私の考える限りちょっと浮かびませんでしたね。

 次にデュノアさんの転入後の態度です。

 織斑、お前なら分かると思うけど、この99%女子高で男が自分たちしかいないって、結構ストレスだよな?」

「あぁ、正直結構キツいな」

「私もそうだったよ。春先はまだマシだったかもしれないって、最近思い始めていたけど」

「それな? ここ最近少し暑くなってきたから、みんな薄着になりがちなんだよな……」

「基本女子しかいないから普段なら固めているガードが緩んでるし……」

「「眼福だけど目のやり場に困る」」

 

 

 ハモった直後にハイタッチ。

 

 

「「イエーイ!」」

 

 

 直後、ショットガン特有のポンプアクションの音が響いた。

 いやねぇ凄いのよ、圧が。見なくても「あ、これ怒ってるわ」って分かるレベルのプレッシャーが伝わってくるのよ。

 『錆びた人形のように』ってよく例えとして使われてるけど、あれって本当だったんだね。『デュノアさんの方を向かなければいけない』という使命感と、『嫌だ、何が悲しくておっかない顔した女子の方を見なきゃいけないんだ』という感情がぶつかりあって、『ギギギギ』って擬音がピッタリの動きになるのだ。

 

 

 デュノアさんは、笑顔だった。笑顔で、IS用のショットガンを展開していた。

 

 腕だけ部分展開しているんだけれど、それがまた部屋着とのギャップと相まって恐怖を木和田輝……いや誰だよ木和田 輝って。

 

 

「一夏もシキシマ君も、ボクがここにいるのにいい度胸してるね?」

「「すいませんでした」」

 

 

 私と一夏、迫真の土下座である。女性の前でする話じゃなかったからね、仕方ないね。

しかしデュノアさんもキレたらIS出すタイプだったかぁ……強く生きて織斑。

 

 

 まぁシリアスっぽい話だったのに脱線したのは事実だし、そろそろ本題に入りましょうか。

 

 

「すみませんデュノアさん。大事な話なんですよね」

「っと、そうだよなシャル。悪かった」

「まったくもう……」

 

 

 デュノアさんは謝罪を受け入れてくれて、仕切り直しだ。改めてデュノアさんに感じた違和感を説明する。

 

 

「どうやってもこの学校で男というのは異物です。そしてたいていの場合少数派というのは仲間になりたがります」

「でもシャルは俺たちとよく一緒にいただろ?」

「えぇ。そうですね。

 しかしデュノアさんが話しかける先はほとんど織斑でした。機体の教導についても織斑がメインでしたよね?」

「そ、それはシキシマ君には教えられるような事が無かったから……」

「それは否定できません。私とデュノアさんの共通点は機動を活かした射撃戦ですが、私の射撃の師匠はセシリアさんですしね。

 でも、織斑の場合それすらも無いんですよ。知ってのとおり、織斑の『白式』には射撃用センサーすら積まれていないんですから。

 まぁ全て私の妄想と言われてしまえばそれまでです、推測の域を出ません。しかしデュノアさん、あなたの態度にはこのように小さな違和感が他にもいくつかあったんですよ。それらが積み重なって、違和感は疑惑に変わります」

 

 

 おかしいな、原作の『IS』って学園ハイスピードラブコメだったよね?

 なんで今この空間はミステリーのクライマックスみたいになってるの?

 

 ふと冷静になるとだいぶおかしなことになっているが、今更かと思い棚上げする。IS学園に来てから心の中は棚上げ用の棚でいっぱいだ。

 

 

「ただ、そうなるとおかしな点が出てきます」

「おかしな点? 何かあるのかよ?」

「はい。フランスの代表候補生、そしてデュノアの名前を名乗る人間が、私のような素人にも疑問を抱かせるような雑なスパイ行為やハニートラップをするのか? という点です」

「うっ……」

 

 

 『雑な』という言葉に胸を抑えるデュノアさん。かわいい。だがこのシキシマ、容赦はせん。

 

 

「一般の生徒は分かりませんが、代表候補生クラスにもなればある程度本国に問い合わせたりして察しはついているんじゃないですかね?」

 

 

 ついに彼女は顔を覆ってしまった。カバーしきれていない耳が真っ赤になっているのがよくわかる。

 

 

「だからこそおかしな点もあります。けれど、それはデュノアさんの話を聞いてからでないと判断ができない。

 だから、デュノアさんの話を聞かせてください」

 

 

 そして語られる、デュノアさんから見た事実。彼女の生まれ、母の死、父親に引き取られた彼女を待っていたのは暖かい家庭ではなかった。

 

 必要な知識を詰め込まれた彼女は日本へ。そして、今に至る。

 

 話を聞き、時にメモに書き込み、そして考える。

 いつだったか、違和感というのは見落としている真実による自己主張だという言葉を聞いたことがある。

 

 速成のスパイ教育、取ってつけたようなカバーストーリー、しかし立場は本物で。その専用機は大手メーカーの存続すらかかっていて。

 まるで、『バレる事が前提』のような。

 

 

「……そうか」

 

 

 真実かどうかは分からない。見当違いな思い込みかもしれない。しかし、私には、どうにもそうとしか思えない仮説が組みあがっていた。

 

 

「デュノアさん。あなたはデュノア社社長、アルベール・デュノア氏と血縁上の親子関係にあるのは間違いないんですよね?」

「う、うん。そうだけど」

「あなたがこのIS学園にやってきたのは、アルベール氏、いや、デュノア社長夫妻があなたを日本に逃がすためだった。と聞いたらどう思いますか?」

「Ce n’est pas possible!!」

 

 

 ――反応は激烈だった。思わずフランス語が出てしまったのだろうが、だいたい『ありえない』とかその辺りの意味だろう。

 素直に凄いと思えたのはその直後だった。彼女は大きく深呼吸をすると、それだけで落ち着いてみせたのだった。

 

 

「うん、ありえないよ。あの人たちがボクにどんな仕打ちをしてきたのかはさっきも言ったでしょう?」

「そうですね。デュノアさんの当時の暮らしを想像するにかなり辛かっただろうと思われます。

でもね、それはあなたの主観に過ぎないんですよ」

 

 

 この言葉を告げるとき、私は彼女に殴られる覚悟を決めていた。当然だろう。自分が体験したと思っている地獄を他人に『そんなもの地獄でも何でもない』と言われるに等しい言葉だ。

 しかし彼女はそれでも冷静だった。

 

 

「ボクが何か見落としているかもしれないってこと?」

「えぇ。とは言っても今から説明する話はあくまでも私の妄想に過ぎません。デュノアさんが真実を知りたいのなら、しばらく時間を置いてから、御父上に尋ねるしかありません」

「今すぐって訳にはいかないのか?」

「織斑の指摘はもっともだが、これも私の考えが正解だった場合、そうするとデュノアさんだけじゃなくデュノア社長夫妻の身も危うくなる可能性がある」

「どういうことだよ!?」

「それを今から説明するのさ。

 さて、デュノアさん。長い話になりますが、いいですね?」

「うん。聞かせて」

 

 

 そして私は語り始める。真実に近いかもしれない、妄想のお話を。

 

 

 ※※※※※

 

 

 事の始まりは、デュノアさん――ご家族の話になるのでシャルロットさんと呼びましょう――シャルロットさんが生まれる前の話になります。アルベール社長には妻がいましたが、何らかの事情で子どもを授からなかった。こうしてシャルロットさんがいる以上、社長夫人に何かあったのかもしれませんね。とにかく、欧州屈指のISメーカーの社長です。アルベール氏に掛かる負担は相当なものだったでしょう。しかし彼のしたことは不倫です。彼を糾弾できるのは夫人のみなので今とやかくは言いませんが。

 

 色々と最悪な大人の事情で生まれてきたシャルロットさんですが、それでも彼女は『社長令嬢』になります。この手の法には詳しくないので断言できませんが、おそらくシャルロットさんには今後巨額の相続等が発生する可能性もありますね。

 

 それ以外にも、デュノア社ほどの巨大企業です。内部の権力闘争は相当なものがあると推測できます。そんな中で『社長に隠し子がいた』なんてスキャンダルが発覚したら? シャルロットさんの身の安全も含めてどうなるのかは想像もできません。

 

 社長夫人の精神状態も穏やかでは決してなかったでしょう。シャルロットさんは初対面で罵倒され、平手打ちされたと言っていましたが、逆に社長夫人の立場になってみると『愛した人が自分以外の女性と子どもを作っていて、その上に自分は子どもができない』という状況です。男の私には社長夫人の苦しみは計り知れませんね。

 

 そんな状態にあったシャルロットさんですが、お母様が亡くなられてしまった。それだけならまだフランスで暮らせていたと思います。しかし、――これはかなり推測の部分が多くなりますが――何かがあって、アルベール氏の敵対派閥に彼の不倫の事が知られてしまった、またはかなり危うい状況になってしまった。その状況で、アルベール氏はシャルロットさんを日本に逃がす事を決心したのだと推測します。

シャルロットさん自身の高いIS適正とデュノア社の名前も使ったのかもしれませんが、フランスの代表候補生にした上でデュノア社の専属パイロットにもした。これは相当な賭けだと思いますよ。大企業に求められるのは良いイメージです。それを捨てるリスクを考えてもなお、アルベール氏、いえ、『デュノア社長夫妻』はシャルロットさんを日本に逃がす道を選んだ。男性搭乗者の情報うんぬんは言い訳でしょう。成功すればデュノア社としても儲けものですし、失敗してもフランスの代表候補生をそう簡単に退学にするのは難しい。少なくとも3年、シャルロットさんはこの学園で守られる。

 この3年の間に、アルベール氏は敵対派閥と決着を付けるつもりだったのかもしれませんね。

 

 

 ※※※※※

 

 

「私の話は以上です。何度も言いますがこれは全て私の妄想。真実は社長夫妻に聞くしかありません」

 

 

 語り切った私はコップの麦茶を一息に飲み干した。乾ききっていた喉に、優しい味が嬉しかった。

 ふと、今こうして2人が私の話を聞くことになった原因の1つである、織斑の存在が気になった。

 

 

「そういえば、どうして織斑はシャルロットさんが女性だと気が付いたんだ?」

 

 

 鈍感大将の彼が彼女の正体を見抜いたなんてハナから思っていない。

 

 

「そ、それは!」

「……悪ぃ、言えない」

 

 

 が、2人同時に顔を真っ赤に染めてワタワタしだしては、何があったのか想像はつくというものだ。

 

 

「お風呂か、着替えか。そんなところか……」

 

 

 2人の顔色はさらに赤くなった。




気がつけばUA30,000越えとか驚愕ですわ。

『ボーダーブレイクの機体で空中戦やりてぇ、圧倒的格上のIS相手に頭捻って勝ちに行きてぇ
 あとオリ主とセシリアのイチャイチャが見てぇ』

という作者の趣味全開の拙作がここまで多くの方に読んでもらい、評価、お気に入りされ、数十件もの感想をいただくなんて、書き始めた当初は想像もしていませんでした。

改めて、お付き合いいただいている全ての皆さまに感謝を。
そして、これからもどうぞよろしくお願いします。
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