せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
ペアも決まったところでさて、訓練だ。
あと私の行動がもう学年中に広まってるってどういうことなの……? なんか道行く女子が私の顔を見る度にヒソヒソ話してて怖いんだけど。
あと私がセシリアさんにプロポーズして玉砕したって記事に書きやがった新聞部にはいつかお礼参りする。絶対に。何が『日本のサムライ、英国貴族に玉砕!……か?』だ。文末に?つけて言い逃れの余地を残してるあたり確信犯だろ。
いかんいかん。心の乱れは機動の乱れ。新聞部への報復はまたあとで考えよう。
私は今、強襲兵装のレベリングのため織斑との模擬戦を繰り返していた。
織斑曰く、ボーデヴィッヒさんは『瞬時加速』も使いこなしているらしく、もしも彼女とやりあうなら数々の厄介な武装に加えて『瞬時加速』に対しても警戒しないといけないのだ。
「行くぞ、レオ!」
「攻撃を仕掛ける時に予告する奴がいるか!」
ただでさえ織斑は近接特化機体な都合上、攻撃をする時の動きは直線的にならざるを得ない。例え『瞬時加速』を使っていたとしても、来るのが分かっていればいくらでも対処できるのである。
ポンッ、という圧縮空気が抜ける音が連続して響く。人によっては、この音だけで何が自分に向いているのか把握するだろう。
「直撃させられないなら範囲攻撃するまで!」
「え、ちょちょちょちょ!?」
装備したグレネードランチャーから放たれた榴弾は織斑の進行ルート上に落ち、少しバウンドして炸裂した。
とはいえ『白式』は高機動タイプ。発射した3つの榴弾の内有効打になったのは1つだけだった。
「あっぶねぇ!? いや、食らったか!」
「そうだな。じゃあ織斑、次は野球だぞ」
そして私が投げつけたのは38式手榴弾。虚を突かれた織斑の鼻先でそれは青く輝き――
※※※※※
「だあああぁぁぁ!! また負けた!」
「織斑、前も言ったけどただ速いだけじゃダメなんだよ。『瞬時加速』は絶対じゃない、もっとフェイントを使え。上手い人なら高速移動中の物体にも射撃を当ててくるぞ」
強化機兵(ショットガン持ち)とかな(n敗)。
「そうは言ってもさ、なかなか難しいんだよな。レオはどうやったら『瞬時加速』中の俺に攻撃を当てられるんだよ」
「いや、流石に私の腕じゃ『瞬時加速』中の機体に命中させることはできないよ。だから範囲攻撃に頼るんだ」
「それ、グレネードランチャーか!」
「そう。んでもって、高速移動中にこれの爆風を受けたらどうしてもスピードが落ちるだろう? そしたら後はどうにでもなっちゃうんだ。さっきみたいに手榴弾を直撃させてもいいし、銃に持ち替えて蜂の巣にもできる。
……なぁ織斑。機密で言えないなら忘れてほしいんだが、『瞬時加速』って1回しか使えないものなのか?」
「どういうことだ?」
「いやさ、『瞬時加速』を繰り返し使って、こう、イナズマみたいなジグザグ機動ができれば、相手からしたらかなり厄介なんじゃないかなぁって思ってさ」
「……今は難しいと思う。俺の身体がもたないかもしれない」
「あぁ、そっちの問題もあったか……まぁ、他にも最高までブースターを吹かして、そこからさらに『瞬時加速』するってやり方もあるし、色々試してみよう」
「おう、よろしく頼むぜ」
「こっちこそだよ」
しまったな、機体的にはできても中身が耐えられないのは予想外だった。
え、つまり『瞬時加速』の連続使用は『絶対防御』を抜くほどの負荷がかかるの? どのレベルの負荷か分からないけれど、それで宇宙行く気だったの?
『白式』が宇宙に行ってもロクに動けなさそう。デブリとか小惑星帯とかに入っちゃったら機動で避けてかわせないものを近接武器で斬れとか私がそんな事言われたらIS降りるわ。
やっぱり篠ノ之束はあたおかなのかもしれない。
結局織斑との訓練は、その後模擬戦を何回かやって終わりになった。最初の頃は私が戦術で勝ちを取れていたが、後半になると1度使った手が全く効かなくなり、結局負け越してしまった。なんて成長速度だよ……
「しっかし、レオってどんだけ戦術考えてるんだよ」
その言葉と表情に、どこか納得がいかないような雰囲気を感じた。
「策を練るのは嫌いか?」
「そういう訳じゃないんだけどさ……俺としては、正々堂々勝負したいな。
なんかさ、相手を罠にはめるのって卑怯な気がするし」
「なるほどね。
……織斑さ、今の言葉って相手を舐め腐ってるって気づいてるか?」
「……は!? いや、そんなわけ」
「あるだろ。
いいか、俺が罠を張ったり相手を誘導するのは、機体的にそうしないと勝てないからっていうのももちろんあるけど、相手の実力を認めて、警戒しているから全力で罠にはめるんだ。
相手だって人間だ。一瞬のうちに色んな事を考えてくる。ロクに考えもせず勝てるのは、自分と相手によほどの実力差がある時だけなんだぞ」
「あ……」
「正々堂々戦いたいっていう織斑の気持ちは否定しないさ。でも、イノシシみたいに突っ込んでいって相手を跳ね飛ばして勝てますってのは、いくらなんでも傲慢だろう」
「お、俺、そんなつもりじゃ……」
「分かってる。それに、織斑が本当に相手を舐めてるならとっくに友達辞めてるよ。
……普通なら剣構えて突撃とか蜂の巣にされて終わりなのに、なんでか織斑はできちゃうからなぁ。自分ならやれるって思うのも無理ないのかもな」
「なぁレオ、それって無自覚な傲慢野郎って言ってないか?」
「その通りだよ無自覚傲慢野郎」
「わざわざ言い直した!?」
「それに、今度相手になるかもしれないボーデヴィッヒさんは厄介な武装を持ってる。策も無しに突っ込んでちゃ勝てないぞ」
「AIC、だっけか。慣性を止めるって本当意味わかんないよなぁ」
「それを言ったらISそのものが意味不明だろ」
「それもそうか!」
「「はっはっはっは……はぁ」」
2人揃ってため息も出る。
「レオだったらどうやってアレを攻略するよ」
「タイマンじゃ無理だろ。最低でも2人以上でかかって、爆発物を投げまくる。
前に見た感じ手を向けた方向に作動するっぽいから、身を隠せるくらいの大きな盾で機体を拘束されないようにする、とかかなぁ。
でも彼女プロの軍人だろう? ちょっとやそっとの小細工は見抜かれそうなんだよなぁ……」
「そのお話、わたくしも加わってもよろしくて?」
「えぇもちろん、セシ、リアさん……っていつの間に!?」
「あら、ペアであるわたくしの事を忘れてしまったというのですか?」
「いや、そんな事は」
「今回の織斑さんとの模擬戦だって、わたくしが外から見て問題点を指摘するというお話でしたのに、出てきてからずっと織斑さんとばかり……およよ」
「それウソ泣きですよねぇ!?」
「えぇ、もちろん」
「……すげぇ、あのレオが防戦一方だ」
「そう思うなら助け船くらい出してもいいんじゃない?」
「いや、馬に蹴られたくないし……」
「お前に人の恋心が分かるって事の方が驚きだわ!!」
ポンッと、肩が叩かれる感触。軽いはずのそれに、途方もない圧を感じた。
「織斑さん、レオさんをお借りしてもよろしくて?」
「おう! それじゃあレオ、またな!」
「待って、この状況でおいていかないでぇ!」
私の懇願も空しく、織斑は小走りで去ってしまった。この裏切り者ぉ!
しかし目を逸らす訳にもいかない。セシリアさんは待ってはくれないのだ。
「それでセシリアさん。先ほどの模擬戦についてでしたっけ?」
「えぇ、それと別件で少々」
「別件? 長くなるようなら屋外というのもなんですしどこか入りましょうか?」
「それには及びませんわ。……屋外なら盗聴器の心配もあまりありませんし」
しかめっ面になったのが自分でも分かった。盗聴器の心配とは穏やかな話ではない。
「本題はむしろその『別件』の方ですか」
「えぇ。レオさんにとってあまり愉快な話ではないかもしれません」
「うわ聞きたくないなぁ」
しかめっ面に拍車がかかる私を見てほんの少し和やかな顔をしたセシリアさんは、しかしひと呼吸で表情を切り替えた。
「まずはレオさんにお礼を。わたくしの機体について、本国から招集したメカニックにも診てもらいましたが、特に異常はありませんでした」
「それは良かった……では終わらないんですよね?」
「えぇ。
レオさん。あなたの機体……いえ、あなたは一体何者なのですか?」
いつかは来ると思っていた話題。織斑先生には私の境遇をある程度話しているが、逆に言えば彼女以外は誰一人として私が前世の記憶を持つ、いわゆる転生者であることは知らないのだ。
しかしそれでも私は目立ってしまう。世界で2人しかいない男のIS搭乗者として、そして世界で唯一の『飛べないIS』の搭乗者として。
機体、というか兵器というものは、その見た目からしてもある程度の性能や開発コンセプトが見て取れてしまう。対空砲の花火に突っ込む事も想定されたA-10攻撃機のエンジンが、翼の上にあるように。人員の生存性を第一に考えられたメルカバ戦車のエンジンが、車体の前部に設置されているように。
では、私の機体はどうだろうか。ブラスト・ランナーとインフィニット・ストラトスの見た目は(当然ながら性能も)、全く別の物としか言えないくらいには差がある。
ちょっと詳しい人が見れば、『これはISではない』なんてことはすぐに分かるだろう。
「よほど決定的な証拠が見つかりましたか」
「えぇ。わたくしの機体から、地球上に存在しない鉱物が見つかりましたわ」
「そこからバレたかぁ……」
「レオさんに何かの事情があるのは察していました。
気が付いたのがわたくしだけでしたらわたくし1人が黙っていればそれで済みましたが、国に話が行ってしまった以上、わたくしは英国の者としてふるまうしかありません」
そう言ってセシリアさんが空中に投影したディスプレイには、英文のメッセージが書かれていた。
「これは?」
「本国からの指令ですわ。内容は『レオさんと彼の機体について探る事』」
「……セシリアさんにそのような指令が届いた以上、あの時リペアした鳳さんにも同じような指令が行っていると見た方が良いですよね」
「おそらくは」
「……参ったなぁ。ISなんて物のせいで、私の人生はメチャクチャだ」
「レオさん。あなたさえ良ければ英国に来ませんか?
あなたの家族も含めて、身の安全と自由を保障できます」
私は天を仰いだ。今でなければ喜んで飛びつきたいくらいには魅力的な提案だったから。
「すごく、すごく嬉しい提案です。でも、今はできない」
「理由をお聞きしても?」
「私が弱すぎるから」
「英国がレオさんを脅して言う事をきかせるとでも?」
「国益のためならどんなことでもするのが国だと私は考えています。私ひとりが破滅するのならまだしも、家族も巻き添えになるのは耐えられない」
「そんなことわたくしがさせませんわ!」
「ありがとうございます。でも、ダメなんですよ。
セシリアさんも知っているでしょう? 大人の権力が持つチカラは大きくて粘っこい」
「っ。でもっ!」
「これは推測ですが、セシリアさんに下された指令は私と機体の情報を流すことと、可能であれば私を英国に誘うこと。とかでしょうかね?
私の情報であれば多少流しても大丈夫です」
それでは、と彼女に背を向けた時、後ろから声が聞こえてきた。
「どうしてっ……! どうしてそんなにひとりで……!」
「君と同じだよ」
誰も信じられないから、とは言わずに。私は歩き出した。
実際問題ISワールドでリペア機能はなかなかの爆弾な希ガス