せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
6月の最終週。今週末、いよいよ学年別トーナメントが開催される。
結局のところ、対ボーデヴィッヒさん用に必要だと思っていたフレアグレネードはまだ手に入っていない。
私の知る限り近接に強い織斑と篠ノ之さんに相手をしてもらっているが、いくつかの武装が解禁されたにも関わらず本命のフレアグレネードがなかなか来ないのだ。
では、その解禁された武装を見ていこう。
・主武器
M90Cサブマシンガン
M90から銃身を延長し、精度を向上させたモデル。銃弾1発あたりの威力は若干落ちたが、マガジンの装弾数が増えたため、マガジンあたりの火力は上昇している。が、連射速度はM90と変わらないため、瞬間火力で撃ち負けることも。
ヴォルペ突撃銃C
ヴォルペ突撃銃の銃身を短くし、マガジンにも手を加えたカスタムモデル。銃弾1発あたりの威力はやはり落ちているが、連射速度と集弾性能が向上している。特に水平方向の反動は全武器の中でもトップクラスの小ささであるため、使い手によっては恐ろしい威力を発揮する。
STAR-05←NEW
Single Trigger Assault Rifleの頭文字からとられたと言われる、単射式、単発効果力、抑え目の連射速度とエイムに自信のあるプレイヤー向けの武器。接近戦でコイツを頭に受けようものならゴリゴリ体力を持っていかれる。
・副武器
40型軽量手榴弾
38型よりもダメージが減少しているが、遠くまで飛ばせる上に障害物に当たった際よく跳ねる。トリッキーなプレイをするなら選んでみるのも良いかもしれない。
39型クラッカー←NEW
着発式の信管を搭載しているため、何かにぶつかった瞬間に爆発する手榴弾。
まともに食らえばダウンしてしまうくらいには威力はある。着発式のため、自爆にも注意が必要な一品。
多装グレネードランチャー
ノーマルのグレネードランチャーと比べて、1発の威力が下がっている。単発式で、装弾数は増えている。また爆発半径も増えているため、広範囲を制圧した場合はおススメ。
・補助装備
マーシャルソード
デュエルソードの上位武器。重量は2倍近く増したが通常攻撃が連続攻撃になり、また更なる上位武器であるSW―ディアダウナー等と比較して攻撃後の硬直も小さいことからこの武器をチョイスするプレイヤーも多かった。愛称は『マ剣』
リヒトメッサー←NEW
一言で表すなら刀である。威力はかなり低いがその分軽い。
・特殊装備
AC―マルチウェイ
初期のアサルトチャージャーと比較してスピードは劣るものの持続時間が延び、また全方向に移動できるようになったモデル。爆発的に前に突っ込む、という機動は微妙になったが、その分高速で動き回って相手をかく乱するのには向いている。
強襲兵装中心で戦っていたからか随分と新しい武器が増えた。個人的にはヴォルペ突撃銃Cやマーシャルソード、クラッカーに、特にAC―マルチウェイが来てくれたのは本当に助かる。
ペアを組んでいるセシリアさんだが、まだ機体が戻ってきていない。そのため管制室から私の動きを評価してくれている。当然ながら裏の目的もあるのだろうけれど、そもそもこの学園では私や織斑は一挙手一投足が見られるのだ。今更気になるようなことではない。
気にはならないのだが、先日のセシリアさんとの会話以降、どうにも彼女とギクシャクしてしまっている。普通の会話や訓練時の講評とかはするのだが、それが長続きしない。
私としても、『あなたを監視して情報を本国に送っています』なんて面と向かって言われるなんて経験は流石に初めてで、どんな顔して彼女と向き合えば良いのか分からないのだ。
一言で言って、気まずい。
今の私たちの関係を表すと、その言葉に集約されていた。
「なぁシキシマ、いらぬ世話ならすまないのだが、セシリアと何かあったのか?」
訓練後、とうとう篠ノ之さんにまで心配されてしまった。
「すみませんが、ちょっと言えない事なんです」
「機密に関する話か? だったら聞いたこちらも無遠慮だったな、すまない」
「……篠ノ之さんは、篠ノ之束博士の事で随分と苦労されたと聞いています」
「……事実だ」
「すみませんね、気遣っていただいたというのにこのような話をしてしまって」
「いや、いい。しかし、姉さんの話と今回の話と、どうつながるのかが見えてこないのだが?」
「私も、力が欲しいんですよ。国家規模の相手だろうと、言いなりにはならないような、そんな力が」
「姉さんや織斑先生のようになりたいと?」
「いえ、私のような凡人にはあそこまでの高みにはたどり着けません。ですが、篠ノ之さんであればあの2人の強さの一端でも知っているかもしれないと思いまして」
「そういう事なら力にはなれないな。妹の私でも、姉さんについては意味が分からないとしか言えないんだ。
知っているかシキシマ。姉さんがISの理論を発表したのは高校生の時なんだぞ。今の私たちとそう変わらない年齢で世界を変える力を持っていたんだ。
何というか、その、生き物としての格が違うんだ」
「生き物としての、格」
「織斑先生にしても同じだ。『世界最強』の称号は伊達ではない。第一、近接武装のみでモンド・グロッソを制している時点でおかしいだろう」
「確かに。ではなぜ、篠ノ之さんは力を求めるんですか?」
「それは……置いていかれたくないから、かもしれないな」
「織斑に?」
敢えて図星を突く言葉を放ったが、篠ノ之さんは起こるでもなくむしろ暗い顔をした。
「あぁ。そうだ。
一夏と私が幼馴染なのは知っているな?」
「えぇ」
「一夏も小学生の頃までは私の家の道場で剣を学んでいた。子どもながらかなりの腕だった。
しかし奴は中学の間はロクに素振りもしなかったという。家の事情があったのは今では分かっている。しかし3年ものブランクは普通だったら致命的な差になる筈なのだ……」
そこで私は思い出す。入学当初、私もそうだが、織斑は輪をかけてISに関する知識に疎かった。参考書を間違えて捨てたりと散々だった座学も、この2か月あまりで少しずつ向上している。
戦闘に関して言えばもっとだ。正直、今の私では相手にもならなくなりつつある。まともに織斑とやりあえば、あっという間に切り捨てられるだろう。
「一夏は、あっという間に強くなりつつある。では、私はどうだ?
鳳のように専用機を持つ訳でもない。IS適正だって、この学園にならいくらでもいるランクだ。
このままでは、いつまでたっても一夏に追いつけない……!」
それは、叫びだった。
「それが、篠ノ之さんの理由なんですね」
「……あぁ。みっともないが、これが私の理由なんだ」
「私も似たようなもんですよ。
篠ノ之さんも知ってのとおり、私の機体は飛べません。多少卑怯な手を使わないと勝負にもならないのが現状です。
そんな私が、国家規模に影響を及ぼす『何か』を握ってしまったらどうなると思います?
良くて幽閉、最悪の場合家族ごと消されるでしょう。そんな最期、誰だってゴメンです。
でも、私だって1人の人間なんだ。自分の人生を生きたいって思うのは自然でしょう?
だから、私は力を望みます。誰にも縛られないとまでは言いませんが、せめて火の粉を払うくらいはできるようにならなければいけません」
「ならば、お互い苦労するな?」
「あの朴念神が相手になる篠ノ之さんに比べればまだマシですよ」
「……あながち間違いとも言い切れないのが納得いかない」
ふと、篠ノ之さんと目が合い、思わず笑ってしまう。
「では、力が欲しい者同士、とりあえず今週末に向けて頑張るとしましょうか」
「あぁ。よろしく頼む」
※※※※※
2人の会話は、近くにいたセシリアにも聞こえていた。
元々はレオを呼びに来ただけの彼女であったが、つい聞いてしまっていたのである。
「自分の人生を生きる……」
レオの言葉が頭から離れない。
「では、それが最初から存在しない者は、どうすれば良いのでしょう……?」
その問いの答えは、誰にも分からない。
※※※※※
『レオさん、右に移動してください!』
「了解!」
私が右方面に急旋回したコンマ数秒後、さっきまで私がいた場所をビームが走り抜けていく。
『対空射撃! 目標3!』
「ッ!」
言葉を認識すると同時に空を見上げる。ぱっと見だが、地上50メートルくらいの場所に不規則な動きをするターゲットドローンが飛んでいた。
手にした突撃銃を撃つ。3点バーストで放たれた銃弾は目標目がけて飛んでいき、何発かが有効打になったのかドローンは爆散した。
『訓練終了。お疲れ様です、レオさん』
「セシリアさんもお疲れ様でした」
学年別トーナメントまであと4日。予定日よりも1日早くセシリアさんの機体が返ってきたため、私たちは早速連携の訓練を行っていた。
連携といっても私とセシリアさんの機体にはかなり大きな開きがある。なので、数に差がない場合の集団戦のセオリーである『弱い方から倒す』の通りに私を潰す事を相手が狙っている場合の対処に絞って、私はひたすら逃げるか耐えるかして、可能であれば反撃する。セシリアさんは私を狙う相手を撃ち抜く。という戦術に限定した。第一、4日で一緒に戦えるまでに連携を強化しろって方が無茶だ。相手がセシリアさんを優先的に狙ってくる場合は、彼女には私のフィールドである地表付近で戦ってもらう事になる。
『レオさん、もう少し反応速度を上げられますか? 実戦ではもっと簡潔な指示しか出せない事も考えられますし』
「なるほど。やってみますね」
セシリアさんとの訓練は今の所順調だ。
順調なのだが……
「セシリアさん、よければこの後夕食でも」
「申し訳ありませんが、本国に提出するレポートがありまして……」
「……それは急ぎですね、頑張ってください」
「ありがとうございます。それではごきげんよう」
訓練が終わった後、彼女はすぐに自室に引き上げてしまうのだ。
私とて先日の一件があったばかりなので気まずいのだが、それとこれとは別問題、ペアとの仲を深めるのは割と重要なのである。
しかし彼女の言う理由もなかなかに急ぎのものだったり重要なものも多い。無理に引き止めるなんてできない。
(あれ、これもしかして私、セシリアさんに避けられてる……?)
その可能性に思い当たった私はムンクの『叫び』みたいな顔になったと思う。
オタクが推しに避けられるって控えめに言っても死ねって意味じゃないか。
「は、はは……そうか、まぁそうだよな……」
それでもペア解消とならないのはセシリアさんから言い出した話をあちらの都合で無かったことにするのはプライドが許さないとか、そういった事情なのかもしれない。
寮の自室に戻った後で良かった。今、ちょっと人に見せられない顔になっているだろうから。
その後の記憶は少しあいまいだ。
※※※※※
もの凄い空腹感で我に返った。
気が付いたら結構遅い時間になっていた。食堂が間に合うか微妙なラインだが、最悪何か適当な食材を貰って部屋で料理すればいいやと部屋を出た。
道中もさっきの考えが頭から離れなかった。しっかり歩いているはずなのに妙な浮遊感を感じる。
「レオさん? どうされたのです? 顔色が悪いですわよ?」
そして食堂に行く道すがら、ある意味で今一番会いたくない人にばったり遭遇してしまったのだった。
薄暗い部屋でボーッとして気がついたら数時間経っていたって事、あると思います。