せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
案外ボダやってる人っていたんやなぁって。
開会式も終わりいよいよ幕が上がった学年別トーナメント。アリーナの空中投影ディスプレイに各学年のトーナメント表が表示される。
「お、いきなりか」
織斑・デュノアペアの試合はまさかの第1試合。しかもその相手はボーデヴィッヒ・篠ノ之ペアであった。
※※※※※
私たちの試合は後半の結構後の方だったため、ある程度までは客席で試合を観戦することにした。
「織斑のやつ、随分と気合入ってるなぁ。まぁ、気持ちは分かるけど」
「ボーデヴィッヒさんとは何やら因縁がある様子でしたものね」
「それに加えて模擬戦での一件もありましたし」
「一応言っておきますが、あの時のレオさんも相当怖い顔をしていましたわよ?」
「えっ」
「実際織斑さんと一緒にボーデヴィッヒさんに向かって行っていましたし」
「確かにだいぶキレていた自覚はありますが、そんなに私怖い顔してました?」
「それはもう。
ですが、わたくしは嬉しかったです」
「嬉しかった? どうして?」
「あんなに怒ってくれるほど、わたくし達の事を心配していたのでしょう?
鳳さんもそうですが、女子的には嬉しいポイントですわ」
「なるほど、まぁ二度目は御免ですがね」
「次はわたくしが勝ちますのでその心配は無用です」
気負いも焦りも一切ない、誇りと自信に満ちた言葉に、彼女らしさがつめこまれていた。
「お、始まるか」
盛大なアナウンスの後、カウントダウンが始まった。
3、2、1、
0と同時にアリーナ内の4機が一斉に動き始める。
「織斑は速攻を選びましたか……捕まった!」
「AIC、本当に厄介ですわ」
「1対1の近~中距離戦なら本人の技量も含めて学年でもトップクラスでしょうね」
「遠距離での射撃戦ならわたくしの独壇場ですわ!」
「えぇそうでしょうね。遠距離射撃でセシリアさんを上回る人は1年生にはいないんじゃないでしょうか」
「ふふん、当然ですわ」
か わ い い
ドヤ顔で両手を腰に当てる仕草してるよこのお嬢様。かわいい。
正直言ってしばらく眺めていたいが、今は織斑たちの試合に集中すべきか。
「デュノアさんの攻撃で織斑が解放されたか」
「フレシェット……いえ、バースト弾でしょうか」
「爆破でAICが解除されたとなると、対象を目視し続ける事が必要条件なのかもしれませんね」
「ありえますわ」
「しかしそうなると、彼女は高速機動中の織斑の、腕をピンポイントで狙えるほど動体視力に優れていることになりますね……」
後退し、距離を取ろうとするボーデヴィッヒさんに対してデュノアさんは追撃を選択。高速切替を駆使して息もつかせぬ弾幕を見舞う。
しかしこのトーナメントはタッグマッチだ。片方が危うくなれば、当然もう片方が割り込んでくる。
デュノアさんに対して向かってきた――なぜ射撃中の機体を射撃で牽制せずに剣と盾で突っ込んできた。拡張領域に射撃武器を入れていなかったのか?――篠ノ之さんだが、彼女を織斑がインターセプト。近接使い同士による斬り合いが始まる。
「凄いなあの2人、チームワークがよくできてる」
「えぇ、ですが篠ノ之さんたちのペアは……」
「お世辞にもチームワークとは言えないんですよねぇ……
お、上手い!」
「いえ、読まれていますわ」
マジか。決まると思った織斑とデュノアさんによるコンビネーションアタックが、ワイヤーブレードを篠ノ之さんに巻き付けてぶん回すという強引すぎるやり方で回避される。
「また1対1に別れた……いや、これは」
「織斑さんがボーデヴィッヒさんの攻撃をしのぐ間にデュノアさんが箒さんを仕留める作戦ですわね」
「篠ノ之さんは完全に頭に血が上ってますねぇ。……織斑関係で何か言われたのかな?」
「残念ながら箒さんは長くはもたないでしょう。あの状態の彼女が近接武器だけで倒せるほど代表候補生は低い壁ではありませんもの」
実際そうなった。射撃、機動、近接、格闘。全てがハイレベルにまとまっている万能タイプのデュノアさんは、『砂漠の呼び水』という戦法を駆使して篠ノ之さんを撃破。AICに拘束されギリギリの状態の織斑を見事に援護して見せたのだった。
「しかしわたくし達はペアを組んでせいぜい4日、悔しいですがあそこまで動けると考えるのは危険ですわ……」
「セシリアさん」
「なんでしょう?」
「あの2人、ペアを組んで2週間程度みたいですよ」
「そうですわね。でも、それが何か……?」
「私たちって、今回の件でペアを組んだのはちょっと前ですが、
入学してからずっと、ぶつかったり練習したり、結構一緒の時間を過ごしているんですよ?」
「……ぁ」
そう。入学当初の模擬戦から始まって、私たちはなんだかんだ言ってかなりの時間を2人で過ごしてきた。
4月中旬から6月末の長さは12週間、84日。仮に1日2時間訓練の時間を取れたとして合計すると168時間にもなる。もちろん私の機体の損傷だったり諸々の事情で機体に乗れない日も結構あったが、それでも100時間くらいは訓練してきているのだ。
「コンビネーションという意味では、案外私たちが学年最強かもしれませんよ」
「これは一本取られてしまいましたね」
セシリアさんがクスッと笑みをこぼしたのと同時に、アリーナが大きな歓声に包まれた。
「零落白夜……織斑、勝負を決めにいくつもりか」
「デュノアさんの援護の下でボーデヴィッヒさんのAICを潜り抜けられるか、それで全てが決まりますわ」
「でしょうね。
ですが、不思議なものです。織斑なら、やってくれそうな気がしてしまう」
「奇遇ですわね。わたくしもですわ」
そして、死闘が始まった。
右手、左手、そして視線を向けた先に襲い掛かるAICを、織斑は機動だけで置き去りにする。そしてここだというポイントにたどり着いたのだろう、瞬時加速で決着を付けようとして――その動きが、ピタリと静止した。
「捕まったか!」
「ですが、まだです!」
見ると、ボーデヴィッヒさんの死角から高速で接近する機体。デュノアさんだ。
ゼロ距離まで接近した彼女は、連射可能なタイプなのだろうショットガンをたっぷり6発お見舞いした。ボーデヴィッヒさんの機体の肩に展開していた大砲が爆散し、AICの制御ができなくなったのか織斑が自由を取り戻す。
千載一遇の好機。これを逃す織斑ではなかった。
ボーデヴィッヒさんに突っ込み――突如として零落白夜が解除された。
「エネルギー切れ!? ここに来て!」
「なんて、ついてない……!」
形勢逆転。今度はボーデヴィッヒさんが猛攻を仕掛ける。零落白夜も維持できないほどシールドエネルギーが減っている現在、織斑は一撃でも貰ったらダウンになる可能性が高い。
織斑自身もそれを分かっているのだろう、ただの近接ブレードになった『雪片』を振るってボーデヴィッヒさんのプラズマ手刀をいなし、同時に襲い来るワイヤーブレードを、なんとつま先で蹴り飛ばしながら応戦している。
デュノアさんも援護に回ろうとするが、ワイヤーブレードに阻まれて難しい様子。
そして、ついに。
プラズマ手刀の一撃が決まり、織斑は地に落ちた。
「あぁっ!」
「いえ、まだですわ。まだ、デュノアさんは諦めていない」
何もかもを吹き飛ばす疾風のように。デュノアさんと彼女のラファールは一陣の風になった。両手に握ったアサルトライフルを乱射し、弾が尽きたのかそれを投げ捨てる。
次に彼女が構えていたのは、第3世代ISと比較しても遜色ない一撃必殺の竜殺し≪ドラゴンスレイヤー≫
ボーデヴィッヒさんの顔から、初めて余裕が吹き飛んだ。当然だ、一発でも食らえば即死しかねない威力を、連射してくるという恐ろしい武器なのだから。
そして、それまでも速かったデュノアさんの姿が、掻き消えた。正確に言うと、消えたと錯覚するほどに速く移動したのだ。
「瞬時加速!? これが切り札ですか!」
「しかしデュノアさんはこれまで瞬時加速を使ったことは無かったはず……まさか、この試合中に身に着けたと言いますの!?」
そうだとするならなんて才能だ。寒気すら感じる。
ボーデヴィッヒさんが必死になってAICを使用し、――しかし銃声と共に動きを止めたのは、ボーデヴィッヒさんの方だった。
「織斑!? やられたはずじゃ」
「残念でしたわね、トリックですわ」
地に落ちた筈の織斑が、地に背を預けながら射撃を行っていた。
本来織斑は射撃用の武器を持っていない。射撃を補助するためのセンサーすら捨てている完全に近接に特化したのが織斑の『白式』だ。
そんな織斑がなぜアサルトライフルで射撃を行えているのか。
「デュノアさん、使用許可を出した銃を弾切れに見せかけて落としておいたのか!!」
渾身の突撃。この場にいたほぼ全員が途中の射撃は牽制で、弾切れになったから銃を捨てたと思ったはずだ。
それこそが伏線。丸腰で待っていた伏兵を武装させるための一手。
そして策は成り、リボルバー機構が採用されたことにより連射が可能になったパイルバンカーが4度、ボーデヴィッヒさんに突き刺さった。
※※※※※
「決まりですわね」
「お見事というしかありませんね。こんな試合を見せられたら闘志が湧いてしまいますよ」
「わたくしもですわ。……え? あれ」
「どうかしたんですかセシ、リア、さん……」
通常、ISが非常に大きなダメージを受けて機体を維持できなくなった場合、機体が強制的に展開解除され、待機状態に戻る。
1発でも絶対防御が発動するような強烈な攻撃を4度も受けたボーデヴィッヒさんも、普通ならそうなる筈だった。
しかし、ボーデヴィッヒさんの機体が強制解除されることはなく、代わりに黒いタールのような不気味な物体が、彼女を覆っていた。
明らかに、何か良くない事が起ころうとしていた。
誤字報告は生きる力になる。
VTシステム戦ではオリジナル要素入れます()