せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
何かが起こっている。
何が起こっている?
撃破された筈のボーデヴィッヒさんの機体。一定レベルのダメージを受けた彼女の機体は、通常ならISの展開を解除して待機状態になる筈だった。
しかし今、彼女は機体を含めて全身を黒いスライムのような物体で覆われている。どう見ても異常事態だ。
「セシリアさん、この状況に心当たりはありますか?」
「いいえ、ありませんわ」
セシリアさんの代表候補生としての知識にも該当するものがない状況である、と。控えめに言ってヤバいんだが?
≪緊急事態発生。緊急事態発生。
来賓および生徒は直ちに退避せよ。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない≫
無人機騒ぎの時も聞いたような警報が鳴り響き、空中投影ディスプレイにも警告文や避難経路が表示される。
『こちら織斑だ。出撃可能な専用機持ちは応答しろ』
織斑先生からの連絡。というか『出撃可能な』ってまさかドンパチが始まる感じですかねぇ?
「私は行けますが、セシリアさんは大丈夫ですか?」
「ご心配には及びませんわ」
『2組の鳳です。アタシも行けます』
『分かった。では各自ピットまで来てくれ。詳細は移動の道中で説明する』
「「『了解』」」
避難する生徒でごった返す廊下を駆けながら、織斑先生からの説明を受ける。
『ボーデヴィッヒの機体に、国際法違反のシステムが組み込まれていたことが判明した。教師陣で編成された鎮圧部隊が送り込まれるが、タイムラグが生じる。今回出撃する3人には、鎮圧部隊到着までの足止めを頼みたい。
ちなみにボーデヴィッヒ機の現在の様子はこうなっている』
直後に映し出されたその機体を見て、私の心臓は一瞬動きを止めた。
「ば、か、な……」
ありえない。ありえない、ありえない!
ヤツがどうしてここに。
もしヤツがいるのなら他にも。
どうすればいい。どうすれば
「レオさん! しっかりしてくださいまし!」
セシリアさんの声で我に返った。だからといって現状がどうにかなるわけでもないのだが。
「ちょっとアンタ大丈夫? 無理なら下がっていた方がいいわよ?」
「いえ、行きます。
皆さんと、織斑先生にも、ヤツの情報を伝えなければ」
『……まぁいい。詳しくはピットで聞こう』
カメラに映ったその機体は、この世界には存在しないはずの敵。
ボーダーブレイクに登場する敵組織、「エイジェン」のエースが乗る機体だった。
※※※※※
「集まったか。
まず現状を説明する。未確認機は現在動きを止めている。アリーナの生徒・来賓の避難状況はおおむね4割といったところだ。
なおアリーナ内の織斑、篠ノ之、デュノアには念のため警戒に当たらせている」
「質問があります」
「まだだ。後にしろ。
シキシマ。お前はあの未確認機を知っているな? 知っている事を話せ」
「……機密の部分があるので話せる限りになりますが。
あの機体はB.U.Z.-スティグマ Z-SPECII。極限まで装甲を厚くし、そして大容量の飛行ユニットを装着したことによって重防御、重武装を実現した機体です。
主要な武装は両手に装備できるロケット砲、多連装ミサイル、超大型ミサイル。機体そのものも硬いですが、シールド発生装置も装備しています。
中々に機動性もあるので、ミサイルに追い立てられて集まった所を一網打尽にされる可能性もあります」
「重防御というが、どれほどのものだ?」
「織斑の零落白夜でも一撃で落とすのは困難かと思われます」
「ッ! そこまでのものか」
「レオさん、質問です。
レオさんの機体と未確認機ではどちらの方が機動性は高いでしょう?」
「相手側です。
っと、織斑先生。説明した通り、あの機体は爆発物を多用します。もしアリーナに障害物を設置できるのであれば、早急にお願いします」
「了解した。
シキシマ。織斑たちの機体は戦闘後というのもあり損傷している。出撃後は早急に回復させるんだ」
「承知しました」
「他に質問はあるか?
よし、では出撃を命じる。……必ず、戻ってこい」
※※※※※
『シキシマ』
出撃前の最終チェックを行っていると、織斑先生から通信が入った。
『今回の件、何か心当たりはあるか』
「全くありません。
私の記憶とこの機体にしか存在しないはずの機体データが一体どこから流れたのか……」
『それについてはこちらでも調査する。今はとにかくあの未確認機の対応に集中しろ』
「了解しました」
通信が終了したため、機体構成に戻る。
今回大事なのは装甲だ。どの道爆発パラダイスで少しずつ削られるのなら、削られる幅を抑えて回復させた方が良いに決まっている。
そうと決まれば選ぶ機体は決まってくる。
さて、私の好みの話になってしまうが、私は軽量機が好きでよく乗っていた。標準型の機体に乗ることもあったが、基本は軽量機だった。
理由はいくつかあるが、大きなものを挙げるとしたら、やはりスピード感だろう。
極限まで軽量化を図った機体はネコ科の肉食獣のように引き締まり、あるいは刃の鋭さを持っている。
機動性に重きを置かれた機体設計により行動は俊敏になり、「前方に50メートル移動する」という動作を行う時間も軽量機と重量機では話にならないほど開きがある。
そんなわたしが最低でも中量機、重量機に乗ることもザラにあった戦場が存在した。
――ユニオンバトル
それまでGRF、EUSTの2大勢力により行われていたエネルギー争奪戦に突如乱入してきた第3勢力、『エイジェン』
「ニュード耐性を持たない人類を抹消し、ニュードに適応した『新人類』の世界を作る」と攻撃をしかけてきた彼らは、その圧倒的な武力も相まって世界中で破壊の限りを尽くした。
エイジェンの持つ謎の巨大兵器、現行のブラストランナーを上回る能力を持つ機体、大量の無人機、そしてそれらを束ねる圧倒的性能を誇るエース。
各地のニュード採掘場が襲撃を受け、大量のニュードが周辺地域に拡散し、ニュード汚染は深刻なレベルに達した。
事態を重く見た傭兵組織『マグメル』は、GRF、EUST両陣営に働きかけ、エイジェンの襲撃時には『マグメル連合軍』として対応に当たる事となった……
というのがユニオンバトルの筋書きだ。実際にこのモードは私も好きでよく出撃していたのだが、とにかく敵が硬い上に火力がえげつない。軽量機で立ち回る事もできない訳ではないのだが、被撃破が味方の足を引っ張る仕様であるため、一部の即死攻撃はともかくできるだけ生存を優先するために私も硬めの機体をチョイスする事が多かったのだ。
ユニオンバトルはPvEのレイド戦であるため、ごく一部を除いてとにかく敵が硬い。その中でも防御力攻撃力とずば抜けて高いのがエイジェンの部隊を束ねるエースが乗る機体だ。
エイジェンのエース、ジーナ。
彼女が乗る機体は先述したように爆発物系の武器で固め、その上に飛行ユニットも装備、挙句にバリアユニットまで背負っているので、とにかく厄介だった。
考えてもみてほしい。強襲兵装の主武器であるアサルトライフルやサブマシンガンどころか、重火力兵装の機関銃やガトリング砲の集中砲火を浴びせても簡単には落とせず、バリアを展開して上空からロケット砲やら多連装ミサイル、挙句に一撃必殺の大型ミサイルを撃ち下してくる相手に、陸戦オンリーで挑まなければいけないのだ。遮蔽物を上手く利用して立ち回ってもエース機を1回撃破するまでに味方は結構な数がやられてしまう。しかも敵は当然エースだけでなく無人機やら強化ブラストやらがいるのだ。
選ばれたのはヘヴィガードⅢでした。
ゲームの方ではもっと機体持っていたし、武器だって色々あったんだよ。本当ダヨ? でも、今の私が保有するブラストランナーは4種類。シュライクは紙装甲なので除外するとして、ツェーブラもクーガーと比較して装甲が薄いので却下、残るクーガーとヘヴィガードで下手にキメラ機体を組むよりも、頭から脚までヘヴィガードで固めた方が良いのだ。
機体が決まれば次はチップの選択だ。まぁ手持ちのチップが少なすぎて選択肢なんて無いに等しいんだけどね!
ヘヴィガードⅢで全身を固めた場合のチップ容量は8.7。私は8枚のチップを選べる訳だ。そして私の選んだチップは、
装甲Ⅰ(コスト1)
対爆発防御Ⅰ(コスト1)
リロードⅠ(コスト1)
歩行/通常移動Ⅰ(コスト1)
ダッシュ/高速移動Ⅰ(コスト1)
しゃがみⅡ(コスト2)
ブースターⅠ(コスト1)
となった。わぁい、チップがいっぱいだぁ。
性能の向上? 微々たるものだが?(半泣き)
まぁいい(良くはない)、今の手持ちの機体とチップでできる限りの重装甲化はできた。となれば後は武装の選択だ。
今回私は遮蔽物を利用して爆発のダメージをできるだけカットし、どうしても避けられない損傷はリペアする立ち回りで行こうと考えている。となればベースになる兵装は支援兵装で、そこに他兵科の武器をいくつかチョイスする事になる。
こうしてみるととにかく重火力兵装がまだ解放されていないのが痛い。重火力兵装の主武器はどれも重いが、その分威力がお墨付き。マガジン容量の多い武器も多かったので上手く味方と連携すればリロードの隙も消せて良かったのだが……まぁないものねだりをしている暇はない。とにかく対空戦闘を意識してヴォルペ突撃銃は必須。サブマシンガンも念のため持っていこう。遊撃兵装の主武器は両手に持つハンドガンであるため今回はお留守番。狙撃銃もセシリアさんがいるため同様にお留守番だ。敵機が接近してきたり、何かしらが起こって地面に落ちた時用に支援兵装のショットガンは持っていくし、現在の手持ち武器で一番瞬間火力を出せるリムペットボムも持っていく。
遊撃兵装のセントリーガンはどうしようかと一瞬悩み、ひょっとしたらデコイにできるかもと考え持っていくことにした。
主武器
・アッパーネイル
・ワイドスマック
・ヴォルペ突撃銃C
・M90サブマシンガンC
・STAR―05
副武器
・39型クラッカー
・リムペットボム
・44型浮遊機雷
補助武器
・弾薬ボックス
・セントリーガンSMG
・マーシャルソード
特殊武器
・リペアユニットβ
持っていく武器はこんな感じだ。弾薬庫かな?
とはいってもこれから出撃するメンバーは単発大火力って感じの武装の方が多いため、ある程度私が壁役として頑張るしかないのだ。
ああああ! 重火力兵装欲しいいいい!!
バリアユニット展開して、ニュード強化チップのレベル高い奴付けてヴルカン・ジャラーとかLAC―ウラガーンとかで蜂の巣にしてやりたいぃぃぃ!
『シキシマ、準備はできたか?』
「はい。まぁ本音を言うのならもっと良い機体や武装で出撃したいところですがね」
『教師部隊の編制も進んでいる。無理に倒そうとは思うな』
「えぇ、あくまで私たちは時間稼ぎ。でしょう?」
『そうだ。あの未確認機についても色々と聞きたいこともある。
何があっても、生きて帰ってこい。いいな?』
2回目の念押し。織斑先生が真摯に私たちの事を考えているのだと伝わってくるような色だった。
だからこそ、はっきりと言わなければいけない。
「確約はできません。できるならば国家代表クラスの人間を複数人ぶつけたいところです。
まぁ、出来る限りはやりますよ。織斑先生には私たちが落ちた時のバックアップをお願いします」
『……そこは「了解しました」と言っておけ。まぁそこもお前らしいが』
苦笑いで織斑先生との通信は終了した。
さぁ、私の準備はできた。
しかし、どうもセシリアさんと鳳さんの準備はまだのようだ。実戦に臨むのに私の準備が足りていないだけかもしれないが。
「そうか、これ、実戦なのか」
私の記憶に間違いがなければ、ボーデヴィッヒさんの機体に搭載されているのは『VTシステム』。研究・開発が禁止されている禁忌の存在だ。ボーデヴィッヒさん自身は関与していなかった筈だが、まだ幼かったボーデヴィッヒさんに軍事訓練を施し、挙句に国際条約で禁止されているシステムを搭乗者本人にも知らせず積み込むような外道がドイツ軍の、それも上層部にいるのかもしれない。
そんな外道が積み込んだVTシステムが、わざわざ競技用に出力をデチューンしてあるなんて思えない。
それなのに、どうしてだろう。またこの場所に、みんなで戻ってこられると根拠は無いけれど確信している自分がいる。
「あれかな、思えば結構エース機も落としてきたし、それもあるのかもしれないな」
スペックでいうと圧倒的に思える(実際その通りではあるが)エース機だが、何も不死身という訳ではない。囲んで袋叩きにすれば普通に撃墜できるし、、上手く地形を利用して立ち回れば単機でも引きつけて結構削れたりできるのだ。
それを思うと、少し肩の力が抜けた気がした。なんだかんだ私も緊張していたのかもしれない。
「レオさん、お待たせしましたわ」
「待たせたわね。作戦はどうする?」
「私も今来たところなのでお気になさらず。
作戦は――」
私が作戦を伝えると2人とも反対したが、それぞれの役割や私にしかできない事があると伝えると、渋々ではあるが納得はしてくれた。
「何かあったらお説教ですからね!」
「セシリア、それアタシも乗るわ」
「お説教は勘弁してほしいので頑張るとしましょうか」
かくして、
自分でも思っていたよりも早く、実戦の幕が上がったのだった。
誤字報告に感謝ですわ!
次回はもうできていますわ!