せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
これまでも、そしてこれからも、作中に色々ネタを練り込んでいくからクスッと笑ってもらえたら嬉しいし感想で気づいた報告をもらえるともっと嬉しい。
市街戦フィールドに変貌したアリーナに飛び出した私たちにも、敵機――まだ敵対行動は取っていないから正確には未確認機と呼ぶべきなのだろう――は静寂を保ったままだった。
『シキシマ達の展開を確認した。織斑、篠ノ之、デュノアは後退しろ』
『了解。レオ、気を付けろよ』
「あぁ。3人ともお疲れ様。後は任せて」
デュノアさんもある程度の損傷はあるが、特に篠ノ之さんと織斑の機体の損傷が深刻だ。篠ノ之さんはまだしも、ボーデヴィッヒさんと戦った織斑の白式はもう限界寸前だ。
「織斑、ちょっと待ってくれ」
『どうかしたか?』
彼我の距離を確認。大丈夫、リペアユニットの射程圏内だ。
照準を織斑に合わせ、リペアユニットを飛ばし、白式の修復が始まった――その瞬間だった。
『『レオ(さん)!!』』
――ロックオン警報!
織斑とセシリアさん、2人の声と同時にロックオン警報が激しく自己主張を始めた。誰からなんて決まり切っている。
「ヒーラーから狙うってか? 織斑、行け! 2人とも、援護お願いします!」
3人から何か言葉が返ってきたような気がするが、実の所あんまり聞き取れなかった。
イヤホンをしてゲームをプレイする時のように、私の聴覚は戦闘に必要な音をほとんどカットしたのだった。
※※※※※
敵機が両手に装備したロケット砲を放つ。市街戦を想定したこのフィールドには遮蔽物が多く、放たれた弾頭は地面に当たって弾けたものの爆風も含めて私の機体に傷をつけることはなかった。
このフィールド、例えるなら第3採掘島のEUSTベース付近に似ていて、集合住宅のような建築物が多めになっている。背の高い建物が多いおかげで、今の所大きなダメージも受けずにやり過ごせている。
――ミサイル接近警報!
また来た、多連装ミサイルだ。
3階建てアパートの裏に回りこんだ直後、轟音と共にアパートが大きく揺れる。
(ここはもう危ないか)
「2人とも、どんな感じですか!?」
『コイツおかしいんじゃないの!? さっきから何度も攻撃してるってのに、アタシ達の事見向きもしないわ!』
『鈴さんと同じくですわ。レオさん、ボーデヴィッヒさんとも因縁があったんですの?』
「んな訳ないでしょう!? って、のわぁぁ!?」
盾にしていたアパートがとうとう耐えきれなくなったか、土煙とともに倒壊した。ゲームだったらどんな大きな攻撃を受けてもピンピンしている障害物も、現実ではこの有様である。まぁ当然といえば当然か。
『こんの、こっち向けぇぇぇ!!!』
業を煮やした鳳さんが一気に接近し、至近距離から衝撃砲を浴びせた。中量機くらいであれば吹っ飛ぶような一撃。しかしそれも敵機には届かない。
届かない、が。
「バリアが剥がれた!」
『セシリア!』
『お任せを!』
フィールド中央にある大きなビル。第3採掘島の給水塔のような場所にあるその建物の屋上に、一瞬光が見えた。
瞬間、それまで銃弾やら衝撃砲を撃ち込まれても微動だにしなかった敵機が、緊急回避をするかのような動きを見せた。だが機体よりもセシリアさんのビームの方が早く、胴体を狙ったと思しき一撃は、敵機の肩のあたりに直撃した。
「やっ……てないよなぁやっぱり」
だがそれなりのダメージは与えられたと信じたい。
そして、狙撃手の存在を厄介だとでも考えたのか、セシリアさんの方を見る敵機。
させるか。
物陰から飛び出し、敵機にヴォルペ突撃銃を発砲。移動しながらの射撃ではあったが、放たれた銃弾のおよそ8割が敵機に命中した。
大したダメージにはならない。それでも敵機が再び私を狙い始めたから、当初の目的は達成できた。
「彼女の方に行きたいなら、私を倒してからにするんですねぇ!」
『……ぁぅ』
(オープンチャンネルでよく言うわコイツ……面白いし黙っておこ)
「セシリアさん、鳳さん、今の流れを繰り返します。私が気を引くので鳳さんがバリアを剥がし、セシリアさんは狙撃をお願いします」
『良いけど、簡単にくたばるんじゃないわよ!』
『お気をつけて!』
そして、いつまで続くかも分からない戦闘が始まった。
※※※※※
「ちふ……織斑先生、出撃不可ってどういう事だ……ですか!」
「言葉の通りだ。それとも、日本語の勉強からやり直す必要があるのか?」
「でも!」
「今のお前の機体で出て行ってどうなる。零落白夜も出せないお前が行っても何の役にも立たん。大人しく機体を修復させておけ」
「ぐっ……」
「友人が心配なのは理解できるが、どうやらシキシマはお前が思うほど弱くはなさそうだぞ?」
モニターに映し出された戦場では、三位一体の攻勢をしかける3人の姿があった。
※※※※※
息が荒い。
普段より重い機体だから、いつも通りに動かそうとしてどうしてもワンテンポ遅れる。
ワンテンポの遅れは、シュライクであれば避け切れた被弾を招くが、ヘヴィガードの装甲は多少の被弾をものともしない。
相手の射線を切って、物陰で回復を入れる。もともと微々たる損傷だったから、SPもさほど使わずに全回復する事が出来た。この程度のSP使用量なら、すぐにSPも回復できるだろう。
何度も繰り返しているとある程度慣れも出てくるけれど、心にのしかかるプレッシャーにだけは慣れそうもない。
何度か連携のほころびを突かれて、敵機がセシリアさんの方に向かおうとしたこともあった。鳳さんの援護もあってその場はしのげているが、正直に言ってしまうといつ限界が来てもおかしくないようにも思う。
そして、何度目かの狙撃が敵機の頭部パーツに吸い込まれた次の瞬間。
敵機が何かを振り払うような動作を行い、全ての動きが変わった。
『何よコイツ、さっきまでと全然違う!』
『お2人ともお気をつけて! 何か、仕掛けてくるかもしれません』
実際、そうなった。
――ミサイル接近警報!
通常、ミサイルというのは速い。目標に速やかに追いつき、爆発し、ダメージを与えるものだからだ。
そのためミサイルアラートが鳴っても、落ち着いて物陰に隠れれば、無傷でやり過ごせたりする。
でも、今回は違った。
『ちょ、何アレ!?』
『いけません、レオさん、逃げて!』
2人の警告といつまでたっても鳴りやまない警報で、今自分が何に狙われているのか、見当がついてしまった。
「大型ミサイル――っ!?」
慌てて上空を確認。大丈夫。鬼追尾バカ火力のクソデカミサイルの姿はない。
今自分が盾にしているのは――木造っぽい民家。ダメだ、下手したら私も家ごと吹き飛ばされかねない。
近くに頑丈そうな建物は――30メートルくらい先に鉄筋コンクリート造っぽい3階建てアパートがある。
ミサイルアラートが鳴ってから10秒未満。今動けばギリギリ間に合うか。
決断と行動は同時だった。
それまで隠れていた民家の陰を飛び出し、移動を開始する。直後にロケット砲が撃ち込まれたらしく、爆風が機体を叩いた。
ちらりと振り返ると、民家はその半分ほどが崩れていた。危ない、あのままいたらロケット砲で削られた所にクソデカミサイルを食らってお陀仏だったに違いない。
そしてまだ鳴りやまないミサイルアラート。ここが市街戦フィールドで本当に良かった。いつも訓練で使っているような開けたフィールドだったら詰んでいたと思う。
問題は、目の前に迫っているアパートが、盾として機能してくれるかという点だ。
(頼むから間に合ってくれよぉ……)
時間がゆっくり流れているようだ。ただでさえ遅いヘヴィガードの速度が更に遅く感じられる。全部錯覚のはずなのに、どれも妙なリアリティがあった。
そして永遠に思える30メートルを走りきり、アパートの裏に回ってきっかり3秒後、
生半可な攻撃や爆風ではビクともしないヘヴィガードが、よろめいた。
私自身にダメージがないと分かっていても思わず腕で顔を覆ってしまうほどの土煙が辺りに立ちこめた。爆音はどうやら機体がカットしてくれたらしい。というか、そのまま耳に入れたら聴覚にダメージが行くレベルの音がしたのか。
『レオさん! ご無事ですか!?』
「大丈夫! 私はへ、いき……」
振り返って絶句。さっきまで存在した鉄筋コンクリート造と思しきアパートの、右半分が瓦礫の山になっていた。
『ウソでしょ、なんて火力してんのよ……』
鳳さんの呆然とした声に、敵機の存在を思い出す。
警戒すると同時に、ヤツは土煙を切り裂いて現れた。
(狙いは……タックルか! だったら!)
――コール、マーシャルソード。
欲を言うならさらに上位の剣が欲しいところだけれど、今はこれでなんとかするしかない。
攻撃のためではない。エース機の硬さは異常だ。ボーダーブレイクの中で屈指の攻撃力を持つ武器、プラズマカノン・ネオの直撃を受けても体力の3割も削れない。
防御のための構え、分厚い鉄の塊と、後はヘヴィガードの防御力を信じる!
ゴオォッという音と共に敵機が突っ込んでくる。
そして衝突!
激突の瞬間、シールドエネルギーが2割ほど持っていかれた。
相手もブースターを吹かしてのタックルだったため、機体が後ろに下がる。下がる、けれど受け止めた!
「セシリアァ! 今だ!!」
『最高ですわ、レオさん』
いつの間にか近づいてきていたのだろう。セシリアさんの狙撃銃だけでなく、ビットの射撃が、敵機の頭部に全弾命中した。
いきなり横からぶん殴られた敵機が、さすがによろめく。
「どけぇぇぇぇ!」
渾身の力をこめて敵機を押しやる。バランスを崩していた敵機は派手に転倒し、アパートの壁をめり込むように倒れこんだ。
「鳳さん!」
『任せなさい!』
ここで一気に片を付ける。そのためには、しばらく敵機に何もさせない必要があった。
だからこその鳳さんの衝撃砲。それでひたすらに敵機を撃ってもらい、その間に私は「奥の手」を用意できた。
――コール、リムペットボム
敵機がめり込んだアパートの屋上に飛び乗る。後は鳳さんの攻撃の合間を縫ってコイツを落とすだけだ。
(まったく、毎度毎度コイツには本当に助けられる)
凸屋を吹き飛ばす時も、敵の追跡を振り切る時も、プラントやベースの防衛をする時も。大抵はこの武器でなんとかなる頼れるヤツなんだ。
1つ、2つ、3つ、4つ、
5つの爆弾が敵機に貼り付いたのを確認して、私はアパートから飛び降りた。
「鳳さん、もう大丈夫。離れて!」
『了解、ぶちかましてやりなさい!』
ボロボロになりながらも立ち上がる敵機はそれでも戦意を失っていないのだろう。両手のロケット砲を構えた。
「そのガッツだけは凄いと思うよ。
でも吹っ飛べ」
1個当たり14,000のダメージでほとんどのブラストに対して致命傷になるリムペットボム。それが5つで70,000ダメージ。いくらエース機が硬いとはいえ、すでに大きなダメージを負っている上でこれだけの威力を受ければ。
またも機体を揺さぶるほどの爆風が吹き荒れたあと、爆心地にはボロボロになったドイツ製の第3世代機しかいなかった。
今回ラストのレオのどけぇぇぇ!はボダブレ原作オマージュです。
来週は、お盆の兼ね合いもあって投稿できても1話だけになりますわ。しばらくお待ちになって!