せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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今週はこの話しか上げられなさそうなので初投稿です。

あと、8500字ありますわ。


大丈夫。

「敵機の沈黙を確認しました。警戒しつつ鎮圧部隊の到着を待ちます」

『了解した。

 シキシマ、機体の状況はどうなっている? 場合によっては織斑とデュノアの修復を頼みたいのだが』

「可能です。デュノアさんの損傷度合いにもよりますが、中破以上であれば2人とも完全回復という訳にはいかないです」

『デュノアの機体はダメージレベルが低い。おそらく大丈夫だ』

「了解しました。それでは待機します」

 

 

『しっかし、倒せたとは言っても辛うじてって感じだったわね』

 

 

 織斑先生からの通信後、ため息をつきながら鳳さんが通信を飛ばしてきた。

 結果だけ見れば、後方からの狙撃に専念したセシリアさんは無傷。矢面に立つ事が多かった私や鳳さんも大した損傷を受けずに戦闘を終えることができた。

だがそれはあくまで結果論だ。

 

 大した損傷を受けずに済んだのは市街戦フィールドで盾にできる構造物が多かったからだし、私と鳳さんの連携の粗さを何度か突かれて抜かれそうにもなった。

 周りを見てみればあちこちから黒煙が立ち昇り、戦闘前には無かった瓦礫の山がいくつもできあがっている。

 

 

「全くですよ。あーあ、これしばらくアリーナ使えないだろうなぁ……」

『あれだけ爆発物を多用する相手ですもの。こうなるのも無理はありませんわ』

『そんな相手にロクにダメージを受けずに切り抜けたヤツが、ここにいるけどね』

 

 

 空気が、変わった。

 

 

「フィールドに救われました。障害物が多かったので身を隠しながら立ち回れましたし」

『そう。ちなみにアンタの情報はセシリアから色々聞かせてもらったわ』

「嘘だな。セシリア・オルコットは誇り高い女性だ。そんな事はしない」

『……と、随分と仲が良いのは今分かったわね』

『鈴さん!』

「鳳さん、間もなく織斑たちが来ますよ。

 場を温めるのもほどほどにされた方が良いのでは?」

『それもそうね。

 ……シキシマ、アンタが何者で、どういう目的でここに来たのかは知らない。

 けど、シキシマの人の好さに付け込むヤツがきっと現れる。

 

 まぁある意味ではアタシもその1人かもしれないけどね。

 

 今から言うのは独り言だけれど、アタシが本国から受けた命令はシキシマについての情報収集よ。

 とはいっても本命は一夏。アンタの事はついで程度にしか思ってないはず』

「……命令を私に漏らすのはマズいのでは?」

『何の事かしら? アタシはただ独り言をつぶやいていただけよ?』

『2人とも、織斑さんたちが来ましたわ』

 

 

 見ると、ピットから織斑とデュノアさんが出てきたところだった。ここに来るまであと10秒もないだろう。

 

 

「では、私も独り言をつぶやくとして。転入生には気を付けた方が良いですよ。何せ『あの』織斑ですので」

『……まさかとは思いたいけれどメチャクチャ納得できるのが腹立つわね』

 

 

 鳳さんは意識を失っているらしいボーデヴィッヒさんを見ながら複雑な顔をしているけれど、まさか両方とは思っていないんだろうなぁ……

 

 

『レオ! 見てたぜ、お前半端ないな!!』

『一夏、落ち着いて。まずは修復してもらうんでしょ?』

『あぁっと、そうだったな。悪いけど、頼めるか?』

「OK、ちょっとじっとしていてくれ」

 

 

 アリーナに出てすぐ修復させる手筈が、どういった訳かあのエース機が襲い掛かってきたため中断していた作業。ようやく再開できる。

 織斑の白式に照準を合わせ、リペアユニットの引き金を引く。ロボット掃除機のような外観の子機が白式めがけて飛んでいき、損傷箇所を修復し始めた。

 

 

「デュノアさんはどうします?」

『ボクはいいよ。一夏ほどダメージを受けている訳じゃないからね』

「了解」

 

 

 そして白式のシールドエネルギーが9割近くまで回復した時、ボーデヴィッヒさんに動きがあった。

 

 

 ※※※※※

 

 

 織斑・デュノアペアに敗れた。その事が認められなかった。

 

 

 私は今でこそラウラ・ボーデヴィッヒと名乗っているが、それは私の本当の名前ではない。そもそも私は人間であるかどうかですら怪しい存在だ。

 遺伝子強化試験体C―0037。それが私の『製造番号』だ。

 戦いのために造り出された存在。骨格がしっかりし、ある程度の筋肉がついた頃から、私は殺しの技術を叩き込まれてきた。

 

 軍内に極秘に創設された特殊部隊の一員になり、そして上り詰めた。私にとっては至極当然のことで、特に何の感慨も湧かなかった。

 

 ISが世に現れてから、全てが変わった。

 ISに適合するための措置として、理論上安全だったはずの『越界の瞳』≪ボーダン・オージェ≫が、私だけが完全には適合せず常時稼働状態になった。

 片方の瞳が常に金色に染まり、目を開いている限り常に暴力的な情報に晒され立っている事も困難になる。

 眼帯が無ければ日常生活も危うい私が部隊での地位を失うのに、そう時間はかからなかった。

 

 失意の日々で出会ったのが、織斑教官だった。

 教官の教えは常に的確で、教えに従うだけで落ちこぼれだった私は部隊長になるまでの実力を手に入れられた。

 

 常に凛々しく、冷徹な教官。そんな教官が、弟の事を語る時だけはその表情を緩めていた。

 そんなことあってはならない

『緩み』は隙だ。

織斑教官にそんな『緩み』などあってはならない。

故に、織斑教官にあんな表情をさせる弟――織斑一夏を、完膚なきまでに叩き潰さなければならない。その筈だった。

 

 それなのに、私は負けた。よりにもよって相手の力量を見誤るという、軍人として致命的な判断ミスで。

 

 悔しかった。

 悔しくて涙が出そうになったのは生まれて初めてだった。

 そして私は力を求め、『何か』に飲まれた。

 ISとは違う。それでもISと比較しても遜色ない機体を操る自分ではない『何か』をどこか客観的に見下ろしながら、これで織斑一夏に勝てば、私は『強い私』でいられると考えていた。

 

 それなのに。

 私は、プロフィール以外ロクに知りもしなかった男と、先日圧勝した代表候補生たち3人に完敗した。

 鳳・オルコットペアとは以前にも戦い、私が完勝した。そこに1人、それもISとも呼べないような機体に乗る男が加わったところで負ける道理はないはずだった。

 

 何もさせてもらえなかった。

 

 それまで何もなかったアリーナが突然遮蔽物の多い市街戦フィールドになり、こちらの攻撃はほどんどが無効化され、なんとか通ったダメージは即座に回復される。

 そしてシキシマに意識を集中していると鳳に意識の外から衝撃砲を撃ち込まれ、バリアユニットを剥がされる。そうしてがら空きになった所にオルコットの狙撃だ。理想的と言っていいほどの連携だった。

 

 認められない。

 

 

 ボーダン・オージェの適合に失敗し、落ちこぼれとなった私に向けられた侮蔑や嘲笑。それが脳裏から離れない。

 

 

 負ける訳にはいかない。

 

 

 兵器として造られた私がただの人に負けてしまったら、一体私は何のために造られたというのだろう?

 

 

 誰か。

 

 

 ※※※※※

 

 

 ――助けて。

「……え?」

 

 

 か細くて今にも消えてしまいそうな声だった。

 けれど間違いなく、助けを求める声だった。

 もしかして誰か巻き込まれた人がいるのかと辺りを見渡すけれど、それらしき人は見当たらない。

 

 けれど、辺りを見渡したおかげで誰よりも早く気が付くことができた。

 

 

「ッ総員警戒! ボーデヴィッヒさんの様子がおかしい!」

 

 

 流石というか、代表候補生の3人の反応は素早かった。一瞬でそれぞれの得物を展開し、油断なく構える。コンマ数秒遅れて織斑も雪片を展開した。

 

 

「あああああああっっっ!!!」

 

 

 ボーデヴィッヒさんの機体から再び黒い泥のような物体が溢れ出る。その泥は瞬く間に機体とボーデヴィッヒさんを覆い隠し、彼女の悲鳴のような叫びも聞こえなくなった。

 

 

「ボーデヴィッヒさん! 聞こえますか、ボーデヴィッヒさん!!」

 

 

 応答はない。

 そして泥は形を変え――近接ブレードを持ったISのように変形を遂げた。

 

 

『何ですの、この機体……』

『機体照会中……って、ウソ、そんな!』

 

 

 黒いその機体がゆらりと剣を持ち上げ――姿が消えた。

 

 

「え?」

 

 

 私が最後に見たのは、胴体にめり込む刃だった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「レオさんッ!」

 

 

 目で追えるスピードではありませんでした。

 文字通り瞬くほどの間で、黒い機体はレオさんとの距離を詰め、近接ブレードらしき武装でレオさんを切り裂きました。

 

 先ほどの戦闘では大規模な爆発でも多少よろける程度だったレオさんの機体が、ボールのように飛び、接地の瞬間僅かに跳ねました。その光景も、直後に聞こえた金属がひしゃげるような音も、何もかもが噓のような状況で。

 

 

『てええええんめえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

 

 怒声、というより咆哮を上げながら織斑さんが斬りかかりますが、敵機はあっさりそれをいなします。

 

 

『一夏! カバーするから突っ込まないで!』

『ふざけんな、ふざけんな! アイツ、ぶっ殺してやる!!』

 

 

 ここまで激怒した人は、これまでに見たことがありません。彼とボーデヴィッヒさんとの間に、一体何があったというのでしょうか。

 

 

『……リア!』

 

 

 いけません、何も考えられない。

 

 

『セシリア!』

 

 

 誰かが、わたくしを呼んでいる?

 

 

『セシリア! アンタいい加減しっかりしなさい!』

 

 

 大きく肩を揺さぶられて、わたくしは我に返りました。

 

 

「鈴さん」

『しっかりしなさい! 後衛のアンタが冷静さを失ってどうすんのよ!

 いい? アタシや一夏が何とかアイツを引きつけておくから、セシリアはシキシマを連れて撤退しなさい』

「ですが、それでは支援が」

『今のセシリアがここにいても迷惑なのよ! いいから早く行きなさい!

 ……シキシマのバイタルはチェックできてるわ。衝撃で意識を失ってるっぽいから慎重に運びなさい』

 

 

 返す言葉もなく、わたくしはレオさんの下に向かいました。

 

 

 ※※※※※

 

 

 一瞬ぼーっとして、はっと我に返る事ってあるよね。

 今の俺は、まさにそんな感じだった。

 

 

(あれ? 俺何してたんだっけ)

 

 

 どうにも記憶があいまいだ。アリーナにいたような覚えはあるのだが……

 

 

(ていうか、ここどこだ?)

 

 

 間違いなくIS学園のアリーナではないだろう。なんだか真っ暗だし、アリーナほど広くは感じられない。

 真っ暗といっても半月の夜くらいの暗さだ、目が慣れてくれば見えてくるものもある。

 

 

「ボーデヴィッヒさん? どうしたのこんな所で」

「……シキシマか」

 

 

 俯いた彼女は、こう言っては失礼だろうけれどか弱く、身長より小さく見えた。

 

 

「シキシマは、どうしてそんなに強いんだ?」

「俺が? 強い?」

「そうだろう。織斑一夏も強かったが、お前のそれは彼とは違った強さだった」

「俺は強くなんかないよ」

 

 

 自分でも驚くほど、ひび割れた声だった。

 

 

「ボーデヴィッヒさんも言ってたけれど、俺の機体はそもそもISなんかじゃない。

 みんなと違って後付けユニットが無ければ空も飛べないし、瞬時加速だってできない。悪知恵働かせてなんとか立ち回ってるだけだよ」

「そうだったのか。

 なら、シキシマは何故逃げない? 戦力の差が明確なら、撤退も当然の選択肢だろう」

 

 

 不思議そうにしているボーデヴィッヒさんの表情に、これまでの戦いが思い起こされる。

 

 入学してすぐセシリアさんとの決闘。あの時は自爆まがいのリムペットボム一斉爆破でなんとか引き分けに持ち込めた。

 

 織斑は最初こそ直線的な動きしかしてこなかったからカモにできたけれど、あっという間に絡め手に強くなって、今では負け越している。

 

 篠ノ之さんは剣に頼りすぎな部分があるけれど、逆に言うと剣という一本筋の通った芯があるからか、剣の間合いに詰められたら勝ちに行くのは難しい。

 

 鳳さんは2組であんまり対戦する機会は無かったけれど、物凄く勘が良い。策を仕掛けても避けられるか踏みつぶして向かってくる。

 

 夜間の訓練時にお世話になった先生たちに至ってはもう次元が違う。前なんてリムペットボムの地雷原に追い込んだつもりがこちらが地雷原にハマっていた、なんてことも起きた。

 

 

「確かに。普通に考えたら逃げたっておかしくないかも」

「では何故、お前は逃げない?」

 

 

 IS学園に入ってからこれまで。3か月も経っていないけれど、たくさんの人と知り合えた。

 

 射撃を教えてくれるセシリアさんは、実は結構妄想癖があってふと口から漏れ出ていたりする。そこもかわいいと思えてしまう自分はたぶん色々と手遅れなのだろう。

 

 織斑はドチャクソ鈍感なのを除けば凄くいい奴だ。どこか自己評価が低い面もあるけれど、いつか自分に自信が持てるようになってほしいと思う。

 

 篠ノ之さんは普段のザ・剣道少女! というイメージに惑わされやすいが、鳳さんと並んで織斑LOVE勢のツートップだ。どちらかを応援することはないが、悔いのないように頑張ってほしい。

 

 鳳さんは、誤解を招くかもしれないけれど一言で表すのなら「良い女」だ。さっぱりとした性格はとても交流しやすい。

 

 デュノアさんはまだ知り合って日も浅いからあまり多くは語れないけれど、いつか彼女が家族と笑って過ごせる日が来ることを心から願っている。

 

 そうか、俺は。

 

 

「最初は無理やりここに放り込まれて嫌な部分もあった。同性も織斑だけで正直ストレスも感じてる。

 でもさ、なんだかんだ、ここが好きになったんだと思う。周りのみんなも良い人たちばかりだし」

「IS学園が、好きに、か……」

「ボーデヴィッヒさんはどう?」

「分からない……

 私は、誰かや何かを好きになったことがないからな……

 それに、ここに来てからの態度に問題があった事も把握している。今更どんな顔して他の者と交流していけば良いのか……」

 

 

 また俯いてしまった彼女が、どこか決闘直後のセシリアさんに重なって見えた。

 

 

「とりあえず、悪い事したって自覚があるならホームルームの前とかに教壇に立って謝ってみるのはどう? 個別だと負担に感じる人もいるかもしれないし。

 何なら隣に立っていてあげようか?」

「……頼む」

「りょーかい。約束するよ」

 

 

 その時、暗かった視界に光が差し込み始めた。地震とは違うが、地鳴りのような音も聞こえてくる。

 直感的に、ボーデヴィッヒさんとの会話が終わると思った。

 

 

「シキシマ、いやレオ! これからはラウラと呼んでほしい。代わりといってはなんだが、私も、お前の事をレオと呼んでも良いだろうか?」

「分かったよ。ただ、さん付けでも良いかな? 呼び捨ては何というか、その……少し、恥ずかしいから」

「っふふ、何だそれは。―――――」

 

 

 いよいよ大きくなった地鳴りにラウラさんの最後の言葉はかき消されてしまったが、少なくとも彼女が笑っていたのだけは確かだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

『……にが……いる!』

『……オさん! ……してください!』

 

 

 声が聞こえる。

 俺は、何をしていたんだっけ?

 

 身体は動かないが、視界が流れている。羽交い絞めにされているような感覚。俺は今、引きずられている――?

 

 そこまで思い至った時、食道を何かがせり上がってくる感覚が襲ってきた。

 

 

「がふっ! ゴォェッ!」

『ッレオさん!? レオさん!』

 

 

 吐き気に逆らわず、一気に出した。鉄の匂いとヌルヌルした感覚で大変に気持ち悪い事になっているが、おかげで目が覚めた。

 機体がフルフェイスで良かった。十中八九今吐いたのは血だろうから、セシリアさんが見たら卒倒したかも。

 

 

「セシ、リアさん」

『レオさん、もう大丈夫ですわ。間もなくピットに到着します』

 

 

 ありがたいけれど、今は彼女を放っておく訳にはいかない。

 

 脚に力は……入る。立てるし、たぶん軽く走れると思う。

 腕は……大丈夫。動かせる。

 俺は……まだ、戦える。

 

 

「私は、大丈夫。まだ、やれます」

『レオさん!? 無茶です!』

 

 

 立ち上がろうとした私にセシリアさんから制止の声が上がる。まぁ当然だろう。自分自身、結構なケガを負った自覚がある。興奮状態だから痛みもあまり感じないし、動けているんだろうとも思う。

 

 けれど。

 

 

「今、行かないといけないんです」

 

 

 だって、

 

 

「ラウラさんは、助けを求めているから」

 

 

 私の言葉に、セシリアさんは凄く難しい顔をして――やがて大きくため息をついた。

 

 

『はぁぁ……止めてもどうせ行ってしまうのでしょう?』

「はい……ちょっと。いやかなり無茶もするかもです」

『……貸し1、ですわ』

「返済可能な範囲でお願いします……」

『えぇもちろん。

 なので、必ず無事に戻ってきてくださいね』

 

 

 それは、祈りだった。懇願だった。

 

 だったら私がやることは一つだろう。

 

 

 ――コール、マーシャルソード。

 

 

「約束しましょう。この剣に懸けて」

 

 

 ※※※※※

 

 

「織斑!」

『レオ!? お前大丈夫なのかよ!?』

「まぁ見ての通り? それより状況は?」

 

 

 織斑に聞いてみると、どうやらラウラさん、というよりVTシステムはよりにもよって織斑先生をトレースしたらしい。今は織斑先生の動きをある程度知っている織斑がメインで対応しているが、長くは持たないかもしれないとのことだった。実際白式のシールドエネルギーはかなり削られており、零落白夜を発動しようものなら即座にとは言わないけれどすぐにカラになってしまうだろう。

 

 

「となると短期決戦でいくしかない、か」

『千冬姉の剣をバカにしやがって……しかもそれでレオを傷つけやがった。絶対許せねぇ』

「落ち着け。見ての通り俺は無事だ。

 

 それに考えてもみろ、本当に織斑先生の動きをトレースできていたら、今ごろ俺は真っ二つだし、ここにいる全員がやられてるだろうが。

 

 ありゃ出来の悪い偽物だよ」

『偽物……なるほどな』

「そんな訳で織斑、ちょっと頼みがあるんだが……」

 

 

 俺の話、というか計画を聞いた織斑は、その役目を笑顔で引き受けてくれた。

 

 

『何男だけで語り合ってんのよ。アタシたちも混ぜなさい』

『どうせレオさんのいつもの悪だくみですわ。結局爆破でしょう?』

『セシリアさんも鳳さんも思い切り良すぎない……?』

 

 

 なんだかんだ言いながらも引く気のない皆に、どうしようもなく笑いが出てしまう。

 やっぱり俺は、このみんなが大好きなんだ。

 

 

『その企み、私も混ぜてくれ』

『箒!? 大丈夫なのかよ?』

『打鉄の予備機を借りられた。私も織斑先生の剣はある程度知っている。

ここに至って戦力は多いに越したことはあるまい?』

「まったく……皆さん本当に最高だよ!」

 

 

 大丈夫。きっとやれる。

 どういう訳か、失敗のしの字も浮かばなかった。

 

 

「じゃあ、行くぞ!」

 

 

 ※※※※※

 

 

 近接戦ということで再び障害物も何も無くなったアリーナを、織斑と篠ノ之さんの機体が駆けていく。

 迎え撃とうとしたVTシステムが、急停止した。

 

 その一瞬の後、機体1つ分先の空間をレーザーと空気塊、そして銃弾が通り過ぎる。

 

 

『勘が良いわね!』

『ですが、織斑先生ほどではありませんわ!』

『あぁ、千冬姉なら今の射撃を俺や箒に当てるよう誘導したかも』

「何それ怖い」

 

 

 やることは簡単だ。

 織斑先生の動きを知る織斑と篠ノ之さんが切り込み、セシリアさんたち3人が射撃で牽制し、時間を稼ぐ。

 ではその稼いだ時間で俺は何をするのかというと……

 

 

 一度ピットに戻った俺はひたすら、リペアユニットで自分を回復していた。

 俺がこれからやろうとしている事は、間違えなくても半端じゃないダメージを負う。重防御のヘヴィガードであっても、どうなるかは分からなかった。

 ましてヘヴィガードは遅い。回復している今の場所からVTシステムまでの距離を考えると、どうしても結構な時間を稼いでもらう必要があった。

 

 

 ――コール、弾薬ボックス

 

 

 エース機戦では持ってこなかった『ある物』を用意するために一度ピットに戻り、俺は目的の物を装備してきた。

 織斑先生には盛大にため息を吐かれ、山田先生には大変な心配をかけてしまったが、それについては後でいくらでも頭を下げよう。

 

 

 ――コール、マーシャルソード。

 

 

 次に用意するのはマーシャルソードだ。今回の作戦には、大きな剣が必要なのだ。

 

 

 ――コール、☆☆☆

 

 

 さぁ、用意はできた。

 

 

「カタパルト接続。レオ・シキシマ、出撃します!」

 

 

 凄まじい加速と共に、私は再びアリーナに飛び出した。

 

 

 ※※※※※

 

 

『グッ、クソッ! 偽物の癖に、重い剣しやがって!』

『落ち着け一夏、もうすぐシキシマが来る。私たちの役目はそれまでの時間稼ぎだ』

『分かってはいるけど……』

「お待たせ! レオ・シキシマ、戦線に復帰する!」

 

 

 ぱっと見た時、俺の機体はこれといって変わっていないと思う。

 その通り。機体は何も弄っていない。正確にいうともっと防御マシマシにしたかったけれどできなかった。

 変えたのは機体じゃなくて、武器の方だ。

 

 

「じゃあ、合図したら2人は離れてくれ! 遅れると巻き込まれるぞ!」

『な、なぁシキシマ。本気でソレをやるつもりか?』

「応よ! もし失敗したらバックアップよろしく!」

『縁起でもない事言うなよレオ。

 こういう時は勢いが大事なんだぜ?』

「それもそうか。

 じゃあ行くぞ! 2人とも離れろ!」

 

 

 2人の機体がVTシステム機から離れる。残されたヤツはどこか困惑したように一瞬硬直したが、すぐに回復すると一番近い俺にまっすぐ向かってきた。

 

 相手も俺も、武装は剣のみ。

 

 俺はマーシャルソードを振りかぶり、

 

 

「食らいやがれえええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 刃が当たる寸前に、刀身を90度回転させた。

 本来であれば何の意味もない行動。だが、今はこれが一撃必殺の意味を持つ。

 

 

『――!?』

 

 

 感情を持たない筈のシステムが、恐怖したように見えたのは気のせいだろうか。

 

 マーシャルソードの刀身に貼り付けたヘヴィマインが複数個同時に敵機に触れ、私の意識は閃光と共に消えた。




まーた自爆技を覚えたよこの主人公……

前書きにも書きましたがウチの地域は7月にお盆があるので今週は今話のみの投稿となりますわ。悪しからず。
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