せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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誤字脱字報告に感謝ですわ!

今回は短めですわ〜


ただいま

 ふと気が付くと、私は石造りでできた橋の上にいた。ヨーロッパ風の街並み。そして大きなニュードの塊。

 

 

(ここは……旧ブロア市街地?)

 

 

 見覚えがあるどころではない。何度ここで戦ったことか。

 

 市街地だけに銃弾から身を隠す盾は豊富で、けれど油断をすれば頭上からグレネードや砲撃が降ってくる。迂闊に開けた場所に出ようものなら高台に陣取ったスナイパーに撃ち抜かれるかもしれない。

 全ての建物には指向性爆薬が仕掛けられている可能性があるし、死角になりそうな場所に索敵センサーが仕掛けられているからそれらが発する音にも気を配る必要があるし、逆に味方の索敵に引っかかった凸屋の対応もあるからミニマップにも注意していないといけない。

 

 ボーダーブレイクを始めたばかりの初心者からベテランまで、幅広くこのマップにはお世話になったはずだ。

 

 で、問題はなんで私がここにいるのかという話なのだが。心当たりがなさ過ぎて首をかしげるくらいしかできない。コダック。

 

 

「よぉ相棒。久しぶりだな」

 

 

 反射的に振り返ると、橋の上、反対側の欄干に男が一人寄りかかっていた。

 

 

「アンタは……」

「俺が何者なのかは後で良いだろう。どうせ自分が何者なのかなんてそれこそカミサマくらいしか分からんだろうしな」

「……それもそうか。ところでアンタはここが何なのかは知っているか?」

「どこかと言われたら相棒もよく知っての通り旧ブロア市街地だが、そういう事を聞きたいわけじゃないんだろ?

 

 ここは俺の中とも言えるし、相棒の中とも言える。

 

 あぁ安心してくれ。相棒が今体験しているコレは夢みたいなもんだ。起きてもハッキリ覚えている事もあればポカンと忘れ去ってることだってある」

「……OK、なんとなく思い出してきた。そういえば俺は確か剣にくっつけた地雷の爆発で……」

「そうそう。相棒って自爆が好きなの? 貢献ポイントマイナスになるのを眺めるのが趣味な人?」

「んな訳ないだろ。必要に駆られて選ぶ手段が毎回リスキーなだけだ」

「それで周りに迷惑かけてたら世話無いだろうに」

「なんだと?」

「違うか? 例えば今回の件。

 わざわざ一番弱いお前が相手する必要あったか?」

 

 

 とっさに言葉が出なかったのは、痛い所を突かれたからだ。

 

 

「……一撃で決めるにはアレしかなかった」

「織斑の零落白夜はどうだ? お前の言う『原作』ではそれで行ってたぞ。デュノアのパイルバンカーもあったな」

 

 

 我ながら苦しい言い訳とは思ったけれど、目の前の彼にとっても想定済みだったらしく、即座に潰される。

 

 

「……そうだな。アンタの言う通りだ。確かにあの時ラウラさんの相手をするのは俺じゃなくても良かった」

「じゃあなんでお前が戦った?」

「何でって……」

 

 

『――助けて』

 

 

 あの時聞こえた声がリフレインする。証拠なんて何もないけれど、俺にはあの声が、ラウラさんが助けを求めているようにしか聞こえなかったんだ。

 

 

「彼女が、助けを求めていたから」

「そうか。

 

 

 ――合格だ」

 

「は?」

 

「合格だと言ったんだ。

 

 

 改めて挨拶をしようか。俺はコアナンバー□□□。お前のブラストランナーの基になったISコアだ。

 

 ここはお前の記憶と心象をベースに俺が作り上げた無意識の領域。お前の中とも言えるし、俺の中とも言える。

 

 俺はアンタの記憶をダイレクトで見たおかげでブラストランナー寄りのISとでも言うべき機体になった。俺の作り主――篠ノ之束博士の事だ――でもこの変化はもう変えられない」

「待ってくれ、情報が多すぎる」

 

 

 いや本当に待って。

 つまりなんだ、今俺がしゃべっている相手はISコアに生えた人格で、今いるここは――

 

 

「精神と時の間!? 実在したというのか……!!」

「そこでネタに走れる辺り、相棒って結構大物だよな」

 

 

 当たり前だよなぁ!? 現実世界の時間を気にせず鍛錬に励めるご都合主義の塊にして全オタクの夢だぞ!?

 

 

「教えてくれ、この空間は寝ている時はいつでも使えるのか!?」

「めっちゃ食い気味で引くんだが……

 まぁ、ここはあくまでも相棒の心象風景を俺が『体験できる映像』として出力しているような物だからな。俺が普通に機能していて、相棒が望めば可能だ」

「助かった! いや本当に良かったぁ……」

「何をそんなに焦っているんだか……あぁ、そういえばアレがあったか」

 

 

 そう。学年別トーナメントがあったという事は、今は原作で2巻の最後のあたり。つまりあと少しで3巻、本格的な空中戦が起こる対『銀の福音』戦が近いのだ。

 

 織斑先生の話では飛行ユニットの製作が進んでいるらしいけれど、できた物をはいどーぞと渡されて即実戦にゴーだなんて、宇宙世紀の天パや、それこそ織斑くらいにしかできない芸当だ。何だよ初期設定もされていない機体で初めての戦闘に出て戦闘中に初期設定を行いワンオフアビリティ発動って。お前はロボアニメの主人公か。そうだったわ(2回目)

 

 

「相棒の考えている事を当ててやろうか? 飛行ユニットを装備した状態での訓練やら新しい兵装の調整やらをやるつもりだろう?」

「もちろん」

「まぁ良いけど、忘れるなよ? ここはあくまでも夢の中みたいなもんだ。ここで体験した事はハッキリ覚えている事もあれば綺麗さっぱり忘れる事だってあるんだぞ」

「効率が悪いのは承知の上さ。でも、仮にここで10学んだ内の半分を忘れたとしても、俺には5のノウハウが積まれる。毎日やっていけばそれなりの量にはなるだろう?」

 

「そうかもしれないが……

 いいか? 本来睡眠っていうのは一日の疲れを癒す事や、日中に得た情報を脳で処理するためのプロセスだったりするんだ。

 その時間を訓練に回すとなると相応のリスクが付いて回る事になるぞ」

 

「例えばどんな?」

「まずは体力的な面だな。疲労の回復が鈍くなるから却って日中の訓練に支障が出る可能性がある。徹夜するほどじゃないが、翌日にそれなりのしんどさが残るだろうな。

 次に脳の働き。前日の日中に得た知識が脳に刻まれなくなる、又は刻まれる量が減るから、結局相棒が記憶する知識の総量はちゃんと寝る時と比べて減る訳だ」

「……やっぱり世の中そう上手くいかないか」

「そういう事だ。まぁアリーナの予約が埋まっていて使えない時や長距離の移動中とか、そういった時にやる分には良いんじゃないか?」

「それはアリだな。良い事を聞いたよ」

「そうだろうそうだろう。

 

 ……ところで相棒。アンタが意識を失う前どんな状態だったか分かっているな?」

「? あぁ」

「落ち着いて聞いてくれ。

 相棒の身体は今絶対安静のボロボロな状態になってる。下手に動いたら死ぬかもしれん」

「はぁ!? いやでも俺、あの時普通に動けたぞ?」

「稀にあるんだよ。極度の興奮状態だったりして感覚がマヒすると、普通だったら動けないような状態でも普段以上の力が出せたりする事がな。相棒にも分かりやすく言うと『火事場の馬鹿力』って奴さ」

 

 

 そこで俺はVTシステムと戦った時の事を思い出してみる。

 初手で織斑先生未満とはいえヘヴィガードが吹き飛ぶほどの剣を腹に叩き込まれて吐血したな。吐血したって事は最低でも内臓にダメージを負っていると。

 その後に迫真地雷剣で自爆。1個踏んでもヤバいヘヴィマインの同時爆破を至近距離で浴びたな。

 

 

「……なぁ、今俺って本当に生きてる?」

「おう。生きて『は』いるぞ」

「腕とか脚とか無くなってたりしない?」

「くっついてるくっついてる。まぁ一時危なかったけれどナノマシン治療やら何やらのおかげで命は拾った感じだな」

「えぇ……(ドン引き)」

 

 

 自分で選んだ道とはいえ思ったより重傷でビビった。普通に死にかけじゃねーか。よく生きてたな。

 

 

「時に相棒。今の相棒の様子を見られるんだが、どうする?」

「何それ怖いけど気になる」

 

 

 何でも待機状態で腕に着いている機体のセンサーで周囲を走査するとかなんとか。

 

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

 

 男の声と共に目の前に投影された光景。それに俺は――

 

 

 ※※※※※

 

 

「……ぉ、ぁ?」

 

 

 プッ、プッという音が聞こえる。

 規則的に聞こえてくるこの電子音は心電図か。

 

 

「――ッ!?」

 

 

 身体を動かした瞬間に鈍い痛みが上半身を包み、思わず声にならない悲鳴が漏れる。

 

 

「レオさん!? 動いてはいけません! 今医師の方を呼びますので!」

 

 

 焦りに焦っているためかナースコールを押そうとしてお手玉をしている彼女には申し訳ないけれど、久々に聞くような気がする彼女の声に心地よさすら感じた。

 

 

「こ、こは……」

「都内の病院ですわ。学園の医務室ではレオさんの治療が難しかったものですから」

 

 

 やっぱりそうか。まぁ学校の医務室で内臓のダメージを治療できる方が何に備えているんだって感じで恐ろしいけど。

 

 すぐに廊下の方から慌ただしい雰囲気がしてくる。看護師さん達が来ているのだろう。

 

 

 言うなら今しかない。

 

 

「セ、シ、リア、さん」

「はい?」

 

 

 声を出すのも正直しんどい。けれどこれだけは言わなきゃいけないんだ。

 

 

「た、だいま」

「はい。おかえりなさい……!」

 

 

 ぽろぽろと、彼女の瞳から雫が溢れる。

 けれど、それでもセシリアさんはとびきりの笑顔で応えてくれたのだった。




アイサツは大事。古事記にも書いてある。
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