せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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UA50,000越えありがとうございますですわ!
誤字報告は日々の糧、最近見方を知ったここすきも作者のエネルギー源ですわ!

これで2巻は完結ですわ!


アリーナ以外でのISの使用はやめようね! 主人公との約束だ!

 結論から言うと、ナノマシンはやばかった。

 

 

 何アレ。内臓のダメージ以外にも打撲やら青あざやら色々ケガをしていた私だったけれど、その程度の軽いケガは、ナノマシンを打ってから数時間の内に消えてなくなったそうだ。

 では重い方のケガはどうか。それについても、なんと今日明日にも完治して退院できるとか。

 とはいってもナノマシンを打つために最低限体力が回復していないといけないため、2日ほど私は眠っていたのだとか。まぁ内臓損傷の重傷で入院期間が3~4日なら感謝すべきだろう。

 

 ちなみに私がこの身体になる切っ掛けになった事故でのケガはというと、脳へのダメージが結構重く、ナノマシン治療をもってしても時間がかかったのだという。

いやいや、普通に考えて脳に深刻なダメージって言ったら意識が戻れば奇跡だし後遺症が残らない時点でファンタジーだから。

 

 そういうわけで、無事に退院した私は、山田先生の運転する車でIS学園に向かうのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

 その車内で、

 

 

「はぁ……」

「どうかされましたか? ため息なんかついちゃって」

「あぁいえ、せっかく作成した資料が全て無駄になりまして……」

「それはご愁傷様です……」

 

 

 あるある。起案書類を回す直前に間違いを見つけて作り直しとかならまだ「間違いが見つかって良かった」ってなるけれど、上司とかにいきなり「○○が△△にったから」とか言われて内心で「はぁっ!?」ってなるやつ。

 ISでの社会人の仕事がどんなものかは分からないけれど、私の前世での仕事はそんなこと結構あったなぁ。

 やれ電子化だやれDXだって騒いでおきながら、電子システムで起案や添付書類を回して、それとは別に紙で印刷した資料も回すとか日常だったなぁ。会議資料を事前にメールで送付して、会議の時は各自印刷して持ってきてくださいとかアホなのかな? いや端末を持ち歩くリスクも理解はできるんだけどさ……

あとハンコが無駄とか言われてたけれど、アレ結局ハンコがサインになっただけだからね? 知ってるか分からないけれど、ハンコ押すよりサインする時間の方が長いんだよ?

そして滞納かましておいて「延滞金払うんだから良いだろう」とか言っちゃう人。貴方の支払う延滞金1,000円のために督促状の印刷費やら郵送費やら貴方に催告する人の人件費やらで軽くこっちが赤字なんですわ。極論だけれど滞納する人がいなくなれば取立部門の人間をまるっと別の仕事に回せるからコスト抑えられるんですわ。

 

 

 おっといけない。つい前世からの恨みつらみが。

 みんなは納めるものはちゃんと納めようね!

 

 

「とはいっても山田先生、さすがに今のご時世紙での仕事ってあまりないのでは?」

「そう思うかもしれませんが、リスクマネジメントの一つで情報媒体は複数用意しておいた方が良かったりするんです。特にIS学園は特殊な状況ですから、日頃からハッキング等の脅威もありますしね」

「……言われてみればその通りかもしれませんね。紙媒体なら直接侵入でもしない限り覗き見る事も出来ない訳ですし」

「その通りです。紙もデジタルも一長一短なんですよ」

 

 

 最先端のさらに先っちょなイメージのあるIS学園でもそういう所ってあるんだなと、正直ちょっと意外だった。

 

 そこまで学園から遠くない場所にある病院だったらしく、話している内にあっという間にIS学園までたどり着いた。

 

 

「はい、到着しました」

「送っていただきありがとうございました」

「いえいえ。シキシマ君は病み上がりなんですから、無理はしないでくださいね?」

「前向きに検討しますが、状況に応じて臨機応変に対応しますので確約はしかねます」

「大人のはぐらかし方!?」

 

 

 学園の公用車を駐車場に置いてくると言って去っていった山田先生を見送ると、入院中の荷物が詰まったバッグを戻すべく私は寮へと歩き出した。

 

 

 ※※※※※

 

 

 大きめのケガとかインフルエンザとかでしばらく休んだ後教室に入る時ってちょっと緊張しない?

 

 私は今まさにそんな感じだった。

 

 山田先生が朝の内に迎えに来てくれたため、今は朝のHRの5分ちょっと前といった時間だ。事情でもない限りほぼ全員の生徒がもう席について、おしゃべりでもしているのが普通。実際廊下には各教室から談笑の声が聞こえてくる。

 ごくごく普通に考えれば「おはよー」と入っていけば良いのだろうけれど、それもなんだかつまらないような気がする。サプライズをしたいとはいえ負傷入院で心配をかけた身としては不謹慎なネタも良くない。

 

 ――内臓損傷で血反吐を吐いて病院に担ぎ込まれた人間が3~4日で復帰する時点でビッグなサプライズだという事に気が付かないまま、私は段ボールを貰いに職員室へと向かうのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「……で? サプライズを仕掛けたいから段ボールが欲しい、と。

 

 馬鹿か貴様は」

 

 

 職員室で織斑先生に事情を話すなりアホを見る目で見つめられることになりました。

 

 

「いやぁ、見ての通り元気ですよーという点をアピールする狙いもありまして……」

「普通に行けば良いだろう。

 いいか? 入院時のお前の状態は、内臓の損傷が3か所、両腕の骨折、肋骨も2本粉々になり、脱臼や捻挫は2桁に達していたんだぞ?

 ナノマシンによる治療が無ければまず助かっていないケガだ。それに病院からは内臓の損傷を最優先で回復させただけで骨折については完治に時間がかかるから当分ISでの訓練はさせないように通知が来ている」

「え゛」

 

 

 限りなく致命傷じゃねーか。マジでよく生きてたな私。

 

 

「間が悪いというか何というか……お前も災難だな。折角飛行ユニットの試作機も完成したというのに」

「え゛ぇ゛」

 

 

 嘘でしょ……? 試運転を済ませて大丈夫そうならその日の内から訓練を始めたかったのに……

 

 

「よし、頭は冷えたな。私が教室に行くまでに着席していれば遅刻にはカウントしないでやる。さっさと行け」

「はい……」

 

 

 もはやサプライズどころではなくなった私は、とぼとぼと去るしかなかったのだ。

 

 

 ※※※※※

 

 

 出席簿アタック(ガチ)を避けるべく急ぎ足で戻ったため、どうにか織斑先生より先に教室に戻ってくることができた。

 

 

「おはようございますー」

 

 

 何のことはない普通の挨拶をしながら扉を開ける。

 その途端、世界が止まった。

 

 

「え、何どういう状況?」

 

 

 それまで談笑していたクラスメートたちが一瞬で静かになり、自分の顔をガン見してくるのだ。結構恐怖だったりする。

 

 

「んな、レオ、おま」

「落ち着け織斑、せめて人の言葉を頼む」

「お前何でいるんだよ!?」

「いや言い方」

 

 

 言いたいことは分かるよ? テンパって変な言葉になってしまったのも分かるから、報復はなしにしておいてあげよう。

 

 

「あーそれなんだけどな。

 とりあえずもう大丈夫って事で退院しました。皆さん、ご心配をおかけしました」

 

 

 聞き耳どころか体ごとこちらに向けて話を聞いているクラスのみんなに頭を下げる。実際、クラスメートが重傷を負って入院したとあっては心配にならない方が少数だろう。私の後ろの席のお嬢様もその様子だった。

 

 

「レオさん、本当に大丈夫なんですか?」

「えぇ、見ての通りです。もっとも完調ではないのでしばらくISの訓練は中止ですが……」

「当たり前です!

 

 皆さんも、そしてわたくしも、どれだけ心配したか……!」

「……すみません」

 

 

 古来より女性を泣かせた男にできる事は謝る一択だ。ましてや美しい女性の涙が持つ威力は核兵器をも上回る。

 

 

「許しません」

「許してください」

「ダメです」

「……条件は?」

「すんっ……今度の週末、湾岸エリアのショッピングモール」

「それって1日コースなんじゃ……」

「文句を言えるとお思いで?」

「いえ、ないです……」

 

(レオの奴が完封されてる……)

(と言うよりかは尻に敷かれているな……)

(シキシマ君も女性には弱いんだねぇ)

「……」

 

 

 そこ、小声のつもりだろうけどしっかり聞こえてるからな? チクショウ、人の不幸がそんなに美味いか。

 

 

「よし、全員揃っているな。HRを始める」

「それでは、楽しみにしていますね?」

 

 

 セシリアさんが耳元で囁く。織斑先生が来た以上こっちが振り返れない事を知っているからか、声にはからかいの色が随分と含まれていたのだった。

 

 

「……連絡事項は以上だ。

 そしてボーデヴィッヒ。言いたいことがあるんだったな?」

「はい」

 

 

 ガタリ、と、ラウラさんが立ち上がる。そのまま彼女は教壇まで歩いていき、

 

 

「……その、レオ。

すまないが来てもらえないだろうか」

 

 

 その言葉で、これから彼女が何をするのかピンと来た。

 そうか、彼女は一歩を踏み出すって決めたんだ。

 

 私も立ち上がり、彼女のそばに歩いていく。隣より少し後ろくらいの場所へ。

 

 

「……ありがとう」

「約束したからね」

 

 

 小声でのやり取りの後、ラウラさんは語りだした。

 

 

「その、私のこれまでの態度が色々と問題があった事は理解している。

 何をいまさらと思われるかもしれないが、それでも謝りたい。

 

 本当に、すまなかった。

 

 改めて挨拶をさせてほしい。

 私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツから来た。現役の軍人でもあるため言葉遣いが固くなってしまうと思うが、ISの事なら色々と答えられるとも思う。

 これまで軍隊生活が長かったからみんなと話が嚙み合わない事も、趣味が合わない事もあると思うが、

 

 

 その……よろしくお願いします」

 

 

 緊張しているのだろう。小さく震えながらも、それでもしっかり言い切り、頭を下げた彼女に。

 

 

 パチパチと、拍手が聞こえる。

 

 まず立ち上がったのはセシリアさんだった。

 次に織斑が立ち、デュノアさんが、篠ノ之さんが、後はもうみんな一斉だった。

 

 

「ね? みんないい人でしょう?」

「あぁ……本当だな」

 

 

 声の震えも、少しだけ見えた雫にも気が付かなかった。

 だからこそ、本職の軍人の奇襲に対応できなかった。

 

 ただでさえ自分より背の低いラウラさんが、さらに腰を低くして私に駆け寄り、流れるように襟首を掴まれて姿勢を崩し、

 

 

「え――むぐぅ!?」

 

 

 気が付くと、視界いっぱいにラウラさんの顔があった。

 ファーストキスは○○の味、っていう少女漫画のうたい文句はきっとリップか何かの宣伝なんだろうなって、意味不明な思考しかできなかった。

 

 

「に、日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた!

 だから私もレオの事を嫁にする! 異論は認めん!」

 

「「「き」」」

「き?」

 

 

 あ、嫌な予感。

 

 

「「「きゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!??????」」」

 

 

 窓ガラスが吹き飛ぶんじゃないかってくらいの黄色い悲鳴。耳が……鼓膜が……

 

 

「キスした!? ねぇ今キスしたよね!?」

「圧倒的プロポーズ! ちょっと勘違いしてるっぽいけど関係ないわね!」

「授業どころじゃないわ! 新聞部に」

「新聞部はヤメロォ!!」

 

 

 最後に不穏な事を口走った子だけは全力で止めた。けれど、最適解は違ったようだ。

 

 

 ジャキっと。

 目の前どころか鼻にくっつくくらいの場所にパイプのような物が突きつけられる。

 

 

「レオさん。

 説明をいただけますか。

 わたくしは今、冷静さを欠こうとしています」

 

 

 そっかぁ、コレ、鉄パイプじゃなくってセシリアさんのスターライトMkⅡかぁ。

 死ぬわ。

 

 

「落ち着いて聞いてください。

 今のは私に落ち度ないですよねぇ?」

「それが遺言でよろしいでしょうか?」

「良いわけあるかぁ!?」

 

 

 教室前方の扉、ダメだ女子たちが壁になってて行きつけない!

 教室後方の扉、却下。目の前のセシリアさんをどうにかしないと無理!

 だったら残るは。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「待ちなさぁぁい!!!」

 

 

 狙うは窓! この高さならワンチャン行けるし、最悪ブラストを展開して――

 

 

「ぐえっ!?」

 

 

 何だ!? 身体が、動かない!?

 

 

「病み上がりなのに無理をするな。全く、嫁には困ったものだな」

 

 

 あぁそうだったね。確かに私の身体はボロボロだったね。

 でもねラウラさん。今ここから逃げないとさらにボロボロにされちゃうの。

 

 

「ふふふ。どうして逃げようとしたのかも含めてちょっとお話よろしいでしょうか?」

「待ってくれセシリア。嫁に――」

 

 

セシリアさんとラウラさんが何やら言い争いを始めた。今がチャンス!

 

 

「って、何で、身体が――まさかAIC!?」

「うむ。どうやらセシリアと決着を付けないといけないようだからな。それまで嫁にはじっとしていてもらおう」

「当然わたくしが勝ちますが、その後は覚悟してくださいね?」

 

 

「だ、誰か! 誰か助けてえええええええ!!!!!!」

 

 

 この後全員、織斑先生の出席簿でシバかれた。




 これにて2巻完了ですわ!
 マジでラウラがレオに堕ちるのは書いてるワタクシでも予想外でしたの。
 私が尊敬する作家の有川浩さんは、小説を書く時『キャラクターたちの生活を透明なカメラで撮影させてもらっている』と表現されていました。私が物語を描く時もそんな感じで、キャラクターの予想外にも程がある動きに荒縄で括られた私はボロボロになりながらついて行ってるようなものなのです。
 なので私は基本的にその場のノリで書いてるようなものですの。
 矛盾とかがないようにはしていますがもし今後そういった点が出てきたらご教示願いますわ!

 次の回からはいよいよ山場の3巻ですわ! ボダブレ要素やゲロ甘要素もしっかり出していくつもりですわ!!
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