せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
「良かった、本当にもう1人男がいたんだ……!」
平年より少し遅れて咲いた桜は新たな環境に身を置く者たちを祝福するかのように、入学式シーズンに満開になった。
春の風が吹く度に、僅かに残った冬の気配が消えていくそんな今日この頃。
(ひぇ……めっちゃ視線感じる……)
私、レオ・シキシマは晴れてIS学園の新1年生として教室に入り、何故か半泣きの『1人目』、織斑一夏から絡まれ、それに加えて教室中の人間から視線を浴びていた。
この世界の父さん、母さん。私はここでやっていけるかとても不安です。
※※※※※
およそ10分前
生活の場となる寮から校舎へと歩きながら、私は自分の服装にちょっとドギマギしていた。
思い出してみると、前世も含めて普通の高校の制服はブレザーや学ラン、たまに私服OKの学校もあったりするが、だいたいのテンプレートは決まっていた。
ではここ、IS学園の制服はというと。
(うーん、白い。んでもってカスタム自由だから統一感皆無。というか私が着ると途端にコスプレ臭凄くなるのなんなん?
やたら近未来チックなのだけは共通のデザインだけど、それ以外の全てで共通点を見いだせない。まさか生徒の要望に応じてオーダーメイドしてるのか? お金幾らかけてるんだよ、てか担当者が地獄を見るぞ……?)
社会人だった頃の名残でつい仕事にまで考えが回り、誰とも知らない担当者に黙祷を捧げつつも歩けば、あっという間に校舎にたどり着いた。着いてしまった。
というか、意識しないようにしていたけれど、朝自室から出た瞬間から周囲の視線が刺さる事刺さる事。
廊下に出る→廊下にいた女子たちが無言になり控えめに見てくる。ヒソヒソ話もセット。
寮の食堂に行く→それまで食堂でおしゃべりやご飯を楽しんでいた女子たちが一斉に動きを止め、ついでこちらをチラチラ見ながらヒソヒソ話。ただし人数が多いからか「あの人が……」とか「2人目の……」とか単語が聞こえてくる。
校舎までの道のり→だいたい同じだから省略。
(原作でコレを1人で耐え抜いた織斑一夏は凄いな。ハーレムが男の夢なのは間違いないけどコレはしんどいって)
うろ覚えだけれど、2巻あたりでシャルが最初男子として転入してきた時めっちゃ喜んでた気がする。この状況をしばらく味わって『仲間が増えましたよ!』なんて言われた日にはそりゃあ喜ぶ訳だよ。
まぁその人シャルル君じゃなくてシャルロットちゃんなんですけどね!(2推し)シャルロッ党員の方々が彼女を推す気持ちはよく分かるが、私はオルコッ党員である(迫真)って待てよ?
(もしかしなくとも、この後原作キャラ達と学園生活送るの? 待って、心の準備ががががいやダメだしっかりしろ陰キャムーヴなんて9割女子高でかました日には死ぬぅ!)
※この間0.2秒
まだまだ花粉の季節で良かった。変顔を晒してはいなかったと信じたいが、マスクもつけてるし大丈夫だったはずだ。
(ISって一夏のクソボケとヒロイン達の魅力に隠れちゃってるけど結構ガチなバトルもあったよな? どうしよ、いつ頃に何があるとか全然覚えてないや。夏の臨海学校で『銀の福音』とかいう軍用ISと激戦するのだけは覚えてるけど)
いつの時代も情報は力だ。私というイレギュラーが存在する以上この世界は原作とは既に違う歩みを進んでいるのかもしれないが、後でいつ何が起こるか思い出せるだけ書き出しておこうと決めた。
……とまぁ、重要なこととはいえ考え事をしていた私は、自分のクラス目の前まで進んでいる事に気が付かなかったのだ。
(よし、落ち着けレオ・シキシマ。この扉の先にいる人たちは物語の登場人物とはいえそれぞれが今を生きている人間なんだ。だったら初対面の相手にすることは挨拶に決まってる。
アイサツは大事。古事記にも書いてある)
かくして私は意を決して教室の扉を開き、
「も、もしかしてアンタが『もう1人の男子・レオ・シキシマ』か!? 良かった、本当にもう1人男がいたんだ……!」
高校1年生にしては長身で、爽やかながらもあどけなさの残るイケメンが、半泣きで絡んできたのである。
「お、おぅ。そういう君はもしかしなくても織斑さんか」
「一夏でいいよ、レオって呼んでもいいか?」
「呼び方は何でも大丈夫だけど、流石に初対面の相手を名前呼びはアレだから、慣れるまでは苗字で呼ばせてほしいな」
「あ、そっか。悪い、ちょっと馴れ馴れしくし過ぎたな」
「いや、気にしないでいいよ。私が身構え過ぎなんだよ」
「そうか、まぁでも」
一旦言葉を区切った織斑は右手を差し出して、
「これからよろしくな!」
「あぁ、こっちこそよろしく」
すげぇ、なんだこのコミュ力おばけ。よろしくなって握手求めるのとか様になりすぎてんだろ。というか目の錯覚かな? にっこり笑うと歯がキラッて光る気がするんだが?
すると織斑が突然顔を寄せてきて、内緒話の構えを取る。
「正直言って俺ここまで注目されるとは思わなかったわ。同じ中学のダチがハーレムとか言ってたけど無理無理」
「分かる。どこに行くにしろその場が一瞬静まり返るのとか気まずい。やっぱりハーレムとかモテモテとかは架空の世界だから良いんだろうな」
「それな! まぁいずれみんな俺たちにも慣れてくれるだろ」
「これも有名税って奴かね……お、予鈴か。やべ、自分の席確認してなかったなちょっと見てくるよ」
「おう!」
どうやら思っていたより会話が弾んでいたらしく、少し余裕を持って教室に入ったはずなのに、気づけば朝のHRの5分前になっていた。
着席して、両隣のクラスメートと、前と後ろの人にも挨拶。後ろの人はなんだかそっけなかったけれど、返事は返してくれた。虫の居所が悪いのか知らないけれど、今はそっとしておこう。
……美人さんが不機嫌そうな顔をしてると怖さ倍増するよね。
いよいよ本鈴が鳴り、起動試験の時の試験官を務めていたロリ巨にゅ……もとい、トランジスタグラマーな山田先生の挨拶に続いてそれぞれの自己紹介が始まる。どうでもいいけど相川さんってこれまで出席番号1番譲ったことなさそう(小並感)。あと織斑よ、このクラスの全員が君(あと一応私も)の情報を求めているんだぞ。自己紹介は捻るとまでは言わないけれどもう少し、例えば趣味とかをですね……?
(あれ? でも山田先生って副担任なんだ。なら担任の先生はどこに?)
なんて考えていると
スパァン!!
ハリセンより硬い、板か何かでぶっ叩いたような音が教室に響く。そして頭を押さえて悶絶する織斑の近くで、凶器らしき名簿を持った女性が1人。待て、あの顔前に見たぞ。
「げぇっ、関羽!」
スパァン!!
おぉ哀れな。この2連撃で彼の脳細胞が相当数逝ったぞ。だが正直関羽は分かる。次点で呂布とかどうよ。
「どうかしたか、シキシマ」
「いいえ、何でもありません。織斑先生」
覇気で気絶しそう。おっかないったらない、マジで心読んでいるのか?
そして判明する戦慄の新事実。このクラスの担任こそ、先日私の尋問を行った織斑先生だったのである。これはアレか? 普段の監視と、私が変なことをしようものなら即鎮圧するための要員とかか?
先生って基本激務って聞くし私の勘違いだったらいいなぁ……
思わず遠い目になりかける私の鼓膜をとんでもない大きさの音がぶっ叩いた。何? 音爆弾?
そこから先のクラスの混迷は、あの織斑先生をも辟易させるものだった。ていうかこの騒ぎ毎年の恒例行事なのかよ。でも大騒ぎする気持ちも分かる。なんてったって織斑先生だ。世界最強の代名詞、ブリュンヒルデを背負う人が目の前にいて、しかもその人から指導を受けられる。この学園に来る人でそれに喜ばない人なんていないと思う。
大騒ぎのHRが終わると、生徒の方の織斑が一人の女生徒に呼ばれて廊下に出て行った。うん、箒=サンですねあの人。原作では暴力系ヒロインになりつつあったけど後で軌道修正に成功したって噂で聞いたよ、おめでとう。
さて、そろそろ現実を見よう。
私の後ろの席の子、セシリア・オルコットさんやんけ!?
3話しかあげてないのに評価入ってて死ぬほどビビった私です。
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