せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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誤字脱字報告で生きていると言っても過言ですわ!

角砂糖5〜6個入れましたわ〜!


夜討ち朝駆けは戦の華。ふざけんな睡眠時間返せ。

 朝。携帯の目覚ましが6時になった事を教えてくれる。

 寝起きが楽になった事と油ものを無限に食べられる事は若さの特権。精一杯行使していこうと思ったところで右腕が痺れている事に気が付いた。

 寝ている間に変な姿勢になってしまったか。とりあえずマッサージでもするべく左手を使って腕を引き抜こうとして

 

 布団の中にいるラウラさんを見つけた。

 

 

「Wait. What?」

 

 

 何が、起きている?

 起きた、腕が痺れていた、確認したら布団の中に女生徒がいた。

 ダメだ、訳が分からない。

 鍵はどうした。昨夜確かに閉めたはずなのだが。

 というか待て、何故肩が出ている。

 

 

「んぅ……? 朝か」

「ふぁっ!?」

 

 

 認識と悲鳴と行動は全てがコンマ2秒以内に行われた。

 上体を起こしたラウラさん。その背中はあまりにも『白かった』。そう、まるで何も身に着けていないかのように。

 よう、じゃない。本当に何も身に着けていないんだ。その認識が寝起きの脳みそにこれでもかと衝撃を与え、思わず口から大声が飛び出す。

 そして『女性の柔肌→っ見てはいけない』という当たり前の計算がなされ、私は電光石火の速度でラウラさんに背を向けたのだった。

 

 

「どうしたのだ? いきなり大きな声を出して」

「どうしたはこっちのセリフかなぁ!? なんで私の部屋に? てか何故裸!?」

「夫婦が同じベッドで寝るのは当然のことだろう? あと私は寝る時はいつもコレだ」

「そもそも結婚以前の問題じゃぁああああああああ!!!」

 

 

 結局、ラウラさんをどうにか部屋の外に追いやるまでに10分の時間が必要だった。あと、オルコッ党員として誓ってラウラさんの背中以外は見ていないと断じておこうと思う。誰にだ、誰かにだ。

 

 

 ※※※※※

 

 

「あ、朝からエラい目にあった……」

 

 

 夜討ち朝駆けは戦の常かもしれないし卑怯汚いは敗者の戯言なんだろうけれど、それでも不意打ちをかまされた身としては文句の10や20も言いたくなる。

 

 

「おはようございますレオさん。あら? お疲れのようですが何かありましたか?」

「おはようございますセシリアさん。いえ、その」

 

 

 ありのままを口に出そうとした瞬間、私の脳裏に電撃が走った!

 

 

(いや待て。朝からあんなラブコメまがいのトラブルが起こったんだ。ここでウカツにも起こった事をそのまま言おうものなら何かしらのラブコメ的トラブルが起こる可能性もあり得る……!)

 

 

 ちなみにこの間コンマ1秒未満である。

 

 

「実を言いますとこの前の戦闘データを検証していたら夜更かしをしてしまって……」

「あら、それはいけませんわ。レオさんもご存じかと思いますが夜更かしは翌日に響きますので」

「おっしゃる通りですね。っと失礼……ふわぁ」

「あらあら。ふふ」

 

 

 このあくび以外はほとんど偽情報である。しかし全てが嘘ではない、というのがポイントだ。昨夜に過去の戦闘データを検証していたのは本当だけれど、夜更かしはしていない。22時くらいには切り上げている。

 

 

(嘘を隠すなら真実の中に。誰が言ったか忘れたけど至言だよなぁ)

 

 

「ところでレオさん」

「なんです?」

「どうして肩にラウラさんの髪が付いているんです?」

「何っ!? ってしまった!」

 

 

 ここで思い出してほしい。IS学園の制服は基本的に真っ白だ。当然今私が着ている男子用のシャツも真っ白で、ラウラさんの銀髪が1本2本くっついていたところでかなりよく見ないと分かるはずがないのだ。つまり、これは、

 

 

「カマ、かけ……!」

「正解です。

 レオさん。どうしてそんなに慌てて肩を確認したんです? そして『しまった』とはどういう意味でしょうか?

 詳  し  く  、お話よろしいでしょうか?」

 

 

 進退、極まれり。まさに万事休す。

 魑魅魍魎蠢く貴族社会で10代の若さで当主として頑張っているセシリアさんに、私程度の浅知恵が通用するはずも無かったか……

 チラとセシリアさんの顔色を伺う。アカン、めっちゃ怒ってる。口調が穏やかで口元は笑ってるけれど目が怒ってらっしゃる。

 

 

「ま、待ってください。話せば分かります」

「話して分からない内容ならどうします?」

「」

 

 

 どうしましょうねぇ!?

 

 

「うわっ!?」

 

 

 一瞬の浮遊感。そして背中に柔らかい衝撃。どうやらセシリアさんの圧に圧されて後退していく内に談話室のソファーにつまずいてしまったみたいだ。

 慌てて起き上がろうとして――顔のすぐ隣に手が置かれ、動きを封じられた。

 誰に? 決まっている。口元は微笑みながらもやはり目が笑っていないセシリアさんにだ。

 

 

「動かないでくださいね」

「いや待って。この姿勢は流石にどうかなぁって思うんですが」

「だから?」

「え、いやこの姿勢は」

「何か問題でも?」

 

 

 あるんだよなぁ主に私の心臓が!

 

 当方、ただいま推しに床ドンされた上に推しと見つめ合っている状況なり。天国かな? そういや私はもう死んでいたんだっけ、ガハハ(クソ寒転生者ギャグ)

 いやでもね、今こうしてセシリアさんに覆いかぶさられているような状況で自由の身になろうと思ったらセシリアさんをどかさないといけない訳で。それはつまり彼女の腕なり肩なりを掴んでどうにかするって事で。

 

 推しにそんな事できるオタクいるぅ!? いねぇよねぁ!?

 

 というかセシリアさん待って。何ですその瞳は。完全に獲物を捕らえた肉食獣の目なんですが。え、何。私喰われるの? 朝っぱらから、寮の共用スペースにあるソファーで喰われてしまうの?

 

 ちょっと興奮してきた私に私が一番驚いている。バカな、SM物はそこまで興味無かった筈なのに。あ、でもセシリアさんって軍服バチクソに似合いそう。海軍士官とかどうでしょう。

 

 

「……アンタら、朝から盛ってんじゃないわよ!」

「ひゃうっ!?」

 

 

 下手をすればそのままR17タグくらいまで行ってしまいそうだった空気を何とかしてくれたのは、鳳さんだった。ずびし、と音がしそうな手刀がセシリアさんの頭に入り、彼女も、そして私も正気に返る。

 

 

「まったくもう……一体全体何やってんのよ」

「レオさんの様子が挙動不審だったもので」

「抵抗しなかったから有罪ですかね私」

「……本当あったま痛くなってきた。アンタら見つかったのがアタシだったことに感謝しなさい。これが千冬さん、もとい織斑先生だったらタダじゃ済まなかったわよ」

「うっ。それは確かにそうですわね……ヤるなら部屋の中ですべきでしたか」

「ありがとう。後で織斑の情報横流しするね……」

「アンタら反省してないでしょ!?」

 

 

 ちょっと残念に思っているのは事実だから何も言えない私であった。

 

 

 ※※※※※

 

 

 さて、重火力兵装の解放やら各種武器の試し撃ち祭りでのヒャッハーやら早朝からのラウラさんによる奇襲やセシリアさんによる強襲ですっかり忘れてしまっていたのだが、私の飛行ユニットがついに完成し、今も連続稼働試験を行っている。整備科の人に聞いた話ではとりあえず72時間稼働させて、大丈夫そうならいよいよブラストに取り付けての実機試験を行うのだそうな。昨日の時点で稼働時間が50時間を超えていたから、今日の夕方には72時間に到達するだろう。実機試験の段階になったら連絡が来る手筈になっている。

 ではそれまで何もせずに過ごすのかと言われたら、当然そんな訳もなく。

 

 

『また随分と増えたな……』

「私的には戦術の幅が広がるのでありがたくもあります」

『自爆されるこちらとしても心臓に悪い場面が減るのは歓迎だな」

「うっ……」

 

 

 放課後、いつものように織斑先生や山田先生にご足労いただき、アリーナで新しい機体や武器の試験を行っていた。

 両手で抱えるようにして持たないといけないガトリングガンの束になった銃身が回転を始め、すぐにヴァアアアというかブォオオオといった感じの轟音と共に銃弾がビームのように連なって発射される。あんまりぶっ続けで撃ち続けると銃身が焼け付いてオーバーヒートしてしまうため、視界に投影されたオーバーヒートの目盛りを確認しながら撃つのを止めたりしている。弾薬の消費は半端じゃないけれど、そもそものマガジン容量が多いから大抵は1マガジンを撃ち切る前に相手を撃破できるのがこのガトリングガンの売りだ。

 

 

「ふっ……んんのぉぉぉっ!!」

 

 

 では敵が複数いたらどうするか? 撃ちながら銃身をブン回して照準するのだ。

 複数の銃身、樽のような弾倉――これぞ本当のドラムマガジン、なんちゃって――制御装置もろもろ込みのガトリングガンはそりゃあもう重い。軽量機で持ち運びしようものならその重量故に大幅な機動力の減少を招くし、これはこの世界で実際に撃ってみてよく理解できた事だけれど、撃っていると反動を相殺しきれずにちょっと押し戻される。機体そのものの重量が大きい重量機ならドンと構えて微動だにもせずに撃ち続けられると思う。

 

 

『シキシマ、一度戻ってこい。至急の用件だ』

「分かりました」

 

 

 カラカラと若干回転し続けているガトリングガンや実体化していた武器を量子に変換する。ミリタリー的に考えたら射撃後ノータイムで武器庫にリスクなしで入れられるって相当便利だよね。普通に考えたらマガジンから弾抜いたりとか銃身の掃除とか整備だってしなきゃいけないし。

 脇道に思考が逸れている間に銃器の片づけは完了した。後はピットに戻って機体を解除すればそれでお終いである。

 

 

『あぁ、ISスーツのままでいいぞ。また機体を展開する事になるからな』

「またって……まさか!」

『そのまさかだ。

喜べ、お待ちかねの飛行ユニット実機試験だぞ』

 

 

 過去イチ速くピットに戻った。

 

 

 ※※※※※

 

 

「失礼します。あれ? ラウラさんにセシリアまで」

「後にしろ。これから試験の概要を説明する」

「分かりました」

 

 

 そして始まる今回の飛行ユニットについての説明。

 なんでも今回整備科の面々は全く同じ条件で2組の飛行ユニットを作っていたそうな。そして1組目の連続稼働試験を行い、これについては72時間を超えても安定して動作しているのだとか。なのでもう2組目を使って実機試験を行うというのが今回の試験の概要だ。ちなみにこの2組目の飛行ユニットについても48時間の連続稼働試験を行っているため、安全性はまず大丈夫だとの事。

 

 

「試験概要については分かりました。ですが、セシリアさんにラウラさんについてはどういった理由で?」

「あくまでも保険だ。今回の試験中2人はシキシマに並走する。あってはならないが万が一のアクシデントに備えるためにな」

「とは申しましてもわたくし達としてもIS学園整備科の合作――言ってしまえば世界中から集まった将来有望なエンジニアですわ――でできた最新の飛行ユニットとなれば間近で観察できるのは嬉しい話でもありますわ」

「私はAICがあるからな。嫁の機体にトラブルがあれば安全に救出する事が可能だ。あとセシリアは真っ先に立候補したのだから普通に嫁の事を助けたかったからと言えば良いのではないか?」

「ラ、ラウラさん!」

「2人とも、そこまでにしておけよ。

 と、まぁこんな調子で安全対策も考えられる限りの用意をした。あとはテストパイロットたるシキシマの同意だけだが……確認は不要のようだな」

「はい、織斑先生。

レオ・シキシマ、今回の実機試験のテストパイロットに志願します」

「わかった。

 試験開始は1830時を予定している。整備科の連中が手ぐすねを引いて待っているぞ。行って挨拶してやれ」

「わかりました」

 

 

 織斑先生の声に、私はその場を後にするのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「失礼します、1年1組のレオ・シキシマです!」

 

 

 整備科の人たちに挨拶するために、私がまずしないといけなかったのはスピーカーの電源を入れる事だった。

 本格的に稼働している格納庫というのは、それはもううるさい。ISはPICで慣性をゼロにする事により重量物もラクラク運んでいるが、PIC無しでISの機体や武装(重いものでは航空機用のガトリング砲や戦車砲なんてものもある)を運ぼうと思ったら重機が必要だ。そういった重機のエンジン音や重機が動く時に周辺に危険を知らせるアナウンス、エンジニアチームは常に話し合っているからにして人の声、ISをアリーナに射出させるカタパルト等々、ありとあらゆるものが大きな音を発生させるのだ。隣の人と話すのだって大声で叫び合わないといけない。

 

 マイクに向かって結構大きめの声を出してからほどなくして、見覚えのある女子がこちらに歩いてきた。

 

 

「あれ、のほほんさん?」

「やほやほ~」

 

 

 布仏(のほとけ)本音さん、通称のほほんさん。1組のクラスメートにして整備科の一員。春先にあったアホによる私への犯罪予告の時は警護をしてくれたという謎多き女子だ。いや、警護って本当どういう事なんだよ。

 結局、織斑先生によれば私に襲撃予告をかましたおバカさんはあっさり捕まったそうな。女尊男卑思考に頭の先まで漬かった過激派の女にとって、私は存在そのものが許せなかったとか供述していたらしい。

 既に刑務所にぶち込まれた犯罪者の事はどうでもいい。今はのほほんさんへの対応が先だ。

 

 

「今回の件のほほんさんもプロジェクトの一員だったんだ?」

「ふふふ~そうなのだ~

 そしてレオレオとクラスメートな私はこうして案内係もこなすのだ~

 あ、ここうるさいからこのヘッドフォン着けてね~」

 

 

 かわいい(かわいい)。ゆるふわ女子っていいよね。

 そしてのほほんさんから渡されたヘッドフォンを装着する。これ、どこかで見た覚えがあるんだよな……あ、空母の甲板にいる整備班の人たちが着けてる奴じゃん! やば、テンション上がる。発艦の時のあの指さすポーズって良いよね。

 

 

『テステス~聞こえる?』

「大丈夫ですよ」

『じゃあ私に付いてきてね~』

 

 

 そして、喧騒の中を歩くこと数分。

 

 

『はーい、レオレオを連れてきました~』

「レオ・シキシマです。よろし――」

 挨拶も終えない内から、私は整備科の女子たちに取り囲まれたのだった。




そら(普段男子と接点のない整備科の中に男子が紛れ込めば)そう(もなる)よ
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