せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

44 / 85
夏コミなので初投稿です(未参加)

来週は1話くらいしかあげられなさそうです。


みんな大好きなあの人が登場だ!

 飛行ユニットの実機試験は無事完了、最大出力でぶっ飛んでも大丈夫だって事を実機で証明して私としてもひと安心だ。

 

 

「さて、いよいよ来週から臨海合宿な訳だが」

 

 

 前言撤回、何も安心できる要素なかったわ。

 マジで? こんな早かったっけ?

 飛行ユニットの試験は昨日行ったばかりだ。今頃昨日のデータをフィードバックするために整備科の皆さんが盛大に弄り回している所だろう。うら若き乙女たちにあんな所やこんな所を弄りまわされる、と……ふむ、閃いた。

 

 アホな事考えている場合じゃない。原作ではどうだったっけ? 確か福音戦は3巻だったよね? 配られた資料によれば合宿初日は1日自由時間ってあるからエンタメ的にはそこが水着回なはず。そうなると福音がやってくるのは2日目か。

 今日は――水曜日だから、合宿まで……ウソでしょ、あと1週間くらいしか無いやんけぇ!

 

 クラスメートのざわめきが、どこか遠く感じられた。

 

 

 ※※※※※

 

 

「……オ、おいレオ!」

「んぁ!? おう織斑、どうした?」

「どうしたはこっちのセリフだぜ? さっきから何度も声かけてんのに上の空だったからさ」

「マジで? ごめんごめん、結構集中して考え事してたかも」

「来週の臨海合宿の事か?」

「そうそう。海なんて久々だし、水着とかもどうしようかなぁって。去年から結構背も伸びたからたぶん去年のヤツは使えないだろうし」

「あ、それたぶん俺もそうかも。

 ! そうだ、ならさ、この週末買いに行かね?」

「お、いいね。そうなると行くなら『レゾナンス』辺りか」

「そうそう、たまには男女比がまともな所に行かねーと、感覚がおかしくなりそうだしな」

「それ言えてる」

「ね、ねぇ!」

 

 

 まさか「合宿中にマッドな天災にハックされた最新鋭の軍用ISが殴り込んでくるからその対策を考えてた」なんて言えず、適当な答えで誤魔化すと、意外にもデュノアさんが食いついてきた。

 

 

「どうかしましたか?」

「う、うん。もし良ければなんだけど、ボクも一緒に行っても良いかなって」

「シャルロットもか?」

「うん。ボクも水着持ってないし、買い出しに行こうにもあんまり地理に詳しくなくって……」

 

 

 あっ(察し)

 オーケー、みなまで言うなよデュノアさん。

 地理に詳しくないっていうお題目で織斑とデートしたいって腹積もりだな?

 だったら私がいるのは彼女に悪い、お邪魔虫はクールに去るぜ。

 

 

「あーしまったー、悪い織斑、そういやその日テストパイロット関連の打ち合わせがあるんだったー。

 何時間か遅れるかもだから先に2人で探していてくれー。

 何、男の水着選びなんてちょっと見ればすぐ済むから心配するなー」

「とんでもありませんわ!」

「!?」

 

 

 アイエエエ! セシリア=サン!? セシリア=サンナンデ!?

 

 

「普段のお洋服と比べて水着はそれ単体で全ての印象が決まると言っても過言ではありませんわ! ましてこの度の臨海合宿では1年生全体が参加する大きなイベントです、それに適当な水着で参加するなど許されませんわ!」

「なるほど、やはり水着というのは重要なファクターなのだな。

 いつ出発する? 私も同行しよう」

「ラウラ院」

「そ、そういう事なら、私も行かねばな!」

 

 

 ラウラさんや篠ノ之さんまで乗ってきたし。あーもうめちゃくちゃだよ。

 結局その場は、織斑たちは10時ごろから現地に行き、私たちが途中で合流しようという流れになったのだった。

 そうやって話がまとまり、それぞれがそれぞれの席に戻ろうとしていると、

 

 

「レオさん、今度の臨海合宿、何か気になる事でも?」

「!」

 

 

 真後ろの席のセシリアさんが、私に聞こえるくらいの声で問いかけてきた。

 

 

「……昨日試験を行った飛行ユニットについてちょっと。早く慣熟しておかないとなと思いまして」

「嘘、ではありませんわね。ですが本当の事を全て言っている訳でもない」

「……凄いですね、BT兵器には読心機能もあるのかな?」

「女の勘、ですわ」

「……それ言われたら降参ですよ。

 でもごめんなさい。確信が持てない事なので話す訳には」

「そう、ですか。

 わたくしこそ申し訳ありませんわ。難しい事を訊ねてしまいました」

「いえ、気にしないでください」

 

 

 後ろから伝わってくるどこか申し訳なさそうな雰囲気に、話せない事が多すぎる私は拳を握るくらいしかできなかった。

 

 

 

 

 ※※※※※

 

 

 夢だとは分かっていても、妄想とは思えなかった。

 民間船に気を取られて撃墜される織斑。

 織斑の被撃墜に動揺した結果第4世代機のスペックのほとんどを発揮できず翻弄される篠ノ之さん。

 2人を蹴散らしたソイツはまっすぐに海辺の旅館へと向かってくる。

 軍事行動を取っているISが接近中とあって自衛隊のIS部隊も迎撃にあたるが、ヤツは難なく防御ラインを突破する。

 最終防衛線に設定された地点で教員部隊と共に戦う私たちも、1機、また1機と撃墜され――誰も、いなくなる。

 最早ヤツを止める術はない。生徒たちや周辺住民の避難が始まり、大型バスや自家用車の列が延びる。

 ヤツがその車列を見逃すはずもなく、光弾が降り注ぎ――

 

 

「――ツ!? ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハァ……」

 

 

 夢だとは分かっている。

 けれども私にはあの光景が、妄想とは思えなかった。

 

 私しか知らない、これからやってくる敵。

 

 強くならなくてはいけない。

 私が死なないために。

 みんなが、――殺されないように。

 

 

 ※※※※※

 

 

 それから残された平日はカリキュラムとのにらめっこになった。夜は睡眠時間を削って心象世界で空中飛行の訓練を行った。翌日の授業に響かないように5~6時間は眠るようにしたけれど、合宿が近づくにつれて寝つけなくなっていった。気絶するように意識が落ちても、皆が蹂躙される夢で飛び起きるハメになる。

どうせ眠れないならと結局徹夜で訓練を行った。セシリアさんやラウラさん、織斑にも心配されたが誤魔化した。

 

 今年の夏は海水温が高いとかで、冗談みたいに暑い日が続いた。

 

 ようやく迎えた週末、待ち合わせ場所にやってきたセシリアさんは、挨拶より先に心配そうな顔をした。

 

 

「レオさん、最近眠れていますか?」

「えぇ、ちゃんと横になっていますよ」

「今からでも戻って休みませんか?」

「いやいや、水着が無いのも事実なので行かないと」

「……分かりました。ですが! 戻ったらきちんと休んでくださいね?

 約束ですよ?」

「えぇ、分かりました」

「む、私が最後だったか」

「まだ5分前ですので大丈夫ですよ」

「――レオ、悪い事は言わない。今すぐ戻って休息すべきだ。

 かなり疲労しているだろう?」

「もう、2人揃って心配しすぎ――」

 

 

 その先は続けられなかった。2人の顔が心配の色一色だったから。

 

 

「……分かりました。学園に戻ったらきっちり休みます。織斑には悪いですが今日も手早く切り上げましょう」

「ぜひそうしてくださいまし」

「昼時だし、これから行く先で何か精のつく物でも食べておこう」

 

 

 高く昇った太陽はいよいよギラギラとした日差しを浴びせかけ、外にいるだけで汗が噴き出してくる。今日の目的地である『レゾナンス』が駅と一体になった施設であることに心から感謝しながら、私たちは入口へと歩いていった。

 

 建物の自動ドアが開いた瞬間、中から流れてくる冷気に息が漏れる。首筋に感じていた汗がすっと引いていく。

 入り口近くにあったフロアマップを確認すると、水着売り場は3階のようだ。

 

 

「そういえばレオさん、織斑さんたちとは合流しなくてもよろしいのですか?」

「水着を選んでからにしようと思いまして。何かありましたか?」

「いえ、ですがそこまで長居しないのであればその事も伝えた方がよろしいのでは?」

「それもそうですね、後で連絡する事にします。

 ……ところでラウラさんはどうかしたのですか?」

 

 

 ラウラさんだが、どうも様子がおかしい。

 体調が悪そう、という訳ではない。ないのだが、なんというか緊張しているというか、妙にしおらしいのだ。

 

 

「いっ、いや? 別に大したアレではないぞ?」

(どう見ても何かあったリアクションなんだよなぁ。でも本当に触れてほしくないことかもしれないし……下手に踏み込むのも良くないか)

「そうですか、何かあったら言える範囲で良いので言ってくださいね?」

「レオさん、その発言は自分に返ってきていますわ」

「う゛っ。

 たたた大したアレじゃないのなら今は聞かないでおきますね!」

「誤魔化しましたわね」

「誤魔化したな」

 

 

 2人のジト目が私を貫く。やめてくれ、その術は私に効く。

 2人の目から逃げるように、私は目的地へと歩き出すのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「水着、ねぇ……」

 

 

 思えば社会人になってから、そもそも水に入る機会があまりなかった。泳ぎ方とかだいぶ錆びついている自信がある。そんな状態で海に入るのってかなり危険な気がしてきたな。波打ち際で足を濡らす程度にしておこうかな……?

 

 

「決まりましたか?」

「えぇ、コレにしようかなと思います」

 

 

 結局、私が選んだのはモスグリーンのトランクスタイプの水着だった。加えてライトグレーのウィンドブレイカーも購入。あんまり肌焼きたいタイプではないのだ。

 

 

「あら、お似合いですわ」

「ありがとうございます。

 そういえばセシリアさんは合宿では泳ぐんですか?」

「えぇ、残念かもしれませんがわたくし、水着はもう購入済みですので、合宿当日までおあずけですわよ?」

「どうしてそうなるんです!?」

 

 

 見たくないといえば大嘘にはなるけどさ!

 

 

「あれ、そういえばラウラさんは?」

「まだ水着を選んでいると思いますよ。

 ……レオさんはラウラさんの水着が気になるのでしょうか?」

「いいいいやそそそういう意味ではなく!」

「……ふふ、冗談ですわ。

 わたくし、ラウラさんの様子を見てきますね。レオさんはお店の近くで待っていていただけますか?」

「分かりました。正直に言うと女性用の水着が多くて落ち着かなかったんです」

「素直でよろしいですわ。

 あまり長くはかからないと思います。しばらくお待ちくださいね?」

「えぇ」

 

 

 そうやってセシリアさんは試着室の方へと歩いていき、会計を済ませた私は逆にお店の外、通路に設置されているベンチへと向かった。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 ベンチに腰を下ろすとやっぱり疲れていたのだろう、割と大き目なため息が出てきた。

 

 この土日がゆっくりできる最後の休日になるだろう。

 合宿が始まるのは来週の水曜だ、泣こうが喚こうがあと4、5日で福音戦の火ぶたが切られる。

 

 時間は全く無い。無いけれど、今できる最善は尽くしているはずだ。仮想空間での飛行訓練はなんとか20時間くらい行えている。嬉しい誤算だったが、飛行時の操縦感覚はこれまでとさほど変わらないため、少なくともカモ撃ちにされることは無い、と信じたい。

 

 今日はもしかしたら、眠れるかもしれない。

 

 

「ねぇ、そこのアンタ」

 

 

 やはり睡眠不足は良くない。こんなにも露骨な悪意が寄ってきたというのに気がつけなかったのだから。

 

 刺々しい女性の声は明らかに私へと指向されているが、あいにくと私はこの女性にまったく心当たりがない。可能性は低いかもしれないが、人違いという線もありえる。ここはいったん無視して――

 

 

「聞こえてるでしょ、そこのベンチに一人で座ってる男のアンタの事よ」

 

 

 周囲を見渡す。複数設置されているベンチはそのどれもに人が座っていたが、一人で座っている男性は極めて残念ながら私だけだった。

 ため息をつきながら立ち上がる。顔を女性の方へ向けると、彼女の後ろ上方にこちらを向いた防犯カメラがある事に気が付いた。良かった、アレがあれば多少はマシだろう。というか原作にこんな描写あったっけ?

 

 

「なんでしょう?」

「アンタ、私の荷物持ちになりなさい」

「は?」

 

 

 コイツは、何を、言っているんだ?

 

 改めて目の前の女を見る。性格によって歪んでしまったのか、それとも生まれた時からそうだったのか、まぁこれまでの人生で男性に縁がなかったんだろうなという顔、服に罪は無いけれど買われた相手が悪かったと同情せざるを得ないセンスで組み合わされた服装、両手、というか腕にもブランド店の紙袋が引っさげられている。それでまだ買う気か?

 

 

「聞こえなかったの? 私の荷物持ちになりなさいって言ってんのよ」

「聞こえてますよ、意味が分からなかったから「は?」って言ったんです」

 

 

 ――OK、大体理解できた。

 原作でもちょいちょい触れられていたし、私も実際に調べたけれど、ISが登場してからの社会というのは随分と女尊男卑に傾いた。世界の軍事力を一変させたISを操縦できるのは女性のみという事で各国各企業は女性の機嫌を伺うように女性優位な制度を創設したりしていた。

 結果がどうなったか? 私の前でわめいている女がその答えだ。

 

 ていうか凄いね、完全初対面の男に対して荷物持ちしろとは驚いた。

 で、この手の面倒なヤツがこの先何を言うのかも大体想像がつく。

 

 

「何よ、アンタ男の癖に私に逆らおうっての!?

 どうなっても知らないわよ! 大人しく私の言う事を聞きなさい!!」

「だから、いきなり現れてそんな意味わかんない事言われても普通に考えて断るでしょうに」

 

 

 うわすご、髪振り乱して怒る人初めて見た。

 けど舐めんな。こちとら前世では取り立て屋やったりしてんだ。その程度の剣幕聞こえないにも等しいわ。

 

 それに――今俺は機嫌が悪いんだ。

 

 

「あったまきた! ちょっと誰か警備員呼んで! 私コイツに暴力振るわれたの!」

 

 

 そこまで言い出した女を見て、私はいよいよ笑いを堪えるのが難しくなってきた。

 ここまでバカだとは!

 私が一方的に絡まれている様は防犯カメラに間違いなく捉えられているし、周囲のベンチに座っている人の中には一部始終を聞いていた人も多くいるだろう、証拠も証人も確保できる。罪状は何だろう、強要は間違いないな。「どうなっても知らない」の辺りで脅迫も行ける。嘘ついて警備員に余計な仕事させたとなると偽計業務妨害もあるかも。

 

 

「いいでしょう、あぁ、そこのアナタとアナタとアナタ、そうそうノースリーブのお姉さん、アナタです。

 この女性の言っている事が嘘だという証人になっていただけませんか?」

 

 

 私は先ほどから周囲でこちらを伺っていた人数人に声をかけた。いずれもベンチに座っていたり、近くでこちらの様子を伺っていた人たちだ。

 

 

「あ、申し遅れました。

わたくし、IS学園1年生のレオ・シキシマと申します」

「えっ!?」

「あ、私見たことあるかも……って本物!?」

「はい、こちら学生手帳です。

 

 残念ながらあちらの女性の方は訴訟がご希望のようですので、証言していただければと思うのですが」

「訴訟って、裁判って事ですよね?」

「えぇ、とはいってもアチラ、見えますか? あそこの防犯カメラが一部始終を録画しているので、皆さんには彼女が何を言ったのか、私が何を言ったのかを話していただければそれで結構ですよ」

「ちょ、ちょっと! わ、私はソイツに殴られたのよ!?」

「それはいつ、どこで?

ちなみに殴られた場合その箇所にはアザか何かができますしあなたが防いだというのならその部位には防御した痕ができます。またどちらにせよ私があなたに触れていた場合私の皮膚片が付着しているはずです。

 

 これは警察が調べればすぐに分かる事です。

 

 私は先ほどあなたに話しかけられるまであなたの存在を知らなかったのですが、あなたはいつ、私に殴られたと言うのです?」

「そ、それは……

 この建物の外よ!」

 

 

 まだやるのかコイツ!? 引き際考えようぜ……?

 周囲の人も同じ思いなのか、信じられないバカを見る目になっている。

 

 

「私はここに来るのに電車で来ました。当然ながらあちこちの防犯カメラに写っていますし、何なら証人もいます。あなたに出会ったりはしていない筈ですが?」

「ふっぐぐぐぐぐ……!」

 

 

 とうとう何も言えなくなってしまったのか、女は顔を赤くしたり青くしたりしている。どうした? 体調悪いのか? さっさと帰って休んだらどうだ?

 

 

「では、わたくし達がその証人という訳ですね?」

 

 

 人込みをかき分けて現れたのは、もう見なくても分かる。セシリアさんとラウラさんだ。

 ラウラさんはかなり険しい顔をしていて、セシリアさんは一見いつもとあまり変わらないように見えるが――私には分かる。あれはめっちゃキレてる。ビットで回避強要させた所に置きビームするくらいにはキレてるわアレ。

 

 

「わたくし達はレオさんと一緒にここまで来ていますわ。彼の道中の行動について証言できます」

「そ、そんなのウソつくかもしれないでしょ!!」

 

 

 あーあ、もうしーらない。

 

 

「面白い冗談ですわね? 英国代表候補生たるわたくしが、嘘の証言をするとおっしゃる?」

「レオ、これが日本のジョークなのか? ドイツ代表候補生の私だが、このようなジョークがあるとは初耳だ」

 

 

 もう、ね。たぶんイチャモン付けてきた女も含めてみんなの心が一つになったんじゃないかな?

 

 

 ――あ、コレ終わったわ。

 

 

「ふ、フン! 連れだったのなら躾くらいちゃんとしなさいよ!」

「あ、逃げた」

 

 

 ドタドタと、買い物袋を振り落とすんなじゃいかって勢いで去っていく女に、私は大きく息を吸い――

 

 

「おい!! 二度とやんなよ!?」

 

 

 無駄にならない事を願いながら、そう投げかけた。

 

 

「はいどうもみなさんご協力ありがとうございました、ご覧の通り一件落着ですので、解散してください~」

「あのっ、サイン――」

「握手サインに写真撮影はIS学園の事務室までお願いしまーす」

 

 

 協力してくれた通行人の方々には悪いけれど、随分と目立ってしまった私は、セシリアさんにラウラさんの手を握ると速足でその場を去るのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「なんっなんですのあの無礼極まりない方は!!」

 

 

 あの場を離れて少し歩いた非常階段。ほとんどの人はエレベーターを使うため誰もいないその場所にたどり着いた瞬間、セシリアさんの我慢の限界がやってきた。

 

 

「アレですよ、どこにでもいるミサンドリーです」

「いくらなんでも目に余りますわ!」

「嫁よ、どうしてもという場合はアレする事も検討するが?」

「何をするつもりか検討もつきませんが、ラウラさんが手を汚す価値もないですよ」

「むぅ……」

 

 

 私は結構スッキリしたのだが、途中(というかトドメ)からの参戦になった2人は不満らしい。

 

 

「ほら2人とも、眉間にシワが寄ってますよ。

 あんなヤツのせいで2人のお顔にシワができたら大変です」

「ふむ、一応様子を見に来たがその調子なら大丈夫そうだな」

「織斑先生!? 山田先生も」

 

 

 私たちが入ってきた階段室の入口から現れた私服姿の2人につい大きな声が出てしまう。思ったより声が響いてちょっと気まずくなった。

 

 

「今日は休日で、私たちもプライベートだ。無理にかしこまる必要はないぞ?

それと、一応店側とは話をつけた。シキシマが被害届を提出するのなら防犯カメラの映像に店員の証言も引き出せるそうだ」

「あ、ありがとうございます」

「シキシマはともかく、オルコットたちは怒りが収まっていないようだから敢えて伝えよう。

 逃げた女だが、どうやら常習犯らしい。これまでは店としても黙って見ていたそうだが、実を言うと午前中に一夏にも手を出してな?」

 

 

 そこで一端話を区切る織斑先生。ていうかアイツ織斑にもやらかして、その上で私にちょっかいかけてきたのか。

 記憶能力に重大な疾患を抱えてる人だったのかな?

 ちょっとシャレにならないな。今頃監視の1人2人ついていたりして。

 

 

「流石に男性のIS操縦者への脅迫・強要となると政府としても無視できなかったらしい。大きな声では言えないが、今日明日にも公安から監視が付く。次にやったら現行犯逮捕の上、執行猶予無しの実刑判決は確定だそうだ」

「……うわぁ」

 

 

 アイツ終わったな。見るとラウラさんもドン引きした顔をしている。

 ちなみにセシリアさんは「当然ですわ!」と言わんばかりにウンウンと頷いていた。

 

 

「そうだ、少しシキシマへの伝達事項がある。席を外してもらえないだろうか?」

「わかりましたわ」

 

 

 山田先生が2人を連れて離れていく。3人の足音が遠ざかったのを見計らって、織斑先生が口を開いた。

 

 

「それで、どっちが本命だ?」

「ぶっ」

 

 

 噴いた。いきなり何言い出すんだこの人!?

 

 

「どうした、健全な男子高校生的には彼女の1人2人欲しいと思っても当然だろう? ……む、どっちも本命という線もあるのか。

 良い事を教えておこう。内縁の妻は違法でも何でもないぞ」

「あのですね!?」

「オルコットは気立ても良いし随分とお前に尽くしてくれそうだな。ボーデヴィッヒは元教官という色眼鏡抜きでもトップクラスの見た目だ。前のHRのキス以降随分とお前に懐いているようだしな?」

「ぬぅ……」

 

 

 事実だけに何ともいえねぇ!

 

 

「私としてはシキシマが誰と結ばれようがあるいは嫉妬に狂った何者かに刺されようが究極的には他人事だが」

「それが教師の言う事かよ!?」

「あぁそうとも。IS学園の生徒である間はいざ知らず、卒業後はお前もどうにかしてこの世界で生きていくしかない事に変わりあるまい?」

 

 

 いきなり確信に踏み込んでくるのは姉弟共通か。痛い所を突かれた私は思わず黙り込んだ。

 

 

「一応参考までに聞いておこう。

 まず見た目だ。オルコットとボーデヴィッヒ、どう思う?」

「それは……

 

 2人ともとんでもない美少女、って事は間違いないですよ。

 セシリアさんは気高い美しさの中にも年相応の可愛さがあります。前に料理を振舞ってくれた事があったんですが、会心の出来栄えですわ! ってドヤ顔してた時なんて本ッ当に可愛かったんですよ?

 ラウラさんは一見氷のような美貌、って言えるかもしれませんが、新発見があった時のキラキラした顔つきなんて小柄なのも相まって小動物みたいな可愛さがあります」

「OK分かった。胸焼けしそうだからこの辺で良いだろう」

「え? まだ一言二言くらいしか言ってないですよ?」

「もはや手遅れ、か……

 まぁ今のお前の気持ちはよーーーくわかった。来週には合宿もある。教員の目もあるが水着姿に興奮しすぎるなよ?」

「……善処しますが確約はできかねます」

「安心しろ、もし暴走しようものなら私が直々に止めてやる」

「それって暴走をですか? それとも息の根をですか?」

「それはお前次第だ。

 世間話はこんな所だろう。引き止めて悪かったな。早く2人の所へ行ってやれ」

「分かりました」

 

 

 去っていく私に織斑先生が意味深な笑みを送っていたのは、彼女に背を向けて歩いていた私には知る由もない事だった。




 みんな大好き()ミサンドリーさん。ワンサマーの次にターゲットにしたのがロクに眠れてなくてストレスフルなレオ君だったのが運の尽きです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。