せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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ACの新作が出るので初投稿です。
ぶっちゃけ明日の投稿だと気づかれない説があるので……

今回は会話文マシマシです。ご注意を。


男同士の下ネタを含む会話は大抵全部本音

 トンネルを抜けた先、あるいは森の切れ目、峰を越えて下り坂に差し掛かったあたり。

 そんな場所のシチュエーションに夏という季節を加えたら、見えてくるものは大抵『海』と相場が決まってくる。

 

 

「おぉぉぉ!!」

「う~みだ~~!!」

 

 

 どうして海って見えた瞬間にあんなにテンション上がるんだろうね。

 移動中の仮眠で少しは霞みの消えた頭で、私はそんな事を考えていた。

 

 

 ※※※※※

 

 

 話は前日の午後にさかのぼる。

 

 

「織斑の気を引いてほしい?」

『そうなの! もう頼れるのはアンタくらいしか浮かばなくて……』

『私たちが何を言ったところでヤツの琴線には触れず……』

『一夏って一応男の子なんだよね? ボクたちも頑張ってアプローチしてるのに……実は男の人の方が良かったりしないよね?』

「そんなことはない、はず。たぶん……」

 

 

 というかその場合私が身の危険を感じるからマジで勘弁してほしい。

 

 

「皆さんはもう準備はできてるんですよね?」

 

 

 二重の意味で問いかける。答えはもちろんイエスだ。

 

 

 

「……分かりました。皆さんの努力に敬意を表して、私も一肌脱ぐとしましょう」

 

 

 ※※※※※

 

 

「おいーっす。どうしたよレオ、合宿の事で話があるって」

「……来たか織斑」

 

 

 寮内の談話室。自由時間なのもあってか周囲は当然のように女子だらけだ。ていうか明らかに見覚えのあるツインテールとかポニーテールとかブロンドが見えるんですが???

 織斑は気づいていないようだが、これから私が彼にする話はちょっと女子には聞かれたくないいわば紳士の会話だ。

 

 

「ここじゃアレだ。少し場所を変えようか」

「? なんでだ?」

 

 

 詳しい話をしていないため当然と言えば当然だがイマイチピンと来ていない様子。そんな織斑に意味深な笑みを向ける。

 

 

「明日、俺たちは海に行くよな?」

「そうだな」

「海となると当然泳ぐよな?」

「あぁ、そのつもりだぜ」

「なら織斑よ、泳ぐ時に着るモノといったら、何だ?」

「――ッ! オーケー分かった。確かにここじゃアレだな」

「分かってくれて何よりだ。そうだな……表出ようぜ」

 

 

 互いにアレな感じの笑みを交換しながら、私たちは連れだって外へ出た。

 おい待て。織斑ガチ勢の他にセシリアさんとラウラさんまでついてくるのは何でだ!?

 

 

 ※※※※※

 

 

 場所は変わって海沿いの遊歩道。

 潮風に吹かれながら、私は織斑とベンチに座っていた。

 

 

「海は良いな。どこまでも広がる水平線、心地よい海風。照り付ける太陽の光ですら、海の魅力を引き立てるエッセンスになる」

「どうした急に」

「雲一つない青空、真っ白な砂浜、吹き付ける海風にどこからか聞こえてくるカモメやウミネコの鳴き声……

 なぁ織斑、今俺が言った言葉で『海』は連想できたか?」

「あぁ、きっと俺たちが明日から行く臨海合宿もそんな感じなんだろうな」

「おそらくそうだろう。

 じゃあ、今お前が想像した『海』に、色とりどりの水着をまとった女子たちがいたら、その『景色』は完成すると思わないか?」

「――ッ!! レオ、お前――!」

「正直に言おう。俺は明日からの臨海合宿、女子の水着姿を心待ちにしている。

 織斑――お前はどうだ?」

 

 

 俺の問いかけに対して、織斑は少し逡巡し――やがて、口を開いた。

「あぁレオ、俺もすげー楽しみにしてる」

「流石にこの手の話は人目のある所じゃできないからな」

「分かるぜ、ていうか水着もそうだけど普段から色々とガードが緩んでる女子が多すぎて目のやり場に困る」

「それな? 頼むからジャージを履いてくれ、ロングTシャツで廊下に出るなって何度思ったことか」

「お前もだったかレオ」

「そうだぜ兄弟」

 固く、固く織斑と握手を交わす。いつだってシモの話題は男子を一つにするのだ。

 

 

「それで織斑よ、特に楽しみにしている女子とかはいるのか? ちなみに俺はセシリアさんとラウラさん、あとのほほんさん辺りジョーカーだと思ってる」

「最初の2人は分かるけど、のほほんさん?」

「正直何着てくるか全く読めん。際どいかネタかは分からないが、何かしらの方面に尖り切ったモノをチョイスしてくる気がしてる」

「分からないけど分かるぜ……!」

「今から挙げる人名に特に意味はないが、鳳さん、デュノアさん、篠ノ之さんの3人とかどうだよ?」

「うーんそうだなぁ……全員すっげー似合いそう」

「おバカ」

「ってぇ!?」

「いいか織斑よ。今挙げた3人は『特に』お前と仲の良い女子だよな?」

「お、おう。そうだな」

 

 

 ここに来た時点で誰もいないのは確認してあるけれど、それでも一度周囲を見渡し、声を潜める。

 

 

「これは私見だが、俺はあの3人、織斑に気があるんじゃないかって見てる」

「!? いやいやいや! ねぇだろ!」

「それってあなたの感想ですよね?

 なぁ織斑よ。これはたとえ話なんだが、とある女子――まぁAさんとしておこうか――が仲の良い男子に『毎日手料理を食べさせてあげる』って約束するのって、どう思うよ?

んで? 別の女子Bさんが、数年ぶりに再会した幼馴染に『試合に勝ったら私と付き合ってもらう』って言ったんだってさ。

そしてCさんはピンチから救ってくれた男子と同じ湯舟に入るくらいには心を許してるんだそうだ。

 

 

 なぁ織斑よ。このA、B、Cさんって相手の男子にどんな気持ちを持ってると思うよ」

「それは――」

 

 

 言い淀む織斑。流石の彼も、その女子たちが普段接している彼女たちであり、たとえ話の男子が自分であることに思い至ったのだろう。

 

 

「でもさ、俺は俺にできる事をやっただけなんだぜ? それで、その、俺の事を好きになるとか、ありえるのかよ?」

「織斑にとっては当たり前の事だったとしても、俺にはできなかったことだぞ、それは。

 この際だから言うが、俺は結構織斑に劣等感を感じたりしてるんだぜ?」

「レオが? 俺に?」

「そうだよ。身長だってお前の方が高いしISの操縦だってお前の方がセンスある。そのくせに嫌味な所全然ないし、人がへこんでたりすると一番かけてほしい言葉とかしてほしい行動をすぐとってくれる。何度『この完璧超人め』って思ったことか」

「俺からしたらレオの方がすげえ奴だと思うんだがなぁ」

「助けられた人間はそうは思わんのよ。

 とにかく、俺の見立てじゃ最低でもあの3人が織斑に気がある」

「『最低でも』って何だよ」

「もっと増えるかもしれんって事だ女たらしめ。

 合宿の話に戻すぞ?

 さて織斑、お前も気になる異性に自分を良く見せたいって思うよな?」

「そりゃあそうだろ」

「これが日常生活なら身だしなみとか私服とかアクセサリーでなんとかできる。

 だが! 海やプールといった水辺ではそうもいかない」

「そりゃあ水着に着替えるんだから当然――まさか」

「気が付いたか。そうだ織斑、お前に好意を寄せている女子は当然として、好意未満、『織斑君カッコ良いから仲良くなりたい』っていう人もここぞとばかりに勝負に出るだろうな」

「げぇ……」

「気持ちは分かる。こっちの気持ちも知らずにアタックをかけられても正直鬱陶しいよな。

 だがこうも考えられないか?

 『学年中の女子の水着姿をこれでもかと拝める』のが今回の合宿だ」

「……!!」

「織斑、前に言ってたよな。『ISスーツが眼福だけど目の毒だ』って」

「あぁ。初めてアレをこの目で見た時の衝撃は忘れられないぜ」

「俺もだよ。しかもこの学校指定の水着はスク水だし体操服はブルマだぞ? 頭おかしいとか以前によく生徒も保護者も納得したなって思ったね」

「そのおかげで肌色に耐性ができたってのは笑い話だけどな!」

「「あっはっはっはっは」」

「……はぁ。まぁとにかく、今回の合宿ではこれまでの学園生活以上に理性的に厳しいアタックが仕掛けられるだろうな。織斑はその上に恋の駆け引きもついてくる。

 なぁ、織斑的には付き合いたい相手とかいるのかよ?」

 

 

 さて、シモの話題で緊張はほぐした。聞かせてもらおうか、鈍感大魔神の本音とやらを――!

 

 

「ぶっちゃけていいか?

箒も鈴もシャルも魅力的でこっちの理性がヤバい」

「詳しく聞いてもいいか?」

「お、おぅ。

 まず箒だな。箒ってさ、普段結構ぶっきらぼうだろ?」

「あぁ」

「そんな箒がさ、すげーたまにだけど、こう、なんて言うかな――ふんわり笑う時があるんだよ。そういう時を見たりすると普段とのギャップもあってヤバいな」

「ギャップか、それは確かにヤバそうだ。失礼を承知で敢えて言わせてもらうがスタイルも高1のレベルじゃな……って痛てぇ!」

「わ、悪りぃ! でも、何ていうか、アイツをそんな目で見られると――なんか、腹立つ」

「それは悪かった。謝るよ」

「こっちもいきなり悪かったな。

 んで鈴か? 鈴にはなんつーか、元気を貰えるな」

「あ、それは分かるかもしれん。『悩んでる暇あったらとりあえず1回ぶつかってみろ』みたいな感じ」

「そうそう。あと色恋抜きにしてもアイツの料理は毎日食べたいくらい旨い」

「……その節は大変お世話になりました」

「……あ、オルコットさんのか。

 ちなみに今は大丈夫なのか?」

「鳳さんや織斑たちのおかげで何とかな。少なくとも胃洗浄の世話になる事はもうないぞ。油断すると味が濃い目の料理が出るけど」

「……良かったな」

「しみじみと肩を叩くな。泣くぞ?

 それで? デュノアさんはどうなんだよ」

「シャルはなぁ……

 アプローチがヤバい」

「は? いやいや、デュノアさんだぞ?」

「あぁ。大浴場に入ってた俺の所に突撃してきた話はレオも知ってるよな?」

「知ってる。それで修羅場になった事も含めて」

 

 

 すると織斑は辺りを見渡し、誰もいない事を確かめてからさらに小声で語りだした。

 

 

「今から言う事はレオだけにしか言うんだが、先週水着を買いに行っただろ?」

「あぁ」

「実はその時試着室に押し込まれてな……生着替えし始めたんだよ……」

「はぁッ!?」

「シッ! 声が大きい!」

「……すまん。でもうっそだろ、大胆とかそういうレベルじゃないぞ?」

「だよなぁ……正直今度の合宿でナニ仕掛けられるかと思うとヒヤヒヤする」

「そういう事やられちゃうと修羅場っていうか戦争だしなぁ……」

「そういうレオはどうなんだよ」

「?」

「オルコットさんにボーデヴィッヒさん。2人ともレオに夢中だろ?」

「――本当に成長したな織斑。お前にも色恋が分かるようになったとは」

「茶化すなよ。んで? どうなんだよ」

 

 

 これまで色々と聞いてきたからか、織斑は反撃とばかりにワクワクした顔をしている。これは俺も腹をくくるか。

 

 

「こんな事言ったら不誠実とか言われそうだけど敢えて言うぞ?

 

 ――1人だけなんて選べないわ」

「ぶっ」

「うわっ! 噴くなよ汚ねぇ!」

「悪りぃ、でもレオお前それって」

「なぁ織斑。

 内縁の妻って違法でも何でもないらしいぜ?

 ていうかお前ならあの2人からどっちか選べるかよ!」

「うわ、開き直りやがった!」

「るせー! お前だってあの3人から1人選べなさそうな癖に!」

「おまっ! 人が見ぬふりをしていたことを!」

「やっぱり全員気になってるんじゃねーか!!」

 

 

 なんて、くだらなくも真剣な話で織斑とバカみたいに盛り上がって、結局そのままお開きになった。

 3人から頼まれた『織斑の気を引く』というミッションも上手くいった、はずだ。

 

 

(あとは皆さんの頑張り次第ですよ)

 

 

 織斑に想いを寄せる女子たちの健闘と、あと海というドキワク空間に加えて水着という必殺アイテムで迫られる織斑の冥福を、俺は内心で祈るのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「な、なぁ2人とも。これで良かったのか?」

「えぇ。ご協力ありがとうございました織斑さん」

「おかげで有益な情報を得る事ができた。礼を言おう」

 

 

 レオと別れてから約10分といった所か。空き教室にやってきた織斑はそこで待ち構えていたセシリアおよびラウラにペン型のマイクを渡していた。

 

 そう、織斑もまた、セシリアとラウラから『レオの気を引いてほしい』と依頼されていたのである!

 

 はじめは盗聴といったやり方に拒否感を抱いていた織斑であったが、2人のレオへと抱く重い――もとい、想い。そして、ここ最近のレオの様子から最終的に折れたといった経緯があったのだ。

 

 

「でも、2人的には大丈夫なのかよ」

「何がですか?」

「いや、さっきのさ。レオが、その、どっちかは選べないって言ってた話」

「あぁ、その事か。

 私たちもその点は話し合って結論を決めてある」

「本音を言ってしまうとわたくしだけを見てほしいという思いはありますわ。

 ですがそもそもわたくしたちとレオさんは出会ってからまだ数か月の関係。どちらかを選んでと言うにはまだ互いに知らない事が多すぎます」

「無論レオに選んでもらうためにアプローチはしよう。だが、選ばれなかった場合も、あるいはどちらも選べないとなった場合も恨みっこなしだ」

「世間一般の意味とは違うとは思いますが、仮にわたくしたち2人ともを選ぶとなったとしてもレオさんは誠実にお付き合いしてくださる気はしますけどね」

「違いない」

 

 

 終始にこやかに話を進める2人に、織斑は(これが余裕か)と謎の納得感を得ていたのだった。




頑張ってレオ! 貴方がワンサマーの恋愛感情を呼び起こすのよ!
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