せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
「今年もよろしくお願いします」
「「「お願いします!!」」」
「あらあら、今年も皆さん元気が良いですね」
「ご迷惑をおかけします」
「いえいえ、若い子は元気すぎるくらいでちょうどいいですよ」
「そう言っていただけると幸いです」
「それではお部屋にご案内いたします」
こういった旅館の女将さんって品の塊みたいな人が多いよね。
団体客の来訪も珍しくないのか、駐車場は大型バスも複数台停められるようになっていたし、ロビーもすごく広い。ここプライベートで泊まろうと思ったら結構な値段するだろうな。
けれども私たちの学費や諸費用は各国(メインは日本)持ちだからお金の心配は不要。人のお金で楽しむ旅行は最高だな、軍事用ISの来客対応さえ無ければの話だがな!
しかし本当にどうしたものか。まぁ件の『お客様』がやってくるのは明日だから今日くらいは海を楽し、も……
(いや待って!? 篠ノ之束本人が絡んでくるのが臨海合宿じゃなかったか!?)
あの天災、もとい天才っていつ来たっけ? ああチクショウ! いい加減うろ覚えどころかほとんど忘れかけの記憶じゃ頼りにならない!
取れる手段なんて無い。行き当たりばったりであの天才とやりあうしかない。
もしかしたら。彼女が私に興味を持たずに素通りする可能性もあるけれど、私の機体情報は彼女にまで伝わっていると見て間違いない。「私の子供に勝手なマネしやがって、殺す」となる可能性だってあるのだ。
というか初手で殺しに来られたら詰むのでは?
どの道そうなったら終わりだ。勝てる気はしないが当然黙ってやられるつもりもない。……リムペットボムで爆発反応装甲ごっこでもしようかな? 1つじゃ解体されるかもだから2~3個で。 スイッチを押す間に殺されるかもしれないから、姿を見た瞬間スイッチを押して、私に何か起きてスイッチから指を話した瞬間爆発するようにしておいて……って、これじゃあ周辺に人がいたら巻き込むな。それはいけない。
いや待て。そもそも何で私はまた自爆の計画を練っているの? テロリストか何かかな?
「各自荷物を置いた者から自由時間にして良し。織斑・シキシマの両名は男子部屋に案内するからついてこい」
そう言って階段に向かう織斑先生。女子たちの部屋とは階すら違う。まぁ先生としては就寝時間を過ぎてから男子部屋に女子が突撃する事態は避けたいよな……おかしいだろこれ。男女逆じゃね?
「ねーレオレオにおりむー。2人の部屋ってどこなのー? 遊びに行くから教えてー」
のほほんさんだ。頭を振って雑念を追い払う。
私は大丈夫だ。でも周辺の女子が大丈夫じゃない。めっちゃ聞き耳立ててる。
「私たちの部屋ですが……」
「織斑は私と、シキシマは山田先生と同室だ。ちなみに山田先生とシキシマの部屋は私の部屋の隣だから誰か来ればすぐに分かるぞ」
え゛?
「織斑先生、聞き間違いでしょうか?
今『山田先生と同室』と仰いませんでした?」
「言ったが?」
「言ったが?」じゃねぇよおバカァ!
え? 何なの? 自分で言うのもアレだけどこちとら色々と悶々としてる若い男ぞ? 山田先生みたいなエr……非常に魅力的な人と一緒の部屋とかお・か・し・い・だ・ろ!!
「「異議あり!!」」
ほらセシリアさんもラウラさんも反対してる!
「先生と同じ部屋では夜ば……打ち合わせに支障がありますわ!」
「ナニの打ち合わせだ具体的に言ってみろ」
「山田先生と私では戦闘力に差がありすぎます。男子も教員も2人ずつなのですからそれぞれ1部屋で良いではありませんか」
「本音を言い切れば良いという訳ではないぞ馬鹿者」
クソが! 先生と一緒の部屋の方が倫理的に安全な気がしてきやがった!!
「異論があるなら私を倒してからにしてもらおう。……山田先生?」
「やだそんなシキシマ君ダメですよ私は先生で君は生徒なんだから立場とか色々な壁がでもそんなの関係ないだなんて言われたら私!」
「織斑先生! 私ロビーで寝ます!」
もうヤダこの学校!
※※※※※
どうして……どうして旅館に着いて1時間も経ってないのにこんなに疲れてるの……?
結局私と織斑の部屋は、男子部屋と教員部屋で分けて隣の部屋にし、さらに発表した部屋を入れ替えるとかいうややこしい事になった。マジで何でそんな防諜めいた事になってんの?
「何か、疲れたな。レオ……」
「言うな織斑。それよりもご飯の事とか海の事とか考えようぜ……」
「海……水着……ウッ頭が」
「馬鹿野郎お前今ピンクな事考える奴があるか」
絶ッッッッ対に身体つきとか見られるんだろうなぁ……「グフフ、イイ身体してるわね」とか言われたらどうしよう。
いやどうしようじゃねぇんだよ貞操観念逆転世界かよ。
「織斑もそういうの気にするんだな」
「そらそうだろ。普段の訓練ですら結構見られるんだぜ?」
「まぁアレだけ露骨なら気づくよなぁ……」
「そもそも何でISスーツってあんな水着みたいな感じなんだよって話だよな。いや、ちゃんと理屈があっての事だってのは分かっちゃいるんだが」
メタな話するとその方が男性読者に嬉しいからだと思う。
ちなみに某汎用人型決戦兵器のパイロットや人類に敵対的な地球外起源種と戦う戦術機のパイロットが着ているあのピッチピチのパイロットスーツにも一応科学的な理屈があるらしい。
そもそも何故高速で移動する機体のパイロットはパイロットスーツを着るのか? それはGに耐えるためだ。聞きかじりの知識故に間違っているかもしれないが、機体をブン回すと当然パイロットの身体もブン回され、身体の中の血液が1か所に集まってしまう。水の入ったバケツを勢いよく回した時にこぼれないアレみたいな感じだ。そして血流が止まり脳みそに酸素が送られないと、人は意識を失ってしまう。俗に言うブラックアウトという現象だ。
このブラックアウトを軽減させるために開発されたのが、耐Gスーツとも呼ばれるパイロットスーツだ。理屈的には太ももの辺りをギュウギュウに締め付けることで血流が下半身に行きすぎてしまう事を防ぐのだ。
そう、要は血の巡りを敢えて鈍くさせるためには身体を締め付ける=なら身体のラインがくっきり浮かぶほど締め付ければ男性諸氏へのサービス的にも耐G的な実利的にも良いな! となるのが、各種作品に登場するピッチピチスーツなのだ。ちなみに一時期のソビエトがガチでピッチピチスーツを作ったものの西側から『ソビエトが女性を辱めている!』と口撃されて速攻封印したとかいう話を聞いた事がある。(要出典)
ちなみにここまで散々ピッチピチスーツの由来を語ったが、ISスーツについては『身体に走る電気信号を読み取って機体を操作する』のだそうだ。そもそもPICで慣性を消しているISにはGなんて関係なかったのである。でも正直言って学会でISを発表した時に認められなかったのって、「その恰好で宇宙は無理でしょ」って思われたのも絶対にあると思う。私もそう思うもの。
「日常の訓練で色んな姿勢になる分正直下手なAVよりエロい」
「それな? てかレオはフルアーマーなんだから良いだろ、俺なんてマジで水着なんだぞ」
「そこについてはマジで今の機体で良かったって思う。男の尊厳的な意味で」
ハイパーセンサーって本当に優秀だから地表にいても空中のパイロットの爪の先まで見えてしまう。そんな状態で『テント』をおっ立てて見ろ? お婿どころか学校に行けなくなるわ。
というか待て。
「……織斑ってこれまで授業で興奮した事ないの?」
「俺のPCには各種のグロ画像が保管してある。蓮コラとかな」
「オーケー把握した。てか蓮コラはやめろ」
逆に言うとそこまでしないといけないほど目の毒って事じゃねぇか。
「もういいや、早く着替えて海行こうや」
「……だな」
初日の始まりから精神に多大なダメージを負いつつ、私と織斑はいそいそと更衣室のある別館に向かうのであった。
※※※※※
「お、箒」
「一夏か、それにシキシマも。もう海に行くのか?」
「えぇ。ちょっと海で気分を入れ替えたくて」
「?? よく分からんが、私も一緒に行こう」
おっとぉ? これは私は離れた方が良いパターンかな?
いや、今の篠ノ之さんは別に恥ずかしがっている様子はない。それに別館まではわずかな距離、下手に離れる方が不自然か。
「篠ノ之さんも泳ぐんですね」
「あ、レオは知らないか。箒ってすげー泳げるんだぜ」
「鍛錬の成果だ」
篠ノ之さんは織斑に褒められて嬉しそうだけど、乙女的にそれはアリなのか? まぁ本人は良いなら良いか……
「しかし海風が気持ちいいな」
「あぁ、それにこの松林も海の近くって感じでテンション上がってくるぜ」
「私は泳ぐのあまり得意じゃないんですよねぇ」
「そうなのか? 普段色々こなすから何となく意外だな」
「プールみたいな環境でも50メートルが精々なんですよねぇ……」
「なら特訓でもするか?」
「気持ちは嬉しいけどそれで溺れたらシャレにならないから練習は学校のプールでやるよ」
「海に限った話ではないが流れのある水辺は危険だからな。シキシマの言う事ももっともだ」
「それもそうか」
悲しい話だがこの夏も既に水の事故がニュースになっている。油断をしなくても何があるのか分からないのが自然だ。慣れない事をやるもんじゃない。
「ん? 何だアレ?」
「どうした織む、ら……」
いぶかしげな織斑の声。差された指の方向を、私は見てしまった。
ウサミミが、生えていた。
そしてその傍には『引っ張ってください』と書かれた看板が。
その瞬間、忘れていた記憶、いや原作知識が一気によみがえる。
同時に噴き出す冷や汗。マズい、ここは死地だ。
「なぁ箒」
「知らん。私に訊くな。関係ない」
織斑と篠ノ之さんも心当たりがあるのだろう。あと篠ノ之さんすごく嫌そう。私もベクトルは違うけれど凄く嫌だ。可能なら今すぐダッシュで逃げたい。
「抜くぞ?」
「好きにしろ。私には関係ない」
篠ノ之さんは不機嫌な様子で歩き去ってしまった。残された織斑はウサミミに近づき――
「ま、待て織斑。本当に抜くのか?」
「あぁ、束さんかどうかは分からないけど、コレをこのままにしておいて他の女子が触ったらおっかないし」
そうかその問題もあったのか。でも織斑先生呼んだ方が良い気がするんだよなぁ。
などと私が考えている間に、織斑はあっけなくウサミミを引っこ抜いてしまった。って。
「何も、ない?」
「織斑さんにレオさん、一体何をしていますの……?」
背後からドン引きしたような声。振り返るとセシリアさんが立っていた。
冷静に考えれば今の織斑はウサミミを手に立っている。どう見ても意味不明だ。
と。
――キィィィン
私の前世。その世界で2022年に起こったロシアによるウクライナへの侵略戦争では、SNSの発達により多くの動画が発進された。
だからこそ、普段は聞くことのない様々な音。銃声、砲声、爆発音、そして戦闘機や巡航ミサイルの飛翔音を、私たちは聞く事ができ、そして、その音が聞こえた時にどのように身を守れば良いのか学ぶこともできた。
そして、今もしているこの音は、巡航ミサイルの飛翔音に非常によく似ていた。
(ジェットエンジンの音!? 航空機かミサイル、でもどこに――まさかここか!?)「全員伏せろォ!」
「「!?」」
――コール、バリアユニット
これまでで1番速く機体と装備を展開できたと思う。
私は、謎の物体が落着する直前に、2人をかばう事に成功したのだった。
真面目な話、戦争関連の動画は見ておいた方がいいと思う。
何が起こるか分からないこのご時世、砲弾が着弾する時の音やミサイルの飛翔音、銃声に爆発音が聞こえて咄嗟に伏せらるか動画で命が助かる可能性が増えるし。
あと当たり前のように学生寮で男女同室にするIS学園は国の査察を受けるべき。あ、あそこどの国にも所属してないんだった……