せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
さて、問題はすぐ後ろでいかにも「私は不機嫌です!」ってオーラを出しているセシリア・オルコットさん――オルコットさんと呼ぼう――である。原作では1巻から主人公の一夏と決闘沙汰になり、試合に勝って勝負に負ける、みたいな決着になった挙句一夏に惚れてしまう……みたいな展開だったような気がする。そこ、チョロインとか言わないの。彼女は彼女で色々とこじらせてたんだから。
中身に20代後半の大人がインストールされている私だが、本来の肉体に引っ張られているのか、女性の好みは同世代になっている。中身20代の人間が10代の女性に恋心を抱いたとして、果たしてそれはロリコンになるのだろうか? これは割と深刻な問題だと思うの。
まぁ世の中には60代男性と結婚する30代女性とかもいるしセーフだと思いたい。
「それじゃあここの部分について……シキシマ君は答えられますか?」
「はい、えーっと……です」
「正解です、よく予習しているみたいですね」
授業中にアホな事を考えていたからか、山田先生から指されるも、なんとか答えられる範囲内だった。あっぶな、ここ昨日予習しておいて良かった。
ていうか織斑さんや? 何故に「コイツすげぇ!」みたいな顔でこっちを見るんです? というか君あの分厚い参考書どこやった? あぁ、邪魔だから必要な時以外は鞄にしまってるのかな?
「電話帳と間違えて捨てました」
えぇ(ドン引き)
〇ウンページなら表紙に大きく『タ〇ンページ』って書いてあるでしょうに……あ、織斑先生の出席簿アタックだ。午前中だけで織斑の脳細胞はいくつ犠牲になるんだ。
※※※※※
怒涛の授業が終わると10分間の休み時間になる。社会人になって思い知ったけれど、1時間ごとに10分の休憩ができるって普通にありがたいよね。
初日からほとんど授業についていけていなかった織斑が私に泣きついてくるのは、まぁ当然であるとして。
「わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」
出 た わ ね 。
わぁ、進〇ゼミで出た所だ! 仮にも英国の代表候補生ならば、もう少し優雅さを心掛けてほしい。え? 男に出す優雅さなんて無い? そっかぁ……
あからさま、という程ではないが嫌そうな織斑が何か言いたそうにしているが、この手の手合いは下手に取り合うと危険なのだ。まぁここは(前世含めた年齢的に)お兄さんに任せなさいな。
「オルコットさんの申し出は嬉しいですが、今回の授業内容は初歩も初歩、私で対応可能な範囲ですよ」
「あなたは……あぁ、『2人目』の方でしたわね。人に教えるという点ではイギリス代表候補生たるこのセシリア・オルコットの方があなたより適任ではなくて?」
「これは手厳しい。しかしながら、生粋のエリートたるオルコットさんの手を借りるまでもありませんよ。仮に私でダメならその時は、織斑には織斑先生にしごいてもらうまでの話です」
「げっ」
オイコラ織斑、先生の名前を出したとたんに露骨に嫌そうな顔をするな。
そして、言葉の裏に潜ませた真意をくみ取ったのか、それともただ予鈴が鳴ったからなのかは分からないが、彼女は「フンッ」と鼻を鳴らすと自分の席に戻っていった。
「ふぃぃ……何とかなったな」
「レオ、なんだか凄かったな! こう、オトナの交渉って奴を見てる気分だったぜ!」
「ちなみにやりとりの意味は分かったか?」
「おう、さっぱりだ!」
「……後で解説するよ。そろそろ先生が来る」
ちなみにざっくり説明すると、「エリートたるわたくしが教えてあげますわ、泣いて喜びなさい!」と来たオルコットさんに対し、「結構です、お引き取りやがれください」と返し、「は? ワイエリートぞ? イギリスの代表候補生ぞ?」と来られたので「結構ですっつってんだろコイツは世界最強の弟ぞ?」と締めた形になる。あれ、これ私も結構煽ってる……?
そして3時限目はクラス代表決めとなった。自薦他薦問わないと織斑先生が告げた瞬間に、クラスの女子たちが沸き立つ。
「はい! 私は織斑君がいいと思います!」
「私賛成!」 「私も!」
「私はレオ君に一票!」
「ほのかに香る大人っぽさ!」 「そこに痺れる憧れるゥ!」
いや人気投票じゃないんだぞと、てか最後の誰だ。
流石にそんな事で推薦されても困ってしまうので、こちらも言うことは言っておかないと。
「そう思ってもらえるのは嬉しいけれど、クラス代表がこれまでロクにISの事も知らなかった男子じゃ恰好つかないからね、私はセシリア・オルコットさんを推薦します」
「あら、どうやらあなたは多少見る目があるようですわね」
勘弁してくれ。ここで多少君を持ち上げておかないとキレそうだったから言ったまでなんだ。日本にある学校で、クラスの半数が日本人な状況で日本を後進国とか極東の○○(差別用語)とか言っちゃいそうで怖かっただけなんだよ。
「この私、セシリア・オルコットに1年間も実力もない男の下に甘んじろだなんて、屈辱以外の何物でもありませんわ。ただでさえも文化的に遅れてる極東の島国で暮らす事を強いられてますのに」
へぇ? そんなこと言っちゃうんだ。
「おや、ウナギのゼリーに慣れ切った味覚には日本食の良さが分かっていただけなかったようですね」
「……何か言いまして?」
「あぁ言ったさ」
体ごと彼女に向き直る。
「産業革命で自然どころか味覚まで破壊し尽くしたイギリス人に文化の事を語ってほしくないね」
「んなっ」
「イギリスの街並みが伝統的なのは分かるけど、それ同じこと京都に言えんの?」
「ぶふっ!?」
今吹きだしたのは織斑だな。
「わ、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「人の祖国を散々侮辱したんだ、これくらいの事は言わないとね?」
「……け」
「け?」
思えばこの時の私は熱くなりすぎていた。おじさんに片足踏み込んだ転生者が恥ずかしくないのかと言われれば全面降伏せざるを得ない。
「決闘ですわ!!」
ともかく、オルコットさんとの決闘は、原作のような一夏VSセシリアではなく、『陸戦しかできないISモドキ』VS『イギリスが誇る第3世代機』となってしまったのである。
私、この先生きのこれるかなぁ?
サブタイトル:売り言葉に買い言葉。
陸戦オンリーの機体で国家代表候補生の遠距離機体とタイマン張るってマ?
流石に空飛ばすかもしれない。