せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
「待った待った! いくらなんでも無断出撃はマズいって!」
異様な雰囲気が漂い始めた大広間に私の声が響く。
そりゃあ私だって悔しい。織斑のケガは深刻なレベルではなかったものの、今もなお彼の意識は戻っていないし、私を庇って爆発弾の直撃を受けたセシリアさんは中破相当のダメージを受けた。後詰めのみんなが間に合わなかったらと思うとゾッとする。
「あのエセ天使の翼を引きちぎって『不良品につき返品します』って開発者に着払いで送り付けてやりたいとは思うけど……」
「そ、そこまではわたくしも思いませんが……」
「なんだかんだ言ってアンタもしっかりキレてるじゃない……」
「でも頭は冷静だし!」
戦略兵器に乗って飛び出すのはアカンって話だ。
「でも福音って軍用の第3世代機だよね? 先生たちが使う訓練機もそうだけど、自衛隊や在日米軍の第2世代機で相手になるのかな?」
「む」
「多少の性能差だったら搭乗者の腕で逆転も可能だが……最新鋭機のパイロットを任せられる人間が並程度の技量とは考えにくいな」
「むむ」
「だよね。ボクたちはまだシキシマ君がいてくれるから機体の修復もできるけど、軍の人たちはそうもいかないよね」
「むむむ」
「だがシャル、軍人であれば上官の命令に従うのは当然の事だ。コントロールされている事を前提に軍という暴力はその存在を許される。……自殺も等しい防衛戦を戦うIS乗りには同情するが」
「ンアーーッもうっ! 分かりましたよ! 確かにここにはヤツと同じ第3世代機のパイロットが何人もいて、機体の修復ができる私がいる。やろうと思えば確かにヤツを倒せる!
で? 相手の位置は掴んでいるんですか!?」
「あぁ。こちらで把握しているぞ」
「ガッデム!」
これもうダメだ。どうやってもみんな行く気だ。
「決まりね。ならアタシは箒を焚きつけてくるから」
「任せた。こちらはこちらで色々と考えておこう」
そう言って鳳さんが出ていくと、ラウラさんは作戦前に会議でも使用していたディスプレイに周辺の地図やら福音の機体情報やらを投影した。
「とりあえず現状を把握しておこう。今のところヤツは海上で停止している。場所はここだ」
「何で止まっているのかは分からないけど、ボクたちにとっても悪い話じゃないよね」
「えぇ。静止目標であれば遠距離からの砲撃や狙撃といった手段も採れます」
「問題はそれで片付くような相手じゃないって事なんですよねぇ……」
「そうだな。だが1撃で倒せない相手なら畳みかけるしかあるまい」
「ISのステルスモードならどうだろう?」
「コア・ネットワークで探られてしまえば意味が……いえ、あれは互いの承認があって初めて使えるものでしたわね」
「なるほど、だったら上手くやれば不意を打てるかもしれませんね」
「初撃は私がやろう。本国から砲戦パッケージが来ているからそれを使う」
「でしたら私はラウラさんとセットで行動しましょう。私の装備に弾薬補給用のコンテナがあります。砲兵には補給が欠かせませんから」
「今度こそわたくしの『ストライク・ガンナー』が日の目を見そうですわね。シャルさん」
「うん。ボクがアタッカーを引き受けるよ」
「となると、後は篠ノ之さんがどうなるか、ですね」
「大丈夫ですわ。きっと彼女も戦います」
「あぁ。証拠は無いのだがどういう訳か断言できる」
「それはねラウラ――
自分の好きな人がやられて黙っていられる人なんていないからだよ」
デュノアさんの言葉が100%感情論だったが、感情論だったからこそ私の心にもストンと落ちた。
「全員代表候補生から降ろされても知りませんよ? 全く……」
「レオさんこそ、どうなるか分かりませんわよ? まぁその場合はオルコット家の使用人として……」
「待てセシリア、レオには黒兎隊の雑用としてだな?」
「絶対に負けられない戦いが、ここにある……!!」
私の未来がピンチになっているんだが? おのれ絶対に許さんぞ『銀の福音』……!!
そして、篠ノ之さんと、彼女を連れてきた鳳さんにも作戦の概要を説明し、各自装備の確認になった訳だが。
……武器、増えてね?
マジか。さっきの福音戦で経験値が増えたのか。
ゲームではそこそこユニオンバトルをやる事で買えるようになる装備が新たに追加されていた。
支援兵装
主武器 レイジスマック
ASG-デリュージ
LSG-アヴローラγ
CLS-ライオγ
ラピッドネイル
ハガード・タフ
副武器 44型浮遊機雷S
46型指向性地雷/〃S←NEW!
ホバーマインV
補助装備 広域索敵センサー
ND索敵センサー
小型/広域滞空索敵弾
スタナーJ2
特別装備 リペアショットγ
リペアフィールドβ
リペアセントリーβ
オートリペアシステム/オートリペアβ←NEW!
URデバイス←NEW!
強襲兵装
主武器 M99サーペント
ヴォルペ・スコーピオ
STAR-20
電磁加速砲・紫電
VOLT-X
スイッチアサルト/〃C/〃R←NEW!
MPG-01/〃03←NEW!
S90アイビス/〃C/S95シーガル
副武器 41型強化手榴弾
42型クラッカー
フレアグレネードS
チェインボムS/〃V
バーストチャクラムS
連射式Gランチャー
MSL-ナイダス/〃スウォーム
パイロダート/PD-ステーク/〃スティンガー←NEW!
補助装備 SW-ティアダウナー
ピアシングスピア
スパークロッドⅡ
コンバットクロー
LE-ブリッツァーⅡ
ツイングレイヴ
特別装備 AC-マルチウェイⅡ
遊撃兵装
主武器 レヴェラー・プルート
マーゲイ・バリアンス
D99オルトロス
ワイドショットX2
グリントN72DS
副武器 38式狙撃銃・遠雷
イーグルアイ・ゼロ/〃VX
バトルライフルS
炸薬狙撃銃・連式/絶火
LBR-ムーンレイR
MLZ-シグニズⅡ/〃リオニーズ
52式可変狙撃銃/〃改/53式可変狙撃銃←NEW!
BSR-イグナイト/〃C←NEW!
SBR-ハンターC
ジャンプマインV
スティッキーボムS
補助装備 ロビン偵察機
レーダーユニットⅡ
NDディテクター←NEW!
クリアリングソナー←NEW!
セントリーガンLZ
エアロセントリーS
リモートシューター/〃S←NEW!
FAS-モスキート←NEW
新型高振動ブレード
特別装備 マグネタイザーβ
EUS-T2
重火力兵装
主武器 ウィーゼル・コロナ
GAXウッドペッカー/〃ダイナソア
単式機関砲/〃改/双門機関砲/双門機関砲・怒竜←NEW!
単式炸薬砲/双門炸薬砲/単式炸薬砲・猛虎←NEW!
ヴルカン・ラヴァ
サーバルRM
LEC-シュトラルγ
PBW-グランツ/〃β←NEW!
副武器 サワード・コング
パワードシーカー
プラズマカノン・ネオ
チャージカノンC
多連装型MLRS
SPL-プロミネンス
補助装備 新型ECMグレネード
インパクトボムS
ヘヴィパイク
ブレイクチェーンソー
特別装備 ギガノト榴弾砲
エアバスターT30
ドラード重装砲
バリアユニットβ
UAD-ケリブ
これはかなりありがたい。支援兵装の滞空索敵弾やURデバイス、強襲兵装のヴォルペ・スコーピオはゲーム時代にかなりお世話になった武器だし、重火力兵装の火力が殺意を感じるレベルで上がっている。
機体の解放は無かったけれど、チップは解放されていた。
コスト1のチップ
・転倒耐性(よろけ/吹き飛びへの耐性が向上する)
・被弾時カメラ制御(ダメージを受けた際のカメラのブレを抑える)
・アンチブレイク(耐久力が最大のとき、1回の攻撃で行動不能になるのを防ぐ)
・自動体勢制御(敵に吹き飛ばされた際、自動的に体勢を立て直す)
・大破防止(大威力の攻撃で撃破されても、即時大破しなくなる)
・精密照準ズーム(精密照準のズーム倍率が強化される)
・セットボーナス強化(同ブランドのパーツで構成された機体のセットボーナス効果が上昇する)
・ニーキック(膝蹴りを繰り出す)
・ロングタックル(大きく前進しながら体当たり攻撃を繰り出す)
・スライディング(大きく前進しながらスライディング攻撃を繰り出す)
コスト2のチップ
・高速充填(充填機構を持つ武器の充填速度が上昇する)
・投てき適性(投てき武器の投てきモーションが早くなる)
・実弾速射(実弾属性を持つ攻撃の連射速度が上昇する)
・爆発範囲拡大(爆発属性を持つ攻撃の爆風範囲が広がる)
・ニュード威力上昇(ニュード属性を持つ攻撃の威力が上昇する)
・近接攻撃強化(近接属性を持つ攻撃の威力が機体パーツの総重量に応じて上昇する)
・ブースター回復(ブースターエネルギーの回復速度が上昇する)
……『精密照準ズーム』に『高速充填』、『ニュード威力上昇』を積んでニュード系最強の狙撃銃、ブレイザー・アグニをヘッドショットできれば気持ち良い事になりそうだ。まぁ私の狙撃の腕はお察しだから日の目を見る事はなさそうだけれど。
欲を言ってしまえば、『SP供給率Ⅱ』等のチップが解放されてくれればかなりありがたかったのだけれど……まぁそこまでは望みすぎか。今の手札で最良の物を組み上げよう。
※※※※※
これは詳細を省いて結論から言うが、拡張領域が無ければ重量超過で死んでいた。
何故かって? 私の組んだ機体構成を見てから言ってくれ。
頭 シュライクV
胴 シュライクV
腕 シュライクV
脚 シュライクⅡ
重量耐性が3,800なのに機体重量だけで2,900を超えるのである(白目)
折角だから解放されたばかりのサワード・コングとプラズマカノン・ネオを両手に持ってぶっ放す最高に頭悪い戦術したかったのだが、今回は実戦。いくらなんでもロマンのために命までは懸けられない。
本来の『ボーダーブレイク』では機体の背中にあるハードポイントに武装を架けておくのだが、拡張領域のおかげで重量制限を気にしなくて済む。なんなら腕パーツの武器変更のパラメーターがお飾りになったまである。拡張領域から武装を展開するのはどちらかというと個人の技量が左右するからだ。極めるとデュノアさんのラピッドスイッチみたいに固有技みたいになる。あれはヤバい。手持ちの武器の弾倉が空になるかならないかの辺りで拡張領域から弾薬フルの銃器をだしてまた撃ち始めるんだもの。実質機関銃に撃ちすくめられているようなものだ。(3敗)
と、土壇場での機体変更となったから念のため機体を診てくれていたのほほんさん(彼女も整備要員として機密作戦への参加を許されている。マジで何者だ?)がとてとてとやってきた。
「レオレオ~」
「どうかしましたか?」
「機体のチェック完了だよぉ。どこも異常なし。いつでも出られるからね~」
「あぁ良かった。ありがとうございます」
「でもこの機体凄いねぇ」
「何がです?」
「前に見せてもらったレオレオのシュライク? だっけ。同じシュライクなのに型式が違うだけでまるで別物の性能になってるんだもの」
「あぁ……まぁそういう物って事にしておいてください」
「私はそれでもいいんだけど、もしかしたら生徒会とか整備科の人が『なんだこれ~』って言うかもよ~?」
「うへぇ……そうならない事を祈りますよ」
「そうなった時の言い訳も考えなきゃいけないんだから、ちゃんと帰ってきてね?」
一瞬。ほんの一瞬ではあったけれど、のほほんさんの瞳に確かによぎった祈りにも似た色に、むしろ私の方が動揺してしまった。
「……っ、え、えぇ。みんなで戻ってきますよ。機体は……無事にとはいかないかもしれませんが」
「帰ってくればそれで良いのだ~」
「レオさーん? そろそろ時間ですわー!」
「あ、もうそんな時間か。じゃあ行ってきますね。機体、ありがとうございました!」
……行く者が決める覚悟もあれば残る者が固める決意もある。ただ、少なくともみんなで帰る約束だけは守ろうと、私は拳を握りしめた。
※※※※※
太平洋上にある岩場。潮の満ち引きで現れたり消えたりするそんな場所に、私とラウラさんは立っていた。
砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』に換装したラウラさんの機体は私が重火力兵装に換装した時よりも重火力してる感じで、両肩に装備した80口径レールカノン『ブリッツ』は、既にターゲットを捉えていて作戦開始と同時に火を噴くだろう。
両肩の砲、そして機体の正面と左右に合計4枚の物理シールドを纏った彼女の機体は見ての通り動きが鈍い。なのでスムーズな弾薬の補給兼護衛のため私がいる。
全身シュライク装備で固めた私はそれはもう脆い。装甲をペラッペラにする代わりにスピードを得たので仕方ないが、これで福音の攻撃をまともに食らおうものなら今度こそ私は潰れたトマト(比喩表現)になるかもしれない。
「……」
自分の呼吸がうるさい。知らない内に震えていた腕を宥めるように、私はネイルガンのグリップを握りしめた。
『どうしたレオ。バイタルに乱れがあるぞ』
「大丈夫、何でも……いえ。やっぱり緊張しますね」
指揮官を務めるラウラさんは全員のバイタルを把握している。鼓動や呼吸から私がどんな状態にあるのか見抜くくらい造作もなかったか。
『レオは本格的な戦闘を行うのはこれが初めてだろう? リラックスしろとまでは言わないが、深呼吸を勧めるぞ』
「なるほど」
『私が初撃を放ったら次はレオの仕事が控えている。よろしく頼むぞ』
「えぇ。お任せを」
現在地から福音までの距離は約50キロメートル。結構な距離があると思いがちだが、超音速で飛ぶ砲弾やISにとっては目と鼻の先みたいな距離だ。ラウラさんが砲撃を始めたら急いで『歓迎』の飾りつけをしないといけない。
『全員に通達する。作戦開始まであと10秒』
(じゅううううううびょおおおおおおお……なんてね)
『5、4、3、2、1、作戦開始!』
声と同時に砲声が轟いた。弾かれるように私も動き始める。
――コール、44型浮遊機雷
機体の拳ほどの大きさのソレを下投げで放れば、それはふわりと浮いて空中でホバリングを始める。
この浮遊機雷は本来であれば通路の角や障害物の影といった死角に浮かせておいて、敵機が通り過ぎようとした時に起爆してダメージを与える物だが、今は空中の機雷源を作らせてもらう。
もちろん飾りつけがそれだけじゃ寂しいから、準備はまだ終わりじゃない。
――コール、エアロセントリー
4枚のローターに細長い胴体。その下に機銃を取り付けたUAVを呼び出し、空に放つ。
絶え間なく響く砲声をバックに、私はひたすら罠を仕掛けた。
そして。
『対象がこちらに移動中! ――クッ、砲弾が迎撃されている!』
「当たり前みたいに訳分かんない事やんないでほしいんだよなぁ」
80口径とかいうバカみたいな口径のレールカノンだぞ? 弾速とか極超音速になりそうなものだが。……狙いが正確ならあの光弾をひたすらに自分の前に撃てばどれかは当たるのかもしれないな。
「OK、とりあえず手持ちの花火は全部仕掛けた! 滞空索敵弾発射!」
罠の設置に続いては索敵の強化だ。もっとも全員相手の姿はハイパーセンサーで捉えているだろうけれど、それでも――例えば視界の外に回り込まれたりした時のために――私は索敵網を張る。
やがて、ソナーに反応があった時のような。コーンという音と共に、戦域マップに敵機が表示された。
さぁて、私たちの戦争を始めようか――!
今回の話もどう考えてもやべー事やってるんだよなぁって。