せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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ウマ娘3期の3話が神だったので初投稿です。


善戦。そして

 パッケージ。大雑把に言うとそれは特定の能力と引き換えにISの性能を一定の方向に特化させる機能である。

 機動性が大きく下がるが、防御力を向上させて敵機と殴り合うコンセプト。これはラウラさんの機体に採用されている。

 攻撃力を最小限にする代わりに、物理・エネルギーそれぞれのシールドを装備して防御力を極限まで高めるコンセプト。デュノアさんの『ガーデン・カーテン』なんかがそれだ。

 

 そして、セシリアさんの高機動強襲パッケージ『ストライク・ガンナー』の性能は――

 

 

 ※※※※※

 

 

 ラウラさんが次々と砲撃を放つ。彼女のセンスに加えてISの補助も相まって、放たれた砲弾の9割が直撃コースに乗っていた。

 しかし相手は軍用に開発されたIS。直撃確定の砲弾に対して、スラスター兼エネルギー兵器というトンデモ武装、『銀の鐘≪シルバー・ベル≫』を展開して迎撃する。一直線に飛ぶ砲弾をエネルギー弾が迎え撃ち、空中に爆炎が躍った。

 恐ろしいのは、砲弾を迎撃しながらも福音の速度が全く落ちていない事か。判断が人間のそれではない。もしかしたら操縦者は機体に振り回されているのか? だとしたらそれはそれで恐ろしい可能性を感じるが。

砲弾を迎撃しながらこちらへ突っ込んでくる福音がラウラさんとの距離を更に詰めるべく一気に加速した瞬間。

 

 電子音と共に福音の周辺で黒い物体が爆発した。

 私が仕掛けた浮遊機雷は福音の攻撃で結構な数が破壊されてしまったが、それでも生き残るやつは出てくる。そんなサバイバーの内のいくつかが福音にサプライズ(物理)を仕掛けたのだ。

 不意を突かれた福音はたまらずよろける。体勢を崩した福音にラウラさんの砲撃が刺さった。ていうか浮遊機雷2~3個の直撃を受けてよろめく程度とかマジか。

 しかし私たちの攻撃はそこまでだった。敵機も周辺にトラップがある事を悟ってか、砲弾の迎撃を行いながら周辺を掃射し、浮遊機雷を次々と破壊していく。

 

 

『――!』

 

 

 機雷原を抜けた福音がラウラさんに腕を伸ばす。攻撃するつもりか。

 でも私たちの顔に焦りはない。私たちの役目は敵機の足を止める事で、そこまでくれば知っている限りで最高の狙撃手が仕事をしてくれると分かっているから。

 

 上空から降ってきたビームが敵機を襲う。伸ばした腕の先端、人間でいうと手の平の辺りに攻撃を受けた福音は上半身が傾くほどの衝撃を受けたらしい。

 

 

『この距離なら、外しようがありませんわ』

 

 

 声を共にステルスモードを解除するセシリアさん。現れた彼女の姿は、普段とは大きく異なっていた。

 いつも彼女の周囲に漂うビットは腰部に装着され、ビームを放つ砲口は今はスラスターになっている。手にした狙撃銃は一回り以上大型化し、『銃』というより『砲』だ。

 そう。これがセシリアさんのために送られたパッケージ『ストライク・ガンナー』の姿なのだ。ビットによる射撃という手数を無くす代わりに高機動を実現。銃口の数が減った分と一射あたりの火力で補うのがコンセプトだろうか。まさに『蝶のように舞い蜂のように刺す』。刺された側には大穴が開きそうだけどな。

 問題は、そんな一撃を食らっても大きなダメージを受けたようには見えない点か。いや、ビームが当たった場所は操縦者の手の辺りだった。そうだとしたら絶対防御の発動でかなりエネルギーを削らせたはず、だと思いたい。

 

 突然現れたセシリアさんに対処するため彼女の方に向き直る福音。しかしそれは悪手だ。

 

 ドガンという轟音と共に福音が背中から突き飛ばされたかのように大きくよろめいた。同じくステルスモードでセシリアの背中に乗っていたデュノアさんが背後からショットガンで急襲したのだ。

 

 ここに至ってようやく福音も誘い込まれた事に気が付いたのだろう。離脱の構えを見せるが、こちらも(私以外は)代表候補生の集まり。連携を駆使して相手に動く暇を与えない。

 

 その間私は何をしているかって? 補給のための弾薬ボックスを配置したり壊された浮遊機雷を再度設置したりと嫌がらせだ。そして隙を見ては、

 

 

「――ッ!」

 

 

 限界までチャージされたエネルギーが解放され、ニュードの塊が福音に突き刺さる。チャージという大きな隙があってもなお、多くのニュード中毒者に愛用された狙撃銃は相変わらずの威力を誇っていた。

 

 

「訓練用ドローンに向けていいような銃じゃないんでね、コイツは」

 

 

 ブレイザー・アグニ。軽量機ならほぼどこに当たってもワンパン。中量機でも確殺。ガチムチ装甲の重量機でようやく瀕死とかいうオバケ銃だ。素の威力も高いのに、ニュード威力上昇のチップを付けるとさらに殺意が高まるぞ。

 装甲に当たればぶっ壊せるし、操縦者に当たれば絶対防御の発動は不可避。問題はチャージという隙だらけの時間と私の狙撃の腕だけれど、セシリアさんたち3人から代わる代わる攻撃されている今、福音は私でも狙えるほどには隙だらけだ。

 

 と、

 

 ぐりん、と福音がこちらを向いた。マズい、ヘイト買いすぎたか?

 

 そそくさと離脱しようとする私だがそれを許さない福音。お芋は収穫される運命なのか。

 

 

『ナイス囮よシキシマ!』

「その通りなんだけど言い方ァ!」

 

 

 ドバァと海面を突き抜けて出現した篠ノ之さんの紅椿とその背に乗った鳳さんの甲龍が福音に襲い掛かる。

 隠蔽能力が無くなる代わりに威力と砲門の数を増やした衝撃砲の連射が福音に大きなダメージを与えていく。

 さて、これで全ての札が出そろった。後はヤツを削り切る!

 

 奴も武装を最大出力にして全方位に弾をバラまいていく。狙いも何もあった物じゃない、開発元は本気でコイツを実戦投入する気だったのか? 全方位攻撃とか味方の存在をどこに置いてきたんだ。『誰も置き去りにしない』は海兵隊だけなのか? それとも周囲全てを仮想敵に囲まれたイスラエル辺りの発案か?

 

 罠を仕掛け、味方への補給を行い、時たま狙撃、あるいは修復。うん、完全に支援兵装の面目躍如だな!

 

 問題は相手の撃破方法なんだけど……餅は餅屋、本職(?)の代表候補生である皆さんが考えてくれましたとも。

 

 狙いは砲身兼スラスターである特殊兵装『銀の鐘』。そこに攻撃を集中し、破壊するのが目標だ。武装を潰した後で囲んで叩いて捕縛する、とはいえこれで失敗したら本当に後がないのも事実だ。福音が本土にまで到達した場合、訓練機のみの先生たちは簡単に蹂躙されるだろうし、自衛隊のIS部隊や日本代表が本腰を入れて対応に当たるまでに周辺の住民がどうなるか、考えるのも嫌になる。どうやら不発弾の処理を名目に多少は避難させたらしいけれど、ISが本気で暴れれば半径2キロ圏内どころかその倍じゃ効かない範囲の人を殺しつくせる。

 

 ……そうなった場合中露、後は北とかイランあたりは嬉々としてアメリカ叩きに回りそうだな。『条約違反の軍用ISで民間人を虐殺した!』とか。無いとは思いたいけど他にも条約違反のISを持ってないかとか言い出して武力侵攻もワンチャン……? どの程度の黒さかにもよるけどあの絶対謝らないアメリカがそんな事されたら最悪戦争では……?

 

 

(戦闘中に考え事とかバカか私は。仮定の妄想に浸る暇があるなら1個でも多くの機雷を仕掛けろ!)

 

 

 みんなのコンディションを確認。多少の被弾はあれど耐久値はおおむね8割以上をキープしている。対する福音は装甲のあちこちに被弾の痕が目立つ。このまま押し切れれば!

 

 被弾を物ともせず吶喊する鳳さんの青龍刀が福音の翼をもぎ取った。が、その代償に至近距離からエネルギー弾の集中射を浴びて撃墜されてしまう。

 

 

『鈴! おのれ!』

「回収は私が! バックアップを頼みます!」

『わたくしが引き受けましたわ!』

 

 

 返事があった事に安心して私は海中に没した鳳さんを回収するために向かう。が、私が向かうまでもなく鳳さんは海面まで浮上し、近くの岩場にたどり着いた。

 

 

「鳳さん、無事ですか? 自分の名前と今日が何月何日か言えますか?」

『大丈夫よ、ゼロ距離でアレを受けたから一瞬気を失ってただけだし。それよりシキシマ、修復頼める?』

「もちろん」

 

 

 ――コール、URデバイス

 

 

 銃のグリップのような形をしたリモコンを鳳さんに向けると、飛び立っていったデバイスがニュードを噴射し、損傷箇所を修復していく。SPの都合もあるし完全回復はさせられない。けれど少なくとも一撃貰ったらリミットブレイクでISが強制解除させられる状態からは脱した。

 

 

『状況は?』

『見ての通りですわ。対象の特殊兵装は半壊。後は仕上げですわね』

『そ、ならアタシは休んでても良かったりするかしら?』

『鈴さん自身がそれを望むのならば』

 

 

 でも違うでしょう? とセシリアさんは言わなかった。わざわざ言う必要も無かった。

 

 

『あぁ……悔しいなぁ』

 

 

 今にも飛び立って奴に一撃食らわせたい。鳳さんは全身でそう表現していたから。

 

 

 ※※※※※

 

 

 撃墜された鈴の無事がレオから全員に告げられると、今もなお攻撃を続けていた専用機持ちの面々は攻撃のギアを一段上げた。一刻も早く福音を倒して安全に鈴を連れ帰りたいからというのが1つ。もう1つは――

 

 

「鈴があそこまでやったんだ、負けていられるか!」

『箒、落ち着いて。あと7秒で敵機のリチャージが完了するはずだよ!』

『了解、ならばその前に畳みかけるぞ!』

 

 

 代表候補生2人の動きは言わずもがな、人類史上屈指の天才に手ずから調整を受けた現時点で世界最強の機体を駆る箒も、1合ごとにその動きが向上していく。

 だが、人間らしさの無いシステムは、人ではないからこその動きを選択した。

 

 

「んなっ!?」

 

 

 綺麗に入った。確実に取ったと確信した箒の剣を、しかし福音は気にも留めない。むしろこれまでちょこまかと動き回って翻弄させられた羽虫をようやく捕まえたと言わんばかりに残る砲口を箒に向ける。

 

 

『箒!』

「いや、行ける!」

 

 

 誰が見ても絶体絶命。だが、箒だけは勝機を見出していた。彼女だけは、姉の作ったこの機体がこの程度の性能な訳がないと心から想っていたから。

 故に、その決着は必然だった。

 

 

「紅椿ィィィィィィ!!」

 

 

 刀の柄を起点に空中で1回転した機体の踵の装甲、紅椿を第4世代機たらしめている展開装甲がその本領を発揮し、エネルギーが刃を形成する。

 

 福音が最後に放ったエネルギー弾がわずかに紅椿の装甲を削り、一方の紅椿の刃は、福音に残された最後の翼を断ち切っていた。

 

 

 ※※※※※

 

 

「よし!」

 

 

 篠ノ之さんのなんかとんでもない一撃で福音の『銀の鐘』が切り落とされ、また福音本体も海中に転落した時、私は勝ちを確信した。

 だってそうだろう? ここまでやって相手の武装を解除して、あれは勝ちを確信すると思うんだ。

 その時私の脳内にふと浮かんだのは、初めてセシリアさんと戦ったあの模擬戦だった。あの時リムペットボムの起爆スイッチを持った私はセシリアさんに何て言った?

 

 

『次は相手のISを解除してから降伏勧告するんですね!!』

 

 

 根拠も何もない。けれどどうしようもなく悪い予感がして周囲を見渡した。

 そこで上空を見た私と、海に沈んだ福音を確認すべく海面を見下ろしたラウラさん、どちらの方が状況を把握するのが先かなんてちょっと考えれば分かるだろう。

 

 

『総員警戒しろ! 海面に動きがある!』

 

 

 不自然に発生した海面の窪み。その中心に浮かぶ福音は胎児のように身体を丸めていて。

 

 

『La――』

 

 

 だからか知らないけれど、合成された機械音声が、私にはまるで産声のように、あるいは教会の鐘のように聞こえた。




 IS二次は描きやすくて助かります。設定やキャラクターは最高なのに原作がアレなので()
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