せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
リバティアイランドエグすぎィ! でもそんな彼女に迫ったマスクトディーヴァも良い走りでしたね。
透明で巨大なボールを海面に押し付ければこんな感じになるだろうか。べこりとへこんだ海面を見ると、そんな感想が浮かんでくる。
だがそのへこんだ空間の中心部に『銀の福音』が胎児のように身体を丸めて浮かんでいるのを見ると、福音がこの現象を起こしているようにしか見えない。
「なんだ、あれ……?」
『マズいっ! アレは、第2形態移行≪セカンドシフト≫だ!』
ラウラさんの悲鳴のような警告は、しかし遅きに失した。
これまでの私たちの動きから誰が指揮官か解析したのだろう。福音は凄まじいスピードを発揮すると瞬く間にラウラさんとの距離を詰めた。
「はっ……や……」
尋常じゃないスピードだ。少し距離があったっていうのに目で追えなかったぞ。
あっという間に近接戦闘に持ち込まれたラウラさんは鈍重な機体で立ち回るが、すぐにヤツに拘束されてしまう。
「ラウラさん!」
『ラウラを、離せぇぇぇぇ!!!』
フルチャージできなかったブレイザー・アグニは大した威力にはならず、近接ブレードを抜いたデュノアさんの吶喊は剣を受け止めるという斜め上のやり方で無効化された。
そして。
『シャル! 逃げろ! コイツは――』
「おい、嘘だろ……?」
鳳さんの突撃と篠ノ之さんのファインプレーで切断した筈の敵機の特殊兵装『銀の鐘』が、切断面から復活していく。生えてきた、と言ってもいい。
戦慄すら感じていた私が見る先で、破壊前と同じくらいのサイズに戻った『銀の鐘』は、いっそ美しさすら感じるほどの輝きを放ち――ゼロ距離からラウラさんに猛射を浴びせ、撃墜した。
「ラウラさん!」
『っ! よくも、ラウラをぉ!』
ラウラさんが墜とされて激昂しているようにみえるデュノアさんだが、違う。福音の注意を引きつけて篠ノ之さんの攻撃をお膳立てし、その上で私がラウラさんを回収する時間を稼ぐつもりか。
だったらそれに応えなければ男が廃る。落下するラウラさんの機体に向けて私はURデバイスの引き金を引いた。
(とは言っても、こっちの残りはあと4人、3分の1がやられてる以上撤退するのがセオリーなんだけど、問題は相手がそれを許しちゃくれなさそうなんだよなぁ!)
第2形態移行を果たした第3世代機を相手に損傷機を連れて撤退戦? 冗談じゃない、国家代表連れてこいってレベルだ。
突撃したデュノアさんが拡張領域からショットガンを呼び出し、福音に向ける。狙いは頭か。背後を取ってる、あれは決まるぞ!
ドガン!
それは、ショットガンの銃声でも、セシリアさんの狙撃でも、ましてや私が撒いた浮遊機雷が炸裂した音でもなかった。
『あぁ、そんな……』
「は、は……冗談キツイわそりゃ……」
胸部、背中、脚部、あちこちの装甲が変形し、いたるところからエネルギーの羽が生えていた。当然それら1つ1つが『銀の鐘』。さっきの音は、エネルギー弾の奔流に呑まれたデュノアさんの機体や武装があげた断末魔だ。
……これは、もうダメだ。
「セシリアさん、篠ノ之さん。負傷者を連れて撤退を。ここは私が食い止めます」
『何を言う! ここでヤツを倒さねば――』
『……速度を出せるわたくしと第4世代機の箒さん。確かにラウラさんたちを脱出させるには適任ですわね』
『セシリア!? 本気で言っているのか!』
『えぇ本気ですわ! 可能な限り早く負傷者を後送し、レオさんの所に戻れば助けられるかもしれません!!』
『レオ1人であいつ相手にどこまで粘れるか……』
「私でしたら安心してくださいな。弾薬も、修復用のエネルギーもたっぷり残ってます。牽制しながら逃げ回るくらいなんて事ないですよ。
それに撃破された皆さんも軽くではありますが修復をしました。全速は無理でも一定程度の速度で飛べると思います」
『だが……っ!』
「じゃあここで全員死ぬまで戦いますか?」
意地の悪い事を言った自覚はある。篠ノ之さんは固く固く拳を握り、やがて頷いた。
『……分かった。可能な限り急いで戻るから無理だけはしないでくれ』
「えぇもちろん。
――セシリアさん、後は頼みます。
あぁそれと、コレ使ってください。私よりセシリアさんの方が使いこなせるはずです」
『――ッ! わたくしもラウラさんも! あなたに言いたい事が沢山あるんです! こんな物渡されても困りますわ! 突き返すまで絶対に無事でいてください! 無事じゃなかったら許しませんわ!』
一筋、雫を流しながら叫ぶ彼女に、私はただ頷きを返した。
※※※※※
「さーて、セシリアさんたちは離脱した。なんで攻撃してこなかったかは知らんけど、まぁ助かったよ」
何があるいは誰が今の福音を動かしているかは知らない。けれど、こっちにとっても都合が良かったのは間違いないから、変な感じだけど福音に一言礼を言っておく。いや、コイツのせいで関係各所さんざんにひっかき回されてるんだからやっぱりお礼を言う筋合いなかったわ。もっと言うと元凶の束さんには多少アレな事しても許されると思うの。ダメだ何かしようとして近づいた瞬間分解される未来しか見えない。
と、風の音と共に福音がこちらに向けて構えた。おしゃべりは終わりってか?
「輪舞曲のお誘いなら、受けない訳にはいかないよな?
いいぜ、天使とダンスだ!」
――コール、MSL・スウォーム
マルチロックしたミサイルが飛翔し、エネルギー弾で迎撃されると同時に俺は動き始めた。
※※※※※
――ロックオン警報!
「っぐ! んぎぎぎぎぎ!」
エネルギー弾の掃射を機動で回避する。機体1つ分くらい先の空間を光の奔流が流れていく様は心臓にとても悪い。ユニオンバトルで強化機兵の反則エイムショットガンをまぐれでかわせた時のような気持ちだ。
――コール、ヴルカン・ラヴァ
キュキュキュキュキュキュキュ!!
射撃精度を捨てる代わりに鬼のような連射力を誇るニュードマシンガン、ヴルカンを使い弾幕を張る。けどこれは相手を削るというより、回避を強要しての時間稼ぎが目的だ。
「効くか分かんないけどこれも味わっとけ!」
――コール、新型ECMグレネード
宇宙空間で活動するのが前提のISにEMPパルスが効くとは思えなかったけれど、今はコンマ数秒でも時間が稼げればそれで良い!
ECMグレネードが炸裂し、福音もEMPパルスに巻き込まれる。至近距離から電磁波を喰らったからか、ヤツは一端動きを止めた。これはチャンスだ。
「止まったならこれをどうぞ!」
――コール、プラズマカノン・ネオ
ボーダーブレイクの中でも最大クラスの火力を誇る重火力兵装の決戦武器。ランチャーから
放たれたプラズマの塊は狙い通り福音へと突き進み――
「クソッ! 復帰早すぎんだろ!」
命中まであと少しという所で再起動を果たした福音はそれを難なくかわしてみせた。
(今のを避けられたのは痛すぎる。この後はECMグレネードも警戒されるだろうし……)
『La――』
「マズッ!?」
オープンチャンネルに響く電子音声に交じった殺意に咄嗟に横方向にブースト。予想通りと言うべきか、一瞬前まで自分がいた空間をエネルギー弾が埋め尽くした。
(撃ち合いなら動き続けなきゃ死ぬ! なら重めのヴルカンは今は不利!)
――コール、ヴォルペ・スコーピオ
咄嗟の判断で次々と武装を入れ替える。福音のエネルギー弾を完全に避け切れている訳じゃない。かすっただけでも爆発ダメージを入れてくる武装だから耐久値がゴリゴリ削れていく。
耐久値が半分以下になったらURデバイスの出番だ。撃って、避けて、喰らったら回復。さっきからそれの繰り返しだ。
(くそ、戦闘開始から何分経った? セシリアさんたちは無事に戻れたか?)
なんだかんだ言っても合宿所まで戻れば織斑先生を始め先生方もいる。専用機持ちが複数やられたともなればいくらなんでも国家代表を始め国の主力が出張るだろうから、代表候補生とはいえまだ学生である彼女たちの出撃は認められないだろう。そうなったらもう安全は保障されたも同然だ。
(それならこの戦い、私の勝ちだ)
本当は分かってた。今の私がどう立ち回っても福音相手に時間稼ぎは無理ゲーだってことは。
多分ここで私は死ぬ。撤退はできない。増援が来るまで粘るのは不可能。この状態で入れる保険なんてありやしない。
でも、あの2人を守れたなら。
『レオさん! わたくしたちは安全圏まで来ましたわ! レオさんも撤退を!』
(あぁ、やったんだ)
どういう訳か生まれ変わって、推しに出会って。
ここまで生きてきた数か月の命だったとしても。
この命に、価値はあったんだって思える。
「申し訳ありませんセシリアさん。追撃のおそれがあるので最低でもそちらの迎撃準備ができるまで撤退はできません」
『ダメです! 下がって! レオさん!!』
「篠ノ之さん。セシリアさんの事、頼みます」
『駄目だシキシマ! 何か方法があるはずだ……そうだ、姉さんなら』
「いくらあの人が天才でも、合宿所からここでは数分かかりますよ」
『ぐっ……レオ、何をしている、早く退け!』
「ラウラさん? 無理しちゃダメですよ」
『今無理をしないでいつすると言うのだ! 私はこんな作戦認めないぞ!』
「……元気そうでよかった。
セシリアさん」
あぁ駄目だ。この先は言っちゃいけない。彼女を縛る鎖になってしまう。
後は頼みます。
その言葉は言いきれたのか分からない。
全身にエネルギー弾の直撃を受け、私の意識は途切れた。
※※※※※
誰かが呼んでいる。
誰が呼んでいる?
分からない。でもその声に応えなきゃいけないのは確かだ。
「よう相棒。戦う理由は見つかったか?」
振り返るとそこには、自分がいた。
いつか見たような気がする草原の中で、ボロボロになって膝をついたシュライクの肩の上に立っていた。
「世界はいっつも理不尽で、こっちの都合なんか関係ねぇって修羅場ばっかり押し付けてくる」
「そうだな。嫌気がさしたか?」
「正直そんな気持ちもあるよ。でもさ」
織斑、篠ノ之さん、鳳さん、デュノアさん、織斑先生、山田先生、クラスのみんな。
ラウラさん。
そして、セシリアさん。
世界は色んな色があるって、白だけじゃない。黒ばっかりでもない。
苦境なんて山ほどあって。
でも苦境の中を笑って、あるいは愚痴をついたり弱音を吐きながらでも。
一緒に歩める仲間がいるなら、この世界は、きっと捨てたもんじゃないって思える。
「のほほんさんと約束したし、無事じゃなかったらセシリアさんに何されるか分からないしね?」
「違いない!」
誰かが呼んでいる。
あぁそうだ。この声はきっと――
「行ってやれ。まだ終わってないんだろ?」
「えぇ。それじゃ、またどこかで」
「いいや、俺はいつもお前の中にいるぞ」
「でしたね」
私を呼ぶ声が、どんどん大きくなって。
※※※※※
「レオさん!」
「セ、シリア、さん……?」
「はい、わたくしですわ……!」
目が覚めると、セシリアさんの方が視界いっぱいに広がっていた。
いや待って、彼女は撤退したはずじゃ。
「どう、して……」
「援軍が来てくれました。おかげで予定より早く戻ってこられましたわ」
援軍? 一体どこの誰が?
『レオ! 大丈夫か!?』
「織斑……?」
なんで?
『説明は後だ! 今はコイツを、倒す!』
そう言いながら織斑は、手にしていた銃器らしい武装を福音に向けて。そこから眩い光が放たれた。
「んなっ!?」
「織斑さん、機体の第2形態移行に移行したようですわね」
マジか。この土壇場で機体の覚醒とか主人公かよ。いや、主人公だったわ。
機体のチェックを始める。うへ、ものの見事にコンディション・レッドだ。色んなところから警告が出てる。
URデバイスは……大丈夫、使える。
「レオさん、今は大人しくしていてくださいね?」
「分かってますよ。少し機体を修復するだけです」
実際マズイ状態だ。多少は回復しないと流れ弾が掠っただけで死にかねない。
機体をURデバイスでチマチマ修復していく。損傷の度合いとSPの残量からして死にかけから中破くらいには修復できそうだ。
一方で上空では織斑と篠ノ之さんVS福音による死闘が繰り広げられている。
どうやら織斑の新しい武装にあるエネルギーシールドは、シールドエネルギーを削りながら展開する代わりに相手のエネルギー系統の攻撃を無効化するというなかなかにチートなものらしく、加えて篠ノ之さんの機体の固有能力はシールドエネルギーを回復させるらしく、白式とセットになる事で鬼のように強くなっている。
この分ならもう決着は着きそうだな。
私がそう思うのと、織斑が零落白夜を発動するのはほぼ同時で、
『La――』
そして福音が最後の足掻きと言わんばかりにエネルギーの翼を生やして、
「させませんわ!」
セシリアさんが構えたブレイザー・アグニのフルチャージした一撃にぶち抜かれ、完全に抵抗の術を失った。
私たちの、勝利だ。
次で3巻終わりかな? なんか長くなってしまった感じがする。
他のIS二次の感想欄に原作者が今ゲーム実況やってるとか書かれてて草生え散らかした。
Twitter(今はXか)もやってるらしく1年前くらいにシブで書き下ろしやってるみたいでたまげた。
まぁ続編が本として世に出ることはないんだろうなぁ。