せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
戦闘終了! 勝ったぞ! やったぜ!
……なんて事になるのはあくまで物語の中だけだ。では実際問題ISという戦略兵器に乗って許可も無しに出撃したらどうなるのか?
「不幸中の幸いな事にイスラエルからの要求もアメリカの仲裁のおかげで取り下げられた。良かったな? 億ドル単位の賠償金を背負って生きていく可能性が消えたぞ」
警官が強行突入する時ドアや窓を破壊しても罪に問われないのは、軍事行動を行う上で(よほど酷くない限り)流れ弾などの責任を問われないのは、上層部の許可を得た正式な作戦だからだ。
今回私たちが勝手に出撃した件については、どうやら後追いで出撃命令が出たらしいけれどもそれにしたって福音に一発入れた後。イスラエルはその辺を突いて『ウチらの国有財産にキズついてしまったなぁ? どうしてくれんねん。あぁん?』とやってきたらしい。流石に自分たちがやっているダーティーさを知っていたアメリカが止めたらしいが。
いやどうかね。追及しても自分たちの分が悪いから恩を売る方針にシフトしたのかもしれないぞ?(疑心暗鬼)
ちなみに今の私たちは全員司令室になっていた大広間で正座である。かれこれだいたい30分。正座に慣れている織斑や篠ノ之さんはともかく、私もいい加減痺れがキツイし、セシリアさんなんかいつ限界突破してもおかしくない表情してる。
「最後に……全員、よくぞ生きて帰った」
安堵が多分に含まれたそのつぶやきに内心でほっと一息。少なくとも私たちの無事を喜んでくれるくらいにはまともな人間だと分かったのはありがたい。……これは喜ぶべきポイントなのか?
微妙な気持ちを隠しつつ、織斑の肩を叩いて立ち上がるよう促す。
「ん? どうしたんだ?」
「どうしたも何も私たちは全員精密検査だ。女子はここで着替えだぞ?
……戦闘で気持ちが昂るのは分かるがここではマズいだろう」
「ち、違うわ! ごめん、すぐ出る!」
「それでは失礼します」
「レオさん、お待ちを」
自分たちも着替えるべく自室に向かおうとしたら、何故かセシリアさんに止められる。何だ?
「『分かるが』という事は、レオさんも気持ちが昂っているのですね!? それはいけませんわ! これから――」
「ほぅ、それはマズいな。嫁が憲兵隊の世話にならないようここは私が」
「憲兵隊のお世話になるのはどっちだよ!?」
そこに食いついてくるのは予想外すぎるわ!
大広間から逃げるように廊下に出ながら、戦闘が終わってからダントツの疲労感が襲ってくるのを感じるのだった。
※※※※※
夜の浜辺を悲鳴を上げながらも篠ノ之さんの手を決して離さずに鳳さんやデュノアさんから爆逃げする織斑を見て爆笑してたら「最終日ですし思い出、作りませんか?」といつの間にか背後に迫っていたセシリアさんたちに捕まりかけてリアル鬼ごっこが始まったりと夜も結局ロクに休めなかったです(白目)
挙句消灯時間後に部屋を抜け出してたのがバレて全員日付が変わるくらいの時間まで正座説教だったぜ! おのれ織斑、あんだけドンパチやってたらそらバレるだろうが!(責任転嫁)
「ふわぁ~あ……」
お説教があっても起床時間は変わってくれない。眠い目をこすりつつなんとか布団から起き上がる。何となく気になって周囲を確認。よかった、女子ズが布団に潜りこんだりはしていない。流石に織斑先生がいる部屋の隣に潜入するとかいう不可能任務に挑むほど判断力がぶっ飛んだ人はいなかったようだ。あの人の警戒を搔い潜って潜入するとか某漫画の『黄昏』とかラノベの『灯』の面々とかでも無理なんじゃないだろうか?
「くぁ~あ。レオはもう起きてたのか」
「今さっき起きたばかりだよ。そんで部屋に誰も忍び込んでいなくて安心してたとこ」
「いくらなんでも千冬姉にバレずに潜入は無理だろ」
「……光学迷彩纏ってても『気配を感じた』とか『空気の流れで分かった』とか言われそう」
「……いやいやいや、まっさかぁ!」
「声震えてるぞ」
というか織斑よ、お前も心当たりあるのかよ……
「そ、そんなことより朝飯に行こうぜ!」
「いや露骨すぎない? 良いけどさ」
口は禍の元。ご本人に聞かれる前にこの話は終わらせておくのが吉だろう。
※※※※※
「ねぇねぇ、昨日なにがあったの?」
「ゴメンね、機密だから言えないんだ」
「えぇ~。ね、ちょっとだけでいいからさ教えてよ!」
「だーめ。君もボクも監視が付く事になるよ?」
「うっ……それはイヤかも」
「だったらこの話はここでお終い。朝ごはん食べよ?」
食堂に入って5秒でコレである。
気持ちは分かるよ? 昨日いきなり自室待機になったと思えばニュースで近隣一帯が不発弾が見つかったから封鎖されたとか流れて、なのに代表候補生プラス私が先生に呼び出されたとあっては、不発弾処理なんかじゃなくてもっと大きな何かが起きたと考えるのは自然だろう。
だがそれをいう訳にもいかない。私も大概アレだけど、他のみんなは代表候補生剥奪とか重めの処分が下りそうだ。軍隊において知りたがりは死にたがりと同じだとか聞いたことあるし。
「機密漏洩はおっかないですよ~? それに処分が下って罰を受けたとしても『秘密を守れないヤツ』ってレッテルがつきまといますから、将来就職の難易度が跳ね上がったりして……」
「ひえぇぇぇ! やめときますぅ!」
私の言葉がダメ押しになってしまったか、既に食べ終わっていた彼女は脱兎のごとく去っていった。
「レオ、少し脅かしすぎなんじゃねぇか?」
「そうでもないよ一夏。ISに限った話じゃないけれど、やっぱり軽々しく機密情報を知りたがるっていうのは問題があるから……」
「まして今回は事が事でしょう? 15、6の世間的に見れば子どもを査問委員会に召還させたうえで最低でも2年の監視付きっていう罰則の重さは、それだけ情報の重要性が高い事でもあるんですよ」
「なるほどな……」
神妙な顔をしている織斑だが、今考えると本当にこれってこの前まで中学生だったガキに背負わせていい責任じゃないよな。
転生してもなおついてくるこの世の不条理を嘆きつつ朝食メニューである白身魚の焼き物をいただく。
「うわおいし」
ふっくらと焼かれた身は余分な脂が落ちていて、されど身がパサパサになるような事は決してなく。噛むと魚の旨味とほのかに潮の香りが口に広がる。そうなると次に口に運ぶのは白米以外にはありえない。
どうしてこうも焼き魚と白米は合うのか。アマゾンの奥地に行ってもこの答えは見つからないだろう。
そのままの白身を味わった後は醤油をサーッ!(迫真)こんなんご飯何杯でもいけるわ。
気が付いたら2杯もおかわりをしていて、セシリアさんに「流石殿方ですわね」と言われてしまった。少し恥ずかしい。
※※※※※
朝食後すぐに撤収準備になり(とはいってもISの機材は先生方が昨日の内に撤収してくれていたらしい。私たちは使った部屋の掃除とかをした)、昼前には旅館の正面玄関前に大型バスが停まった。
「あ゛ぁー、流石に疲れたなぁ」
「それは鍛え方が足りないのではないか? ――と言いたいところだが、今回の件はそうなってもやむを得ないからな」
「私からしたらラウラさんもセシリアさんも平気そうに見えるんですが……?」
「まぁ、私とレオでは鍛え方が違うし、セシリアはセシリアで人前で疲労を見せないような訓練を積んできたのだろう」
「なるほど……」
補助席まで使って1列に5人座れるバスの中、当たり前のように私の両脇に座ったセシリアさんとラウラさんは平然としている……ように見える。
「とはいっても、わたくしも今回ばかりは少々疲れましたわ。少しはしたないかもしれませんが、もしかしたら途中で眠ってしまうかもしれません」
「(……なるほど、そういう手が)軍人の常は『休める時に休む』だからな。私も、少し休息するかもしれないな」
「……ん?」
なんか風向き変わったな。
「アナタがワタシとこの子を助けてくれたのね? ありがとう」
「えっ」
「んなっ!?」
「むむむむむ」
「へぇ?」
あ、バスの外で織斑が修羅場ってらぁ。いつもの景色だな。(高みの見物)
あの人って、確か福音のパイロットだっけか。えらい美人だな。
なんて思っていた時期が私にもありました。
「アナタもよ、レオ・シキシマ君。もし就職先に困ったら、ワタシに連絡してね。USAF≪アメリカ空軍≫はいつでもアナタを歓迎するから」
「は、はぁ……っ!?」
ウインクと同時に渡された名刺には、明らかに彼女のものと思しきキスマークががが。って痛いッ!?
「痛い痛い痛いッ! ラウラさん、肘極まってる! セシリアさんもそれ痛いつねり方……ッ!」
「あら、嫉妬させちゃったかしら? それじゃあチャオ」
「チクショウ、アレ絶対楽しんでる……って痛い痛い痛い!!」
「レオさんもあのような方がタイプなのですね」
「それならそうと言ってくれれば良いものを」
「確かに彼女みたいなスタイルの良い女性とはお近づきになりたいとは思うけど! ってぎゃあああああ!」
「それを言う人がいますか!」
「一度徹底的に分からせる必要があるようだな……?」
結局、バスが動くまで痛みは続いた。
※※※※※
(嘘でしょ……あんだけ痛かったのに少しも痕が残ってない……?)
妙に痛みが残っていて眠るに眠れない車内。既に両脇の女性陣は眠りに落ちていて、彼女たち以外にも見える範囲の女子は眠っているようだ。
右側のセシリアさんは窓の方を向いて、左側のラウラさんは腕を組んで下を向いている。
確かに私は福音のパイロット――ナターシャさん、だっけか――のようにスタイルの良い女性とお近づきになりたいと思う。けどそれは男の夢的なものであって。
「タイプでいうならセシリアさんはど真ん中だし、ラウラさんもくっそ可愛いんだよなぁ。――おっと」
あまりにも恥ずかしい、けれど口に出さずにはいられなかった言葉を超小声で呟いた瞬間、段差か何かでバスが揺れ。
「えぇ……」
セシリアさんとラウラさんがそれぞれ私の方にもたれかかってきた。彼女たちの安眠は私の双肩にかかっているといっても過言ではない(物理)。
安心しきったような2人の寝顔に鼓動が早まる。
これはしばらく眠れそうもない。
10/31に発生した拳銃立てこもり事件、犯人が建物入り口で銃を取り出した時に「コイツ素人だろ」って思った人は多いんじゃないかな?