せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

6 / 85
ねぇよ、んなもん


【急募】近距離武器で中距離射撃特化機体を撃破する方法

「さて、どうしたものか……」

 

 放課後になり、寮の自室に戻って今日一日を振り返った私は思わず頭を抱えた。ため息は気合で抑え込む。

 完全にやらかした。カッとなって売り言葉に買い言葉とか子供かよと。こちとら前世では社会人だったし、上司の理不尽な八つ当たりにも、クレーマーの支離滅裂な主張にも余裕、とまでは言わないが、無心で流せた。

 

(これ、割とマジで精神が肉体に引っ張られてるのかもしれないなぁ。社会人になってから「学生の頃は良かった」なんて言ってたけどまさかそうなるとは)

 

 とにもかくにもクラス代表決定戦である。1週間後に第3アリーナで行われるこの模擬戦までに、なんとかして私はISの操縦をものにしなければならない。

 と、そこまで考えて血の気が引いた。

 

「私、そもそもIS動かしてないじゃん!?」

 

 そう、私はあくまでISを起動させただけで、本来入試の代わりになる山田先生との模擬戦で、私は打鉄ではなくシュライクを展開してしまい、以降基本的に寮に籠りっきりだったのだ。当然ISの起動もできていない。

 

「あれだけ啖呵切っておいてISもロクに動かせませんじゃ話にならないぞ……」

 

 私は訓練をすべく担任の織斑先生のもとに向かった。

 

 ※※※※※

 

「いいぞ。ただし条件がある」

 

 職員室にて。練習用のアリーナは使用申請が大量に来てるだろうしすぐには通らないだろうと考えていた私に、織斑先生はあっさりと許可を出した。

 

「条件、ですか?」

「そうだ。自覚はあるだろうがお前のISはかなり特殊だ。現状では一般生徒と同じアリーナで訓練を行った場合、事故の可能性がそれなりにある」

 

 まぁ、それはそうだ。ISの戦闘は空中戦で、流れ弾は基本的にアリーナのシールドが止めるが、地面に向かうものは違う。地面を這いながら機動や射撃の訓練をしていたら流れ弾がヘッドショットで即時ダウンしました、なんて笑えないことが起きかねないのが今の私なのだ。

 

「故に、お前の訓練時間が基本的に夜間、先生方の訓練時間中になる」

「? 寮の門限は確か――」

「寮監は私だ。なんとでもなる」

「しょ、職権乱用……」

「訓練をしたくないようだな?」

「大変失礼いたしました」

「まぁいい。早速になるが今日から訓練は可能だ。……今日の担当は山田先生になる。せいぜいしごいてもらえ」

「わかりました。それでは失礼します」

 

 ※※※※※

 

 数時間後、ジャージ上下の下にISスーツを着込んだ私は予定時間より少し早めにアリーナに到着していた。正直に言ってやっとISをまともに動かせるとワクワクして早く出すぎた。

 そういえば、ここの寮は原則2人部屋と聞いていたんだけれど織斑と同部屋じゃないのか。もしこの世界における彼もまたラブコメ主人公ならば、今ごろラッキースケベの1つ2つ起こしてボコられているかもしれないな。いや、流石のIS学園も教育機関である以上男女同部屋はありえないだろう。……ないよね?

 ちなみに翌日、織斑と篠ノ之さんが同部屋だったと噂が流れた挙句、当の2人がなんだか妙によそよそしい、というか織斑が篠ノ之さんを見ては何故か『何かを思い出すことを止めるように』頭を振る光景を見た私は、宇宙猫の如き顔で青空を眺めたのは、また別のお話である。

 

「シキシマ君も来ましたね、それでは少し早いですが、訓練を始めましょう」

「はい先生、よろしくお願いします」

「ではまず、シキシマ君のIS『シュライク』を展開してください」

「わかりました」

 

 目を閉じ、今は腕時計のような形になっている待機形態のシュライクに意識を集中させる。ハンガーにいる自分の身体に、各種パーツが取付けられるイメージ。最後に頭部パーツのセンサーアイが青く光る場面まで想像してから瞼を開けると、私は既にシュライクを展開していた。

 数メートル先にいる山田先生が微妙そうな顔をしている。

 

「何かありましたか?」

「うーん、展開までの時間が少し遅いですね、3秒1は新入生としては普通かもしれませんが、慣れた人は1秒を切ります。とりあえず今は2秒を切るようになることを目標にしましょうか」

「わかりました」

 初手から問題点が出てきたでござる。ていうか今の展開3秒もかかったのか、アニメのオープニングだったら地面と激突してたぜ。

 そして薄々気が付いていた事だが、シュライクは、というよりブラスト・ランナーは空を飛べなかった。山田先生曰く、脚部スラスターの出力が自由に飛び回るには低すぎるのだそう。ブースターを利用しての大ジャンプがせいぜいらしい。

 

「できない事をアレコレ考えていても仕方ありません。今はとにかくできることを伸ばす方向でやっていきましょう!」

「はい!」

 

 そして山田先生めっちゃいい人。

 

 ※※※※※

 

 夜のアリーナに爆音が響く。私のシュライクが装備できる様々な武装を、今試している所だ。

 今の私の手持ち装備は、

・主武器  スマックショット(ショットガン)

      ネイルガン(釘打ち機)

・副武器  ヘヴィマイン(地雷)

      リムペットボム(ボタンで起爆するタイプの爆弾)

・補助武器 索敵センサー

      スタナー(スタンガンみたいなもの)

      弾薬ボックス

・特殊武器 リペアユニット(SPという時間経過で回復するエネルギーを使用して自身または味方を回復する武器)

 

 ……こうしてみると見事に初期武器ばかりである。原作の『ボーダーブレイク』では、ランクマッチでランクを上げ、また試合毎に報酬としてランダムにもらえる各種素材を使うことで、使用している機体や武器より上位の物を購入したりできていたが、この世界ではどうなるのだろう。

 夏の合宿では確か米国の軍用ISと大惨事大戦したはず。そんな戦場に今の私がいても足手まとい……それ以前に飛べない以上戦場にすら行けないのか、なんてこった。

 

 一通りの武器を試した後、山田先生が険しい声色で告げてきた。

 

「シキシマ君、今の君にオルコットさんを倒せるとは正直思いません。1週間後の模擬戦では、とにかく彼女の攻撃を被弾しないように立ち回ることをお勧めします」

「ですよね」

 

 上記の武器を見てたいていの人はこう思うはずだ。「遠距離武器は?」

 答えは、無い。ガッチガチの近距離戦仕様の武器構成である。

 

 自分、涙いいっすか?

 

「で、でも! 収穫もありましたし! 大丈夫です、きっとなんとかなりますよ、たぶん!」

「先生、それ私の目を見て言えますか?」

「うっ……」

「機動がそこそこできた所で相手は国家代表候補生ですからね……動いている相手に当ててくるとか普通にできそうなんだよなぁ……」

「うーん、まぁ確かに私もそれ位は普通にこなせますし……」

「いっそのことリムペットボムを起爆させてその爆炎を目くらましに突っ込みますか?」

「それはやめましょうね?」

 

 珍しく山田先生からツッコミが入ったところで今日の訓練は終了となった。

 

 ※※※※※

 

 夢を見ている。

 そう、これは夢、というより私がまだ田原という名前の男だったころの記憶だ。

 仕事帰りにいつも立ち寄っていたゲームセンター。とりあえず500円を投入し、仕事で凝った指や手首をほぐす。

 そして深呼吸を1つして――それで準備が整う。

 様々な戦場で戦った。燃え盛る近未来都市、豪雨に見舞われる南の島、雪と氷に覆われた放棄区画、果ては辛うじて原型を留めている衛星軌道上の研究衛星の残骸。

 多くの機体に乗った。最初に支給され、装甲とスピードのバランスが整った中量機『クーガー』シリーズ、今の相棒で、薄い装甲の代わりに速度に優れた軽量機『シュライク』シリーズ、分厚い装甲で多少の被弾をものともしない重量機の『ヘヴィガード』シリーズ。

 4つの兵科を駆使して暴れまわった。爆発的な加速で前線を抜き、敵のベースに襲い掛かる『強襲兵装』、索敵センサーやトラップを設置し、また傷ついた味方を回復させる『支援兵装』、圧倒的火力で敵を粉砕する『重火力兵装』、光学迷彩を纏い、一撃必殺の狙撃銃で狙い撃つ『遊撃兵装』。

 画面の向こう、全国のゲームセンターで筐体の前に座る相手がライバルだった。年齢も、性別も関係ない。純粋に己が腕を試す瞬間。ランクが上がる度に上がった先の戦場で格上にボコボコにされた。だから機体構成を考え、戦術を考え、味方との連携を重視した。

 最終的に上りついたランクはSS3。まだ上にEXだのACEがあった。そこまでの境地にはたどり着けなかった。絶対的な終わり、サービス終了がやってきたから。

 悔しかった。私は――俺はまだ戦える、まだ上に行ける。そう思っていたから。

寂しかった。ランクが上がるほど、マッチングでぶつかる相手は決まってくる。名前も顔も知らない相手だけれど、色んなマップでぶつかり、時に完封し、時にボコボコにされ、プレーヤー名と取ってくる戦術を脳に刻んでいた相手と、もう会えないと知ったから。

 

 そこまで考えが至ったとき、不意に視界が開けた。

 多くの筐体がそれぞれの音楽を奏でるゲームセンターから、どこまでも青い空が広がる草原のど真ん中に、私は立っていた。

 突然の事に驚いた私は、思わず周囲を見渡して――背後に、半分朽ちた巨大な機体、シュライクと、それに腰掛ける男に気が付いた。

 

「よう」

 

 声を掛けられる前から、相手が誰だか分っていた。

 短く切りそろえた髪、情熱を感じさせる顔立ち。キャラクタータイプ『熱血』、公式が彼に与えた名前こそ、『レオ・シキシマ』である。

 

「どうしてここに? って顔してるな」

 

 その答えも、なんとなく出ていた。

 それは未練だ。

 

「答えは自分の中にある。初めてコイツに乗った時の事を、アンタはよく覚えているはずだぜ?」

 

 彼らが私の未練が生み出した幻覚ならまだましだが、もしそうでない場合、私は――

 

「おっと。そこから先はまだ早い。また後で会おうぜ、相棒」

 

 待ってくれと手を伸ばそうとした私は急激に何かに引っ張られて――

 

 ※※※※※

 

 自己主張を繰り返す目覚まし時計の止め、私はベッドから身を起こす。

 

「あれ? なんで……」

 

 悲しい夢でも見たのか、瞳から涙が零れ、僅かに布団を濡らした。

 

「んー……ダメだ、どんな夢だったか思い出せん。まぁいいか今日も頑張っていきましょうっと」

 

 私の言葉に、待機形態のシュライクが僅かに光った気がした。

 




これだけ書いてまだ戦闘シーンに入らないってマ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。