せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
「更衣室も随分広いんですねぇ」
「そうですわね。では着替えたらこの時計の下で待ち合わせという事でよろしいでしょうか?」
「それが良いですね。ではまた」
「えぇ」
猛暑日なことに加えてオープンしたばかりというのもあってか、プール施設の入場ゲートはかなりの混雑だ。
敷地の見取り図を見ると屋内・屋外と大小さまざまなプールがあり、ファミリー層から男子高校生の集団まで、幅広い層のお客さんが楽しめそうだ。
だけど、いや、だからこそ、色々とスケールが大きい。
敷地面積は福島県の某ハワイっぽいスパリゾートよりやや小さいくらい、しかし駅へのアクセスは抜群に良いため駐車場はそこまで広くなく、その分を施設の広さに充てている。固定資産税エグそう。
大混雑な更衣室でなんとか空いているロッカーを見つけて着替えをし(ロッカーの確保が一番大変だった)、出口の近くで待つこと少々。
「レオさん、お待たせいたしました」
「いえいえ、特に待つと――」
聞きなれた声に振り返った瞬間、私の性癖は破壊された。
※※※※※
――脳内にイメージした海の上に組まれたステージ。そこにいるのはホットでリミットな衣装を着た私だ。
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セシリアさんは水着の上に1枚水色の上着を羽織っている。いるのだが、その丈がやや長いせいで、まるでその上着しか着ていないようにも見えてしまう。
※※※※※
――ホットでリミットなイントロが脳内に流れ、ヘリコプターかドローンでも使っているかのように視点が空撮になり、そして脳内の私は歌いだす。
――YO☆SAY 夏が胸を刺激する ナマ足魅惑のマーメイド
※※※※※
しかもそれだけではない。いや、それはそれで大変なのだが、それ以上にエグイ。
上着の丈が腰のちょい下なおかげ、いや、せいで、セシリアさんの生足が強調され、もうネオジム磁石かってくらい視線が吸い寄せられてしまう。
そして、上着に隠れている筈の上半身なのだが、(隠しきれて)ないです。
※※※※※
――出すとこ出してたわわになったら 宝物の恋はやれ爽快っ!
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なんていうか、凄いわ。
前にセシリアさんがクラスの女子と話していて自分の胸は本国の同世代の子と比べたら慎ましい方だなんて言っていたけれど、自分はそうは思いません!(迫真)というか日本人的な感覚からしたら十分大きい方に分類できると思うんだ。
というか私としては大きい方が好みだけれど、小さいからといってバカにするつもりなんて全くない。これは受け売りなのだけれど、『大事なのは触れたときに幸せな気持ちになれるかどうか』だ。もっとも前世を含めて触れたことのない私にはどうこう言うことはできないんだがな! ガハハ
出すとこ出してないのにその『山』で影が出来てるあたり普通に大きいぞ。篠ノ之さん姉妹(と書いて上位勢と読む)? あれは、まぁ、うん……
とにかく今はセシリアさんだ。正直ヤバい。主に私の理性とか視線が。あかん前に女性は下世話な視線には特に敏感とか聞いた事あったわ。首を振って周囲を見渡す事で物理的に視線を切る。
「しかし凄い人ごみですね。流石は人気のスポット」
「そうですわね。ですので……」
「えっ」
腕を引っ張られる。この感覚はさっきも味わったが『今』はマズい。何がマズいって装備の薄さが致命的だ。
全身が研ぎ澄まされる。時間の経過がゆっくりになるような、不思議な感覚。
そうか、これが、領域≪ゾーン≫……!
腕がどんどん引かれる。
無意識に首が動き、これからディープインパクトが襲い来るであろう自分の腕の方へとロックされる。
そして、――Impact Now。
あぁ、歌が聞こえる。
頭の中で西川ニキが渾身の歌声を披露している。
(これは、そうだな。敢えて言うならY〇gib〇。人をダメにするクッション……)
「人が多くて迷ってしまいそうなので……少しだけ、いいですか?」
「んん゛っ」
本当にセシリアさんは凄いや。このごくわずかな時間の間に何度私を殺しにかかれるというのか。私の理性はもうボロボロだ。おかしい、まだ水に入ってすらいないんだが。だがわが生涯に一片の悔いなし。
気を緩めた瞬間デロデロになりそうな鼻の下をなんとか維持しながら、私はセシリアさんと歩き出した。
※※※※※
「えっ、レオ!?」
「織斑?」
「セシリア達も来てたの?」
「鈴さん、今日にされたのですか?」
そうだった。ここはラブコメの世界。オープンしたばかりの大人気プールだなんてイベントに最適な素材があって何事も起こらないはずがなかったんだ……
(せめてISを使ってのドンパチにはなりませんように……!)
夏休みくらい爆炎と硝煙とは無縁の日々を送りたい。そんな私の願いが叶うかどうかは、神のみぞ知るセカイなのだろう。
いや、マジでドンパチはやめてくれよ?
イクイノックス引退かぁ……陣営の判断は尊重するけれどもう少しあの走りを見たかったっていうワガママ。