せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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 よく考えなくても公衆の面前で水着流すのは訴えられても文句言えないので初投稿です。


誇りある代表候補生の姿か? これが……?

 プールに入る前には準備運動は欠かせない。当たり前の話だ。いきなり水に入ると心臓発作等命にかかわる事態になりかねないしね。

 あぁ確かに準備運動は大事だ。それは間違いない。

 でもさ、

 

 

「お前らどっから湧いてきた!? 見世物じゃねえぞあっち行けぇ!」

 

 

 イベントに参加する女性陣が準備運動を始めた途端にどこからともなく野郎どもが集まってきて、鼻息荒く応援(?)し始めたらさぁ……オタクとして頭に来ちゃっても仕方ないというものよ。

 

 12組24人の女性陣が準備運動したり手を振るなどして歓声に応えている中、IS学園選抜ペアとも言える2人は、静かに戦意を滾らせていた。というか、アレ絶対チケットを手にしたらどうにかして相手に譲らせようって考えてるわ。

 

 

(セシリアからはなんか考えて奪おう)

(鈴さんには何か代わりの物で譲っていただきましょう)

「……アハッ」

「……ふふっ」

 

 

 うーん眩しい笑顔。2人とも目が全く笑っていないけどな。

 

 

『それではルール説明です! このプールは――』

 

 

 50×50メートルのプールに浮かぶ通路。らせんを描くようにプールの中央に延びたその道中のそこかしこに様々な障害が用意されていて、基本的にはペアでの攻略が必須。プールに落下しても失格にはならないが、スタート地点からのやり直しになるため大幅なタイムロスは避けられない。なるほど、よく考えられている。

 しかもこのレース、他の参加者への妨害も許可されているのだ。もちろんケガに繋がるような悪質な妨害をした場合は問答無用で失格になるらしいが。それでも妨害ありともなれば、腕に覚えのある人間でもない限りは先行してそのまま逃げ切るのが戦法としては有効になるだろう。

 それではこれからこのコースに挑む2人はどうか?

 

 腕っぷし? たぶん並みの成人男性くらいなら余裕でのしてしまえる。

 

 脚の速さ? それだけに特化したアスリート程ではないが、2人ともかなりの健脚だ。

 

 チームワーク? かれこれ何か月の付き合いだけど、その濃度は並みじゃない。

 

 総合力が高すぎる。オリンピアンとか現役の軍人でもない限りこの2人を止める、あるいは逃げ切るのは相当な幸運が必要だろう。

 

 そうなると必然的に問題が出てくる。

 

 私か織斑のどちらかが沖縄に連れていかれて魅惑のバケーション(要年齢規制)を楽しむ事になってしまう。という点だ。

織斑にどれくらいの自覚があるかは不明だけれど、少なくとも私はあそこまでアプローチされても好意の存在を疑う程鈍感ではいられなかった。考えたくはないけれど全部演技、という可能性もゼロではないのかもしれない。とはいえこれまでの全てが演技でしたと言われたら大人しく降参するしかないね。

 

 セシリアさんたちには頑張ってほしい。けれど優勝されてしまえばR-18タグ不可避。心が2つある~

 

 

『参加者の準備が整ったようです。それでは……スタート!』

 

 

 ブザーの音と共に24人が一斉に動き出す。私的には参加者たちが押し合いへし合いしながら進んでいくものと思っていたけれど……

 

 

「こんのぉっ!」

「甘いッ!」

 

 

 何、あの、何……(ドン引き)?

 

 水上コースのスタート地点は乱戦の坩堝と化していた。

黄色のビキニが眩しいお姉さんが気勢を上げながら隣にいた水色のパレオを纏う女性に足払いをかける。だがそれをジャンプで躱したパレオさん(仮名)は着地の勢いそのままに両足でビキニネキ(仮名)にストンプ。腹部に強烈な一撃を受けたビキニネキはたまらずダウン。しかしあの場は乱戦。周囲の全てが敵になる弱肉強食の世界。

 ダウンしたビキニネキを複数の脚が襲う。蹴りの滅多打ちは彼女がプールに蹴り落されるまで続いた。

 パレオさんはその頃には別のターゲットを狙っている。彼女の視線の先にいるのは――鳳さんだ。小柄な鳳さんであれば組しやすいと考えたか。

 普通であれば間違いのないその判断。しかし、パレオさんの敗因はただ一つ。鳳さんの事を知らなかった事だ。

 

 

「もらった――ッ!?」

 

 

 鳳さんの絶技は外野にいた私たちだからこそはっきりと見る事ができた。ラリアットをしようとしていたのか腕を振りかぶりながら鳳さんに向けて走っていた彼女に対して、鳳さんは腰を地面に付けんばかりにしゃがみ込んだ。両手を足場に付けてしゃがみ込んだ勢いを跳ね返すバネにする。するとどうなるか? 力が加わったバネは跳ね返るしかない。

 全身を使った脚撃は2発も繰り出された。1発目で腹部。くの字に折れたパレオさんの身体を襲う2発目、アゴの辺りに突き刺さった脚がパレオさんを天高く打ち上げ、そのままプールへと沈めた。(※生きています)

 パレオさんからすれば、鳳さんが消えたように見えた事だろう。そして次の瞬間には腹部に強い衝撃を受け、何が起こったかも分からないまま水に叩きつけられた筈だ。

 

 鳳さんとは対照的な戦い方をしているのはセシリアさんだ。恐ろしい事に直前まで来ていた上着ですら今の彼女は武器として使いこなしている。

 拳を固めた競泳水着の女性がセシリアさんに襲い掛かる。対するセシリアさんは特に気負う様子もなく、手にしていた上着を彼女に向かって投げた。――いや、投げていない。袖の部分を握っている。しかし布地のほとんどを宙に投げ出された上着はばさりと広がり、競泳水着の視界を遮る。まさかの手段で目くらましを受けた彼女は突っ込むしかないと考えたのか、走る勢いのままセシリアさんに向けて突っ込む。

 もしかしたら彼女が突っ込んでくることすらセシリアさんには予想できていたのかもしれない。セシリアさんは上着を引き戻して両手で持つと、競泳水着の突き出した腕に絡め、そして引いた。

 競泳水着の身体がふわりと宙に浮き、そのまま水面へと飛んで行った。派手な水しぶきが上がる。

 

 

「!?」

 

 

 これは外野から見てもよく意味が分からなかった。

 

 

「上着を使って相手の勢いをそのまま投げ飛ばす力に変える。変則的ながらも合気道のような技だな。見事だ」

「どうした急に」

 

 

 振り返るとメガネをかけた少し太めの男が、連れ合いらしき男にセシリアさんの技を解説している。ほえーあれってそういう仕組みだったのか。

 

 いや誰だよ。

 

 

「だが勝ちすぎるという事はつまり周囲の全てが敵に回るという事でもある。復活ありのこのレース、いつまでもスタート地点にいるのは体力の消耗でしかない」

「つまりは……」

「誰が先にこの人混みから抜け出すか。それでレースの展開が変わってくるだろう」

 

 

 え、なんかメチャクチャ説得力のある展望語ってるんだけど……何者だよ。

 そして恐ろしい事にレースの展開はまさにメガネの彼の言う通りに進んでいくのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

『さぁ乱戦を抜け出した5番・7番ペアを追いかけるように他の参加者たちが続いていく。その差は6,7メートルといった所か!?』

『道中の障害物を考慮すれば後続にも十分勝機はありますね。先行するペアからすれば障害物をいかに速やかに攻略できるかが勝負のカギでしょう』

 

 

 いつの間にか流れるようになった実況と解説の声――いつ現れたのか分からないほどの激戦に巻き込まれていたとも言えるが――に先行するチームとの差を脳内で描きながら、それでもセシリアと鈴は勝てると考えていた。無論考えるだけではない。プライベートチャンネルを使用してのやりとりまで行っていた。他の参加者からすれば憤慨ものだろうが、いつの時代も勝てば官軍。その上IS乗りでもない周囲の人間からすれば2人が超能力まがいの通信手段を持っているとは知る由もない。知らぬが仏とはまさにこの事であった。

 

 

「てやぁぁぁぁぁ!」

「隙ありっ!」

「えっ……きゃあああああああ!?」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

 

 襲い掛かるビキニの参加者の背後を取った鈴が水着の紐を解放する。瞬時に状況を理解した彼女が咄嗟に腕で抑えたため謎の光の出番が無くなったが、それでも水着を直すにはコースにいられない。泣く泣く自らプールに入って水着を直し、スタート地点へと戻っていく彼女の背中が煤けていた。

 

 

「ちょっ……アンタ、それは反則でしょ!?」

 

 

 脱落した女性のペアだろうか、おそろいのビキニを着た女性が鈴に抗議の声を上げるが、その背後に、セシリア。

 

 

「反則とは……こういう事でしょうか?」

「ウソ、いつの間に……いやぁぁぁぁぁぁ!」

「待ったぁぁぁぁ!」

 

 

 鈴は咄嗟に相手をプールに突き落とした。セシリアの手には女性のビキニが握られており、いくらなんでも男たちの目がある場所で手ブラを晒させるほど非人道的にはなれなかった。

 なおプールにはレース途中から環境に優しい自然由来の塗料が流し込まれているため、岸からプールの中は分からないようになっている。いくらなんでもマズいと判断した主催者の好判断であった。

 

 

「さて、残りは1ペアのみですわ。先を急ぎましょう」

「人の心とかないんか」

 

 

 復帰を遅らせるために奪った水着を敢えて遠くに投げるセシリアに内心戦慄しながらも、水上コースを駆ける鈴。

 ゴールまでの距離はもう10メートル程度。だが先頭を走るペアまでの距離はあと僅かであった。

 

 

「クッ、本当はやりたくなかったけど、ここまで来られちゃやるしかないわね!」

「仕方ないわ。金髪の子は私が!」

「OK、ツインテの子は任せて!」

『おおっと先頭を走っていた5番ペア、ついに後方から追いすがってきた9番ペアと戦う覚悟を決めたようです! しかし5番の根崎・岸本ペアはそれぞれオリンピックでレスリング金メダル、柔道で銀メダルという超武闘派! 9番ペアはどう立ち向かうのか!?』

『足場が不安定ですからね、その辺りも注意する必要がありますよ』

「ウソでしょう!?」

 

 

 確かにやたらガタイのいい2人だなとは思ってはいた。けれど格闘技の世界トップクラスが相手というのはナシだろう。これまで余裕を保っていたセシリアの顔が焦燥に歪む。

 走っていた距離は同じ。何ならこの程度走った内にも入らないが、それは相手も同じ。むしろ体力の消費は余計な戦闘に巻き込まれてきた分こちらが不利でもある。

 

 

(格闘戦ではこちらが不利! どうすれば……!)

「セシリア、アタシに考えがあるわ」

「それは一体」

「ごめん、説明してる時間はない。今だけ前衛を張ってほしいの」

「わたくしが? ……分かりましたわ。その代わり、必ず勝ってくださいね」

「当然。……行って!」

「分かりましたわ!」

 

 

 走り出すセシリア。相手はレスリングメダリストが先頭だ。レスリングという事は注意すべきはタックルか。捕まったらまず抜け出せはしまい。そして鈴の方には何かしらの策があるのだろう。であれば。

 

 

(信じましたわよ、鈴さん!)

 

 

 メダリストとの距離が縮まる。あと3メートル、2、1……

 相手にぶつかる直前、セシリアの背中、そして頭を強い衝撃が襲い、

 

 

「んぎゅっ!?」

 

 

 恋する乙女として絶対に出してはいけない声がセシリアの口から放たれた。

 何が起こったのか? 外野にいた者たちはその瞬間をはっきりと目撃していた。

 突撃するセシリアの後方を走っていた鈴が、衝突の寸前にセシリアの背中と頭を踏み台に跳躍。先頭ペアの頭上をも越えてゴールまでたどり着いたのである。

 

 

『ゴールインッ! まさかの手段で5番ペアをかわした9番ペア、逆転勝利です!』

『戦って勝てない相手とは戦わなければ良い。素晴らしい判断力ですね』

 

 

 なるほど、傍目からすればそうも見えよう。

 歓声が沸くプールで、しかしセシリアは激怒していた。

 

 ――セシリア・オルコットは貴族の当主である。

 生まれつき貴族令嬢として厳しい教育を受けてきたし、両親の死後は若き当主として海千山千の怪物がひしめく社交界を渡り歩いてきた。

 

 ――セシリア・オルコットはイギリス代表候補生である。

 国家の威信を背負う文字通り『国家代表』。その候補生もまた、エリートの中のさらに上澄みからでしか選ばれない。血の吐くような努力は前提としてそれでもその努力を飛び越えていく天才たちとの椅子取りゲーム。それに勝つため、彼女もまた相応の努力を積み重ねてきた。

 

 それらの前提を踏まえて敢えて彼女を一言で表すと、こうなるだろう。

 

 ――セシリア・オルコットは、プライドの塊である。




 何気に肉弾戦描写ってこの二次では珍しいな。
 まぁ軍人に準じている存在なIS乗りなら当然だからね、仕方ないね。
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