せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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有馬記念なので初投稿です。


身体が闘争を求めた結果アーマードコアの新作は発表された

 もしも人の感情を可視化する事ができたのなら、今のセシリアさんはどうなるのだろう。モンスターをハントする某ゲームに登場する金獅子の激高モードのようになっているかもしれない。2Gのティガレックスで地獄を見続けた(村の緊急クエで10連続落ち)私でも突然の乱入とか死ゾ(5敗)。

 

 セシリアさんのプライドは、それはもう高い。とはいっても持ち前の才能を長年の努力で磨きに磨いた結果としての実力とプライドなので変な方向に拗れている訳でもない。入学時の一時期こそアレだったとはいえ、今は少なくとも私が知る限りでは普通の優等生だ。

 じゃあ彼女のプライドが鳴りを潜めたのかと聞かれたらそれはNOだ。負けず嫌いな所は全く変わっていないし、訓練で手を抜こうものならたぶん相当怒ると思う。手を抜いた事ないから分からないけど。

 

 つまるところセシリアさんは誇り高いのだ。じゃあ、そんな彼女を文字通り踏み台にして(しかも頭を踏んづけて)、優勝景品のチケットを搔っ攫うとどうなるのか。

 

 プール施設が戦場になるまでそう時間はかからないだろう。

 

 

「不味いぞ織斑、鳳さんを守れ!」

「OK、そっちは任せた!」

 

 

 水上コースに飛び乗る。運営のお姉さんが何やら喚いているが許してほしい。折角のプールが水漏れするような事になるのは避けたいんだ。

 

 

「!!!!」

「!?!?」

 

 

 遅かったか。開戦の火ぶたを切ったセシリアさんが鳳さんに襲い掛かる。鳳さんはネコのような俊敏さとしなやかさで急襲を躱し、セシリアさんから距離を取る。――その手にチケットを持ちながら。おい、ヒラヒラさせるのはやめろ。無駄に煽るな。

 

 

「鈴、なにやってんだよ!」

「セシリアさん、落ち着いて。ね?」

 

 

 セシリアさんが更なる行動に移る前になんとか中央の浮き島にたどり着くことができた。彼女を少しでも落ち着かせるために敢えて彼女の前で両手を広げる。

 

 

「どいてくださいましレオさん。彼女を○○できませんので」

「うーんアウト」

 

 

 瞳のハイライトは夏季休暇に出かけたみたいだ。今の彼女、BT適正値めっちゃ上がってそう。君レーザー曲げられる?

 ここが民間施設で周囲には多数の民間人がいるという事実が、彼女に武装を展開させないでいる。それを考える程度には理性が残ってくれていた事に感謝するべきか、彼女が最大限理性を発揮しないと民間施設で戦略兵器を展開して実弾を発射しかねないほどまで怒らせた鳳さんに憤るべきか。どちらにせよ私の役目はできる限りセシリアさんの気を引いて、かつ彼女の怒りを宥めることだ。

 

 

「落ち着いて。ね? ここで銃を抜く事で今はスッキリするかもしれない。でもそれはセシリアさんのこれまでのキャリアをフイにしかねない行為だってのは分かっているでしょう?」

「えぇ。えぇ、分かっています。分かっていますとも」

 

 

 彼女の瞳に理性の光が戻る。しかしまだ安心できない。プライドを傷つけられたが故の怒りというのは理屈じゃないんだ。分かっちゃいるけど殴らずにはいられない。誇りとか尊厳っていうのはそういう物でもある。

 万が一に備えて頭の中で非殺傷系の装備をリストアップしていく。スタナー? 水辺で電撃はマズかろう。インパクトボム? 吹き飛ばしても冷静にならなかった場合抑えられなくなる。 ECMグレネード? 周囲の電子機器が死んだら賠償問題だし万が一ペースメーカーとかしている人がいたら生死に関わる。

 となると、この場で最適な装備は……

 

 

「しかし、あの摩擦係数0のまな板さんには思い知らせなければなりませんので」

「言って良い事と悪い事があるだろゴラァァァァァァァ!!!!!」

「踏まれた時妙に軽いと思ったんですよねぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 もうダメだ、おしまいだぁ……

 ティ○ァ―ルよりすぐに沸騰した鳳さんが甲龍を展開。青龍刀を手にこちらへ突っ込んでくる。彼女を抑えていた織斑は何故かその場でうずくまってしまっている。アレだ、どうせつい噴き出して鳳さんにしばかれたんだろう? 間違ってたらごめんね。

 セシリアさんも望むところだと言わんばかりにブルー・ティアーズを展開。近接武装を手に甲龍へと向かう。

 外野の観客は突然のISバトルに呆然とした様子だったりスマホを構えたり。撮ってる場合か。はよ逃げろ。

 

 2人の最後の理性が射撃武器を展開させないでいるのかもしれないが、ISを出した時点でアウトだ。そして私にはこのドンパチを可能な限り早く鎮圧する事が求められている。

 

 ――コール、マグネタイザー

 

 

 地面に設置した妨害装置から発生した強力な磁場が、2人の機体を捉える。全力で相手を叩きのめそうとしていた動きが、スロー再生でもしているようなゆっくりとした物に変わった。

 

 

「レオさん、何を!?」

「これ止めてレオ。アイツの事ぶっ飛ばしてやんなきゃ気が済まないのよ!」

「2人ともいい加減にしろ! 本国に送り返されたいのか!?」

 

 

 2人の剣幕を上回る勢いで怒鳴りつける。茹で上がった頭を冷やすには大声が一番だ。ごめんねビックリさせちゃって。でもこうでもしないと君たち銃を抜くでしょう?

 

 

「それ以上やったら最悪学園から放り出されるかもしれないけど。それでもやる?

 私としては2人が本国に帰った後の事までは憂鬱になるから考えたくはないのだけれど」

 

 2人がISを解除するのに合わせてこちらもマグネタイザーを解除。キレたとしてもちゃんと計算を働かせられるあたり流石代表候補生だ。いや、キレたらIS展開しちゃうのは普通にダメなのでは? ボブは訝しんだ。

 

 

「2人ともISを解除してください。その後磁場を止めます」

「分かった、分かったわよ。――頭冷えたわ。ありがとねレオ」

「わたくしからもお礼を。これ以上の無様を晒さずに済みましたわ」

 

 

 2人がISを解除したのを見届けてからマグネタイザーの展開を止める。良かった。この場は何とか――

 

 

「それは別として1発キめなきゃ気が済まないわねセシリアァァ!!」

「その言葉、そっくりそのままお返ししますわぁぁ!!」

 

 

 収まんなかったよ……ISこそ出しはしないものの、ガッチガチの軍隊格闘術を仕込まれている代表候補生2人によるタイマンが始まっちゃったよ。

 

 

「ちょっ、2人とももうやめろって……ぶるるぁぁぁぁ!?」

「お、織斑ぁぁ!!」

 

 

 哀れ。仲裁に入ろうとした織斑だが、今彼女たちの間に割って入るのは竜巻に突っ込むようなものだ。何もできずボロ雑巾のようになるのが関の山だし、実際織斑はそうなった。

 

 鳳さんが繰り出す風切り音がしそうな鋭さの前蹴りをセシリアさんの掌底が迎え撃つ。直撃はマズいと判断したのかセシリアさんは足の甲に掌底を当てる事で蹴りの軌道を逸らしたようだ。体勢を崩した鳳さんにセシリアさんは接近、浮島というバランスの悪さを感じさせない踏み込みで距離を詰め、勢いと体重を乗せた肘を見舞う。狙いは腹か!

 しかし鳳さんは自ら仰向けに倒れる事でこれを回避、逆に足払いを仕掛けてセシリアさんを転倒させる。

 

 

『なんと! 優勝したペアはどうやらIS学園の生徒だったようです!』

『一瞬ISを展開しましたがすぐに収めましたね。我に返ったのでしょう』

『しかしその後始まった格闘も凄いですね』

『えぇ、ISに乗る人の中には軍事訓練を受ける方もいるという話ですから、彼女たちもそういった人なのかもしれませんね』

『なるほど、そうなるとこの後の展開は全く予想不可能になってきました!』

 

 

 観客を盛り上げる実況と解説。

 

 

「レオ、すまねぇ……俺はもうダメだ。後は、頼むぞ……ガクリ」

 

 

 力なく横たわる織斑(ガクリっていう擬音まで自分で言ってるあたり本当は元気なんじゃなかろうか)。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

「てやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 全力全開で技の応酬を披露する2人。

 

 ぶちり、と。

 何かが切れた。

 

 いやふざけるなよと。そもそもここには遊びに来ただけだというのに何で俺はここまで苦労しなければいけない?

 静かに、でも結構頭に来ている俺は周囲を見渡すと、レース中に選手の妨害に使われていた『ある物』へと向かった。

 

 

「それ、貸してください」

「え? いやそれは――」

「貸してください。貸せ(豹変)」

 

 

 にっこり笑顔で係の人に頼むと、彼は快くその装置を使わせてくれた。本来笑顔とは相手を威嚇するための云々という文言が脳裏に浮かんだが知ったこっちゃない。

 

 幸いにも構造は至ってシンプルな上、本体にも使用方法や注意事項が書かれている。後は引き金を引けばいい。

 

 狙いは? 未だにキャットファイトに明け暮れている2人だ。

 

 

「いい加減、頭冷やせやどらぁぁぁぁぁ!!!」

「わぶっ!?」

「へぶっ!?」

 

 

 怒りと共に放水銃から放たれた水流が、浮島の上の2人とまとめて薙ぎ払い、そのままプールへと叩き込んだ。

 

 

 ※※※※※

 

 

「はぁ……分かっているだろうけど、君たち出禁ね」

「「「「はい……」」」」

 

 

 結局その後イベントは中止に。他の参加者への悪質な妨害(水着を奪うのは流石にアウトだった)にISの展開、施設側の備品を強奪しての使用、部外者によるコースへの侵入(これは2人を止めるためだったから多少は情状酌量してもらえた)といった理由で私たち4人は晴れてこの施設第1号のブラックリスト入りを果たし、当然と言えば当然ながら学園にも連絡が行ったことでその後織斑先生にこってり絞られてこの日の騒動は終わりを迎えた。

 

 沖縄行きのチケット? 当然無効になったようだ。

 

 

 敢えて言わせてほしい。

 

 なんて日だ!!!

 

 

 なお翌年からのイベントでも水着を脱がすといった妨害が多発し、結局イベントそのものが吹き飛んだのは別の話である。




残(念と思う気持ちがないわけじゃないけど)当(然)な結果。
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