せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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本年もどうぞよろしくお願いします。

本当はもっと早く投稿するつもりだったんですがゴタゴタしてましてね……


暑さを楽しむのが夏だけど限度がある

 ラウラ・ボーデヴィッヒは軍人である。

 この世に生を受ける段階から既にドイツ軍の暗部が絡んでいた彼女の人生は、文字通りの意味で軍と共にあった。ラウラ・ボーデヴィッヒという名前すら、そもそも『製造番号』で呼ばれていた彼女の外向きに名乗るための方便であった。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは合理主義者である。

 レオとの出会いによって大いに丸くなったとはいえ、根っからの気質まではそうそう変わることは無い。一般人からすれば時に冷徹と思えたり、あるいはどこかズレた印象を受ける事はあるが、彼女は彼女なりに学園に馴染もうと努力していた。

 

 していたのだが。

 

 

「やめろぉぉぉぉッ!!」

 

 

 跳ね起きた彼女は就寝時は常に近くに置いてあるナイフを取ると傍にいた人物に飛びかかり、軍仕込みの対人制圧術を存分に発揮した。

 ……職業軍人のナイフ術を振るわれたシャルロットとしては、冷や汗ものなのだが。

 

 

「お、おはようラウラ。大丈夫? うなされてたけど……」

「あ……シャル……」

「まずはこのナイフをしまってくれると嬉しいかなぁって……」

「あ、あぁ、すまない。私は一体何を……」

「よっぽど酷い夢を見てたみたいだね」

「あぁ、内容は思い出せないが、とにかく最悪の気分だ……」

 

 

 ナイフを定位置に戻したラウラは額に手を当ててため息をつく。嫌な汗をかいたせいか髪があちこちに張り付いて不快だった。

 そう、ラウラは寝る時に服を着ないタイプの人間だった。より正確に言うならば服を着ないでも平気なタイプの人間だった。

 

 

「ねぇラウラ、やっぱりパジャマは着ないの?」

「着る服がない」

「えぇ……ほらこれ、風邪ひいちゃうよ」

 

 

 シャルロットが近くに用意しておいたバスタオルを手渡す。場合によっては朝食のために食堂に出るまで全裸のままでいる彼女に同性としても見ていられなかったシャルロットの苦肉の策であった。

 

 

「ありがとう。私はこれからシャワーを浴びるが、シャルロットはどうする?」

「うーん、ボクも入ろうかな」

「そうか、なら一緒に入るか?」

「え? いや入らないよ!?」

「ふ、冗談だ」

 

 

 口の端を僅かに歪めて去っていくルームメイトに、シャルロットは内心驚愕していた。

 

 

(あのラウラが冗談を言った!? やっぱりシキシマ君のおかげで丸くなってるのかなぁ。

 それはそれとしてなんとかラウラにパジャマを着せないと……)

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒのルームメイト、シャルロット・デュノアの朝はまだ始まったばかりだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

「……しんどい」

 

 

 どうも、レオ・シキシマです。

 

 高1の夏休みで大人気プールから出禁を食らった男、スパイダーマッ! ……いや、マジで勘弁なんだよなぁ。この先の人生がどうなるか分からないけれど、私はともかく織斑やセシリアさんたち3人(女子2人については実際反省してほしい。もうしてるけど)といった遊びたい盛りの高校生がオープンしたばかりの大規模プールに行けないっていうのはちょっとかわいそうというものである。今後クラスのみんなであそこ行こうよ! って話の流れになった時にごめん、俺(あるいは私)あそこから出禁食らってるから……とか空気最悪になるわ。

 

 とはいえ夏休みである。宿題についてある程度の期間コツコツやる系統の物は生徒の出自諸々世知辛い理由で存在しないからとっとと終わらせたし、休み明けに無様を晒さない程度には日々勉強もしている。やる事はやっているが、それはそれとして遊びたいのだ。特に私は何の因果か2度目の人生を生きている身。学生時代の夏休みというのがどれほど貴重なものかよーーーく分かっている。モラトリアムの間にどれだけ楽しい思い出を積み上げられるかどうかがその後の社会人生活の荒波を耐えるための灯になるのだ。(なお個人差がある模様)

 

 それはさておき。学園に残る生徒のために、夏休みであっても食堂は開いている。私が入った時も、それなりの人数が朝食を楽しんでいた。

 そんな生徒たちの中に見慣れた金と銀の色を見つけた私は、彼女たちの方へ歩みを進めた。

 

 

「おはようラウラさんにデュノアさん。よかったら相席しても?」

「嫁の頼みを断る私ではないな。シャルはどうだ?」

「ボクも大丈夫だよ」

 

 

 了解を得たため早速注文に向かう。ラウラさんは朝からステーキか、凄いな。

 

 

(死ぬ前の私だったらキツイメニューだったけど今の私なら大丈夫なんだよね。高校生ボディ万歳、若さ万歳だ)

 

 

 20代後半になるにつれ段々と食が細くなっていったし脂モノも胃もたれにビビりながらっていうカラダ身体になったんだよなぁ……私の老いが早かっただけって可能性もあるけど。

 

 今日のメニューは和食だと焼き鮭、洋食はスクランブルエッグにトーストか。どちらにしようか悩むけれど今は焼き鮭の脂が私を呼んでいる気がするからそちらにしよう。

 

 

「和食定食ください」

 

 

 ※※※※※

 

 

「買い物?」

「うん、ラウラと一緒に行ってこようかなって」

「まぁ、私としても現状のままでは今後の生活に支障をきたすという事は理解したからな」

「それは……良かった、ですね?」

「うん……本当に良かったよ……」

 

 

 しみじみとつぶやくデュノアさんを見れば彼女がラウラさんにパジャマの必要性を理解させるためにどれほどの苦労があったのか偲ばれる。

 

 

「その、だな……良かったら嫁も一緒に来ないか……?」

「うーん……すみません、今日は午前中に企業案件がありまして……」

「そうか……」

 

 

 しょぼんと落ち込むラウラさん。ごめんね、企業案件って言うのは本当なんだけれどそれ以前に仮にも私は男なの。女性とパジャマ売り場に入る度胸は無いかなぁって。

 この後ラウラさんを宥めることになるデュノアさんにもアイコンタクトで謝罪。本当にすまぬ……

 

 

「っと、ラウラ、早く食べないとそのお肉固くなっちゃうよ?」

「む、それもそうだな」

 

 

 あむあむとステーキ(牛・200グラム)を食べるラウラさん。……私も何かお肉を食べようかな。

 

 付け合わせのコーンが中々取れずに格闘するラウラさんを見てネコみたいだなと思ったのは、ここだけの話だ。

 

 

 ※※※※※

 

 

『それではテストを開始します。お好きなタイミングでどうぞ』

「了解しました。撃ちます!」

 

 

 今回私に来た依頼は重火器の反動制御とオーバーヒート抑制に関するもの。

 銃砲というものが火薬を使う関係上、どうしても反動は発生するし、連射し続ければ銃身が過熱しオーバーヒートしてしまう。これを防ぐためには冷却機構を備えたり銃身が空気で冷えやすいようにしたり、あるいはガンナーが撃ち過ぎないように気を付けたりと大雑把な説明ではあるが様々な方法がある。

 では依頼のあった企業が渡してきた銃はというと、ベルト給弾式で銃身に丸い穴がいくつも開いた機関銃であった。M1919かな?

 

 結論から言うとブローニングっぽい機関銃は見た目にふさわしい性能だった。抑え目な連射性でその分精度は高く、銃身の過熱も抑えられる。ガトリング砲のように重くもないが、制圧力には少し課題。中距離での射撃戦に使いたいところだな。体感的にはマガジン容量の多いウィーゼル機関銃、といった感じだ。なおベルト式給弾だからリロードにクソほど時間がかかる。もう固定式銃座でいいじゃんね……

 

 

 ※※※※※

 

 

『それではお疲れさまでした』

「お疲れさまでしたー」

 

 

 無事に予定していた時間内に性能テストも終わり、取り急ぎの用事は無くなった。今の時間はもう少しで12時になるかなってくらい。

 ふむ、どうしたものか。

 

 健全な男子高校生としては夏の東京に繰り出すのも一興。私がアラサーのおじさんだった前世では暑いとか理由をつけて室内にいただろうけれど、せっかく10代を2回もやらせてもらっているんだ、流石にもう来ないであろう夏を楽しみたい。

 とはいえ今の私がいるのは女子高。ガンガンに汗をかいた状態で寮に帰ってこようものなら大顰蹙を買うのは自明の理。真夏の炎天下にわざわざ出ていく理由もないのも確かだ。

 

 

「シキシマ、少し良いか?」

「? はい、大丈夫です」

 

 

 考え込んでいると織斑先生に声をかけられた。何の用だろうか。

 

 

「ここでは話せん。個室を用意してある」

 

 

 ……おっと? 随分ときな臭いワードが出てきたぞ?

 そしてそのまま連れていかれる事5分。無人の空き教室に入って織斑先生は、初手で爆弾をぶん投げた。

 

 

「これから話す内容はまだ未確定な部分があるため口外禁止だ。

 

 シキシマの『過去の経歴』。それにあった10対10の戦闘データが上層部内で生徒たちの集団戦闘訓練に使えそうだと判断された。

 まだ各国に根回しをしている段階だが、そう時間がかからない内に承認されるはずだ。

 

 よってシキシマ。お前には今後作成されるだろうカリキュラムの監修を依頼したい。もちろんまだ内々の話だが、本決まりの際には正式にIS委員会から公文書で依頼がかかるだろう。そのつもりであらかじめ準備しておいてくれ」

「なるほど……」

 

 

 思っていたよりもガチなやつだった。というか、

 

 

「お話は嬉しいのですが、私で大丈夫なのでしょうか? 教導が務まるようには思えないのですが」

「国際会議等での共同警備やNATO、EU等といった同盟国間での共同訓練は数度行われた事はある。だが多数対多数の戦闘訓練はそこまで実例がある訳ではない。各国の保有するISにも限りがあるからな。

しかし専用機持ちが複数集まるここでなら大規模な訓練も可能だ」

「場所の問題は……海上ですか」

「今の所はそう予定している」

 

 

 流石に即決はできない。けれど、どうしようもなくワクワクしている自分がいるのも事実だった。

 

 

 だってこれもう『ボーダーブレイク』じゃないか! どうしよう、ISだとどこまでも飛んでいけちゃうから訓練での想定として高度制限つけて、フィールドは一から考えるのもアレだし『ボーダーブレイク』のステージを再現しちゃう? 私が参加するとしたらリペアは封印だろうな。流石にバランスが悪すぎる。

 

 

「……随分と楽しそうだな?」

「ふぇぁっ!? いえ、そんなことは……」

「鏡は要るか?」

 

 

 織斑先生に言われるまでもなく、今の私はかなり緩み切った顔をしているのだろう。

 

 

「分かりました。レオ・シキシマ、大規模戦闘を想定した訓練プランの考案についてお引き受けしましょう」

「繰り返すがまだ正式な話ではないからな。それと決定したとしても課題の量は相談に乗れるが中間・期末試験はあるからな。シキシマが特殊な状況下にあるのは分かってはいるがそれでも今のお前はただの学生で、私の生徒だ。今しかできないことを楽しめ」

「はい。ありがとうございます」

 

 

 そんな会話を最後にその場はお開きとなり、私はとりあえず考えをまとめるべく自室へと戻ったのだった。




オリジナル要素も入れていくゾ
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