せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
『ボーダーブレイク』。セガが出していたゲームで、当初はアーケード、つまりゲームセンターで筐体を操作して遊び、後にPS機でも遊べるようになったロボットアクションTPSだ。
プレイヤーによって違いはあると思うが、私的には豊富な種類の機体を好きに組み合わせて自分だけの機体をカスタムしたり、軽装甲高機動やガチムチ重武装といったプレイスタイルが選べたり、全国マッチングで変態――誉め言葉だけどガチ。何食べたらそんな事思いつくんだって戦法を編み出したりする――に揉まれて成長したりと色々な醍醐味があった。
結構エグいレベルで出費が必要という点を除けば、あとクラスアップした直後は上位勢の機動についていけずポイントが禿げ散らかす事を除けば、本当に楽しいゲームだった。やめろこっちはまだ赤帯なんだよACE(最上位のクラス)様の動きに追随できる訳ないだろ!
……とにかく、先ほど織斑先生から言われた事――ISで10VS10の集団戦――を行うのであれば、私の持っている『ボーダーブレイク』の知識を総動員しなければならない。この世界にもセガってないかなぁ。神様仏様牛マン様、私にゲームメイクの才能をお与えください。真面目な話、こういう演習とかあるいは普通のゲームでもそうだけど、実在する地形や都市の街並みからステージを生成するAIとかあったら便利そう。絶対軍事利用されるけど。
ここまで来るともう出かける気分にはなれない。あれだ、新しいゲームを手に入れた時の気分だ。それ以外眼中に入らなくなる、そんな感覚。
いやぁ楽しみだなぁ! ホープサイドみたいなビル群マップとかISが飛んでいてもクソ映えそうだし、キニシュ砂岸のような海岸マップに強襲上陸するシチュエーションとか体験したいなぁ私もなぁ! あのEUSTがよく使っているベースが乗っかるほどのクソデカホバークラフトで迎撃の銃火に晒されながら強襲上陸したい……したくない?
敵の火点を沖合の艦隊とかISに潰してもらって、さぁ行くぞ! って躍り出た先頭の機体がヘヴィマイン踏んで吹き飛んだり、そのISも地対空ミサイルとかCIWS――近接防御システム。20ミリクラスのバルカン砲だからマジで曳光弾がレーザービームみたいに見えるぞ――を避けるために右往左往するとか、調子に乗ってビルの屋上で連続狙撃していた味方がプラズマカノン・ネオで伏せろパーカーされるのとか、想像するだけでこう、オラワクワクすっぞ!
とりあえずPCを起動し、文章作成ソフトを立ち上げる。頭に浮かんだアイデアは何かしらの形にしないとすぐに忘れちゃうからね。
・ボーダーブレイク形式での多対多戦闘訓練
・マップはイチから作っていられない。ゲームから引っ張るか
・ISだとどこまでも飛ばれるから高度や戦闘区域に制限をつける
・マップのギミック(カタパルトやリフト、ガンターレット等)は物に応じて要相談』
今の所こんなものか。でもガンターレットはなぁ……。
『ボーダーブレイク』のガンターレットには機銃、ロケットランチャー、ミサイルランチャーの3タイプがあり、それぞれ強力な攻撃力が売りだけれどブラストがターレット、つまり銃座に乗り込む必要があり、当然ながら機体は全く動けなくなる。そして夢中になって撃ちまくっていると遠距離から狙撃で頭を抜かれたり、重火力兵装の榴弾砲でしめやかに爆発四散したり、場合によっては強襲兵装の近接武器で刺身にされる。ロケット砲やミサイルはまだしも、単装(銃身が1本だけ)機銃のために移動不可っていうのは結構な不利だよなぁ。
機銃タイプは20ミリの4連装とか、30ミリの連装とかにするのは良いかもしれない。いっそのこと第二次大戦の艦艇みたいに40ミリ4連装とか……流石に鬼か。40ミリ機関砲とか射程長いし(有効射程距離3,000~4,000m)威力もえぐいからなぁ。流石にバランスブレイカーになるし真っ先に遠距離攻撃で潰すわ。
マップもどうしようか。ここで戦わなければいけない理由付けも大事だし。
あ、折角自分で好きなマッチメイキングできるならいくつか追加したいルールもあるな。要人護衛とか面白そう。護衛対象/高価値目標の乗った車両を防衛/奪取せよ、ただし目標車両が一定以上ダメージを受けた場合対象死亡と認定し双方作戦失敗とか。
リスポーンはどうしようか。『ボーダーブレイク』をはじめこの手の戦闘はゲームであれば一定数リスポーン、つまりやられても復活ができるけれど実戦じゃそうはいかない。リアル重視で行くならリスポーンは無しでやられたら即退場、学生でもついてこれるようにスポーツ性を持たせるなら状況開始から一定時間以内であれば復活可能とか、全員一定数復活可能とかルールを作るのもいいかも。あるいは参加者のレベルに応じて両方使い分けるとか。その辺りは織斑先生と相談しながらになるかな。
※※※※※
なんとなく目がチカチカするなと思って、すっかり薄暗くなった部屋で電気もつけずにキーボードを叩いていたことに気が付いた。画面に表示された時刻は18時を回っている。すっかり夢中になっていたようだった。
「……お腹空いたな」
夕食には少し早く、でもそれなりの時間脳を回転させていたせいか空腹度は結構なレベル。購買部で総菜パンでもつまんで、ついでに構想の骨格だけでも織斑先生に相談するかと私は部屋を出た。
廊下に黒ネコがいた。
何を言っているんだお前は、疲れすぎて幻覚を見たのかと言われかねないが、私は正気だ。
これは公式放送である(EDF総司令並感)
「?????」
「あっ、そのっ、レオっ、匿ってくれ!」
今時の黒ネコは喋る上にわたわたするのか……たまげたなぁ。
いや、いい加減に現実を見よう。このかわいい生き物はどう見てもラウラさんだ。
ど う し て ?
疲労状態の脳みそがノロノロと回転数を上げ始めようとして――廊下の奥から答えがもたらされた。
「逃がさないよラウラ~、せっかくかわいいんだから写真撮ろうよ~」
「断るっ!」
白ネコと化したデュノアさんがカメラを片手にこちらに向かってくる。瞬間、脳内に溢れる――存在する記憶。
※※※※※
『買い物?』
『うん、ラウラと一緒に行ってこようかなって』
『まぁ、私としても現状のままでは今後の生活に支障をきたすという事は理解したからな』
『それは……良かった、ですね?』
『うん……本当に良かったよ……』
しみじみとつぶやくデュノアさんを見れば彼女がラウラさんにパジャマの必要性を理解させるためにどれほどの苦労があったのか偲ばれる。
『その、だな……良かったら嫁も一緒に来ないか……?』
『うーん……すみません、今日は午前中に企業案件がありまして……』
『そうか……』
しょぼんと落ち込むラウラさん。ごめんね、企業案件って言うのは本当なんだけれどそれ以前に仮にも私は男なの。女性とパジャマ売り場に入る度胸は無いかなぁって。
※※※※※
つまり、何だ? 朝色々言っていたラウラさんのパジャマ問題は、こんな形で解決した、って事で良いのだろうか?
まぁ、解決したのならヨシ!(安全帽装着)
……ダメだ。空腹のせいか脳内に工事現場で使うヘルメットを被ったネコが変なポーズを決めている姿が浮かぶ。いや、マジで何なんだ。
「しかし……そんなパジャマも売ってるんだ」
「そうそう。肌触りも良いし何よりかわいい! ラウラもかわいいよねぇ~」
本物のネコをかわいがるかのようにラウラさんを構い倒すデュノアさん。一方でラウラさんはされるがままだ。
「でも珍しいですね、ラウラさんはこういう服は苦手だってイメージを持っていたんですが。偏見は良くありませんね」
「た、確かに普段の私はあまりこのような服は着ないが……
……その、レオから見て、どう、だろうか……?」
……これは、何だ。私の感想を求めているって事で良いんだよな? そりゃもう滅茶苦茶にかわいらしいのは私の目だけじゃなくて魂もそう言っているんだけどさ。
「あぁ~かわいい! かわいいよねぇシキシマ君!!」
「えぇ。その、とてもかわいらしいと、思いますよ」
お客様! 困ります! あーっ! いけません!
耳まで真っ赤になりながらぷいっと顔を背けて聞こえるか聞こえないかギリギリくらいの声量で「それなら、その、良かった」なんて言われたら私はぁぁぁぁぁ!?
なお私より先にデュノアさんのかわいいメーターが振り切れた事でラウラさんは当分デュノアさんの腕の中から抜け出せなくなった。
私はバクバク鳴り続ける胸を押さえながら購買部へと向かう事にした。
ボダで護衛ミッションとかやってみたかったよなぁ……
読者ニキネキはこんな事やってみたかったみたいなのあります?