せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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すまねぇ……作者の甘党っぷりがこんな事態に……


紅茶ガチ勢に絶対怒られるエピソードだぞ

「織斑先生」

「どうした、シキシマ……例の話か?」

「はい。大雑把にはなりますが」

「分かった、少し待て。

 ……時間が開くが、11時に図書室の書庫に来てくれ」

「分かりました」

 

 

 翌日、勤務中であろう織斑先生にアポイントを取るべく話しかけると爆速で予定を組んでくれた。こういう所は本当優秀なんだよなこの人。片付けできないしブラコンだけど……

 

 

「何か言ったか?」

「いいえなんでもありません、サー」

 

 

 雉も鳴かずば撃たれまいとは言うけど鳴いてないのに撃たれるのは理不尽なんよ。

 朝から冷や汗をかきつつ、私は織斑先生に背を向けた。

 

 

 ※※※※※

 

 

「……ふむ。よく考えられているな」

「ありがとうございます。織斑先生から見て、リスポーンの有無はどう思いますか?」

「学園の授業では有り、代表候補生など一定レベル以上の生徒の訓練では無しといった所だろう。実戦で撃墜されたパイロットが徒歩で本拠地に帰還するなど、よほどの幸運の持ち主か、相応の理由が無い限りあり得ん」

「ですよね」

 

 

 脳内で「オメガ11イジェークト」と渋い声が聞こえた気がするが無視だ。あの人は異能生存体だから例外だし。

 

 

「シキシマ。この訓練プランだが、少し預かっても良いか? 他の先生方からも意見を聞きたい」

「それはもちろんです。そもそも私はあくまで学生ですので、先生方から見れば至らない点が多々あると思いますし」

「それは事実だが、あまり謙遜もしすぎるな。実現可能かどうか別としても、シキシマのプランは及第点以上のレベルに達しているぞ」

「それは……ありがとうございます?」

「何故疑問形なんだ。

まぁいい。それよりも、夏休みは楽しめているか?」

「はい。色々と充実している実感があります」

「それは何よりだ。正直、シキシマは事情が事情だからあまり周囲に馴染めない可能性も考えていたからな」

「それは、まぁ……」

 

 

 織斑先生の懸念ももっともだろう。ほぼ女子高に放り込まれた前世持ちの男(世界でも唯一の機体)とか属性過多すぎる。我ながらよく馴染めたものだ。転生ものでありがちな転生特典でブラスト以外にコミュニケーション能力も付与されていたのかな? だとすれば私を転生させた存在には感謝したいところだ。

 

 

「とはいえ羽目を外し過ぎるなよ? 前にも言ったと思うが今のお前はあくまで学生で、その本分は学業だ。赤点なんて情けない事態に陥らないようにな」

「はい」

「それと、休み明けには学園祭もある。クラス以外にも部活動の出し物もあるから色々と見て回ると良い」

「部活動の出し物もあるんですか、それは楽しみです」

 

 

 てっきり各クラスの出し物がメインだと思っていた。ていうか、そうか、部活動もあるのかこの学校。いや、あっても何らおかしくはないが。

 

 

 違和感。

 

 

 何だ? 何かが引っかかる。何がおかしい?

 

 

「どうした?」

「あ、いえ。なんでもありません」

「そうか。ではこの辺で解散としよう」

「はい」

 

 

 そして私は何かが引っかかるまま解散して、何かが引っかかるままお昼ご飯を食べ、そのままの状態で自室に戻って、

 

 

「勧誘合戦のシンデレラか!!」

 

 

 原作イベントの伏線だと気が付いて頭を抱えたのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

 原作小説第5巻のイベントにあるIS学園の文化祭。

 うろ覚えの原作知識を総動員してどうにか思い出せたのは、

 

 ・生徒会あてに学園中の部活から織斑を入部させてくれと嘆願が来る。

 ・生徒会長が一芝居打って学園祭の出し物として織斑一夏(厳密に言うと確か彼が被った王冠)争奪戦を始める。

 ・織斑ラヴァーズプラスアルファによる大惨事大戦の末、結局彼は生徒会に入って随時各部活に貸し出されることで決着。

 ・上記のイベントの合間にクラスの出し物(メイド喫茶)、生徒会長直々の織斑強化イベント、テロリスト(名前は忘れた)の織斑襲撃がある。

 

 ということだった。他はともかくテロリスト襲撃イベントの詳細を全然思い出せないのがヤバい。今回については原作を知っているという転生者のアドバンテージを全く活かせない。

 

 相手は誰だっけか? 襲撃、という事はたぶんISでのドンパチが起こるだろう。IS学園の警備を抜く方法も分からない。某天才様のようにチートすぎてこちらの守りを正面から抜いてくるのか、それともテロリストらしく警備の隙を突いてくるのか。

 これはもう学園祭どころではないのでは? ……いや、悲観的すぎるのも良くないか。

 こちらの戦力を考えてみよう。教師陣がまずいるだろう、次いで先輩方(とはいえ今の1年生ほどトラブルと実戦を積んではいないだろうが、少なくとも訓練は私たちより長く行っている)、そして1年生でも実戦経験のある代表候補生が4人もいるし、織斑も過酷な状況を乗り越えて乗機の第2形態移行≪セカンドシフト≫を成し遂げたし、篠ノ之さんに至っては自分の弱さを受け止めた上で駆るのは第4世代機とかいうチート機体だ。

 私? 私は、まぁ、回復要員ってことで1つどうですかねぇ? 正直言ってメキメキ成長してく原作キャラたちに置いていかれないようにするのが精一杯だ。合宿での福音戦でも戦力としては大したことはできなかったし、今後の展開によっては支援要員として邪魔にならないように立ち回るしかなくなるだろう。

 

 ……それに対して思う所はある。

 

 でもここは、もはや小説の舞台ではなく私にとっての現実なんだ。戦場では自分の身を守れるのが大前提、仲間を気に掛けられて半人前、仲間と共に部隊として動けて一人前だ。隣にいる仲間と同じペースで歩けない奴は、時に仲間を殺すこともある害悪なんだ。

 もちろんただ後方に引っ込んで守られるだけのお荷物にはなるつもりはないそういった意味では今回織斑先生から持ち掛けられた話は非常にありがたかった。なんと言うべきか、私は、誰かの役に立ちたいんだ。

 

 

(そうか、もう5巻まで来てるのか。というか4巻ってこんなに短かったっけ? 違うか、夏休みの間に小説1冊分のイベントが起こる方がおかしいのか)

 

 

 セシリアさんとのプール騒動が水着回だとすれば、ラウラさんがパジャマパーティーをして(私が参加するとは言っていない)、織斑先生から仕事を依頼された。こうして振り返ってみると結構イベントの多い充実した夏休みと言えるだろう。もしかしたら原作の主人公たる織斑は更に多くのイベントに巻き込まれているかもしれないがな。

 

 とはいえ夏休みももう終盤。これ以上のイベントはまず起こらないだろうし、今後の事、5巻のハイライトたるテロリストの襲撃は当然として、今後の私自身の立ち回りについてよく考えてみるのも良いかもしれない。

 

 となると……

 

 

 机に用意した1冊のノート。タイトルには『現代社会』と書いて一見しただけでは普通の勉強ノートにしか見えないようにしてある。

 アレだ、原作ありの世界に転生したヤツが大抵やる、『原作の流れノート』という物を、私も作るべきかなと思ったのだ。

 

 

 

(本当はPCとかで作ろうと思ったけど篠ノ之博士を筆頭に余裕でデータを抜いてくる人多いし、だったら紙媒体で持ち歩くのがベターでしょたぶんきっとメイビー)

 

 

 篠ノ之博士は言わずもがなだし、5巻以降に出てくる更識姉妹は日本の暗部を司るお家の人だったはず、ハッキングとか余裕そうで怖い。

って待てよ? 物理的に部屋に侵入してカメラとかマイクをセットされるかもだし、その辺の対抗手段も考えないといけないの? ……索敵センサーでその手の装置も見つけられないかなぁ、ダメだろうなぁ。

 

 とにかく、9月の中旬に行われる学園祭、その時にやってくる可能性が高いテロリストの襲撃までに何をすべきかをリストアップしていこう。

 

 

 ※※※※※

 

 

「ふぅ……」

 

 

 お菓子をつまみながらノートを埋めていく。私自身の能力を上げなければいけないのは大前提として、どうにかして学園全体の警備レベルも上げないといけない。

 そうなるとネックになるのが、襲撃方法が思い出せない点だ。もっとも誰がどんな方法で襲ってくるのか知っていたところで、次は何故それを自分が知っているのかっていう問題も出てくるんだけれどね。

 

 

 ……

 いやこれ詰みでは? 個人として備える事は多少できてもコトが起こるまで動けないやんけ!

 相手のやり口によっては行動されるイコール即死だってあり得るし、そうじゃなくても爆弾テロとかやられたら一般の入場者がどれだけ犠牲になるか考えるのも怖いぞ。

 そんでもって「テロリストに狙われるだけでなく実際に襲われて市民に危険が及ぶ施設を東京の、いや日本の国内に置いておくのはどうなんだ?」なんて論法で情報戦でも仕掛けられたらもうダメかもわからんね。

 流石に情報戦まで仕掛けてくるような相手じゃ間違いなくバックにどこかの国がいるだろうし、どの道私個人でどうにかなる話でもないか。

 

 かといって起こる可能性の高いテロに対して受け身どころか実質ノーガード(な事を知っているのは私だけ)っていうのはストレスが半端じゃない。

 

 

「だあぁ~、これ以上考えてもどうにもならんし、一息いれるか……」

 

 

 椅子から立ち上がる。同じ姿勢でいたからか、伸びをすると腰がボキボキと鳴った。……ぎっくり腰とかやめてくれよ?

 そのままキッチンに向かい、電気ケトルに水を入れ、スイッチオン。

 お湯が沸くまでの間でマグカップを軽く流し、黄色いメーカーのティーバックをセットする。セシリアさんに相談すれば色々と教えてくれそうだけれど、今の私の舌では市販の物も高級茶葉も違いを楽しめないのでまた今度にしよう。

 そうこうしている間に沸騰したらしい。お湯をマグカップへと注ぎ、お砂糖を少々、いやもう少し……糖分欲しいしあとちょっと入れて、糖分マシマシ紅茶の完成だ。セシリアさんには怒られそうだから彼女の前では砂糖は控えめにしておこう。ごめんね、私は大の甘党なんだ。

 

 スプーンでかき混ぜて、少し冷ましてから味わう。私は猫舌でもあるのだ。

 うん。やっぱり美味しい。脳みそに糖分が染みわたるね。

 

 でもやっぱりこの飲み方は紅茶マニアからしたら邪道もいいところなんだろうな。やっぱりセシリアさんには相談できないね。

 

 

「……それだ!」

 

 

 その時、どうしてその発想が降りてきたのか、後から考えても分からなかった。けれど、少なくともその時は名案だと思ったし、実際に後で役に立つこともあったのだ。

 

 

「織斑先生に相談された訓練に、原作イベントっぽいプログラムを混ぜればいいじゃん!」

 

 

 

 

……代償を払う事にも、なったのだけれど。




 数多の作者が言っている「感想やお気に入り登録が力になる」はガチ。
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