せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
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読者の皆様、IS、ボーダーブレイク、全てに感謝を。
だからこそ、キミに勝ちたい
「おはよう織斑」
「おうレオ、おはよう。
その、箒も、おはよう……」
「う、うむ。おはよう……一夏」
夏休みが終わり、2学期の幕開けとなる登校日。やってきた織斑は妙にそわそわしていた。いや、織斑だけじゃない。篠ノ之さんもそわそわ、というよりも、もじもじしていた
……おやぁ?
2人ともなんだその態度は。まるでひと夏の思い出を作ったみたいだなぁ(直喩)。
だが待ってほしい。ここは(ほぼ)女子高だ。そんな場所であんな態度をされた日には……
「え、織斑君と篠ノ之さん、なんか……」
「これはもしかして、もしかしちゃう?」
「いや待つんだ皆。仮に何かあったとしたら今頃織斑は鳳さんとかに埋められているはずだ。彼がまだ無事って事は決定的なことは起きなかったと思う」
「「「なるほど!」」」
「非道くね!?」
織斑が何か言っているが無視だ無視。おおかた地元の夏祭り辺りで距離が縮まったんだろう。鳳さんもデュノアさんも頑張ってほしい、学園祭とかでチャンスがあると思うから、知らんけど。
「おい小娘ども、明日からはISの実機演習も始まる。夏休み気分はほどほどにしておけよ?」
「「「はい、織斑先生」」」
なんやかんや言っても織斑先生の一言で静まるあたりよく躾け……もとい、教育の成果が表れているよな。
※※※※※
そんな訳で始まりましたIS学園の2学期。いきなり実機演習でございます。とはいってもトップバッターはクラス代表同士って事で今は織斑と鳳さんが戦っているのだけれど。
戦況は鳳さんが圧倒的に有利。対する織斑はというと頼みの綱である『雪片』にエネルギーの輝きはない。ガス欠で『零落白夜』がもう発動できないのだ。これでは間もなく詰むだろう。
「ッチィ! このままじゃ……!」
「アンタは飛ばしすぎなのよ!」
試合開始からしばらくは織斑が押していた。もともと機体のスペックでは織斑の方が上だ、速度に物を言わせて零落白夜で斬りかかる、距離が開けば対『銀の福音』戦で機体がセカンドシフトした時に手に入れた念願の射撃装備である荷電粒子砲で積極的な攻撃を仕掛けた。
「難しい所ですね、織斑の白式はどうしたって短期決戦を強いられる機体コンセプト。実戦を見据えて燃費や安定性を重視した鳳さんの甲龍とは相性が悪い」
「ですが織斑さんの機動に無駄が多いのも事実ですわ。少なくとも消費の激しい荷電粒子砲を扱うのであればもう少し射撃の腕を磨く必要がありますわね」
「むぅ……剣の方も今一つだな。鈴の勘が冴えているというのはあるが、それを差し引いても今日の一夏はなっとらん……!」
「まぁまぁ落ち着いて箒、一夏もそこは自覚しているみたいだよ?」
「全体的な総括は演習終了後でもいいだろう。もうさほど時間はかからないだろうしな」
ラウラさんの予想は、発言から10数秒後に現実のものとなった。
零落白夜が使えない織斑はそれでも諦めず、ただの近接武器と化した雪片を手に鳳さんに斬りかかる。彼の諦めの悪さは時に脅威にもなる。シールド無効化なんてとんでも能力の零落白夜がチートなだけであって、普通に物理で殴られても威力に応じてシールドエネルギーは減るのだ。
彼の諦めの悪さを知っている鳳さんはむざむざ接近させるようなマネはしない。不可視の射撃武器である衝撃砲を連射することで織斑を近づけさせない。
そして、
「んのォッ!」
「なっ!? ――っぐゥッ!」
機体のカテゴリ的にパワータイブに分類される甲龍、その力を存分に活かして、鳳さんは近接武装である青龍刀――確か『双天牙月』だったか――を織斑目掛けて思いっきりブン投げた。
織斑からしたらたまった物じゃないだろう。砲身も含めて目に見えない大砲を連射された事でその対応に追われ、目線を相手に向けたら目の前にすっ飛んでくる青龍刀があったら私だったら腰を抜かすかもしれない。雪片で受け止めた彼は大したものだと思う。
織斑が青龍刀を受け止める事も織り込んで次の行動に移っていた鳳さんが、何枚も上手だった。それに尽きるだろう。
「決まりましたわね」
「あぁ」
辛うじて青龍刀を受け止めた織斑だったが、鳳さんを見失ってしまったようだ。空中投影ディスプレイにはレーダーで相手の位置を確認しようとしたのか、だけ動かす織斑の姿が映っている。
「ダメだ一夏! 早く離れろ!」
「あの状況で咄嗟に動けるようなら代表候補生入りも可能じゃないかなぁ」
恐ろしい事に、鳳さんは青龍刀を投げた次の瞬間には動き始めていた。織斑から見て下、飛んでくる青龍刀しか見えない織斑の死角を突いて彼に接近。織斑が青龍刀を弾いた時には彼の足首をしっかりと掴んでいた。
重ねて言うが鳳さんの甲龍はパワータイプの機体だ。
白式の足首を掴んだ甲龍は、そのパワーを十二分に発揮して、白式を地面に投げ飛ばした。叩きつけられるように落下した織斑は、その衝撃も当然だが、舞い上がった砂煙でまたも鳳さんを見失う。
では、目視で相手を見失った時、レーダー上に相手が映っていたらどうするだろうか? 断言しても良いが、ほとんどの人間は相手を視界に捉えようとするはずだ。
織斑もそうしようと甲龍がいる上空を見上げ――鳳さんの後ろに位置していた太陽に目を灼かれることになった。王手だ。
「上手い! まさかアレ、狙っていたのか!?」
「いえ、おそらくは戦闘中に流れを組み立てたのかもしれませんね」
「いずれにせよ、敵として当たる場合の鈴はかなりの強敵だな」
日光を直視して硬直した織斑に対し、衝撃砲が無慈悲に撃ち下される。直撃弾が10を超えた辺りで、演習終了のブザーが鳴った。
※※※※※
「だぁぁぁ! 結局鈴に勝てなかった……」
「ふっふーん、アンタ今日アタシに手も足も出なかったわね。2連敗したんだし学食で何か奢りなさいよ」
「ぐぬぬ、覚えとけよ……」
何組かの演習が終わり、もうじき授業も終盤となった頃、最後の演習が始まろうとしていた。
「あれは……レオ!」
「と、セシリアだな」
「ねぇ、シキシマ君の機体、随分と、その、ゴツゴツしてない?」
「機動を捨てて装甲で受けるタイプだろうな」
狙撃に特化したセシリアとサポートもできる万能型のレオ、2人はペアを組む事はあれど、ぶつかった事はそこまで多くはなかった。
なればこそ。
『決着、つけましょうか』
「えぇ、望むところですわ」
原作には存在しない戦いが、始まろうとしていた。
※※※※※
セシリア・オルコットさん。
『インフィニット・ストラトス』の登場キャラクターで、私の推しで、英国代表候補生で、オルコット家の当主で、今はクラスメートで、仲の良い友達で、
――そして、私の好きな人。
あぁ認めよう。私はセシリアさんに好意を抱いている。
この世界にやってきて、IS学園に入学して、セシリアさんに出会えた。
プライドが高くて、時々頑固で、ちょっと世間知らずで。――それがどうした。
プライドは積み上げた努力の証だ。努力も無しに高慢な態度を取れるほど、彼女は恥知らずではない。
頑固なのは意志の強さだ。これと決めた事を貫ける彼女の強さを、俺は尊く思う。
ちょっと世間知らずなのは、彼女が世俗に染まる暇がないような環境にいたからだ。彼女の背景を知っていれば、多少の世間知らずなんて愛嬌にすらなる。
何気ない日常での振る舞いに溢れる上品さを知った。貴族として、上に立つ者としてみんなを引っ張るという気高さを知った。笑った顔が誰よりかわいいと知った。
彼女を守りたい、傍で支えたいと、心から想えた。
だから――
「セシリアさん、貴女を倒します」
「いいえレオさん、勝つのはわたくしですわ」
あなたが寄りかかっても大丈夫なように、俺も強くならなくちゃいけないんだ。少なくとも、セシリアさんよりも弱いなんてこと、あってはいけない。
『それでは、セシリア・オルコット対レオ・シキシマによる実機演習。
――開始!』
織斑先生の宣言と同時に、俺たちはそれぞれの武装を展開した。
※※※※※
――コール、ウィーゼル・ラピッド
学年でも随一の射撃の腕を誇るセシリアさんに狙いを付けさせるわけにはいかない。重火力兵装が誇る機関銃を2丁呼び出し、弾幕を形成する。
「――うっそ!?」
――ウィーゼル・ラピッド、1丁破損
そんな私の狙いは、セシリアさんによる抜き撃ち≪クイックドロー≫で半分が打ち砕かれた。
想定の半分の密度に下がった弾幕を張りつつ回避行動を取る。
今回俺が乗るのは重装機であるヘヴィガード、その改装型であるヘヴィガードⅣ型だ。今現在俺が保有する全ての機体の中でもトップクラスの装甲を誇り、多少の被弾じゃビクともしない。
多少の被弾はビクともしないが、開幕早々あの一撃をまともに受けていたらセシリアさんに大きなリードを許していただろう。武器を失っただけで済んだのはラッキーだ。
しかし、セシリアさんはいつ武器を構えた? 機体の補助もあるし動体視力には自信があったのだが、今回は全く見えなかった。
(いや違う、構えた姿勢で得物を呼び出したのか!)
想像してみてほしい。何も持っていない状態で銃を構える姿勢をとったとする。その状態で何も持っていない手の中に銃が現れて、一瞬で正確に狙いを定め、初弾から当てにいける射手が世界にどれだけいるというのか。自身の状態や使用する武器のスペックを隅々まで熟知し、それらを踏まえた上でずば抜けた射撃の腕を持つ者だけが行えるまさに神業だ。
背筋に冷たいものが走り、思わず身震いする。
だというのに、俺の口角はこれ以上ない程に吊り上がっていた。
「初撃で決めるつもりでしたが……流石レオさんですわね」
「セシリアさんこそ、夏の間に腕を上げましたね。今のは危ない所でした、よっと!」
――コール、バリアユニット
――コール、MSL―スウォーム
会話の最中にも放たれる高精度の射撃を鈍重な機体でなんとか躱し、躱しきれない弾は装甲で受ける。ただしまともにあのビームを受けていたらどれだけ装甲があってもあっという間にやられてしまう。だから向かってくる銃弾に対して装甲の角度を付ける事により、弾の運動エネルギーを分散させて弾く。これぞ惑星の戦車乗りに語り継がれる秘伝、『昼飯の角度』……! 真面目にいえば第二次大戦時のドイツ軍戦車乗りが編み出した技だとか何とか。今使えればそれでいい! どっちにしろ俺は惑星のプレイ経験ないし!
(レーザー相手に昼飯が効くか分かんないけど、まぁ最低でも装甲が抜かれなきゃOKだ!)
レティクルをブルー・ティアーズに合わせて、ロックオン!
間髪入れずに引き金を引くと、6発のミサイルが勢いよく飛び出していった、のだが、
続けざまに放たれるレーザー。見るとブルー・ティアーズは回避行動を取らず迎撃に徹していた。1発、また1発とミサイルが破壊され、結局目標にはかすり傷一つ与える事は出来なかった。
それでいい。
今は何よりも時間を稼ぎたかった。ミサイル6発が全て落とされるまでにかかった時間は5秒ほど。けれど5秒もあれば!
――コール、GAXエレファント
束ねられた銃身が回転を始め、1秒後に銃弾を吐き出す。銃身が焼け付いて射撃不能にならないように定期的にトリガーを緩めながら、並みの相手だったら瞬く間にボロ切れにできるだけの弾幕でブルー・ティアーズを押しつぶそうとする。
流石のセシリアさんも1分当たり800発を吐き出すガトリング砲の射撃には回避を選ぶ。当然だ。距離と武装にもよるが、守りを固めたガチムチ重火力兵装とまともに撃ち合うなんて自殺行為を彼女が選ぶとは思えない。
――思えなかったから、その一撃を避けられたのは奇跡に近かった。
「嘘だろ!? 回避しながらあの精度で撃てるのかよ!」
「ビットも使っていない分射撃にリソースを回せますの。今日のわたくしはいつもとは違いますわ!」
確かに。ブルー・ティアーズの代名詞たるBT兵器を彼女はまだ使っていない。切れる札がまだまだあるってことだ。おっかないったらない。こっちはさっきからずっとギリギリで立ち回ってるのに!
「だったらこれはどうよ!」
――コール、多連装型MLRS
1基あたり8発のミサイルを放つMLRSを2つ装備、またもロックオンと同時に斉射する。威力は抑え目だけどその分誘導性能に優れたタイプだ。
コンテナから飛び出たミサイルはロケットモーターに点火し、ターゲットに殺到していく。
これは何発か当たるなと確信した次の瞬間、演習場の空を4本のビームが切り裂いた。蒼空にも似た青いビームが放たれる度、ミサイルが数発まとめて爆ぜる。あぁチクショウ、カードを切らせたのは良いけどこっちのミサイルも封じられたんじゃないか?
「レオさんは今日は飛ばないのですか?」
「生憎と見ての通り鈍重なんでね。地に足着けて対空砲台になりますよ」
「それはご愁傷様ですわね、昔から上空を抑えた方が勝つのは決まっていますよ?」
「並みの砲台ならね!」
セシリアさんがミサイルを撃墜する間にリロードを済ませたガトリング砲を再度発射。連射速度には優れるガトリング砲だけれどどうしてもリロードに時間がかかるのが短所だ。
今回セシリアさんと戦うにあたって、俺はまず飛行しての機動戦というプランを捨てた。俺の射撃スキルでセシリアさんに撃ち勝てるなんて思えないし、それが互いに高速で飛び回る高速機動戦ならなおさらだ。
だから敢えて飛ばない。代わりに装甲マシマシのヘヴィガードに乗って、更にバリアユニットを積む事でさらに装甲を追加。機体の重量が故に重火力兵装が持てる機関銃やガトリング砲といった重火器の大きな反動も相殺できる。重火器のデメリットである長いリロード時間は、ミサイルを撃墜させる事でカバーする。
加えて、確かに上空の目標へ撃ち上げるのは大口径弾でもない限り運動エネルギーが減ってしまうため悪手だが、相手が人で、こちらを狙おうとする限りどうしても照準を定める際に隙ができる。――例えば、今みたいに。
「っく!」
「よし! 1ついただき!」
鞭を振り回すように曳光弾が連なる空、その鞭に絡め取られたビットが1機爆散する。
互いに武装を1つずつ失った状態。機体そのものの防御力はこちらが上だけれど、セシリアさんがこちらの機体の限界を超えた速度で機動戦を挑んでこられたら翻弄される未来しか見えない。そういった意味ではセシリアさんが上空を取ったのはこちらにとってもメリットがあるか? いや、開き直って高高度から狙撃されたらこっちも狙撃で返すしかなくなるか。……ブレイザー・アグニをフルチャージさせてくれるような相手じゃないからなぁ。装甲とバリアユニットしか頼れない現状で外したら終わりの狙撃戦は俺にはハードルが高い。
だからこそ撃ちまくる。セシリアさんが「うかつに距離を取ろうとしたら被弾する」と思うように。回避に専念せざるを得ないように。
「こっ……んのぉっ!」
「うわっ!?」
閃光、そして衝撃。
何をされたのか理解が追いついたのは被弾からたっぷり10秒は経ってからだ。
長大なセシリアさんの狙撃銃は行動の妨げになる。
だから彼女は回避の合間に自分の得物を拡張領域にしまい、一瞬身軽になった機体で銃弾の嵐を回避してから、再度武装を呼び出し、試合開始の時にも見せたあの絶技でもって俺のガトリング砲を撃ち抜いたのだ。
こちらが絶え間なく銃弾を浴びせていたからこそ保てていた均衡が、崩れた。
1回の斉射で4発のレーザーが襲い掛かってくる。それら全てを被弾する事は無いが、必ず1発はどこかにかすってしまう。このままじゃヘヴィガードが軽量機になる日も近いか? その前に直撃を喰らってKO負けだろうな。
SPを確認。――大丈夫。まだ何発かはバリアユニットで防げる。
今思いついた作戦の成功率は? ――知らん。しくじったら次の手をひねり出すだけだ。
機体のコンディションは? ――まだやれる。走り回れるし、銃だって握れる。
「これで、終わりですわ!」
直感が最大級の警報を鳴らした。上手く説明はできないけれど、これから襲い来る攻撃は不味い、たぶん喰らったら負けると、理由はないけれど確信できてしまうような。
だから、
「ふんぬぬぬぬぅぅおおおおお!!」
脚に最大の力を込めて地面を蹴る。とにかく前へ。1ミリでもここから離れるために。
ふかふかのベッドにダイブするかの如く地面に身を投げ出した直後、寸前まで自分が立っていた場所を1本のレーザーが焦がした。
1本? いや、彼女のビットはまだ3機も残っているし、彼女の持つ狙撃銃だってあったはずだ。なのになぜ1本?
違う、そうじゃない。思い出せ。着弾したレーザー、『妙に太くなかったか?』
つまり何だ、彼女はビットや狙撃銃の角度を操作して、俺が立っている場所でレーザーが収束するように撃ったという事か。そんなの喰らったら1発でお陀仏に決まってる。
身震いが止まらない。
見上げた視界に映る彼女は、悔しそうに少しだけ笑ったのだった。
ウマ娘二次の執筆をするので次回は来週になると思いますわ!