せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
……アレは嘘だ。(なお文量)
評価バーがまたオレンジに戻ってちょっと凹んだけど、よくよく考えればアケボダ時代なんて
1 上位ランクに昇格する
2 上位ランクの猛者にカモられてCPが禿げ散らかす
3 ランク降格
の流れをお金払ってやってたし、そっちの方がダメージ大きかったわ()
レオとセシリアの演習を観戦する1・2組の面々は、2人の戦いぶりに声も出せずにいた。
2人が何をやっているのかは、分かる。
1つ1つの挙動そのものは(一部を除いて)単純だ。相手に狙いを定め、射撃を行い、逆に相手の攻撃をかわしながら、反撃やリロードを行う。
ただ。
(その判断が的確すぎるし、何より判断から行動までのタイムラグがほとんどない!
開幕と同時の奇襲で1つ、レオが弾幕で押し切る形で1つそれぞれの武器を破壊したけど、それだって決定打になってない)
これまでの戦闘を思い返しながら、中国国家代表候補生でもある鳳 鈴音は背中に冷たい物を感じていた。自分だったらどう戦うかと内心で問いかけ、今の状態のあの2人のどちらかが相手になるという状況そのものを避けなければいけないと思う程に、今の2人の動きはキレにキレていた。
(どういう訳か知んないけど2人とも本気、ううん、『本気で全力を出している』
第一なんなのよコレ、ここは天下一武道会じゃないっての!)
いや、世界各国から腕利きのISパイロットが集まる以上天下一武道会と言っても過言ではないかもしれない。鈴はちょっと混乱していた。
「……しかし、2人ともすげーよ」
「何でそう思ったのよ?」
「だってさ、ISの操縦に限った話じゃないけどやっぱり物事ってセンスの他に努力がモノを言うだろ?
神業みたいな狙撃も、相手を翻弄させる弾幕も、どれだけ素早く正確に銃を構えられるか、とか、どんな風に撃ったら相手を思った通りに避けさせられるか、とかいっぱい考えて、考えるだけじゃなくて訓練も積んで、それでようやく形になる」
「……そうね」
「オルコットさんは貴族の当主って立場で、IS以外にもたくさんやらなきゃいけない事はあるはずだよな? レオだって俺より後にIS適正があるって分かって、どうしたってみんなより機体に触れる時間は取りにくかったはずなのにさ。
2人とも、たぶんこの場の誰よりも真摯に機体とか、訓練とかに向き合ってるんじゃねーかな」
「剣では負けるつもりはない。……だが、総合的に考えれば確かに一夏の言う通りかもしれんな」
「ボクはバランス型だけれど、シキシマ君みたいに上手く立ち回れるかって言われたら、即答はできないなぁ……」
「だが、それがいつまでも長続きできるとは思えん。良くも悪くも人間なんだ。気合や根性で奮起できる事も確かだが、どうしたって限界が訪れる。
私は……いや、私たちは、そんなレオを支えたい」
「……うん、やっぱりすげえや。レオも、2人も」
「感傷に浸ってる所悪いんだけどさ、アンタだって人の事言えた義理ないの分かってる?」
「え、俺が?」
「やっぱり自覚無かったか……春の無人機でアンタ相当な無茶やらかしたでしょ」
「あ」
「ボクの件でも色々と力になってくれたよね? 一応デュノア社って世界的なISメーカーだし影響力もかなりあるつもりなんだけど」
「いっ」
「加えるなら夏の一件でも、力に溺れた私が言うのもおかしな話だが、体を張って私を助けてくれた」
「うっ」
「無茶しないでって言っても聞かないのがアンタなのは分かってる。でも、アンタの事を心から心配する女の子がいるって事は忘れないで」
「……そう、だよな。
ごめん、は違うか。ありがとう」
「絆を確認し合っているところをすまないが、状況が動くぞ」
全員の目が一斉に戦場を向いた。
※※※※※
こちらにはリロードに時間がかかるけれど猛烈な弾幕を形成できるガトリング砲がある。
相手には運用に多大な集中力が必要だけれども威力も精度もかなり高いレーザー兵器システムがある。
互いの集中力は十二分。これまでの戦闘で多少は相手の体力を削れたと思いたいけれど、それはこちらも同じ。
つまりは、両者伯仲。より多くミスをした方が負ける。
「その機体でよく今の攻撃を避けられましたわね」
「直感に従ったまでさ。正直かなりギリギリだったよ」
とにもかくにも動く。普段使っているシュライクの軽快な機動からはかけ離れているが、動かなければただの的になる。重装甲が売りのヘヴィガードといえども、セシリアさんの狙撃銃やビットの攻撃を繰り返し受けたらいずれはスクラップになるのは間違いない。バリアユニットはミサイルのロックオンやどうしても避け切れないと判断した時のために温存しておきたかった。
まったく、せっかく飛べるようになったっていうのにこれじゃあゲームの『ボーダーブレイク』に逆戻りだ。他に勝ち筋を見出せなかったのだから仕方ないけれども。
ひらり、とガトリング砲から伸びる火箭をかわしたブルー・ティアーズが、次瞬間ビットを伴いながら猛烈な突撃を始めた。
(しまった!)
時折セシリアさんが見せる瞬間移動のような回避。これまでは直後に尋常ではない狙撃をしてきたから、回避からの攻撃が彼女のパターンだと思い込まされた!
自分の失策を内心で罵りながら、状況の変化で瞬間的に茹った脳ミソをさらに回転させる。
ガトリング砲での迎撃は……不可能だ。これまでの射撃で銃身が随分熱されているし、指切りでの連射ではセシリアさんを止められない。
「だったら!」
――コール、ヴルカン・MC
呼び出すのはニュード軽機関銃、その中でも今持っているニュード系機関銃の中で最も連射速度に優れた物だ。実弾を放つウィーゼル機関銃よりも連射速度は落ちるが、ニュード系の武器は『オーバーヒートしない』。それは今のような相手の突撃を阻止したい場面では何よりもありがたいメリットだった。
――この時の俺は間違いなく最適解を選べたと思っていた。
「……うそ」
だってそうだろう? セシリアさんが高速で突撃しながらの射撃で、俺が構えた2丁の武器を破壊するだなんて、誰が想像できる?
彼我の距離はもういくらもない。この時になってようやく、彼女が近接用の武器を装備している事に気が付いた。これも予想外だ。セシリアさんほどの射手が近接戦を挑むとは。
十重二十重に不意を打たれた俺は今度こそ固まり――だからその時行動したのは考えがあった訳じゃなく、完全に反射的なものだった。
――コール、アームパイク
腰だめに構えた拳を引き絞り、向かってくる敵機に狙いを定める。
弾丸もかくやという勢いで放たれた拳とパイルバンカーは、間違いなく必殺の威力を秘めていた。
※※※※※
「う゛ぁぁぁぁ……」
「お、おいレオ……大丈夫かよ?」
「疲れた。身体もそうだけど気力とか脳みそとか全部疲れた。
もうやだ、午後の授業全部寝てやる」
「感心しない態度だが、無理もない。あれだけの戦闘、軍の正規兵同士でもそうそう見る事はないからな」
昼休み、私はすっかりグロッキーになっていた。テーブル席にセシリアさんの姿は無い。彼女も私に負けず劣らずな状態になっていたからだ。
織斑は鳳さんと2回戦やったっていうのにたった1戦で情けないと思う人もいるだろう。でも断言するけど今日の私とセシリアさんの模擬戦は間違いなく今年のIS学園ベストマッチに選ばれるね! そんなのあるか知らんけど。
結果から言うと、私はセシリアさんに負けた。私が最後に繰り出したアームパイクの一撃はブルー・ティアーズのビットを1つ破壊したものの、彼女は私の予想をさらに上回ってみせたからだ。
(最後の攻防、近接武器を装備したこともブラフだとか分かるかよ……)
そう。彼女は突撃の最後、私のアームパイクの射程ギリギリで地面を蹴ってさらに跳躍。パイルバンカーを空振りして間抜けにも硬直する私を上空からビットと狙撃銃で撃ち抜いたのだった。後からその映像を見た時は悔しくて言葉が出なかったね。
相手は『あの』セシリアさんだぞ? ビットや狙撃銃を失った訳でもないのにわざわざ近接戦を挑むなんてどうして思い込んでしまったんだろう。いや、そうなるよう誘導されたのか。
突撃で私の思考回路をショートさせ、近接武器を持つことで同じく近接武器での迎撃を選ばせる。
あの時の私はアームパイクの射程にブルー・ティアーズが入った瞬間にぶちかます事しか考えていなかったかもしれない。いや、考えなんて上等なものじゃない。条件反射みたいなものだ。
そしてハナから近接戦をする気の無かったセシリアさんは私に大振りの攻撃をさせて硬直を誘発。悠々と(かは分からないけど)私を蜂の巣にした訳だ。
完全にしてやられた。
テーブルの下に隠した拳に力が篭る。チクショウ、これでよくもまぁ「セシリアさんを支えたい」だなんて言えたもんだ。その本人にいいようにあしらわれてちゃ世話がない。
……ダメだ。いったん頭を冷やそう。
「ごめん、先に戻ってますね」
ラウラさんや織斑の返事も待たずに席を立った。
織斑たちの顔をロクに見られなかった自分が腹立たしかった。
それ以上に、「この場にセシリアさんがいなくてよかった」なんて一瞬でも考えた自分が、ひどく惨めだった。
そら(好きな人を支えるんだ!って意気込んでいたらその好きな人本人に負けたら)そう(もなる)よ