せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
3回。
職員室から生徒会室までの道のりで私たち(というか会長)が襲われた回数だ。
「特にコレといった出し物を出せそうにない部活が焦ったのかしら? 私が生徒会長に就任してからはあんまりなかったんだけれどね」
とは生徒会長の弁である。
合流した織斑はもはや全てを諦めたような顔をしていた。私の表情も似たようなものだったと思う。男子欲しさに襲撃とかこの学校の民度終わりすぎでは……?
それを難なく圧倒する会長も会長だが。マーシャルアーツなんて初めて見たよわたしゃ。
生身での会長の強さは特等席で見せてもらったからよく理解できたが、ISの方はどうなんだろう?
「ちなみに会長、『最強』っていうのはISも含まれたり……?」
「それはまだ内緒。秘密の多いおねーさんって男の子が好きそうだし」
うーん間違いない。織斑も頷いている。
「さ、入って頂戴。今なら多分あの子たちもいるでしょうし、顔合わせもしましょうか」
扉の向こうから何人かの声がする。生徒会のメンバーだろう。
ガラガラと鳴るような事もなくスムーズに開いた扉の向こうには、見覚えのある、どころかクラスメートと、上級生の女子生徒がいた。
「あれ、のほほんさんだ」
「んん~ねむねむ……」
「ちょっと本音、お客様よ」
「むぅ~、あと5分……」
「起きなさい」
ずびし、とメガネをかけた上級生がのほほんさんにチョップを入れる。ここまで遠慮のない行動を見る限り、姉妹とかそういう関係だろうか?
「改めまして、私は布仏 虚(のほとけ うつほ)、こちらはは妹の本音(ほんね)です」
「私たち布仏家は、代々更識家のお手伝いさんなんだよね~」
「お手伝いさんの家系……?」
時代劇か何かかな? ていうかその話が実話なら、会長ってめちゃくちゃいい所のお嬢様……?
「はいはい、そういう訳で、私と2人は幼馴染でもあるの。生徒会長は『最強』でないといけないけれど、生徒会のメンバーはその縛りはなくて会長が好きに指名できるから、私は2人を選んだって訳」
「なるほど」
「それで、ここからが本題なんだけれど、君たちって今の所どこの部活動にも所属していないわよね?」
「えぇ」
「まぁ、そうですね」
「そのことで、各部活から生徒会に苦情が殺到してるのよ。『ウチの部に入部させろー』って。だから強引だとは分かっているけれど、あぁいう方法を取らせてもらったわ」
「「えぇ……」」
織斑と揃ってドン引きである。私たちが入部してこないからって苦情入れるとか普通にヤバいのでは……? いや、部長としても部員の突き上げには逆らえなかったのか、それとも部長もセットになって盛り上がっちゃったのか。どちらにせよこの学園、自分の欲求に素直な人が多すぎると思うの。
「ちなみにだけれどどの部活にも入らなかった理由って訊いてもいい?」
「俺は、それどころじゃなかったってのが理由ですね。ISの操縦方法とか勉強とかが忙しくて、部活まで手が回んないです」
「私も織斑と同じですね。お手伝いとかはまだしも、入部はちょっと厳しいです」
「あぁ、なるほど。それは仕方ないわね」
そう、VTシステムやら銀の福音やらヤバめの事件の存在もそうなのだが、純粋にISの訓練を怠れないのだ。特に私は皆と比べて腕に劣る部分もあるので、部活に入ってあれこれする、というのは今の所考えられない。幽霊部員でもいいよって言ってくれる部活動もありそうだが、そういうのは私は嫌だし織斑も嫌うだろう。
「とまぁそういう訳。で、交換条件として、私が君たちに特訓をしてあげようと思うんだけど」
「いや、結構です」
「あら即答」
織斑は否定的らしい。私はアリだと思うのだが。……織斑も会長に更衣室に忍び込まれたらしいし、その辺で苦手意識を持っているのかもしれないな。
「私としてはお願いしたいですね。特に機体のテクニックとか」
「レオ」
「だってさ織斑、この人自分から『最強』とか名乗っちゃうんだぜ? さっきの襲撃の時も凄かったけど、多分口だけじゃないと思うよ」
「高評価ね。おねーさん嬉しくなっちゃう」
「その取ってつけたような胡散臭さがなければもっと評価高いんですがねぇ?」
「残念でした、おねーさんの素顔を見たければもっと仲良くなってからでないとダメよ」
あくまでも今の仮面はそのまま、という事か。まぁそれもそうか。
「その、会長はどうして俺たちに特訓を?」
「ん? だって君たち、弱いじゃない」
あ、織斑これカチンと来たな。
私だって思う所が無い訳じゃない。誰だって「君は弱い」と正面から言われたら程度の差こそあれイラッと来ると思う。
「これでも少しは強くなったと思いますが」
「ううん、弱い。無茶苦茶弱い。だからちょっとでもマシになるように私が鍛えてあげようってお話」
あの、会長。流石に煽りすぎでは……? こんなの織斑じゃなくても怒るわ。
そしてこうなってしまった織斑はそう簡単には止まれない。
「じゃあ勝負しましょう。俺が負けたら会長に従います」
「うん、いいよ」
この時の会長はそれはもうイイ笑顔をしていた、とだけ言っておこう。
※※※※※
「レオさん、よろしければこれからISの訓練を行いませんか? シャルロットさんと第3アリーナを抑えてありますの」
「あちゃ、すみません。私これから織斑と一緒に生徒会長に呼ばれていまして」
「そうでしたか……」
「もし早めに終わったら顔を出しに行こうと思います」
「楽しみにしていますわ」
そういう訳で放課後である。
織斑は一足先に畳道場へ。私は少しだけ用事があったのでそれを済ませてから道場へ向かう事になっていた。
織斑は小さいころから篠ノ之さんの家がやっている古武術を仕込まれて育ったらしくそこそこ腕に覚えがあるらしいが、それだけであの会長に挑もうと思えるんだから大したものだ。というか古武術ってまだ実在していたのか、流石ラノベ主人公だぜ。
私なんてサバゲ部やらの襲撃に対処した動きを見ただけで、少なくとも生身で彼女に挑もうという勇気は消滅したね。
「――よし、助かったぞシキシマ」
「いえ。それでは失礼します」
「あぁ。……そういえばこれから更識と特訓だったな?」
「? えぇ、そうです」
「そうか。しっかり揉んでもらえ」
「あっはい」
もうさ、この織斑先生の言葉で全て察したよね。
会長、生身もISもクソ強いんだろうなぁ……
※※※※※
普段は柔道の授業くらいでしか使わない道場に入ると、織斑と会長は既に準備を終えていた。
「お、シキシマ君もいらっしゃい。じゃあ今回のルール説明を改めてするわね?」
「はい」
とはいっても単純だ。会長の勝利条件が織斑を戦闘不能にする事なのに対して、織斑は会長を床に倒せば良い。相当に舐められている、とも言えるが、多分それ位の実力差はあるんだろうなぁ……
ていうか、
「2人ともなんで袴?」
そう、畳の上で向かい合う2人は、どういった訳か白の胴着に紺色の袴という、剣道とかでしか見ないような武芸者スタイルだったのである。マジでなんで? ってのもあるけどよく存在したな?
「まぁまぁ。それじゃ始めるわよ」
「はい、お願いします」
一呼吸で気配を変えた織斑がすり足で会長との距離を詰める。
そのまま技を仕掛けようとした彼は――次の瞬間には床に叩きつけられていた。
「……は?」
「まずは1回」
織斑を倒した後、首筋に指を突きつけた会長。「実戦だったら今ので死んでいたよ」って所だろうか?
すぐに立ち上がった織斑だが、流石に警戒したのだろう。自分から仕掛けようとはしない。
「来ないの? じゃあ、私から行くわね?」
そして織斑と同じくすり足で動いた会長。私の目には普通に動き出したようにしか見えなかったが、織斑の反応は明らかに遅れていた。え、何、今の動きにそんな高等テクニックが使われてたの?
ちなみに結果はというと、実力差のある相手に先手を打たれた織斑に勝機はなく、あっさりと倒されてしまった。
はえーすっごい。倒された織斑が何とか立ち上がろうとしているけれど上手くいかないようだ。何されたのよ……
それでもギブアップはしない織斑は再び立ち上がると、深く呼吸をした。
「む、本気だね」
「……」
会長の言葉に無言を返す織斑。彼の本気度合いが伝わったのか、会長の雰囲気もまた引き締まる。
道場に降りる沈黙。
張りつめた空気が痛い程になった瞬間、織斑が動いた。
今度はどうやら会長が不意を打たれたらしい。今回の勝負を通じて初めて会長が後ろに下がった。……半歩だけだけれども。しかし織斑はその半歩を無駄にしない。それどころか、会長の脚が地面に着く前に距離を詰めると技を仕掛けようとし――またしても畳に叩き込まれた。
「ぐっ!? ――こんのぉ!」
あの状態から動けるのか。織斑は畳に叩きつけられた状態から会長の足首を掴むと、力任せに掬い上げた。流石の会長もこれには逆らえず、彼女の胴を織斑が捉える。
「あま~い」
「んなっ!?」
「うっそだろ!?」
疑いようもなく会長は強い。だからもう何をしてこようが驚くまいとは思っていたけれど……空中で織斑の拘束を受けた彼女は、畳に手を付くと手のひらを支点にそれはもう素晴らしい蹴りを見舞ったのだ。アレ何て言うんだっけ? ムエタイだかカポエラだったか、とにかく会長はどれだけ武術の幅が広いんだよ。
蹴り飛ばされた――体重差のある相手を蹴りで飛ばせる会長はやっぱりヤバい――織斑だが、気合で着地を決め、再び会長へと突っ込んでいく。その姿はもはや何かの型を仕掛けようとする姿じゃなく、何とかして一撃入れてやろうとする執念を感じた。
「あ……」
「オゥ……」
「きゃん」
そして彼の執念はある意味で実ったのだろう。
伸ばした織斑の腕は会長の胴着を掴み――はだけられた胴着の下から、水色の下着に包まれた『果実』が現れた。
この場合可哀そうなのはどっちなのだろうか? 一般常識に従って考えれば織斑に非があるのかもしれない。しかし、こういう身体を動かす運動をする際、普通の女子は専用の下着を付けたり、胴着のしたに肌着やTシャツを着るそうだ。今回の勝負で何をするのかは会長も知っていた。つまり会長はいざとなったら今の瞬間のような形で織斑の動揺を誘う事も視野に入れていたのではないだろうか? なんてこった、やっぱり会長はとんでもない策士だし、もしかしたら本物の変態先輩という可能性もあるのか。
「おねーさんの下着姿は高いわよ?」
空中コンボを喰らって撃沈した織斑を見ながら、私はそんなことを考えて現実逃避するのだった。
「現実逃避している所悪いけれど、シキシマ君もだからね?」
「私の場合事故ですよねぇ!?」
「よいしょっと……いいからアリーナに行くわよ? 織斑君が起きる前に終わらせるつもりだし」
「……言ってくれますね」
織斑を背負った会長を手伝いつつ、頭の中でプランを練る。
原作の会長はどんな機体に乗っていたのだったか。頭の中に浮かぶのは『ナノマシン』と『水の槍』、そして『燃料気化爆弾』という単語だけだ。チクショウ、あんまり役に立ちそうもない。いや待て、『ナノマシン』……? ならば爆発物で攻めるのは有効かもしれない。
10分とかからない間に織斑を保健室に預け、そこから会長がISスーツに着替えるまでの間が私に残された作戦を練る時間だった。
真面目な話組手するのに胴着の下が下着なのはどうかしてる。
原作者ってその辺考えてなさそうよね()