せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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主人公がギャルゲーの悪友みたいな事をしたので初投稿です。


誓って違法な事はけしかけていません

 何が起こった? と考えるよりも早く体は動いていた。重量物であるティアダウナーを振った故の機体の硬直が収まり次第、可能な限りのスピードで会長に機体を正対させる。

 幸運、ではなく会長の気まぐれで追撃はされなかった。

 

 会長が手に持つ得物はあの螺旋を描く槍、つまり近接武器だ。それで弾かれるなり何なりすればこっちも必ず衝撃を受ける。受け流された訳ではない。

 ではこっちが外した? それはあり得るけど、経験から考えるとさっきの攻撃は必中のタイミングだったはずだ。

 

 

「うふふ、良い顔してるわね。流石に驚いたかしら?」

「正直、何されたのか見当もつきません……よっ!」

 

 

 微動だにもしない会長に向かって再度突撃する。実戦なら即座に蜂の巣にされる行為だが、どうにもさっきから会長は私を試している節がある。予想が正しければ大丈夫、な筈だ。

 必中の間合いまで距離を詰めて、剣を振りかぶった瞬間、僅かな違和感を覚える。次の瞬間繰り出した剣戟は、やはりと言うべきか会長にかすりもしなかった。

 

 

(さて、どういうマジックで会長は私の攻撃をかわしている? まさか濡れた路面で私がスリップしました、なんてバカな話が……

 いや待て、『濡れた路面』?)

「お、何か勘づいたみたいね」

 

 

 会長が何かしゃべっているが、こっちはそれどころじゃない。

 

 

(最初から会長が使っている水、これそもそも本当に水か? これ自体に何か細工がしてあって、動く歩道みたいに私の進行方向を変えたとすれば、いろいろ辻褄は合う)

 

 

 ティアダウナーを振る時、私の機体は結構な勢いがついている。そんな状態で微妙に地面が滑れば、攻撃を空振りに終わるのも頷ける。

 

 

「会長、この水、ただの水じゃないですね?」

「正解!」

 

 

 会長がウインクしながら指を鳴らし――私は突然起きた爆発にたまらず転倒した。

 

 

「っなぁ!?」

「私の機体『ミステリアス・レイディ』は、ISのエネルギーを伝達するナノマシンで水を自在に制御できるの」

「……そういう事か」

 

 

 2回も剣を空振ったのは地面に撒かれた水で機体のベクトルを操作されたから。

まんま動く歩道じゃねえか!

 そして同じく地面に仕掛けておいたナノマシンで爆破。なんてこった、私の各種トラップよりよっぽど性格が悪いぞこれは。地面が濡れていたってよほどの状況じゃなきゃ気にもしないだろうし、まして濡れた地面が地雷原だなんてそれこそ考えもしない。

 

 

「……これは兵装のチョイス間違えたかも」

「今のシキシマ君の機体じゃ確かに私との相性は悪いわね。どうする、まだ続ける?」

 

 

 確かに勝ち目は薄い。今の爆破で結構耐久値を削られてしまったし、それ以前の戦闘で負ったダメージを回復させたからSPの残量だって心もとない。

 でもさ。

 

 

(相手が強いから、武器選択ミスったからって萎え落ちとか、最高にカッコ悪いじゃん?)

 

 

 だから。

 

 

「止めませんよ。まだ私は戦える」

「負けるよ?」

「でしょうね。でも負けるなりにも、何か収穫を得たいので!」

 

 

 ――コール、ウィーゼル・ラピッド

 

 

「やっぱり男の子はそうでなくちゃ。じゃあ、少しでも何か得られるように頑張ってね」

「胸を借りますよ、会長!」

「やん、えっち」

「それ今の流れで言う!?」

 

 

 まさかの口撃にずっこけた私を再び爆破が襲う。うわきったねー! そんなやり方もありなのかよ!

 

 

「うふふ、卑怯汚いは敗者の戯言よ?」

「クソが!」

「本性表したわね」

「怒っただけじゃい!」

 

 

 気を取り直して射撃を開始する。割とガチ目に蜂の巣にしてやるという気持ちで銃弾を浴びせるが、ヒラヒラと舞うように動く会長の機体にはかすりもしない。あーもう本当に上手いんだよなぁ!

 

 

「ほら、どんどん行くわよ!」

「ぐっ!?」

 

 

 どれだけ用意していたのか、それとも誘導されているのか、1回の爆発で機体がふらついたその先でまた次の爆発が起こる。

 これはリペアよりもバリアユニットを持ってきた方が良かったかな? いや、速攻で剝がされて終わるな。むしろ重装甲のガチムチゴリラ機体でリペアユニットを積んで、多少の被弾じゃビクともしない重戦車みたいなムーブをするのが正解かもしれない。……鈍重にならざるを得ない重量機じゃ今みたいにヒラヒラ立ち回られて死角からドカンとやられる未来しか見えないが、それは見なかったことにしておこうそうしよう。

 じりじりと削られていく耐久値がついに危険域に突入し、不快なアラートが鳴り響く。回復させようにもSPが心もとなく焼け石に水だ。

 

 

(参ったな。どうやら負けたらしい)

 

 

 マンホール、側溝、ダクトに雨どい。路肩に停められた車だって危ない。都市部に存在するあらゆるものが会長の手によってトラップへと変貌する。気分はまるで映画『プレデター』に出てくる、狩られる軍人になったみたいだ。いたぞぉ、いたぞぉぉぉ!

 上下左右360度を警戒しながら時折現れる会長自身の攻撃にも翻弄され続け、――そんな状態で勝ち筋を見つけられる筈もなく、私は惨敗を喫した。

 

 ハンガーへと戻り、機体を解除する。戦闘の高揚感で誤魔化していた疲労がどっと押し寄せてきた。

 

 

「お疲れ様~。会長、強かったでしょ~? ハイこれ」

「っあぁ、ありがとう……しまっ」

 

 

 私の機体のセッティングを担当してくれたのほほんさんがくれたゼリー飲料をありがたく飲もうとして、しかしできなかった。手に力が入らず、取り落してしまったのである。

 ……ダメだこれ、相当疲れてるぞ。

 

 

「あらあら、ヘロヘロじゃない」

「会長」

 

 

 声がした方を見ると、ISスーツのままの会長が歩いてくる所だった。みっともない所を見られてしまったのでちょっと恥ずかしい。

 

 

「ここに来てから色々な経験をしてきたつもりでしたが、こんなに神経使う戦闘は初めてかもしれません。――目に見えない地雷原の中で戦うのはしんどいですね」

「まぁ君くらいなら翻弄できないとね。初見でアレを攻略されたらおねーさん泣いちゃうかも?」

「よく言いますよ……」

 

 

 おどける会長に思わず呆れた。なるほど、爆発物を多用すれば、所詮はナノマシンでしかないあの地雷原は要となるナノマシンを爆風で吹き散らす事で容易く除去できるだろう。でもその程度をあの会長が想定していないとはとても思えず、即座に二の矢が飛んできたであろう事は想像がついた。

 

 

「次に戦うとしたらそうですね……ガッチガチに装甲を固めた機体で爆発物をまき散らしながら、多少の被弾はリペアしてカバーする……って感じに落ち着くでしょうかね」

「それはアリね。あとは、シキシマ君はもう少し地形を活かした方が良かったわね」

「地形?」

「疑問だったのだけれど、シキシマ君の機体は飛べるのよね? だったら、トラップの多い地表付近でなく、少し高度を取って、空中戦に持ち込むって方法もあったんじゃない?」

 

 

 自分の間抜けさ加減に舌打ちが出そうになった。

 IS学園に入学してもう丸5か月。実戦だって経験したというのに、どうして私は『ボーダーブレイク』の感覚のままで機体を動かしてしまったのだろうか。考えてみれば当たり前の事じゃないか。路上に多くのトラップがある、自分は空を飛べるのなら、飛んで避ければ良いに決まっている。

 

 

「その顔、完全にうっかりしてたって感じね」

「えぇ。穴があったら何とやらですよ、全く……」

「ふふ、それじゃあ『次』は期待しても良いかもね」

 

 

 最後まで軽い調子だった会長は「それじゃあね~」と手をヒラヒラさせながら去っていった。

 

 

(あれが、学園最強……)

 

 

 自分の不甲斐なさと、遥か高みを同時に見せつけられたけれど、私はふつふつとやる気が湧き上がってくるのを感じていた。

 

 

(こうしてはいられない。幸いにも訓練場の使用時間はまだ余っているし、すぐにでも訓練を……)

 

 

 と、立ち上がろうとして今の自分が疲労困憊なのを忘れていた私は、足に力が入らずその場ですっ転んでしまった。

 

 

「レオレオ、大丈夫~?」

「……うん。ありがとねのほほんさん」

 

 

 めっちゃ恥ずかしかった。

 

 

 ※※※※※

 

 

(あ、足が重い……!)

 

 

 シャワーを浴びて訓練場を後にする頃には、私はフラフラになってしまっていた。

 よもやよもやだ。まさかたったの1戦でここまで疲労困憊になろうとは。転生者として不甲斐なし! 穴があったら、入りたい!!

 なんて、冗談抜きに疲れているな。時計を見るともうすぐ11時半といった所。通りでお腹が空いた訳だ。

 少し早いけれどお昼にしようと学食に向かおうとしたところで、私は思わぬ人物に遭遇した。

 

 

「む、シキシマか」

「あれ、篠ノ之さん? どうかしましたか?」

「先ほど連絡があってな。一夏の様子を見に行くところだ」

「あっ……」

 

 

 やべ、会長との模擬戦に集中しすぎて保健室に寝かせてきた織斑の事を忘れていた。

 

 

「まったく……話によれば生徒会長との組手で完膚なきまでにやられたらしい。不甲斐ない話だ」

「まぁまぁ。……あの会長、とんでもないですよ」

「む、シキシマがそこまで言う程の者なのか?」

「えぇ。私もついさっきコテンパンにされてきた所なので。ISでの模擬戦ですけど」

「それは……だが……」

 

 

 篠ノ之さんにとって織斑はヒーローそのものだろう。うろ覚えの原作知識を掘り返した時に思い出した彼女が織斑に『落ちた』理由の1つに、からかわれていた彼女を守ろうと織斑がいじめっ子たちに立ち向かったというエピソードがあったはず。そうそうお目にかからないイケメンムーブをされた日にはそりゃあ恋心の1つや2つも抱くわ。

 そんなヒーローが負けた。それも気絶するまでにボコボコにされて。篠ノ之さんの心中は穏やかではないだろう。

 

 

「会長、いくつ武術を極めているんだってレベルで引き出しが多かったですし、最後のアレなんか男で引っかからないヤツなんてまずいない……あっ」

「どうした? 一夏はどんな手で負けたんだ?」

「いやぁ……その……アレは事故、というか搦め手というか」

「言え」

 

 

 うわすっごい圧。満員電車かな?

 言わなければ貴様を斬る。そう言葉でなく気配で語るのは脅迫に含まれるのだろうか?

 

 

「そうか、そうか……つまり一夏は無理やり会長の胴着を脱がせようとしたと?」

「それは流石に穿ちすぎかなぁって……あと、会長全く恥ずかしがった様子もなく織斑をボコってたし、多分最初から狙ってた……っていうか、手札の1つとして用意していたんじゃないかな。実際有効だった訳だし」

「む。それは、そうだが……」

 

 

 その時、私の脳裏に悪魔的な考えが浮かんでしまった。この方法をけしかければ織斑はさぞ困った事になるだろう。しかし、しかしだ。

 ラブコメ的にはオールオッケー!!

 

 

「……ねぇ篠ノ之さん。これはあくまで篠ノ之さんだから言うんだけど」

「どうした急に」

「織斑に『そういった方面の』耐性をつけさせる必要もあるんじゃないかな?」

「んなっ!」

「いや分かってる。こんな事女子に言うのは普通にセクハラだ。でも、織斑は世界初の男性ISパイロット。これから色んなアプローチを受ける。

 その中にハニートラップが無いなんて言える?」

「……っ!」

「篠ノ之さんにもメリットがある話だと思うけど?」

「シキシマ……少し見損なったぞ」

「もちろんやるかやらないかは篠ノ之さんの自由だ。けど、国や企業がバックについてる鳳さんやデュノアさんがこのまま控えめなアプローチで済ませるとは限らないんじゃない?」

「うぅ……」

「あと、いい加減織斑には向けられた矢印にちゃんと向き合ってほしいし。……夏休み、何かあったんでしょ?」

「な、何故それを」

「休み明け初日の様子を見れば分かるさ。距離は詰まったけれど、決定的な事は起こせなかった。そんな風に見えたけど」

「うっ……」

「まぁさっきも言った通り、行動を起こすのは篠ノ之さん自身だ。でも、私ですら篠ノ之さんと織斑の関係が深まったのは察しがついたんだ。他のライバルは焦っているんじゃない?」

「うぅ……」

 

 

 割と真剣に悩みだす篠ノ之さんに私は背を向けた。5歩も行かない内に後ろから「……よし、やるぞ」と声が聞こえたような気がするが、私は何も聞こえなかった事にした。




仮にも社会人経験のある転生者のやる事か? これが……?
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