せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
放課後、保健室から戻ってきた織斑にしこたま怒られたでござる。まぁ目を覚ましたら傍に顔真っ赤にした篠ノ之さんが布団に潜り込もうとしていて、しかもそれを会長に見られたって言うんだから焚きつけた私が怒られるもむべなるかな。ちなみに織斑が口を割ったわけではない、私が適当にラブコメ的なシチュエーションを言ったらまさかの図星だったのである。うっそだろお前。
強引すぎると言われてしまえばその通りなのでそれは謝るが、篠ノ之さんをけしかけた事自体は悪いとは思っていない。実際問題織斑(一応私も)は貴重な男性操縦者、広告塔や研究対象など、『利用手段』には事欠かないだろう。テロリストからすれば私たちを害する事が出来れば盛大に名前を売れるだろうし、狙わない理由がない。そりゃあ会長も私たちを鍛えようとする訳だ。
なお布仏先輩いわく、今後ご飯も喉を通らないレベルで振り回される模様。飯とシモで無限に盛り上がれる高校生男子から片方の翼を奪うとか人の心とかないんか?
結果から言うと布仏先輩の忠告は現実のものになった。……ただし織斑に限定してだけれど。
「助けてくれレオ、このままじゃいつか俺は殺される!」
織斑に泣きつかれたのは模擬戦から5日も経たないある日の事だった。彼いわく、
・寮の自室に戻ったら会長が引っ越し済みの状態で待機していて、しかもあられもない姿で「ご飯にします? お風呂にします?」をされた。(なお間の悪い事にその状態で篠ノ之さんがやってきて刃傷沙汰になりかけた)
・織斑先生経由で彼のマッサージが上手いと評判になった結果、下着プラスシャツ1枚という紙防御姿の会長にマッサージを求められ、理性をゴリゴリ削られた。
・篠ノ之さん、鳳さん、デュノアさんといった織斑に好意を抱く女性陣を煽りに煽っているらしく、彼女たちからの攻勢も激しさを増している。半包囲を受けた織斑の理性前線は崩壊寸前で、辛うじて持ちこたえているに過ぎない。
おい待て、途中で惚気に切り替わらなかったか? もうとっととハーレムしちゃいなYO!
「ちなみにだが織斑、お前合宿の時にグロ画像で何とかしてるって言ってなかったっけ?」
「あったところでどうにもならないから困ってるんだよ……」
ガックリ項垂れる彼は気持ちやつれたようにも見える。あのスタイル抜群の会長と同居生活(強制)の上、超ド級の美女3人から好き好き大攻勢を受けているとか、そりゃあ理性も削られるわ。お労しや織上……
ちなみにだが私はそのような被害には逢っていない。流石の会長も織斑と私の2人に同時攻勢はかけられなかったという事だろうか?
「ま、まぁ何だ。あの人ISパイロットとしては滅茶苦茶優秀だし、技術でも何でも盗める物は盗んで、レベルアップできるじゃん?」
そう、あの変態先輩、何を隠そうロシアの国家代表なのである。何をどうしたら純日本人であるはずの会長がロシアの国家代表に選ばれているのかさっぱり分からないけれど、現にそうなっている以上(そしてこの5日で散々に経験した以上)その実力に疑う余地はない。
ラブコメ大攻勢についてはこちらとしてもどうしようもない。誰だって馬に蹴られて死にたくはないからね。私にできたのは、せいぜいヤバくなったら織斑先生のいる寮監室に逃げるようアドバイスをするくらいだった。
だからこそ私は知る由もなかったのだ。『あの』更識先輩が、(ラブコメ的に)私を放置する筈がないということを……
※※※※※
突然だが、ぐっすり眠っている間に飛び起きるとしたら、どういう場合が考えられるだろうか?
緊急地震速報のアラーム? それは間違いない。昼間でもおっかないあのアラームが夜中に鳴り響こうものなら死ぬほど疲れていても跳ね起きる。(ちなみに専用機持ちになると非常時に機体を緊急展開する事が認められているぞ!)
火災報知器のサイレン? それもそうだ。地震雷火事親父は人が怖がるものの定番だからね、仕方ないね。
他はすぐには思いつかないが、まぁどれも緊急事態である事には違いないだろう。
深夜に私を襲った出来事も、間違いなく緊急事態ではあった。
もっとも、自然災害の類ではなく、人の悪意によって引き起こされた人災ではあったが。
(……!?)
これまで感じた事もないような感覚に一気に睡眠から覚醒した私は、視界に飛び込んできた情報に寝起きの脳がバグを起こし思考すらままならない状態に陥った。いや、例え起きていた状態でも理解不能な光景に硬直しただろう。
私はメイド服を着たセシリアさんとラウラさんに身体を押さえつけられていた。
(あ? は!?)
もうパニックである。睡眠中に襲われるだけでも相当なショックだというのに、相手がメイド服を着た知り合いなのだ。訳が分からないよ。
「レオ・シキシマ。貴様にはとある容疑がかけられている」
「え、何!?」
「発言を許可した覚えはありませんが?」
「ぐっ!?」
何故か絶対零度の視線で私を見下す2人に困惑の声をあげようとした所で、セシリアさんに鳩尾の辺りを押され、私は口を閉じた。強く殴ったとかそういう訳ではない。ではないのだが、「黙っていろ」というこれ以上ないメッセージではあった。
ここで私は、自分の両手が拘束されている事に気が付いた。プラスチックの感触。ハンドカフスだろうか。
「待ってください、容疑って何の事ですか!?」
「黙っている事もできないようだな? ……セシリア」
「えぇ」
ラウラさんが合図をすると、セシリアさんはどこからか猿ぐつわを取り出し、「無言」のバッドステータスと拘束具が1つ私に追加された。自由に動かせるのは足くらいなものだけれど、そもそも起き上がれる気がしない。体を起こそうとした瞬間に制圧されるだろう。それなら今は大人しくしていた方が吉か。
「ここにとある女性から届いた証言記録がある。今から流すが、何か反論があるならその後に聞こう」
そう言うとラウラさんはスマートフォンを操作し、室内にボイスチェンジャーで加工された音声が流れ始めた。
『――5日程前でしょうか、私は織斑君と道場で組手をしていたのですが、その時に事故で、私の胴着がはだけてしまう事があったんです』
(ん?)
『組手なのでそういう事故は仕方ないと思っているんです。織斑君には仕返しをしましたし、まぁいいかなって。でも、その時に同じ道場にいたシキシマ君も私の下着を見たのに、事故だからって謝りもしなくって――(すすり泣くような声)』
全身から血の気が引いた直後、誰の仕業か分かって頭に血流が集中した。
「むー!! むー!!」
「大人しくしていろ」
「むー!」
そうはいくか。こっちは名誉にかけて反論しなくちゃいけないんだ。
だが文字通り手も足も出ない状態の私は簡単に抑えられてしまう。そうこうしている間にも、加工された更識先輩の声がスマートフォンから流れ続けている。
『それだけじゃないんです。
その後にISで模擬戦をしたんですが、シキシマ君は、わ、私の胸を――!』
(あ、あいつ絶対許さねぇ!!)
すすり泣く(絶対ウソ泣きだ。賭けても良い)声を最後に音声は途切れた。無実を何とかして証明した私はなおも身体をよじるが、だからどうなる筈もない。
「レオさん、わたくしは残念ですわ。
わたくしも、そしてラウラさんも、レオさんに好意を伝えてきたはずです。わたくしたちの勘違いでなければ、レオさんもわたくしたちにそれなりの想いを持っていただけていたと思っていたのですが」
「まさか、ここに来てぽっと出の女に鼻の下を伸ばすような男だったとは。
あぁ。本当に残念だ」
ほとんどゼロ距離にいた2人が、さらに距離を詰めてくる。というか、もはや密着しようとしてくる。
今更だが、2人の恰好はメイド服だ。ただし、ただのメイド服ではない。スカートはめっちゃ短いし、胸元はやたら開いているし、何かこう、ド○キで売ってる『そういうプレイ』用のメイド服なのだ。
そんな2人に密着されてしまうと、こちらとしては非常に困る訳で。うわいい匂いする……
「……ふぅっ」
「んっ!?」
突然耳に吹き付けられた吐息に、変な声が漏れた。何をするだぁー!?
「ふむ、クラリッサ曰く『男なんて隊長が鎖骨の辺りを指でなぞればイチコロ』らしい。試してみるか」
「むー!!(や、やめろぉ!) ……んんっ!」
「セシリア、これは効いているのか?」
「えぇ。間違いありませんわ」
現役軍人という肩書きが信じられないくらい白く細い指が私の鎖骨周辺を撫でる。なぞるように這いまわる感触にたまらず声が漏れた。
誤解のないように言っておきたいが私は特別マゾの気がある訳じゃない。……じゃないのだが、このままでは何かが目覚めてしまうのは確定的に明らかだろう。
「さて、次はわたくしの番ですわね」
「ぐっ!?」
言うのが先か行動が先か。セシリアさんは身動きのとれない私のお腹の辺りにまたがった。おいやめろ、その辺りは今色々とセンシティブ(ガチ)なんだ。
そして私の上体に添わせるように密着してくると――この時点で私の理性は波打ち際に作った砂の城の如く崩壊している。こんなん勝てる訳ないやろ!!――耳元でこう囁くのだった。
「ハニートラップが心配なのはレオさんも同じですわ。これは対策のための訓練だと思ってくださいまし」
茹った思考が冷え、しかし次の瞬間脇腹を襲ったこそばゆい感触に再び沸騰した。
「むむむむむむ!! むー!! むー!!」
やめてくれセシリアさん、その術(くすぐり)は私に効く。いやマジでキツイ。猿轡をかまされているから笑う事もできないっていうのが地味に響く。
私の悶絶する声が響く自室にチャイムの音が響いたのはそんな時だった。織斑先生か? だとしたら助かった!
「ラウラさん、対応をお願いしても?」
「分かった」
玄関にラウラさんが向かい、扉の開く音。そして2人分の足音と共にやって来たのは、
「あら、随分な事になってるわね」
(き、貴様ァ!!)
更識会長その人だった。もうさ、あのふざけた証言記録から察してはいたけどさ、コイツが全ての黒幕だよね? マジでぶっ殺してやろうか。
今すぐにでも飛びかかってやりたいが、生憎とセシリアさんが重石――本当に重い訳ではないと彼女の名誉のために言っておく――になっていて動けない。そんな私の事情も含めて分かっているのだろう、会長は得意げに笑い、
「言ったでしょう? おねーさんの下着姿は高いって。
じゃ、あとは任せるわね」
(ざ、ざけんなゴルァ!!)
颯爽と去っていった。
レオは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の会長を除かねばならぬと決意した。レオには政治が分からぬ。レオは、IS学園の1年生である。ブラストランナーのような機体を操り、仲間や学友と切磋琢磨しながら暮らしてきた。けれど、邪悪に関しては人一倍に敏感であった。
演習場に行こうぜ、会長……久々に、キレちまったよ……!
「さてレオ、邪魔者はいなくなったな?」
「夜はまだまだこれからですわよ?」
「」
問題は、私の理性と尊厳(あと貞操)が明日を迎えられるかどうか、それに尽きる。
誓ってエッチな事はしてません!
だからR15タグです通してください!