せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

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お待たせしましたわ!!
6月に入ってまだ一度も投稿していないと気がついて焦りに焦りましたわ!!

あと、ここすきの数が爆増(当社比)していて嬉しかったですわ! ありがとうございます!!
その勢いでお気に入り登録や評価も投げてくださいまし!(強欲)


気がついたら日々が過ぎているのは年食った証と聞いてショックを受けているアラサーな作者

 私と織斑という最強クラスの客寄せパンダがいるせいか、1組の出し物、『ご奉仕喫茶』は朝から大盛況、行列の整理も行っている雑務班の報告によれば、既に2時間待ちだというのに、行列はまだまだ伸び続けているらしい。嘘でしょ……?

 で、そんな行列に並ぶ人たち(というか女子たち)が求めているのは当然私と織斑な訳で……学園祭の開幕と同時に私たちは激務に追われていた。やり残した事を取り戻せるかもとか期待したけど、接客が忙しすぎてそれどころじゃなかったでござる。

 私だって元社会人、繁忙期は何度も経験している。けれども、私目当てでお客さんが押し寄せるという経験は流石に無かった。

 

 

「ご案内いたしますわ」

「『執事にご褒美セット』ですね……かしこまりました」

「お待たせいたしました、『湖畔に響く小夜啼鳥のさえずり』セットになります」

「ちょっと待てや」

 

 

 おかしい。何がおかしいってメニューのネーミングセンスがおかしい。この中で一番まともに見えるのが『執事にご褒美セット』っておかしいやろ。ナイチンゲールをわざわざ『小夜啼鳥』とか言い換えてるあたり厨二病引きずってる奴いるだろ!

 

 ちなみにこのメニュー、私たち接客担当は復唱が義務付けられている。胸元のネクタイなどに仕込まれたマイクで厨房の調理担当にオーダーが伝わる仕組みになっているのだ。こういうところすんごいシステマチック。どうしてその洗練さをネーミングに活かせなかったんですか?(電話猫)

 

 けれども、この忙しさや恥ずかしさも、楽しいって思えるから、まぁ良いのかもしれない。

 

 

「……かしこまりました。『深き森にて奏でよ愛の調べ』セットですね? しばらくお待ちください」

 

 

 前言撤回。このネーミングだけはダメだ。

 

 

 ※※※※※

 

 

 次々とやってくるお客さん。そのほとんどは同じIS学園の生徒なのだけれど、一部例外もいる。各生徒に配布される招待券を使った外部の人間(たいていが保護者だ)、あるいは――

 

 

「レオ・シキシマさんですね? 私、○○工業の――」

「あー、今は見ての通り忙しいので、売り込みなら後ほど、学園の事務室を通してお願いします」

 

 

 この手の売り込みだ。正直に言うとこれまでも何度かセールスが来たことはあった。あったのだが、玉石混交というか、まともな会社とアレな会社のごった煮状態で、なかなか自分の命を任せるに足る装備とは出会えていない。後から聞かされて驚いたけれど私の飛行ユニットが爆発した事故も、実際は事故じゃなかったどころか何者かによる破壊工作だったらしいし、外部のメーカーに対する信頼性が揺らいでいるというのもある。

 織斑は織斑で売り込み攻勢に悩まされているらしい。私の一件以降流石のIS学園もチェック体制を強化したらしく少しでも怪しい業者は徹底的に弾かれているそうだが、ふるいに掛けられて上でも相当数の営業が来ているのだ。

 

 それで、今回の営業さんが売り込んできたのはショットガンなのだが、正直言ってしまうと論外である。中折れ式の水平2連ショットガンとか実戦舐めているのかな? 今私が持つどのショットガン、どころか、下手したら2丁持ちできる拳銃より弱い武器とか残念ながらお断りだ。加えて普段の日ならまだしも学園祭の日にやってくるような非常識な所は控えめに言って一昨日来やがれって話である。学園祭の出し物やってる最中に突撃してくるとか大人のプライドとかないんか?

 いや、もしかしたら会社がブラックでとにかく逝ってこいとか命令されていたのかもしれない。どちらにせよあんな産業廃棄物に命を預ける訳にはいかないからね、仕方ないね。

 

 

「いらっしゃいませ……って、鈴かよ」

「ご挨拶じゃない一夏、アタシ一応お客さんなんだけど?」

「はいはい……それではお嬢様、お席へとご案内いたします」

「っ……えぇ、苦しゅうないわよ?」

 

 

 おっと、いきなりラブコメ始まったな?

 鳳さんはどうやらクラスの出し物の合間を縫ってこっちに来たみたいで、真っ赤なチャイナドレスがよく映えている。そして次に目が行くのはやっぱりアレだろう、中華系でよくみる頭のボンボン。あれ名前何て言ったっけ?

 

 

「しかし鈴、相変わらず似合ってるなチャイナドレス」

「そ、そう?」

「あぁ。何て言ったっけ? その頭のお団子も」

「シニョンね」

「それそれ、シニョンもすげーかわいいぞ」

「ぅ……ぁりがと」

 

 

 おおっとここで織斑選手のストレート連続誉め言葉が炸裂ぅ! 鳳選手これにはタジタジだぁ!

 さて鳳選手、ここからどう巻き返す?

 

 

「うぅ……そ、それより早いとこ注文しちゃいましょ。アタシだってクラスの出し物抜けてきてるからあんまり時間無いし」

「それもそうか、ほら、これがメニューな」

「アンタが持つのね……」

 

 

 撤退! 鳳選手戦略的撤退を選択ゥ! 見慣れない想い人の執事服というシチュエーションには敵わなかったようです!

 ですが織斑選手の様子もおかしいですね、先ほどから鳳選手の方へ目線を向けては逸らすという不審な動きを繰り返しています。やはり幼馴染のイメチェンは織斑といえども効果があるようですね。また、彼の目線をよくチェックすると、大胆に開けられたスリットから見える鳳さんの背中の方にも向けられていますね。

 これは……本当です!  織斑選手、鳳選手の背中やうなじに視線が行きがちだァ! やはり彼も年頃の男子、乙女の柔肌には勝てないのか!?

 

 

「わぁ、本当にシキシマ君が執事やってる」

「会長?」

 

 

 突然聞こえてきた知っている声に、脳内で流れていた実況と解説をかき消す。そうだよね、あの会長がこんなおいしいイベントを逃すとも思えない。きっと散々にちゃかされるんだろうなぁと声のした方を振り返って

 

 

「何でメイド服!? しかもうちのクラスのやつじゃないですか!」

「あら、一目で見抜くなんてシキシマ君ったらそういう趣味?」

「レオさん?」

「レオ?」

「あらぬ誤解!?」

 

 

 いつの間にか両脇に立っていたセシリアさんとラウラさんから放たれる圧に冷や汗がにじむ。会長? あの人なら今もけたけた笑っているよ畜生。

 

 

「会長は自分のクラスとか大丈夫なんですか?」

「えぇ、今は休憩がてら本音ちゃんやみんなの様子を見に来ただけよ。こーんな面白そうなイベント、来ない訳にはいかないじゃない。

 あ、あとシキシマ君と織斑君にお客さん来てるから」

「えっ」

「こんにちはー新聞部の黛でーす」

 

 

 扉を開けて登場したのは新聞部の黛部長。なんでも学園祭の特集を出すのにネタを探し回っているのだとか。

 

 

「そしたら1組じゃ注目の的になってる男子2人に、とびきりの美少女で代表候補生な女子たちのメイド服アンド執事服が拝めるって聞いちゃってね。これはもう来るしかないでしょ!

 あ、記事の写真撮りたいから少し時間貰える?」

 

 

 と、急遽始まった取材だったのだが……

 ラブコメ世界、写真撮影、何も起こらないはずもなく……

 

 

「うーん、やっぱり1組の女子たちは特に華のある子が多いわねぇ。

 そうだ、折角だしシキシマ君や織斑君と2ショットで撮ってみましょう!」

「「「!?」」」

「お、いいわねぇ。じゃあ織斑君から」

「俺の意思は!?」

 

 

 諦めろ織斑。この学校で女子に逆らえるわけがないんや……

 

 

 栄えあるトップバッターはデュノアさんだった。

 

 

「ね、ねぇ一夏、変な所とかないかな?」

「いや、そんなことないぞ? よく似合ってる、可愛いと思うぜ」

「か、かわいい……ぇへへ」

「……っ」

 

 

 お、褒め殺しにデュノアさんも照れてるけれど、彼女の笑顔が織斑にも刺さってる。いいぞもっとやれ。

 

 

「っかぁ~~! じれったいわね! 私ちょっといやらしい雰囲気にしてくるわ!」

「会長ステイ」

 

 

 次に織斑の隣に立ったのは篠ノ之さんだ。

 

 

「うぅ……」

「どうした箒? やっぱり恥ずかしいのか?」

「それはそうだろう、このような姿を写真に残すのは……」

「分かる、でも箒って姿勢綺麗だし、こういった格好も似合ってるぜ?」

「そ、そうなのか!? ……不意打ちは反則だぞ、馬鹿者」

 

 

 うへ、砂糖吐きそう。そういえばブラックコーヒーって取り扱っていたよね? 注文しようかな……ってめっちゃコーヒーのオーダー入ってるぅ!?

 

 

「ええもん見れたわ……この後シキシマ君たちの写真も撮影できるなんて記者冥利に尽きるわね……」

「ちょっと大丈夫? この後生きていられる?」

 

 

 コーヒーのオーダーを捌き続け、ついに私の番がやってきた。

 先手を取ったのは意外にもラウラさん。先手を取ったというよりはセシリアさんが譲ったという方が正しいか。

 

 

「そのだなレオ……」

「? どうしました?」

「……をしてほしいんだ」

「え? すいません、よく聞こえませんでした」

「その、

 だ、だっこをしてほしいんだ……!」

「???」

 

 

 だっこ。DAKKO。だっこってなんだ? 女子に人気の写真のポーズなのか? 撮るよーってなった時にハグするとかそんな感じか?

 外野がキャーキャー騒ぐ声で我に返った。思考が宇宙に飛んでいた気がするが、現実は非情である。

 

 

「いくらなんでも恥ずかしすぎません?」

「それは私も同じだが……一度やってもらいたかったのだ」

 

 

 か わ い い

 小柄銀髪眼帯美少女(メイド服着用)に頬を染めてちょっとモジモジしながらこんな事言われてみろ。耐えられる男なんて存在しないだろうが!

 織斑ほど体格が良い訳ではない私だが、それでも連日の訓練の甲斐もあって少なくとも会社員だった前世よりは身体に筋肉も付いている。女子を抱えるくらいはできるだろう。

 

 

「……分かりました。でも私も恥ずかしいので撮影の間だけですよ?」

「あぁ、よろしく頼む。……やった」

「っっっ」

 

 

 あのラウラさんや、無意識かつ小声で言ったその「やった」、私の耳には届いているんですよ。……視界に見覚えのあるブロンドがチラついていなかったらとても危なかったぜ。

 

 

「では、行きますよっと!」

 

 

 あらかじめ声をかけてから抱き上げる。首に回されたラウラさんの手の温かさと、思っていたよりもずっと軽いその重みに、彼女も女の子なんだと改めて実感した。

 

 

「その、重くはないか?」

「いえ全然。むしろ軽すぎて少し心配になりましたよ」

「一応量は食べているしトレーニングも積んでいる。健康は問題ないさ。もう少し身長があれば言う事は無いのだがな……」

「私的にはそこもラウラさんの魅力だと思いますよ」

「……それなら良いと思ってしまう私は、どうかしているな」

「それじゃあ2人とも、こっちに目線ちょうだーい!」

 

 

 黛先輩の声でカメラの方を向く。ファインダーをのぞき込む彼女の顔は幸せそうだが、その目は真剣そのもので、彼女が誇りをもって記事を書いているだと伺えた。

 

 

「……うん、良いわね! 2人ともありがとう!」

「では、降ろしますよ」

「あぁ」

 

 

 ラウラさんの足が床に着く直前、回された腕に少しだけ籠った力が、彼女がこの時間を名残惜しんでいるのだと伝えてきて、私も少し寂しい気持ちになってしまった。

 

 

「レオ、無理を聞いてくれてありがとう」

「こちらこそ。ラウラさんが良ければまたどうです?」

「! もちろんだ!」

 

 

 花開くような笑顔と共に、ラウラさんとの時間は終わった。

 

 

 ※※※※※

 

「お待たせしましたわ」

 

 

 続けてセシリアさんの予定だったのだが、急なオーダーが入ってしまい少し(と言っても5分10分の程度だが)遅れてしまった。

 

 

「いえいえ、この程度待った内にも入りませんよ。

 セシリアさんは何かポーズの指定とかはありますか?」

「そうですわね……それでは1つだけ。膝をついてくださる?」

「いいですよ……って膝?」

 

 

 私が膝を床につくなり、セシリアさんは私の方へと近づき……って待って!?

 

 

「やるわねぇセシリアちゃん」

「すげぇ……」

 

 

 近づいてきたセシリアさんは私の肩を押し、バランスの崩れた私は後ろへと倒れる。咄嗟に手を付いたからどこかをぶつける事態は回避できたのだけれど……

 セシリアさんは私に覆いかぶさるように片手を床に付け、もう片方の手で私のネクタイをグイと引っ張る。当然そうなると私の顔は目の前にあるセシリアさんの顔へと近づき、しかし胸板に当てられた彼女の肘がそれを許さない。

 

 

「セシ、リアさん?」

「すみませんレオさん。ですがわたくし、どうしても我慢ができませんでした」

 

 

 彼女の瞳に怒りの色はない。そう、怒り『は』

 

 

「ラウラさんが魅力的な方だというのは知っていますわ。レオさんが今何かと大変だという事も。

ですが、レオさんにはもっとわたくしの事を見てほしい、もっとわたくしの事を褒めてほしい。

 レオさんは、嫉妬深いわたくしは、嫌い、でしょうか……?」

 

 

 彼女が抱えていたのは、不安。

 

 私は馬鹿か。

 

 セシリアさんを支えたくて、強くなりたいと願った。会長の特訓も受けている。けれどそれは、セシリアさんと過ごす時間が減ることに他ならない。それなのに当の私が他の女子とイチャイチャしているように見えれば、事実は別としても不安に思ってしまうのが人情ってものだろう。

 私はセシリアさんを促して彼女を立たせた。

 

 

「すみませんセシリアさん。貴女を不安にさせるつもりはありませんでした。

 ですが、もう貴女が不安にならないように、ひとつ『証』を残すとしましょう」

「『証』、ですか?」

「えぇ」

 

 

 困惑する彼女の前で片膝を付き、彼女の手を取る。

 

 

「約束ですセシリアさん。

 今後何があっても、私は貴女の傍にいます。物理的に離れる事はあっても、心は貴女と共に在ります」

「約束、ですよ?」

「えぇ」

「破ったら許しませんよ?」

「えぇ」

「具体的には婚姻届にサインした後にレオさんが泣いて謝るまで(ピー!)しますよ?」

「え!? ……えぇ」

「なら許します」

 

 

 にっこりと、それは良い笑顔のセシリアさんを見て、今さらながら私はとんでもない約束をしてしまったのではという思いが湧き上がってくる。

 が、不思議と後悔は無かった。

 

 

「ふぉぉおおおおおおお!!! これは特ダネよ、号外よ!!

 こんな所にいられないわ! たっちゃん、またねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 時と場所を考えなかった、という点を除いてだけれど。




前話投稿後のワイ
「お気に入り登録800オーバー達成、UA130,000突破、調整平均……-0.1!?何でや!?
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