せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!?   作:とある物書きMr.R

84 / 85
お待たせしました


えっ、レイドバトルをソロで攻略!? できらぁ!!(前編)

 ――これは夢だ、と。夢の中で気づく事はあるだろうか。

 

 私は、正確に言うと前世の私はそういった経験をしたことはなかった。リアリティの高い夢を見ても起きてから「あ、夢だったのか」となる程度だ。

 けれどこの身体に乗り移って以来、夢なのか心象世界なのかは定かではないものの、現実とそう変わらない世界に行くことがあった。そこで出会うのは決まってもう一人の自分。この身体の本来の持ち主である『レオ・シキシマ』その人だ。

教室のような空間で勉強机に腰かけた彼が今目の前にいる。

 

 

「よう相棒。酷くやられたな?」

 

 

 からかうようにニヤリと笑いかけるその表情に悪意はない。

 

 

「全くだよ。ナノマシンを雲に潜ませて放電とか初見殺しにも程がある」

「初見じゃない今だったら何とかなるのか?」

「うーん……」

 

 

 言われてから考えてみるが、割と詰んでいる気もする。私の手持ち武器で範囲攻撃が可能となるとフレアグレネードが浮かぶが、あくまであれは乱戦の最中に放り込んでアシストポイントを稼いだり、耐久度ミリ残りの敵を削り切るための物だ。雲を消し飛ばすとか、そういった用途には向かない。可能性があるとすれば重火力兵装の榴弾砲や重装砲を空中で爆破するくらいだろうか。

 

 

「まぁいい。相棒の戦い方を俺も見てきて思ったんだよな。――悪くはないが、まだ足りない」

「……」

 

 

 これは、その通りだろう。これから敵対するであろう『亡国企業』や途中で読むのを止めた後に出てきた敵キャラを相手に、今のままでは論外だし、多少の成長をしたところで相手になるのかと聞かれれば、正直言って不安だ。

 

 

「という訳で――喜べ相棒。訓練の時間だ」

「は?」

「聞こえなかったか? しごきの時間だって言ってるんだよ」

「いや聞こえてるが? 言ってる意味が分からんって話なんだが?」

「はいスタート」

「話聞いて? って何だこれ!?」

 

 

 もう1人の自分が号令をかけると同時に視点が変わる。生身で過ごしている普通の状態から、慣れ親しんだもう1つの自分――ブラストランナーを起動した状態に。視界に映る景色も学校の教室のような空間から、記憶に刻まれたとある戦場へと変貌している。ここは――

 

 

『ようこそ、ユニオンバトルへ』

「っざけんな!? アレをソロは無理だろ!?」

 

 

 第3採掘島の中心で、私は叫んだ。いや本当に勘弁してほしい。

 

 ――ユニオンバトル。簡単に言ってしまえばプレイヤー連合VS強めのCPU集団のレイドバトルだ。専用マップを舞台に、敵巨大兵器の侵攻を阻止するのが大まかな流れになる。

 そう、レイドバトルなのだ。間違っても単機で挑むような代物じゃない。上空に鎮座し、複数の砲台を搭載した巨大兵器、数で押してくるドローン、一般的な機体より武装も装甲もはるかに強化された敵機、そしてそれらを従えるエース機。2~3機のドローンだったら突撃銃のマガジン1つもあれば破壊できるし、強化機兵もタイマン、頑張れば2機までなら相手取れる。エース機が相手でも時間稼ぎくらいは何とかなろう。

 でもそれらが同時に襲い掛かってくるのだ。多勢に無勢ってレベルじゃねーぞ!?

 

 しかし、そんな私の内心の動揺など知ったこっちゃないと言わんばかりに、

 

 

「あ……」

 

 

 ユニオンバトルに登場する敵勢力が保有する巨大兵器『ツィタデル』がその姿を現した。

 

 

 ※※※※※

 

 

 既に説明したが『ユニオンバトル』はレイドバトルだ。敵の巨大兵器にダメージを与え、自軍の衛星兵器をブチ当てて機能停止に追い込み、内部に乗り込んでエネルギー源であるコアをタコ殴りにして破壊する。その合間に色々とミッションが発生するため、それも味方と協力しながらこなす必要がある。あるのだが――

 

 

「だから! ソロは無理があるってぇ!!」

 

 

 私は半泣きになりながら重火力兵装の副武器であるプラズマカノンを敵巨大兵器『ツィタデル』に叩き込んでいた。何発目かのニュードの塊が炸裂し、耐久値の限界を迎えた砲台が小爆発を起こしながら沈黙する。

 

 頂点を下に向けた円錐のような形をしたツィタデルの周囲には本体を囲むように360度死角なく砲台が設置されている。地べたを這うこちらとしては上空を見上げて各種武器兵器でそれらの砲台を攻撃しなければならないのだが――

 

 

「っぶね!?」

 

 

 よそ見をするとすぐに敵機やドローンがやってくる。重装甲がセールスポイントな重装機だとしても状況によってはワンパンで大破しかねないような強力な武装を持った連中が、自分1人に襲い掛かってくる現状はなかなかにシビアだ。

 上空に向けていたニュード機関砲のLAC―グローム、その連射力を向上させたタイプであるγ型を今度は水平方向に向けて、速射。こちらに向かってきていたドローンが複数機はじけ飛ぶ。

 それでも脅威が去ったわけではない。ドローン群の後ろから、今度は強化機兵の機体が姿を見せる。その手にあるのは機体の全長よりもさらに巨大な大剣。強襲兵装タイプだ。

 

 

「んなろぉっ!」

 

 

 撃つ、撃つ、撃つ。320発毎分というレートで発射されるニュードのレーザーが次々に敵機に吸い込まれ――それでも止められない。敵機が大剣を振りかぶる。

 緊急回避。前方、敵機のいる方向へと噴射跳躍。跳び箱を跳び越えるように敵機の頭上を跳び越えると同時に、殺意の嵐が巻き起こった。重装機であっても瀕死の重傷を負うであろう大剣の攻撃だが、その重量故に機動性は低下する。攻撃の「起こり」さえ読めれば回避はそう難しい話ではない。――敵機が1機だけならば。

 

 激しい衝撃と同時に視界がブレる。シールドエネルギーの残量が大幅に減り、自分が被弾した事を告げた。見やるとショットガンを構えた敵機の姿が。新手か。

 ホバー脚の敵機は支援兵装タイプだ。集弾性の高いショットガンをCPU特有の反則エイムで叩き込んでくる厄介な相手。対処するなら撃たれてもかすり傷で済む遠距離からタコ殴りにしたいところだ。

 今いる場所と周辺の敵機を確認しながら頭の中で瞬時に計算する。先ほど狩り損ねた強襲兵装タイプをまず倒す。次に距離を開けて支援兵装タイプを相手にして、無事に済んだら一度補給と回復に向かった方が良いか。主武器もプラズマカノンも残弾が心もとない。

 結論が出たら後は行動するだけだ。ショットガン持ちの射線に入らないように動き回りながら、先ほど削った強襲兵装タイプに追加のニュードを浴びせる。

撃ちながらも視線を目の前の相手だけに固めはしない。1機の相手に集中するということは、それ以外の敵機全てを意識の外に追いやる行為だから。特にこうした乱戦の場では、それはかなりの悪手だった。撃破にこだわって横っ腹を突かれる。あるいは背中をブチ抜かれると言った経験はやられる側もやった側もそれなりの数経験があるが、矯正は中々に難しい。

 

 と、余計な事を考えてしまうのも私の悪癖だ。

 

 アラートが鳴った時には手遅れだった。というか辺り一面敵だらけでロックオンアラートが鳴り止む暇も無かった。爆発と同時に大きく吹き飛ばされ、転倒する。先ほどショットガンを喰らった時とは比較にならない程の衝撃。それに比例するようにシールドエネルギーの残量も残り数ミリとなっていた。むしろよくも今の一撃で撃破されなかったものだ。

 下手人は探すまでもない。これまた大きなロケットランチャーを抱えた機体がこちらに向かってくるのが見える。重火力兵装タイプの強化機兵だ。

 

 

(これは……詰みか)

 

 

 体力は残りミリ。周囲には敵が複数で爆発物も使ってくる。運が良ければ1機くらいは道連れにできるだろうが、何もできずに蜂の巣になる可能性の方が高いだろう。

 

 ――それがどうした。

 

 操縦桿を握りしめる。こちとらマジで死ぬかもしれない実戦だって経験したんだ。撃破されても死ぬことのない夢の中で芋引いてなんかいられるか。

 

 残弾確認。プラズマカノンはあと2発。主武器のグロームγはまだまだ撃てるけど、撃ち切るより先に撃破されるだろう。

 

 特別兵器は?

 

 

(ユニオンバトルということで用意したのはNeLIS(ネリス)。ゴン太なニュードのレーザーを一定時間照射するコイツを上手く使えれば、数体程度の強化機兵ならまとめてぶっ飛ばせるかもしれない)

 

 

 だがそれにも欠点はある。NeLISの展開中は反動制御のため機体を動かす事ができないのだ。もしかしたらIS世界では動き回りながらNeLISをぶっ放せるのかもしれないけれど、少なくともぶっつけ本番で試してみる気にはなれなかった。

 

 素早く周囲を確認。特に気を付けるべき上空からの攻撃をしかけてくるドローンは視界内に3機。すぐさまグロームの射撃で破壊する。

 地形を把握。幸いにも建物に挟まれた1本道のような環境だ。ドローンを落とした事で上から撃ち下される心配はない。

 自機のコンディションを確認。シールドエネルギーの残量は見るも無残だけど、特別兵器を撃つのに必要なSPゲージは満タンだ。

 

 

(よし、やれる)

 

 

 特別兵装、NeLIS―2を展開する。腰を落とし、耐衝撃姿勢を取った機体の背中から伸びた2本のロボットアーム。その先端に付いている円形の発射器が回転し――光の奔流が迸った。

 

 直撃すれば装甲の硬さなど意味を成さないニュードの流れに飲み込まれた強化機兵たちはというと、まずこれまでの戦闘でダメージを与えていた強襲タイプが爆発四散。次に装甲がやや薄い支援タイプが斃れ、SPゲージの残量ギリギリで重火力タイプも沈黙した。

 

 何とか強化機兵たちを倒しきったと同時にニュードのビームも止まる。SPゲージを使い切ったのだ。危なかった。特に重火力タイプなんて、もし倒しきれなければ強化されたロケットランチャーでこっちが吹き飛ばされていただろう。

 

 と、山場を越えたと油断したのが良くなかったのだろう。

 

 

 ――ミサイルアラート!

 

 

「え」

 

 

 巨大兵器ツィタデル。その上部に設置されている4連装ミサイルランチャーから放たれた対地ミサイルの斉射を躱しきる事は叶わず、結局私も撃破されてしまったのだった。




わたくしアケボダの民なんですわ! もう当時の感覚なんてすっかり忘れてしまいましてよ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。