せめてISに乗らせてくれませんかねぇ!? 作:とある物書きMr.R
「本来なら世間話でも挟みたいところだけれど、セシリアさんとしては今急いでいる感じかな?」
『えぇ、取り急ぎ確認したい事がありまして』
それぞれの部屋に戻ってISのプライベートチャンネルを繋ぐ。携帯での会話は傍受のおそれをセシリアさんから指摘されたからだ。エシュ□ン君さぁ……
「プライベートチャンネルで話す事となると、私の機体の事でしょうね」
『はい。
単刀直入に申し上げますわ。レオさん、アレはISではありませんよね?』
春休み期間での織斑先生との話の中で、シュライクがISではないと見抜かれる可能性についても話し合っていた。そもそも機体の形状から機能まで何から何まで違うのだ、セシリアさんのような代表候補生とまで言わなくても、ちょっとISに詳しい人が見れば一目でおかしいと思うだろう。
『そもそもISは宇宙開発を行うための存在ですわ。それなのにレオさんの機体は陸戦特化……というよりも陸戦しかできない。
そしてレオさんの存在が確認された後の日本政府の発表、確か全身を覆うタイプの装甲とありましたね。公式には何らかのバグと言われていましたが、そもそもISではない未知の機体なのだとしたら、色々と辻褄が合いますもの』
「参りましたね、そこまで考えているとは
ですがそこまで推察しておきながら、私にそれを伝えてセシリアさんとしては何が望みなんです?」
『今は何も。本国からもレオさんとあなたの機体を観察し何かあれば報告するようにくらいしか言われていませんわ。仮に何かあったとしても不確実な情報を報告する訳にはまいりませんもの、多少の時間差が生じることもありますけれど』
「……それは仕方ありませんね」
いたずらっ子のように笑いながらウインクを決めるセシリアさんは、「これで借りは返しましたわ」と言っているようにも見えたのだった。
『ところでPDWでも立ち回りについて少々お聞きしたいことが』
「いや今の流れから戦術の話になるの!?」
『?』
……もしかしてセシリアさんは天然も入っているのかもしれない。
支援機の私と狙撃が主体のセシリアさん、共に『敵機に近づかれないように立ち回る』事を重視するが、避けなければいけない事と対策を練らないのは別問題。その後の戦術談義は、ISとブラストという差こそあれど中々に有意義なものになった。
「私としては射撃、特に中距離以上の精密射撃を何とかしたいんですよねぇ……」
『狙撃となると射手のセンスも問われます。わたくしが今この場で何かしらのアドバイスをしてもそれがレオさんに当てはまるとは限りませんわ』
「ですよねぇ。先ほど織斑先生からもダメ出しされてしまいましたよ」
『コホン。もしレオさんさえよければですが、今後わたくしと射撃訓練を行いませんか?』
「……その申し出は嬉しいですが私の機体では」
『えぇ、分かっていますわ。なので校内の射撃場を使いましょう。レオさんは生身での射撃のご経験はありまして?』
「無いですね、適性が判明するまでは本当にただの一般人だったので」
『わたくしの経験則になってしまいますが、やはり経験の有無は重要ですわ。もちろんISを纏っての射撃だとシステムの補正なども受けられますが、一種の勘のようなものを養うことができます』
「なるほど……でしたらぜひお願いします」
『はい、お任せくださいな』
こうして私は、現役バリバリの代表候補生かつとびきりの美少女から銃の取り扱いを教わるという、1か月前の自分に行っても鼻で笑われるような約束を交わすことになったのであった。
※※※※※
翌朝、SHRにて。
「さて、昨日のクラス代表決定戦の結果を発表する」
「「「おぉぉーー!!」」」
白状してしまうと、私はそもそも昨日の模擬戦が公的にはクラス代表決定戦であることをすっかり忘れていたのだが、案外クラスのみんなはしっかり覚えていたらしい。
「セシリア・オルコット 2勝0敗
織斑一夏 1勝1敗
レオ・シキシマ 0勝2敗
以上の結果等々を考慮した結果、クラス代表は織斑一夏に決定した」
「「「おぉぉーー!!」」」
歓声、そして拍手。なお当の織斑は困惑の表情である。
「え? あの、何で俺が代表に?」
織斑の言葉も当然だろう、戦績を見るならセシリアさんが代表に選ばれてしかるべきなのだから。
「わたくしは辞退しましたの」
「えっ!?」
しかしセシリアさんは模擬戦までの自分の態度を理由にクラス代表を辞退した。その上で今朝までにクラスのみんなに謝って回ったと聞いている。
ちなみに昨日の戦闘の中身は、私VSセシリアさんは私が自爆したことによりセシリアさんの勝ち、爆発オチなんてサイテー。
織斑VSセシリアさんは織斑に急遽支給された日本の第3世代機『白式』とイギリスの第3世代機『ブルー・ティアーズ』という胸熱なバトルになったが、相手への油断を捨てたセシリアさんが近接戦仕様の織斑機の接近を許さず、それでも土壇場で機体の力を引き出した織斑がワン・オフ・アビリティである『零落白夜』を発動するも機体のシールドエネルギーと引き換えに発動することを知らなかったため間合いに入る前に自滅。ただ私の試合よりかはISでのバトルらしくなっていたと思うの。
私VS織斑は私が保健室送りになっていたため織斑の不戦勝だった。
ヤダ、私ってば戦闘弱すぎ……? ブランクありとはいえ元SS3ランカーぞ? 初期武器初期機体だったからっていうのは言い訳だから言わない。勝敗を機体のせいにするのは3流のやる事だからね、仕方ないね。
わりぃ、やっぱ(初期武器初期機体は)つれぇわ……
「いや、俺よりもセシリアやレオの方が向いてるって思うんだが……」
「入学当初からこの国の皆さまを見下していたわたくしではいけませんわ」
「戦闘向きでない私も却下でしょう」
「クラスの総意だ。やれ」
「……分かったよ」
うーん、この圧倒的多数決。悪いが織斑君、君に拒否権は与えられていないのだよ。
かくしてクラス代表は織斑に決まったのだった。
※※※※※
SHRが終われば当然授業が始まる。
今日は1限からISの実機授業がありテンションが上がる。こうして見ると結局オタクという生き物は死んでもロボットには弱いらしい。
しかし待ってほしい。ISに乗るためには原則としてISスーツの着用が求められている。そしてIS学園はこの3月まで女子高だった。
つまり。女の園に放りこまれた私と織斑はIS訓練の前には結構な距離のある――私たちのために急遽用意された――ロッカールームまで可能な限り速やかに移動して着替えた後にアリーナなりグラウンドなりに向かわねばならない。ちなみに遅刻は脳細胞の死(織斑先生の教育的指導)が待っているうえに何かしらの懲罰もついてくる。この辺りはやはりIS=軍事的な物という意識を持てということなのだろうか。軍隊で時間厳守は当然だからなぁ。
なんてことを考えながらロッカーへの道のりを行く私たちなのだが、
「あ! あれって織斑君にシキシマ君じゃない!?」
「ホントだ! ねぇ、今ちょっといいかな!?」
「「良くないです急いでるんですぅ!!」」
ちなみにこのやりとりを、だいたい2教室に1回の割合でやっている。
なるほど きみたちは わしにしね というんじゃな?
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