明らかに周りの奴らの生きる世界が違う件   作:ポルポル

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魔巫法女妖少狐女7

 

 どうしたもんかなぁ。

 瑠璃ちゃんの頭を撫でながら、オレはため息を内心に押し隠し、周囲を見渡した。

 全裸のおっさんおばさん女の子お姉さんととんでもないことになっている。

 通行人に警察を呼ばれたら全員しょっぴかれるだろう。

 

 頼む。

 雅さんが一番最初に目覚めてくれ。雅さんならなんとかしてくれる。

 

 いや、よくないな。根拠のない期待を他人に押し付けるのは。

 

 かといって、どうしよう。

 オレの服を分配するとして……いや、オレが全裸になってしまう。それは嫌だ。靴下を渡しても意味は無いし、どのみち公然わいせつという罪から全員を助けることは出来ない。

 

「瑠璃ちゃん。瑠璃ちゃんって魔法で服とか作れるの?」

 

「……?」

 

 瑠璃ちゃんが泣きはらした顔でオレを見上げた。

 困惑が滲み出ている顔。その頬を優しく撫でて、オレはこう言った。

 

「ああ、ごめんね。うっかりしてた。もう終わったよ」

 

 いかんな。目先のことに囚われて、瑠璃ちゃんへの配慮を忘れてしまうなんて。

 

「え……?」

 

 瑠璃ちゃんの充血した瞳は困惑に揺れている。

 恐る恐るといった様子でオレを見つめるのやめて、女……霊長の魔獣人がいた虚空へと視線を向けた。

 

「は……? え……?」

 

「なんかね、爆発した」

 

「は……」

 

 瑠璃ちゃんが吐息を零した。

 虚空とオレの顔をゆっくりと何度も見比べて、瑠璃ちゃんは「は、はは……」と小さく笑った。

 

「オレたちに銃を撃ったからかな? 前にも銃を撃たれたことはあったんだ。そのときは銃だけだったけどね。爆発したの」

 

「じゃ、じゃあ……あいつは……?」

 

「爆発したよ」

 

「は、はは……。そんな……うそ……」

 

「嘘じゃないよ」

 

「そんな、あっけなく……?」

 

「良かったよね。面倒事が呆気なく片付いて」

 

「……」

 

 瑠璃ちゃんは目を見開いて絶句している。

 なんか失礼なこと考えてそう。

 

「オレ達、まだ生きられるね」

 

 オレが笑うと、瑠璃ちゃんは何故か固まった。

 え、なんで? 

 それはよく分からんな……。

 

「ほ、本当だったんだ……」

 

「なにが?」

 

「歩く……地雷……」

 

「やめてね、それ」

 

 スーパーでもそんなこと言ってたけど、失礼だぞ。

 その言い方だとオレがまるでノンデリの化け物みたいになるだろ。

 

「傷はどう? たぶんだけど、良くなってるんじゃない?」

 

「え? あ、うそ……。痛くない……?」

 

 瑠璃ちゃんがオレから少し身を離し、自分の体を弄った。

 血は止まっているようだし、痛々しい傷も無くなっている。

 

「ホントに……倒しちゃったんだ……。霊長の魔獣人を……」

 

 瑠璃ちゃんが納得してくれている。

 魔人を倒したら誰かがそれを吸収して傷が治ってパワーアップするって言うのは魔獣人にも引き継がれているようだ。

 あの光の粒子と吸収のされかたに見覚えがあったからそうじゃないかと思ったけど、当たってたみたいで良かった。じゃないと瑠璃ちゃん、死んでたものね……。本当に良かった。

 だけど小さい体に叩きつけられた痛みの記憶は消えないだろう。心に傷が出来てしまったかもしれない。オレは撃たれたことが無い……いやあるけど、銃弾に当たったことが無いから痛みのほどは分からない。けど、相当痛いはずだ。針で指を刺しちゃっただけでもめちゃくちゃ痛いもの。

 

「あ……っ」

 

 瑠璃ちゃんが何かに気づいたようで、小さく声を零した。

 オレは瑠璃ちゃんの視線をなぞり、その先にいる茶々ちゃん(全裸)を見た。

 

「ちゃ、茶々……」

 

 瑠璃ちゃんがオレからよろよろと立ち上がり、茶々ちゃんの方へと向かう。

 その途中で瑠璃ちゃんはまた気づいたようだ。

 

「パパ……? ママ……?」

 

 瑠璃ちゃんがよろよろと倒れている両親(全裸)の方へと向かう。

 だけどやっぱり茶々ちゃんの方に向かおうとよろよろと向きを変えて、でもやっぱり両親の方へ行きたくてその場で右往左往し始めた。

 元気になっているはずだが、瑠璃ちゃんの膝が笑っている。

 

「え……あ……」

 

 やがて瑠璃ちゃんはどちらにも駆け寄ることは出来ず、震える足が膝を折り、その場で座り込んでしまった。そして両手のひらを地面に着けて、その場でぽろぽろと泣きだした。

 

 瑠璃ちゃんは「えへっ……えへっ……えへへ……っ」と壊れてしまったかのように泣き笑いをし、やがて「えーん、えーん」と天を仰いで本格的に泣き出してしまった。

 

 オレは瑠璃ちゃんの姿を見守りながら、思った。

 

 ―――しかしどうしようかなぁ、この全裸の大群。

 

「ねえ、瑠璃ちゃん。この人たちをこのままには出来ないから……運んだりできる?」

 

 瑠璃ちゃんは首を横に振りながら、「うぇええ……」と泣きじゃくっている。

 

 ごめんね。

 

 オレも本当は感傷に浸らせてあげたいんだよ。

 

 申し訳なく思っていると、瑠璃ちゃんが顔を両袖でごしごしと拭い始めた。だけど拭っても拭っても涙は止まらないようだ。それが情けないのか、瑠璃ちゃんの嗚咽は止まらないどころか酷くなっている。

 

 そんな思い詰めんでも……。

 

 そう思っていると、瑠璃ちゃんは泣き止むことを諦めたのか、泣きながら立ち上がった。そして魔法剣を振り回し始めた。

 だが特に変化はない。

 

「なにしてるの?」

 

 オレの問いかけに、瑠璃ちゃんは泣きじゃくってしまっているから答えられない。

 

 マジでごめん。オレだって君をそっとしておいてあげたいんだよ。本当に。

 

 瑠璃ちゃんは振り回していた剣を降ろし、また座り込んだ。

 

「もう……大丈夫ってことなのかな?」

 

 瑠璃ちゃんは泣きながら頷いた。

 

「……。ああ、結界?みたいなのを張ってくれたのかな。前に言ってたもんね。スーパーにそういうの張ってたって」

 

 瑠璃ちゃんがこくこくと頷く。やっぱりそうだったらしい。瑠璃ちゃんはまだ泣いている。

 

「じゃあ、とりあえずはこのままで良いのかな……」

 

 オレは周囲を見渡す。

 とりあえず、雅さんのところへ行く。

 

 良い寝顔だ。

 二つのデカプリンが重力に従って潰されているが、サクランボは天を突くドリル。綺麗なものだ。前も思ったけど、ホントに芸術的に美しいんだよな、この人の体。

 

 オレは雅さんのむ……肩をぽんぽんと触る。

 

「雅さん、起きてー」

 

 すぐには起きない。

 数回名前を呼び、なお起きない。名前を呼びながら体を揺すること数十回、ようやく目を覚ました。

 

「雅さん、おはよう」

 

「んぁ?」

 

 寝ぼけた声は気の抜けた可愛らしいものだった。

 まあ、次の瞬間にはオレのことを認識し終えたらしく、すぐさま起き上がり、オレに土下座してみせた。 

 

「も、申し訳ありませぬ東堂様! わたくしは東堂様のお言葉を違えるつもりなど毛頭なく……っ!」

 

「ああ、いいよ。気にしないで。瑠璃ちゃんから話は聞いてるから。ちゃんと逃げようとしてくれたんだってね。ごめんね……これはオレの判断ミスだ」

 

「東堂様……」

 

「やっぱり、よく分かってないオレが変に口出しするものじゃないね。二度目だし、さすがに反省したよ」

 

「そのようなことはございませぬ!」

 

 雅さんはがばっと起き上がり、オレの手を両手で掴んだ。雅さんの両腕に押し寄せられる母性の谷間が柔らかそうで困っちゃうね。

 

「東堂様! わたくしは感激いたしました! あの化け物を討ち滅ぼされるとは、まさに天下一の益荒男なればこそ!」 

 

「ああ、見てたの?」

 

「もちろんでございます! 東堂様の、まさに天下無双のお姿! しかとこの眼に焼き付いておりますれば!」

 

「あれ? 雅さんだけ違うの見てた?」

 

「わたくしは東堂様を主君と仰がせていただける、この幸せを噛みしめておりまする! 情けなくも無様をさらした下女であるわたくしを命懸けでお助けくださるとは……! この雅、恐悦至極の極み……っ!」

 

 雅さんはぶんぶんと6本の尻尾を揺らしている。

 助かったことがよっぽど嬉しいらしい。

 

「そう? 良かった。ところで……起きてすぐで申し訳ないんだけど、この人達なんとかできないかな?」

 

「と、申されますと?」

 

 雅さんはそう言いながら周囲を見渡した。

 

「全裸じゃん?」

 

「左様でございますね」

 

「現代社会では外で全裸ってマズいんだよね」

 

「ほほほ。東堂様、御戯れを。徳川の世でも同様でございますとも」

 

 ほほほ。

 

 ……。

 

 そう言う問題じゃねぇんだよ。分かってんだろ。

 

「服、着せてあげられないかな?」

 

「東堂様……。申し訳ありませぬが、わたくしも、無いものはどうしようも……」

 

「そうだよねぇ……」

 

「力及ばず……」

 

 服を作ったり出来るなら神社でも涼音の服を貸して貰う必要なかったもんね。

 しょげかえる雅さんを慰め、とりあえず尻尾で体を隠して貰うことにした。それはそれでちょっと……うん。にっちだね。

 

 でも、そうだなぁ。

 本格的に打つ手なしだな。

 どうしよう。

 

「雅さん、今ね。瑠璃ちゃんが結界を張ってくれていて、たぶん、一般人はオレ達のこと認識できないと思うんだ」

 

「確かに。そのような円がございますね。不思議な感覚でございます。狭間にあったそれと似ているような……」

 

 ああ、分かるんだ。

 

「で、これも多分なんだけど、瑠璃ちゃんのご両親たちが目覚めるのってそこそこ遅いんじゃないかと思うんだよね」

 

 涼音と神主さんが目覚めるのが早かったから忘れてたけど、スーパーの社員さんが起きたのってかなり時間が経ってからだったみたいだし。

 

「それで、本当に申し訳ないんだけど……。みんなのこと、運んで貰えたりしないかな……?」

 

「東堂様のご命令と在らば。いかようにも、わたくしをお使いくださいませ」

 

「ありがとう。借りとくね」

 

「借りなどありませぬ。わたくしは東堂様のお役に立てることこそが幸福でございますゆえ」

 

 尾で胸と股を隠した、全裸の芸術的なボディラインを持つ、アンニュイな雰囲気の顔つきを可愛らしく緩めた美女が、母性を腕で寄せて上げながらオレを見つめている。

 

 オレって奴は……。

 

「ありがとう。じゃあ、瑠璃ちゃんに言ってくるよ。大丈夫だとは思うけど、みんなのこと見ててもらってもいい? 反応があったら教えてね」

 

「承知いたしました」

 

 雅さんがはんなりとお辞儀をする。

 そのとき、母性が重力に従って伸びる。寄せて上げられていた谷間が眼前に広がる。

 

 分かってやってそう。

 それを責めることは出来ない。意識するオレが悪いんだ……。

 

 オレって奴は……。

 

 瑠璃ちゃんの近くに寄り、雅さんに眠っている人たちを運ぶ旨を伝える。その間、結界は維持しておいて欲しいことも。

 瑠璃ちゃんはまだ泣いていたが、少し嗚咽が収まっていた。頷いてくれたので、すぐに作業を始める。

 

 まずは……瑠璃ちゃんの心境を鑑みて、瑠璃ちゃんの両親から。家も知っているしね。

 

 雅さんは両腕で瑠璃ちゃんの両親を抱え、背中にオレを乗せてふわふわと空に浮く。往復で40分くらいかけて、二人を元に戻った瑠璃川家の……寝室のベッドの上に置いた。

 全裸だけど、夫婦だしいいでしょ。

 

 オレと雅さんが現場に戻ったころ、茶々ちゃんは目を覚ましていて……また酷く泣きじゃくっている瑠璃ちゃんに抱き着かれていた。

 そんな二人を、これまた目を覚ましていた涼音が温かい目で見守っていた。

 

 少し離れて、葵ちゃんの姿が見えた。

 葵ちゃんはオレに気づくと近寄って来た。

 

「こんばんは。久しぶりだね」

 

「……」

 

 葵ちゃんはじっとオレを見つめている。

 

「君、瑠璃ちゃんたちと同い年……くらいだったんだね。少し上なのかな?」

 

「……」

 

 葵ちゃんはじっと見つめて来る。ちなみに、葵ちゃんは魔法少女のドレス姿に変身しているから全裸ではない。茶々ちゃんもそう。便利だね。

 

 さらにいうと、涼音は全裸。オレに気づくとしゃがみ込んで小さくなってしまった。

 まあ、オレが戻ってすぐのとき、涼音は両手で母性と股を隠して立っていて……それがオレ的には逆にインパクトあったんで、しっかり隠してくれている方がありがたい。

 

「……」

 

 葵ちゃんはじっとオレを見つめている。

 何考えてるか分からないが、とりあえずオレはしゃがんで葵ちゃんと目線を合わせて微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

「……。……?」

 

 葵ちゃんが小首を傾げた。

 

「瑠璃ちゃんを守ってくれたって聞いてるよ。瑠璃ちゃんはオレの友達だから……。ありがとう」

 

 葵ちゃんは目を丸くして……少しだけ、ほんのりと頬を染めた。

 照れてる。可愛い。

 

「それと、ごめんね。きっと君にも何か事情あっただろうに、スーパーではきつく言ってしまって」

 

「……」

 

 葵ちゃんは瞬きを数回して、少し目線を下げた。そして少し上目遣いにオレを見つめる。なんだろう。小動物みたいで可愛いな。

 

 そう思っていると、オレの横からずい、と誰かが身を乗り出すようにして前に出た。雅さんだ。

 

「小娘。おのれ、だまっとらんで東堂様に感謝の言葉を……」

 

「……」

 

「う……っ」

 

 葵ちゃんはオレから視線を外し、雅さんをじっと見つめた。葵ちゃんに見つめられた雅さんは何故かたじろぐと、そのまますごすごと下がって行った。

 

 ……。

 

 ああ、葵ちゃんってやっぱり雅さんより強いんだね。

 

「……」

 

 雅さんから視線を外した葵ちゃんは、またじっとオレを見つめ始めた。なにかを訴えかけてきているのは分かるんだけど……。

 

「どうしたのかな?」

 

「……」

 

 葵ちゃんに微笑みかけてみた。

 葵ちゃんは……分かりづらいけど、切なげに表情を歪めたように思う。目線を下げて小さく握りこぶしを作った。

 

「……。ありがとう……」

 

 葵ちゃんがか細い声だが、そう言った。確かに言った。

 

 なんだ。お礼がしたかったのか。なんだかんだ、ちゃんと言える子なんだなぁ。

 

「どういたしまして」

 

 葵ちゃんにお礼を言われて嬉しかったので微笑みかけると、葵ちゃんはまた少し目線を下げて、上目遣いにオレを見つめた。かわいいかよ。

 

 かと思えば、ちらちらとどこかへ視線を送っている。

 気になってその視線の先を見てみると、あの女から解放されたと思われる、知らない人たちが倒れている。

 

「もしかして、知ってる人なの?」

 

「……」

 

 葵ちゃんはこくりと頷いた。

 

 えぇ……?

 

 オレは困惑した。

 なぜなら、葵ちゃんが急にぽろぽろと泣きだしたからだ。

 じーっとオレを上目に見つめたまま微動だにせず、涙だけがぽろぽろと零れ落ちている。

 

「どうしたの? そんな泣いて……」

 

 葵ちゃんの頬に優しく触れる。

 

「哀しいの?」

 

「……」

 

 葵ちゃんは小さく首を横に振る。

 その間も、ぽろぽろと涙は零れ落ちている。

 

「ん……」

 

 どうしたものかと困っていると、誰かが近づいてきた。

 瑠璃ちゃんだ。

 

 瑠璃ちゃんはさっきよりはマシとは言え、半べその状態だった。その状態でオレと葵ちゃんを見比べ、そして倒れている人達の方へと視線を向けると、こう言った。

 

「も、もしかして……あの人達、あなたのパパとママなの……?」

 

 ぶわっ。

 

 まさにそんな感じ。

 瑠璃ちゃんのその一言を皮切りに、葵ちゃんの涙腺が崩壊した。鼻水まで流れている。なのに葵ちゃんは微動だにせずオレを見つめている。

 

 オレは思った。

 

 ―――壊れちゃった……。

 

 そんな葵ちゃんを見て状況を察したらしい瑠璃ちゃんがまた号泣モードに入ってしまい、そしてそんな二人をきょろきょろと困ったように見比べていた茶々ちゃんもまた、つられて泣き出してしまった。

 

 オレは思った。

 

 ―――ごめん。さすがに喧しい。

 

 三人の少女たちは互いに抱きしめ合いながら涙を流している。実際には微動だにせずオレを見つめながら号泣している葵ちゃんを、瑠璃ちゃんと茶々ちゃんが抱きしめているって構図なんだけど。

 

 でも、そっか。

 もしかして葵ちゃん、瑠璃ちゃんと同じだったのかな。だから瑠璃ちゃんにはすぐに分かったのかも。

 だとしたら……いつからなんだ?

 確か瑠璃ちゃんの話だと、一年くらい前に葵ちゃんに助けて貰って……そのころから今の葵ちゃんと性格は変わって無かったようだし。

 さすがに表情筋が死に過ぎている気がする。もともとそういう子って可能性はある。だけど、ここまで感情の発露が歪なのはずっとそうならざるを得ない環境に身を置いていたからじゃないか?

 

 少なくとも一年、多分だけどそれ以上の長い期間をこの子は……家族を助けるために、戦い続けてたのかな。

 両親から離れて突っ立っていたのは……どうすればいいか分からなかったのかな。駆け寄って抱きしめればいいんじゃないかとは思うけど、もうそれが出来ないくらいに長い時間を葵ちゃんは一人でいて、そしてそれが当たり前になってしまっていた、とか。

 

 だとしたら辛いね。

 いっそ彩乃さんのように別れが確定してるなら復讐に割り切れもするだろうけど、魔獣は助けられる可能性が残っちゃってるもんね……。実際に今になって助けられたわけだけど……。

 

 でも、どうして葵ちゃんは瑠璃ちゃんや茶々ちゃんに素直に助けを求めなかったんだろう。いや、助けを求めなかったんじゃなくて、求めたくても求められなかったのか……。

 

 迷惑をかけるからかな?

 いや、なら瑠璃ちゃんたちを突き放す理由はない。だって自分から関わろうとしている子たちなんだから。

 

 だとしたら……過去に誰かに助けを求めて、結果、その人を失ったとか?

 それで……妙に素っ気なかったのかな。人と関わることが怖くなっちゃって……。魔獣から手を引くように何度も言ってたのも、そういうことなのかな。

 

 だとしたら……すごく不器用だなぁ。

 

「……」

 

 抱き合う三人の少女を見る。今はそっとしておこう。

 オレは三人から静かに離れ、蹲っている涼音の傍へと近寄った。そして上着を脱ぎ、もじもじと身じろぎしている涼音へと差し出した。

 

「ズボンは許してね」

 

「ご、ごめんね。ありがとう……」

 

 オレの上着を羽織り、前を閉めた。だが下はどうしようもない。涼音は立ち上がることは出来なかった。

 

「あれ? 涼音も変身したら良くない?」

 

 そういえば涼音は魔法少女に変身できるようになっていたはずだ。なら茶々ちゃんたちのように肌を隠せるはず……。

 

「あっ……」

 

 涼音は恥ずかしそうに頬を染め、オレに上着を返すとしゃがみ込んだまま変身した。巫女服をベースにしたようなドレスだ。服を着た涼音は立ち上がり、「えへへ」と恥ずかしそうに頭を掻いている。

 

「東堂様、東堂様」

 

「どうしたの、雅さん」

 

 そそくさと寄って来た雅さんがオレに耳打ちをしてきた。

 

「こやつ、東堂様に肌を見せようとわざと―――」

 

「わー! わー!!」

 

 涼音が大きな声をあげて雅さんに飛び掛かった。

 

「どさくさに紛れて東堂様に色仕掛けをしようなど百年早いわ小娘が!」

 

「黙れ淫乱狐! お前とは違うんだよぉ!!」

 

「嘘だろ涼音……」

 

「嘘だよ!!」

 

 オレの呟きに涼音がすぐさま反応する。

 涼音……。必死過ぎてどっちかわかんねぇよ。

 

 あとはまあ、魔法少女たちが落ち着いたころには神主さんも目を覚まし、残った人たちを手分けしてそれぞれの家へと送り……。

 

「運転手さん、どうしようか……」

 

 全裸で眠っているおっさんだけが残った。

 

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