明らかに周りの奴らの生きる世界が違う件   作:ポルポル

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SH分岐点②

 ゆっくりと起き上がった。

 体に傷はない。服も汚れていない。防御力なんて欠片も無い、肌を隠し、動きやすいだけの入院服。

 

 でも覚えてる。

 あの牙、あの衝撃、あの暗転。あの、痛み。

 

 今何も残ってないのが、逆に怖い。

 

「また、ここから……」

 

 やり直せる場所。始まりの場所。

 前に進むしかない、真っ暗な袋小路。真っ暗な道。サビだらけ、ちかちかと点滅する懐中電灯を一つ、手探りで見つける。これを拾うのも、もう何度目か分からない。

 

 この先に、巨大なネズミのモンスターがいる。

 脇道に一体。

 そいつは石を投げて誘導すれば壁に激突して自爆させられる。でも同時に、正面からも一体突っ込んで来る。そいつが……。

 

 ネズミは誘導できる。

 石で軌道は変えられる。自爆もさせられる。

 何度もループして覚えたこと。

 

 でも。

 あの正面から来る個体には対応できない。自爆させた化け物ネズミがいた脇道に入るしかないけど……越えられない。

 これはもう私の反射神経の問題。どうしても避けられない。

 

 私は背中を壁に預けて、ずるずると座り込んだ。

 

「何回やればいいの……」

 

 誰も答えてなんてくれない。

 こんなこと分かってて、私はあのぬいぐるみを握りしめたはずだった。

 

 小さく息を吐く。

 怖い。

 懐中電灯の明かりを消す。勿体ないと思った。

 

 怖い。

 

 でもそれ以上に……疲れちゃった。

 あのとき。

 石碑の前で座り込んだときの感覚がもう戻って来た。

 

「あと何回、やればいいの……」

 

 誰も答えない。

 この場所は優しい。失敗しても誰も怒らない。誰も責めない、叱らない。立ち止まることを許してくれる。

 

 だから腐る。

 絶望に沈む。

 

 膝を抱え、顔を埋める。

 

 ここに来た直ぐは……なんだかんだ、出来ると思ってた。

 己惚れてた。一度乗り越えたんだし……って、どこか慢心してた。恐怖の奥底の深いところで、舐めてた。現実を、絶望を。

 

 二人をかっこよく助け出して、私が東堂さんに向けた感情を、二人から貰えるんじゃないかって。お母さんや叔父さんたちから感謝されるんじゃないかって。

 彼のようなヒーローになれるって、心のどこかでそう思ってた。

 

「もうやだ……」

 

 ぺちゃ……。

 

「えっ」

 

 音の方を見る。

 暗闇で何も見えない。

 

 ライトをつける。

 あのネズミの化け物が―――。

 

「ひっ―――」

 

 暗転。

 

「はあ! はあ! はあ!!」

 

 暗闇。

 何も見えない。

 手が震えて居る。

 

「嘘だ……」

 

 来るの?

 ここに来るの?

 

 だって、前は……。最初の場所まで来たことなんて……。

 

「あ、あ、あ」

 

 動悸が。

 呼吸が……。息が……。

 

 ぺちゃ……。

 

「あ……っ」

 

 手探りで、急いでライトを探す。

 暗闇を照らす。

 

 目の前。化け物の瞳が光ってる。

 

「あ、あ、あ」

 

 ライトを振り回す。

 思わずライトをネズミの化け物に投げつけた。当たらない。

 ライトがネズミを横から照らし出す。

 ぽたぽたと体中から垂れる体液。よだれが気持ち悪い。

 

 腰が抜ける。

 何かないかと手探り。石ころ。

 投げる。当たらない。

 

 他に。他に何か。

 

 暗転。

 

「はあ、はあ、はあ!!」

 

 痛かった。

 覚えてる。

 

 でも痛くない。

 足も、手も、ちゃんとある。喉も、繋がってる。

 お腹に穴も開いてない。

 

「ふ、ぅ、ぅぅぅぅううううう」

 

 ぽたぽたと涙が流れた。

 声を抑えているのは怖いから。音を出すと、あれが早くに辿り着く。そんな気がした。

 

 ぺちゃ……。

 

「ああああああああ!!」

 

 暗転。

 

「……」

 

 もう涙も出なかった。

 

 情けなく座り込む。

 

 ぺちゃ……。

 

 しばらくして、来た。

 生臭い息。腐臭。毛が触れる。鳥肌が立つ。

 

 ネズミの化け物は目の前で私の臭いを嗅いでいるだけで、何もしてこない。

 

 ど、ど、ど。

 心臓の音がうるさい。

 

 でも、私は何もされない。何もしてこない。

 

 あれ……?

 

 もしかして―――。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 暗転。

 

「うわああああああああああああ!! なんなのよおおおおおおおおおお!!」

 

 這いつくばって、拳で地面を叩く。

 痛い。痛いけど、その痛みが良かった。

 

「あああああああああああ!!」

 

 期待させやがって!

 何もないって思わせやがった!!

 

 あのクソネズミ!!

 遊んでた!

 私で遊んでた……ッ!!

 

 ぺちゃ……。

 

 暗転。

 

「……」

 

 もう行くしかない。

 分かってたけど。でも、ここはもう、安全じゃない。私に安全な場所なんて、ないんだ。

 あの人の横以外には。

 

「あははは……」

 

 壊れちゃった。

 自分で、そう思った。

 

「大丈夫……」

 

 だって、彼が見つけてくれるから。

 約束したもの。きっと探しに来てくれるって。言ったもの。

 

 ふふ。ふふふふ。

 

 ―――めんどくさ。

 

 きっと、彼はそんなこと言わないよね。

 優しい、素敵な男の人。優しい優しい、私の白馬の王子様。

 

 ライトを拾う。

 掌を写す。点滅する光の中で震えている。

 

 一歩、前に出た。

 

 めんどくさいめんどくさいめんどくさい。

 

 何度目かの繰り返し。

 横から飛び出してくるやつと、正面の個体を激突させることに成功した。

 潰れ合った二匹を何度も踏みつけた。何度も何度も何度も。何度も何度も何度も何度も何度も。唾も吐いた。

 

 しばらく進む。怖いけど、真っすぐ進んだ。どうせ死んでもあの場所に戻るだけ。怯えていても、竦んでいても、結果は変わらない。ならさっさと行こう。めんどうくさい。怖いのもめんどうくさい。

 角を曲がる。小さな影が一つ。

 

 

「え……律……?」

 

 その声で、胸の奥がぎゅっと縮んだ。

 思ってたより、喜びは少なかった。

 

 なんでだろう。

 助けに来たはずなのに、助けに来たんじゃない……。私は……。

 

 ただ、来ただけだ。それ以外になかっただけ……。

 

「動ける……?」

 

「ど、どうしてここに……」

 

 美空ちゃんは震えて居た。ちかちかと点滅する光の中で、神様や仏さまに出会ったかのように、瞳を震わせていた。

 

「……」

 

 私は返す言葉を持たなかった。

 助けに来た、って、言えなかった。

 

「たすけに……来てくれたの……?」

 

「どうだろう……」

 

「え?」

 

 困惑した様子の美空ちゃんに、私はこう言った。

 

「通りがかっただけ……かも……」

 

 ふいに浮かんだ、あの人の言いそうな言葉。それが想像以上に自分自身、腑に落ちて。私は自然……少しだけ、笑えた気がした。  

 

 そのとき、気づいた。

 

 ああ……。そっか。そうだよね……。

 私、もう知ってるんだ。私なんかじゃ美空ちゃんも、私自身も、救えない―――って。あの人じゃないと救えないって。もう知ってるんだ。

 美空ちゃんは冗談と受け取ったみたいで、少し肩の力を抜いて笑ってた。でも思い出したように慌て出す。愛嬌のある表情がころころと変わって可愛い。

 

「律、ここ、ヤバイよ……っ! 化け物がたくさんいてね、わたし、ずっとひとりで……っ!」

 

「うん。知ってるよ」

 

「え?」

 

「こことは違うけど……私もずっと同じようなところにいたから……」

 

「もしかして……意識が無いときのこと……?」

 

「うん。そう」

 

「あ……」

 

 美空ちゃんは安心した様子で肩の力を抜いた。

 どうしたんだろう。安心できることなんて私、何一つやってないのに。やっぱり、『東堂さんの言葉』って凄い。

 

「律……助けてくれて……ありがとう……」

 

 美空ちゃんはぽろぽろと泣いていた。

 鼻水まで零して、可愛い顔をくしゃくしゃにして。

 

 私は思った。

 

 ―――まだ助けてないよ。

 

 きっと、私はまだ死ぬよ。

 どうせ、私はまた失敗する。

 

「……」

 

 美空ちゃんが泣き止むのを待つ。

 思ったよりも早く、美空ちゃんは泣き止んで、言った。

 

「ここに入る前に、男の子に会ったの」

 

「もしかして、三島って人?」

 

「え? そ、そうだよ! すごいね、律。エスパー?」

 

「ううん。美空ちゃんと三島君がこっちにいるって聞いて……だから来たの、私」

 

「やっぱり、助けに来てくれたんだね! 嬉しい! えへへ。律は昔から優しいものね!」

 

「……」

 

 美空ちゃんは泣きはらした顔で、天真爛漫に笑った。ちかちかと点滅する光の中で、華のような笑顔を見せてくれる。能天気な可愛い人。

 まだ、私が助けられる人だって信じてる。

 

「それで、三島君はどこに?」

 

「えっと、この少し先に、梯子があって……。わたしはそこから降りてきたんだけど……そのときにはぐれちゃった。わたしたちは化け物に追われてて、彼、わたしにここに入るように言って、囮になって走ってくれて……。足が速いからダイジョブだって笑って、一人で……。ねえ、律。あの子、とても良い子なのね。年下だけど、とても素敵な男性だわ」

 

 美空ちゃんはほんのりと頬を染めて、彼のことを思い出している。

 

「そうなの……? じゃあ、ここから出るのは避けた方がいいね……」

 

 ぺちゃ……。

 

 湿った音がした。

 美空ちゃんの肩が跳ねる。

 

「り……」

 

「大丈夫」

 

 今度は即答で来た。

 怖いけど。怖いのはめんどくさい。

 

「ライト消すね。壁に背中を付けて、動かないで」

 

 声が自分でも驚くくらいに落ち着いていた。

 

 こくこくこく、と頷く美空ちゃんを最後に、真っ暗闇になる。かさ、ざり、と美空ちゃんの動く音。

 足音の意思は分かる。あの個体は真っすぐ進むと思う。

 

 三つ数えて、石を投げる。

 反対側の壁に当たる。ぺちゃ、と音がそちらへ逸れていく。

 20数える。

 

 今。

 ライトをつける。

 

「走って」

 

「えっ」

 

「走って」

 

「う、うん!」

 

 美空ちゃんのスピードで進む。少し遅い。リハビリの成果かな、私の方がずっと早いみたい。

 しばらく進み、何度か失敗して(・・・・・・・)やり直し、ネズミの化け物を安全にやり過ごす。

 

「美空ちゃん、3秒待って」

 

「え?」

 

 美空ちゃんが立ち止まる。

 

「静かに。次、12秒」

 

 石を投げる。

 正面個体が突進。横からの個体と衝突。潰れ合い、ぐちゃ、と音。

 美空ちゃんが口を押えて蹲ろうとする。

 

「行くよ」

 

 踏み越える。

 今回は踏みつけなかった。何回か前、美空ちゃんがそれでパニックになったから。めんどくさい。

 

 ―――そして、次の梯子に辿り着いた。

 

「……っ、はぁ……」

 

 梯子に手で持たれながら、美空ちゃんがしゃがみ込む。

 

「すごい……律、すごい。すごいよ……」

 

「別に……」

 

 別に。知ってただけ。何度か死んだだけ。美空ちゃんとの再会も。あのカス共との再会も。

 

「行こ」

 

 梯子を登る。

 

「え?」

 

 美空ちゃんが落ちてきた。

 暗転。

 

「……」

 

 疲れてたみたい。

 次は少し、休んでもらおうと思う。

 

 東堂さんは、まだ来ない。

 

 

☆彡

 

 

 

 梯子を登り切る。古いけど大きな道路に繋がる、細い道に出た。古ぼけた電灯の微かな光と星の光だけが頼りの闇の世界。闇の街が道の先に広がってる。

 

「ここ、分かる?」

 

「うん、分かるわよ。前はずっとこの街にいたから」

 

「この3か月ってこと?」

 

「え? 1週間くらいだけど……」

 

「そうなんだ」

 

「三か月ってどうして?」

 

「ん……」

 

 少し言い辛いけど。

 

「美空ちゃん、現実だと三か月意識不明になってるから……そうかもって思って」

 

「え?! ど、どういうことなの!?」

 

「私にも分からないよ……。でも、私のときもそうだったから。ここにいる私たちって、いわゆる精神とか魂とか、そういうのだけなんだと思う。この世界、時間の流れも違うみたいだし。私はそう思ってる。経験上、だけど」

 

「す、すごいね、律……。すごく……。ど、どうしてそんなに落ち着いてるの?」

 

「どうしてって……」

 

 怖いよ。怖いし怖い。吐き気もする。

 でも怖がるのもめんどうくさいだけ……。

 

「普通……だから……?」

 

「おぉ〜……!」

 

 美空ちゃんの感嘆の吐息。

 能天気な反応に、苦笑する。

 

「律、頼りになる〜!」

 

 美空ちゃんが抱き着いてきた。

 臭い。美空ちゃんがと言うより染みこんでしまった臭いが。

 

 でも、美空ちゃんの体は震えて居た。私はため息を吐いて、抱きしめ返す。

 

 その後、移動を始める。

 大通りに出て、道なりに進む。

 少し先に、大きな影が見えた。トラック位の大きさ。肉の塊みたいな奴だ。あの商店街で見たのと似ている。

 

「止まって」

 

「え?」

 

「少し先に『やつら』が見えた。迂回しよう。気づいたら凄いスピードで来るタイプ。バレたら面倒だから」

 

「う、うん。分かったわ」

 

 美空ちゃんとは手を繋いでいる。先導する形で横道に入り込む。

 進んだ先で、別の『やつら』がいた。病院で見たのと似ている。あれは確か……こっちが気づかないふりをすれば素通りできるけど、ずっと追ってきて、色々な手段で反応させてくるやつだ。声を真似たり、触ってきたり。あれもめんどくさい。

 

「こっちだ」

 

 隣の一軒家から声がした。男の人の声。

 

 と、東ど……。

 

「三島君!?」

 

 美空ちゃんの声。

 思わず睨め着けると、申し訳なさそうに口元を両掌で覆った。所作がいちいち可愛らしい。今はヘドロ臭いけど。

 

 一軒家の扉がゆっくりと開く。

 しー、とハンドシグナルをした三島君が現れる。手招き。

 私は頷き、美空ちゃんの手を引いて三島君のところへ。

 扉の中に入ると、美空ちゃんは私から呆気なく手を離し、三島君に抱き着く勢いで近づいた。三島君の手を両手で包むように持ち上げて、言った。

 

「良かったぁ〜」

 

「」

 

 三島君はドギマギして美空ちゃんの胸元を見て、目を逸らすように私を見た。まあ、大きいし、見える服装だもんね。見せてるんだけどね、美空ちゃん。子供っぽくて天真爛漫な感じだけど、セックスアピールだけは妙に強いし。無自覚みたいだけど。

 

「美空さん、無事でよかった。良かったんだけど……。藤砂(ふじすな)……? どうしてここに……?」

 

「律はね!」

 

 美空ちゃんが言った。私は何も言えなかった。

 

「わたしたちを助けに来てくれたの! 実は、律はわたしの従妹でね。わたしたちがこの世界に閉じ込められてるって聞いて、助けに来てくれたんだよ! すっごく優しい子なの。昔っからそうでね」

 

「え? マジですか?」

 

「そうなの! しかもね、以前、この世界に居て抜けだしたことのある『経験者』なんだって! 三島君、わたしたち、帰れるよ!」

 

「……マジか」

 

 三島君が目を輝かせる。私を希望の象徴のように見ている。

 

「オレ達はどうすれば―――。いや、まずは……ありがとう、藤砂。助けに来てくれて……。正直心細くてさ。怖かったんだ。経験者だって聞いて、すっげえ安心した。凄いなお前。前はどうやってここから抜け出したんだ?」

 

 知らないよそんなの。

 私だって教えて欲しい。

 

 聞かれてから気づいた。

 勢いでこの世界にまた来たけど……帰り方なんて分からない。

 だって私が帰れたのは、あの光の柱を通過できたのは……東堂さんがいたからだもの。本来あの光の柱は、全てを忘れさせられて最初の場所に戻されるだけの絶望の象徴だった。

 

 でもそれを言う勇気が私には無かった。

 ただ、可能性があるということだけを伝えるなら。

 

「この世界の中心に、石碑みたいなのがあって……」

 

「おお! それで?」

 

 三島君が喰いつく。

 美空ちゃんは三島君を嬉しそうに見ている。

 

「石碑には何かの形をした窪みがいくつかあって……対応した『遺物』っていうのかな……アイテムを納めると……」

 

「帰れるのか!」

 

私は(・・)そうだったよ」

 

 嘘は、言ってない。

 

「でも……」

 

「ん? まだあるのか?」

 

 嬉しそうに弾む三島君の声が少し落ち着く。穏やかに寄り添うような声が私に掛けられた。

 

「そのとき、私は一人じゃなかったから……」

 

「一人じゃなかった……?」

 

「そう。男の人が一緒に居てくれて」

 

 あの人を想うと、少し声が弾む。

 

「その人と手を繋いで、光の柱を潜ったの。勇気と希望を持って」

 

「ゆ、勇気と希望……?」

 

 三島君が困惑する。

 でも何度か頷いて、ニカっと笑った。整った顔のカッコイイ笑顔に、美空ちゃんは頬を赤くしていた。

 

「そっか。男女で一緒に……勇気と希望を……。ふんふん……」

 

 何度か頷いている。

 

「ってことは、今度はオレが……藤砂を……」

 

 ぽそっと三島君が呟いた。

 彼なりに何か納得があったようだ。

 でもきっと違うよ。

 彼は守ってくれたんじゃない。なにかを変えてくれたわけでもない。ただ分かれ道の直前まで連れて行ってくれただけ。

 私が勝手に、彼の背中に掌に、勇気と希望を見て……選んだの。

 

「その男の人はどうなったんだ?」

 

「その人も無事に帰ったみたい。それからは会ってないよ」

 

 嘘じゃない。でも、彼のことを教えるつもりはない。彼との記憶は、私だけのもの。

 近く、会うつもりでいたけど。なんで会いたかったんだっけ……?

 ああ、そうだ。私自身を救って貰って、捧げるため、だったはず。

 

 意気込んでる三島君と、私と三島君に委ね切ってる美空ちゃん。

 

 ……まあ、なんとかなるでしょ。

 どうせ東堂さんじゃないと、きっと無理だから……私はただ2人を保護したままで彼を待つ。それ以外にもう出来ることは無いと、私自身が悟っている。

 

 東堂さんは、まだ来ない。

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