蛇の乙女の憧憬   作:八千草

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第二暦 エエカトル

 

 

 

「お前ほど役割を重く捉え、重要視する神物(じんぶつ)はそうはいない」

 

テスカトリポカが身を屈めながら籠を揺らす

少女一人分なら入ってしまう大きな籠を揺らしながら独り言のように話していく

その籠の中にはいるは私シロネン どうも籠の中に入れました

そして私に対する評価感想があったのですね、考えてくれたのですね

褒めていただき恐縮ですでも今日限りで私終わるかもしれません

 

「だからってな俺の前で籠に入りながら喋ろうとするのは度胸がありすぎるんだよ

 落ち着いてその中からでて話をしようぜシロネン怒ったりしないからな」

 

本当ですか!!!怒ったりしませんか!!この前のように

爆発的にトウモロコシが増えればいいなと考えた私が

爆裂するトウモロコシを作った時のように

 

ー「何故トウモロコシを兵器に変えたんだ」ー

 

ー「誰でも簡単に作れるようになれれば良いなと」ー

 

ー「つまりお前は神の食糧に不満があると」ー

 

ー「主神よなぜ中指を内側に丸め親指で抑え私の額に向けているのですか」-

 

ー「お前の記憶を(はじ)くためだシロネン」-

 

はじき出された中指は私の額にあたり目が覚めたのは三日後だった

目が覚めると爆裂するトウモロコシの製法の記憶どころか痛みも忘れていた

思い出そうとするたびひどい頭痛が頭が情報の記憶をしなくなる

 

「シロネンそろそろでないとその籠ごと締め上げるぞ」

 

顔だけ出すのでお許しください

額と心の準備はできています(記憶粉砕ですね了解です)

大きな籠から顔だけを出し彼の方に向ける

 

「思考の準備はいつでもできています」

「そうかそれは懸命だなシロネン」

 

私が大事を起こしたとき彼の方はいつも来られる

そうでないときもあるが彼の方はいつも間がいい(見ている)

そんな筈はないのに納得してしまう力がある

でもまぁ私を監視する理由なんてないから杞憂な筈

テスカトリポカは顎をさすって軽く口を開く

 

「大体お前が籠の中から俺と話すのは俺に怒られそうな事態をやらかしたときだけなんだよ」

 

「そう・・・・でしたか?」

 

なんと!テスカトリポカ神は私の行動を見抜いていた

これがすべてを見通すものの力なのか!?テスカトリポカの顔を見上げて感心する

テスカトリポカはそんな感心を気にしてなく見抜く必要もないといわんばかりに淡々と

 

「最初からお前はそうなんだよシロネン、出会った時からそうなんだよ」

 

「出会った時からお前は籠の中がお気に入りだった、何かあると籠の中に隠れていたな」

 

私は嘘だと言いたくなった。そのような動作を無意識のうちに繰り返していたのか

なんと考えていなくてもそのような動作を繰り返すなど恐ろしい

神として必要以外の動作を繰り返すなどやはり私は中南米の神性らしくない

 

「んでいい加減に何があった?俺の機嫌もそろそろ底をつくぞ」

 

彼の方は話をしても怒らないとおっしゃってくれた

ならば話を聞くだけなら聞いてくれるかもしれないと

私はようやく口を開いた

 

「実はトウモロコシの種を踏んづけてしまい、それを隠蔽しようとしたのです」

 

「・・・・・成程だからお前の眷属たちが慌てていたのかなんだそんなことか」

 

彼の方は大きな手のひらを私の頭に軽く何度か押し付けると

周りの景色が白く灰色に煙ってきた(・・・・・)

目の前にいるテスカトリポカの姿も薄れていく(・・・・・)

徐々に形が変わって大きな黒い蛇へと姿が晴れた(・・・)

 

周囲の霧が薄れていくと余計に姿がはっきりとわかる

天井すれすれまで部屋が窮屈そうに見えるほどに大きな蛇が

私の額に口先をつける余計に視線が一辺に捉えられる

そしてゆっくりと口を開けた(笑った)

 

 

「俺を謀るかシロネン」

 

 

重圧 響き たしかな恐怖 たしかな威圧 石造りの部屋にひびがはいる

空気を空間を揺るがすほどの怒気、空間が震える、空間が文字通りひび割れていく

たった一柱の存在でこれだけ空気が変わるものなのか

これがテスカトリポカということなのか?

 

「幼稚な誤魔化しで俺を欺けると考えたか?窮地を脅威で防げると?全然なっちゃいないぞシロネン、幼子が蒸留酒(プルケ)を飲み干すがごとくの危うさだ」

 

大きな黒い蛇が籠から出た私の体を締め上げる

 

大きな黒い蛇が口を牙を見せて私を嗤う

 

大きな黒い蛇となったテスカトリポカが私の頭を舌で小突く

 

長い舌が首に巻きつき少しずつ力が入っていく

しなやかな蛇の体でなくとも舌先で簡単に命を転がせると蛇の目が嗤う

何もかもの無力さを思い知った

 

悔しい!悔しい!!神格の差などわかりきっている

勝てないことが分かっているのにどうして悔しいなどと感じてしまうのだろう

無力さなど思い知ってしまうのだろう

やれることもできることも最初から決まっているのに

どうして悔しいなどと己の無力さを恥じながら

考えることだけはやめられない

 

 

「だが俺にとってお前を殺すことは難しくはない」

 

「・・・殺さないのですか」

 

「なんだシロネン、俺の手にかけられると思ったか?この贅沢者が」

 

「では罰しないつもりですか貴方らしくもない」

 

「俺は今の時代の神だ、どう罰するかも舌のうちにある」

 

命を握られるとわかっていても見上げるのをやめない

最後の最後まで私は考え続ける

彼の方(テスカトリポカ)になる為に少しでも近づくために

すると喜色満面の笑みを浮かべてテスカトリポカは笑った

これ以上ない名案を決めたかのように

 

「だから俺はお前をこうしよう!!!」

 

身体を締め上げていた大きな蛇の体が霧へと霧散していく

霧は徐々に人の姿をかたどっていき、一息もつかぬうちに

今度は大きなジャガーが目の前にいた ジャガーは私の体をしなやかな尻尾で自らの背にのせた

ふわふわとした毛並みでなんて手触りがいいんだ・・・それにとてもいい匂い

花のような、木のような、でも少し甘みと辛さがあるような…

不敬にもほどがある(すごいいい匂い)

あまりの心地よさに顔をうずめてしまった 吸ってるのばれてないよね

色々と堪能したのばれてないよね!!!何とか言って!!

何の時間かわからない為に体を起こし降りようとする

すると尻尾で体を押さえつけるようにまたふわふわした背中(堪能してしまう)に抑えられた

 

「目いっぱい力を込めて振り落とされるなよシロネン」

 

え何のことですか 考える間もなくジャガーが脚をけり出した

 

 

風 風を感じる 振り落とされないように必死にしがみつく

風が風圧が私を通り過ぎていく、今目をあければたちまち

力が入らなくなってしまうほどの風圧を体に感じる

顔を埋めていないと何もかもに振り落とされてしまう

テスカトリポカが何をしたいかは全くわからない

だがこの風に負けたくない、

顔を埋めているが徐々に力の入り方がつかめてくる、身体を一気にあげ

ジャガーの背中に腰を浮かせ、腹に足を乗せて背を丸める

前傾姿勢と両足で体重を支えてバランスを保てるようになった

身体を起こせたので自然と顔も真正面をむき景色を見渡せた

 

美しい景色があたりを通り過ぎていく

だけど私の頭の中にあったのはただ一つ

ジャガーの背中に騎乗できた(テスカトリポカの上に乗れた)

そんな邪推を征するように尻尾でまた体を背中に埋められ

テスカトリポカは更に四足のスピードがあがる

さすがにもう顔は上げられなかったが

どこかテスカトリポカの機嫌がよくなったような気がした

背中は大きく暖かくテスカトリポカの呼吸音と

 

 

風がやみテスカトリポカがどこかに止まったのだと気づいた

 

「体は起こせるかシロネン」

 

「ご無礼ながら顔だけでしたらご希望にお答えできます」

 

「よしなら顔を上げてここがどこだか当てて見せろ」

 

戦神でも戦士でもない私はしがみつくので精一杯で身体を起こす力が入らなかった

悔しくて仕方がない自分がここまで非力だと思い知らされたようだ

そんな満身創痍の中でテスカトリポカからの問答、気まぐれにも程がある

実際彼の気まぐれに私と眷属の命はかかっているどこにも出たことがないので

どこかは必然的にわからないが兎に角考えようと背中から頭を動かし顔を上げて前を見る

見ただけでここがどこだか私はわかってしまった

考える必要などないぐらいに動揺してしまった

頭を占めるのは疑問と不安と疑心だけそうたった一つ

 

ー「どうしてこの場所に私を連れてきたのか」ー

 

そこにあったのは石造りの大きな宮殿だった

まず石造りの宮殿があるこの場所は天上世界3階層、地下世界9階層含めて一つしかない

テスカトリポカがいるこの時点でこの場所はたった一つしか答えがない

あんまりな答えに疑問が頭を占め続ける

私の動揺を意にも構わず、答えと返答をせかされるように背中を尻尾でたたかれる

疲弊する体に鞭打ち、体を起こしながら回答と疑問を同時に口にする

 

「テスカトリポカ神!!!どうして私を貴方の宮殿につれてきたのですか!?」

 

わからないまったくわからない

ただ殺すだけならその場で殺しただろうに

私を自分の宮殿に連れ帰った意味が全くわからない

テスカトリポカはジャガーの姿のままゆっくりと歩を進める

明確にどこかに足を進めているようだ 石造りの宮殿へと向かっている

 

 

「そういえば何も言っていなかったシロネン」

 

「はい何も言われてません」

 

嵐のごとく怒涛の風の中ここに来ましたからね

何もわかっていない私はだんだん疲れてきて元の体制に戻りそうになる

命尽きる前にこの記憶を焼き付けたい(別にふわふわが好きな訳ではない)

尻尾も戻っていいと徐々に背中を押してくる、別に負けたわけではない

尻尾が催促してくるからだ。背中にまた体を預けたのを待ったかのように

テスカトリポカが雷鳴の如き一言を口にした

 

 

「シロネンお前を俺の妻にするために宮殿(いえ)に連れてきたんだよ」

 

 

何言ってんのこの神性(暴君)

 

 

 

 




妻にする?嫁にする?配偶神にする?なんでそうなるの?
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