名目上「テスカトリポカの嫁」になったことで
豊穣の女神の他にテスカトリポカの配偶神という
ついこの前までミクトランパの領土内にある畑で暮らしていました
今はここテスカトリポカの宮殿内にある後宮で暮らしています
寝床が変わったのでなかなか寝付けません、目の下に隈があるよ
ちなみにテスカトリポカは宮殿で寝ています。寝床は別々なんです
後宮の入口と出口は同じで扉は外からしか開けられません
扉の鍵は宮殿の主であり後宮の主でもあるテスカトリポカが持っているので
テスカトリポカが開けない限り後宮の扉は閉ざされたまま
それでは他の部屋にはいけないじゃないかと?それが行けるんです
後宮からは私が任された役割をする為の部屋にだけ行けます
この部屋ではテスカトリポカの宮殿にいるジャガー達が
宮殿護衛をしている間子供たちを一か所に集めて保育する場所です
私が来る前はジャガーマンが突きっきりで保育をしていたようで
子供たちが多いので人手があると助かるとジャガーマンは
赤子ジャガー達に襲われながら
私はこの部屋をジャガー保育所と呼ぶことにした
次に蛇と書かれた部屋に入る、ここは赤子の蛇達部屋
蛇といえども姿が蛇に似ているだけで厳密には蛇ではない
ジャガー達も姿がジャガーなだけでジャガーではない
蛇やジャガーの姿をした霊獣で動物ではない!!
彼らもまたテスカトリポカに認められた戦士たち
ジャガー達はまだ一見動物と見分けがつきませんが
蛇達は見分けがつく一目でわかります
この子たちは爬虫類の蛇よりも体長が規格外なのだ
一番小さい子で部屋の半分 一番大きな子で部屋のすみすみまで蜷局を巻けてしまう
軽く巻きつかれるだけでも、私の体を余裕をもって覆いつくしてしまう
この部屋にいる蛇の数は七匹。七匹の蛇の保育をするのだが
基本七匹の蛇達は消費する力が増大なのか
テスカトリポカに呼ばれる以外は寝ている
だから今日も七匹いることを確認して部屋を出る
最後にテスカトリポカの宮殿に移された、旧ミクトランパの畑に向かう
ここでの仕事はミクトランパにいた時と変わらない
種をまき、育て、収穫するこの三点を行う
この宮殿には眷属達を連れてこれなかったので
種まきと農作業は一人ですることになったが収穫になると
成獣のジャガー達が実を潰さぬように一つずつ丁寧に
トウモロコシを収穫し保管庫に運んでくれる
赤子ジャガー達も大きくなると訓練のため
作業に参加させるとテスカトリポカが言っていました
この三つの作業を終えると料理作りに入ります
料理も食事も床で座りながら行うんですよ
ちなみに食事用の部屋には大きい敷物が敷かれていてこの上で食事をします
調理器具は石器か土器を用い、皿型の石器で穀物を磨り潰す
食糧類は豊富にあり、色々な料理も豪勢な料理も作れますが
テスカトリポカは戦闘後や宴以外での複数の料理が好きではないとわかったからです
ー複数の面をもつので複数の料理がいいのではないかー
そう考えてはいても私が作れる料理は限られていて
考えを実行できる腕がないのを悔しく思いながら
トルティーヤと肉を詰めたタマル、瑞々しい果物を用意しました
料理数が少ない事を果物の数で合せるという愚策を考えたことよりも
果物を食べる機会があまりなく、自分で食べたいが為に
果物を一緒に出してしまったことが
私は恥ずかしくてまともにテスカトリポカの顔を見れず俯くしかなかった
テスカトリポカに初めて作った料理がこれなのかと
耳を赤くしながら料理を差し出した、惨めで泣きたかった
でも
「・・・・・俺の分も作ってくれたのか」
この時一瞬作ってはいけなかったと聞こうとしたが
緊張と恥ずかしさでテスカトリポカを見つめるしかなかった
テスカトリポカは私の目線に合わせるように体を屈むと
「いや食事の量や俺の分の有無まで伝えていなかったから
作ってくれると思っていなかっただけだ」
私の作った料理が乗った配膳皿をテスカトリポカが受けとる為
両手を前に差し出し配膳皿を掴みます、私は離そうとしません
するとテスカトリポカは意地の悪い笑みを浮かべ
「俺の捧げものを取り上げる気かシロネン、妻といえどそれは許さん」
一瞬で私から木の配膳皿を奪い食事する席に座り配膳皿を床に下ろす
配膳皿をじぃっと凝視し、料理を一つ一つ観察しながらテスカトリポカは料理を口に運んだ
さすがに口に運んだ料理を取り上げるわけにはいかず
私も自分の食事をしたが緊張のあまり、料理は味がしなかった
食べたかった果物の味も何一つわからなかった
テスカトリポカも私も食事中何も話はしなかった
私はもう会話できる状態にはいなかったし
食事をするテスカトリポカを見ないのに必死だった
初めての食事はとてもとても長く感じた
早く食べ終わってこの場を離れたいのに
いくら食べても料理が減らなくてもう泣きたくなった
これはテスカトリポカが料理を平らげるまで続いた・・・・
これを気に朝食、昼食、夕食は私が作ることになり今日も作っている次第です
お酒は食事と一緒にいただくとはないので出せません
私も飲みませんし何よりテスカトリポカがあまりお酒を飲まないからです
宴の時しか飲まないのと決めているようで
それよりもカカワトルを飲む量と喫煙量が多く
朝食にカカワトルを用意すれば、昼食用の分まで飲み干し
毎食後のタバコは絶対に欠かさず、食後でなくとも吸うのを見たことがあります
そして食後のテスカトリポカは毎食後私にこう言います
「もうこの料理が食えれば満足だ、食後の煙草付きでな」
それって美味しいご飯と美味しいカカワトルと美味しい煙草のこの三点を
用意してくれれば誰でも良いってことですかね!?この邪な神め!!
そう考えながらも私を抱きしめるこの腕が嫌ではないことはわかっていた
何故嫌でないのかはまだわからなかった
ここで神の結婚についての説明です(中南米神話世界での)
神の結婚は一人の男神に対し一人の女神が基本です
それは第一の太陽にいきる生命に定める秩序である以上神々にも適用されていました
しかしここにたった一柱の例外が存在します
王権の象徴であるテスカトリポカだけが複数の妻を配偶すること
つまり一人の神に対して複数の配偶神、一夫多妻を許されていました
テスカトリポカは私だけなく他の女神も妻に迎え入れるこが出来るんです
なぜ今の今まで一人も
今になって妻を嫁を配偶神を迎え入れようとしたのか全くわからない
実はテスカトリポカの宮殿にある後宮には私の部屋の他にあと三柱分の空き部屋がある
ただの空き部屋だと考えれば済むが、部屋の広さが私の部屋とまったく同じで
空き部屋にしておくにしては部屋に使われた材質も全く同じで
この四部屋以外は全て異なる材質で作られており、薄気味悪さを覚えた
私を含めれば後宮内にある妻の私室の
つまりこの後宮にはあと
杞憂であればと考えながら今日の夕食の準備を進めた
あと夕食で使おうと考えた黒曜石の石包丁を研いでおこう
そんな杞憂を考えながら料理を進め、テスカトリポカの帰りを待った
そして事件は起こった
「シロネン今日から後宮に入る新しい妻のアトラトナンだ」
「ひっ・・・ひぅ」
「アトラナンは大地と水の女神だ」
テスカトリポカが炎と未来の神の姿で全身血塗れのまま
顔を両手で覆って泣いている女神を抱いて帰ってきました
見たもの衝動のままに
しかしテスカトリポカが何の考えも無しに事案を起こす筈がない
一瞬の考えにしがみ付き、我が神性の秩序を全稼働し衝動を抑える
どう考えたって泣いているテスカトリポカが悪いようにしか見えない
このどうしようもない
落ち着こうと短い考えをまとめた結果
私は大激怒した
少し前に私を妻へと迎え入れた癖に新しい妻とはどういうことだ!!?期間開けろ!!
お酒飲んでるな!?どこで飲んできた!?戦闘はいいけれど血は落として来い全能神!!
などとそういう問題ではない!!この蛇神!!!
よりによって!よりによって!!!
料理二人分作り終えた後にもう一人連れて来やがった!!!!
調理器具も!!料理の配膳も!!今日は暖かいまま肉料理を食べれるように!!!
肉を石焼きで直に食べれるよう石に肉が焦げ付かないよう研究までしたのに!!!
この野郎!何の連絡もよこさないで帰って来やがった!!
何のために全能神やってんだよ!連絡出来なきゃ何のために
ちくしょう!!私の考えが的外れにも程がある!!悔しい!!
ふと私の手の中にある焼いた肉を切り分ける為に
鋭く研いだ黒曜石の石包丁を思い出す
そしてまだ泣く女神を離さないテスカトリポカを見る、全然悪びてない
ぽろぽろと涙を流す女神と目が合い、微かに動いた口が四文字を出した
ー「た」-
ー「す」ー
ー「け」-
ー「て」-
私は迷わず
これが後にテスカトリポカと後に4人になる妻と何度も繰り返される
我ら妻達との戦いの鐘を鳴らしたのは貴方だからな!!!テスカトリポカ!!!
結果としてテスカトリポカが逸早く私の手を叩き落とし
石包丁は砕け散り、第一回の刀傷沙汰は幕を閉じた
そのまま食事が用意された敷物の場所にアトラナンを下ろし
テスカトリポカは胡坐で座ることで空いた空間、足の間に
私を座らせた、突然の生足の間に座らされた
突然だがテスカトリポカの装いは黒い羽根を模した頭飾りに
肘から手までを覆うグローブ、膝から足の甲まであるサンダル
服装は上半身裸の下半身は腰布だけである そう布面積が少ない
私は踝丈まである
左右に丸いピアスをつけているよ 足にはサンダルを履いている
そんなテスカトリポカの胡坐の中心に私は座らされた
必然的に私の後頭部はテスカトリポカの胸に
自然的に両手は足に置くことになる
どこで誰のなにに手を置いてるか考えた私は
逃げ出そうとしたがテスカトリポカが腰に手を回していて動けない
アトラナンは一連の出来事に追いつけず目を丸くして座っている
いや混乱しているだけか・・・なんだ視界で大きな手が左右に振られてるな
手の主であるテスカトリポカに視線を戻すと、口を軽く開けていた
「手が痛いから食べさせくれ」
「自分で食べろよ」
えっ?石包丁を叩き落した所為で手が痛くて何も持てない?
私の腰に巻いている腕を外して食べればいいじゃないですか
今日は疲れたから無理?痛くてこれ以上動かせない?
・・・じゃあ仕方ないか今日だけですよ全く!!
二人の
「シロネン絶対騙されてる!!!」ーーーと。
テスカトリポカの我儘に気づいたアトラナンは
我儘な主の
物騒な会話が頭上で起きていると知らない私は
新しい石包丁で果物を三人分に剥いていた
料理は増やせないが果物は沢山あるので
これで人数分増やそうと必死であった
おい今貴方果実水飲むのに片手使いましたよな
黎明の霧?便利ですね属性、じゃあ許します
今後の私が許すかどうかは知りませんけどね!!!
剥きたての果物を一つテスカトリポカの口に突っ込んだり
アトラナンも食べさせることになったりと
我儘全能神の気まぐれに振り回されつつ予測不可能な食卓は終了した
食卓を終えたのでテスカトリポカに抱えながら後宮へと戻り
アトラナンに自室になる部屋や後宮から繋がっている宮殿の部屋を説明した
宮殿の部屋は後日一緒に案内するが、情報だけも損はない
当然急なことでアトラナンの部屋は何も用意が出来ていないので
今日のところは私の部屋で寝ることになった
そして今私は初めてアトラナンと会話を試みた
何かお互いに理解できる話のほうがいい、彼女も話しやすいだろう
となるとつい先ほどまで体験していたことのほうがいいな
意を決しアトラナンの方を振りむきこう尋ねる
「テスカトリポカって良い匂いするよね」
「へっ?」
よし何を言っているんだ私は、何を間違っているんだ私は!!
テスカトリポカの悪評を口には出したくないからと
とりあえずテスカトリポカの近くにいた訳だから
あの良い匂い反芻して堪能してないって、何を聞いてるんだ
あんまりな質問と状況に冷える空気、微動だにしない両者
でもアトラナンは小さな声で
「しましたね」
「だよね!!良い匂いしましたよね!!」
「はい!!なんかとてもすっごく良い匂いがしました!!」
「そうなんですよ!!テスカトリポカに出会うってことは
神としての階段を一歩登ったって感じがするんです!!!」
「女神が神としての階段を一歩登る???・・・わかるかもしれない」
「なんならテスカトリポカがテスカトリポカの香りがして混乱する」
理性はなく、思考はなく、ツッコミもなく、ただ本能の赴くまま
「テスカトリポカの良い匂い」について私達は会話を弾ませた
テスカトリポカが戦場にいてもわかるのはその香りのせいとか
暴君!冷酷!冷淡!でもかっこいいと称賛も口にした気もする
ひとしきり語り笑った後、アトラナンの服も体も血塗れだったことを思い出し
宮殿にある風呂場まで案内して、彼女は風呂に入った
私は彼女の着替えの服を用意するために
風呂場から出て、服や装飾品が置いてある保管庫に向かった
夜の宮殿を歩くのは初めてで暗いが月の明かりや
通路にある松明のおかげ暗くはない、太陽の光がなく
まるで別の宮殿に訪れたみたいで好奇心高らかに保管庫へと歩く
急ぎではないのでゆっくりと歩きながら
話の中で出てきたケツァルコアトルという名前について考える
ケツァルコアトル神
水や農耕に関わるテスカトリポカ神と同じ蛇神
創造神の一柱にして兄弟、最高存在
でもあまり兄弟であることは神々達の間でよく知られているが
両者とも公言しておらず、あまり口には出さない方が良いらしい
殺しあうほどの関係で険悪すぎず良過ぎでもない
神々の関係においても煙たいものがいるとは
肩書の通り過ぎないかテスカトリポカという神は
でもケツァルコアトル・・・明日は我が身の世界において平和主義の神
平和主義の最高存在、生贄の儀式を嫌う”異例”
親近感を感じてしまう”異例”の神か
いつか会ってみたいな、会って話して可能なら聞いてみたい
私の中にある
既存の秩序を嫌う彼に聞いてみたい
テスカトリポカ神と兄弟・・・・似たような匂いするのか
そんなふわふわとした考えをしながら保管庫についた
保管庫は複数あるがこの保管庫には主に布、服、靴、織物、
装飾品、針、裁断用の黒曜石が保管されている
その中からアトラナンが着れそうな服を探すのは大変だが
取りあえず着れそうな服を何枚か選んで
布と裁縫道具も後宮に用いれるようにしよう
なにはともあれ服をーーーーーー。
とくに何も思ったわけではないが
勘と言うのか感と呼ぶのか
保管されたものと違い乱雑に置かれた袋があった
袋の中には血の付いた見覚えのある服が何枚も入っていた
服を一枚取り出し、床に広げてよく見る。
この服の形状も少し血がついて変色しているが色も
つい最近まで私が日常的に見ていた服だ
これはーーーー。
この服はーーーー。
考えろ考えろ考えろ
かんg「何をしている?」
「わぎゃっ!!」
声のする方に振り向けば
保管庫の入口に腰に布を巻いたテスカトリポカがいた
戦士の姿から随分と気軽な姿になりましたね
いつから保管庫の入口にいた?
「なぜ貴方が保管庫に?」
「それはこっちの言い分だ、お前が宮殿内を歩いてると
見回りのジャガーから報告を受けてな」
「私は風呂場にいるアトラナンの着替えを取りに来たんです」
「着替え?それだけか」
「貴方がアトラナンに着替えも用意しなかったからですよ!」
選んだ服と布、裁縫道具を持ち、テスカトリポカの方に見せる
するとテスカトリポカは保管庫の中に入って
床に広げてある服を拾う
「この服が気になるか?」
「・・それが入っていた袋に血がついていたので少し」
「わざわざ一枚だけ出して床に広げるのが少しねぇ・・・」
夜だからなのか体が嫌に冷えていく、ただの会話なのに
確認と尋問を受けているみたいだ
「いや悪いのは俺か、先にアトラナンの着替えを用意すれば良かったんだからな」
「そうですよ」
「そうだよな、これは何か詫びと返礼が必要だな」
口が嗤えない、目を閉じて苦笑いするしかない
なんで用意すれば良かったんですか?
そうすれば私は何を見なかったの?
ねぇテスカトリポカ、そのお詫びは何に対して?
あの袋は・・あの袋の中身は
「よし決めた明日は仕事を休むぞ」
「えっ?じゃあ明日は一日宮殿に?」
「そうだ明日はお前も休み休息をとれ、後明日は商人を招くぞ」
「商人ですか?」
商売の神が品物を売りにでも来るんだろうか
名前はマクイルショチトルとショチピリ
たとえ仕事は休みでも何が足りて何がないかわかるように
各帳簿を用意しておこう
「お前も気になるものがあれば言えよシロネン
遠慮するな何でもいいぞ、それこそ果物でもな」
「でもお金ないです」
「あぁ?お前は俺の配偶神だ、そうである以上
俺がお前に買えずして誰が買うんだよ」
テスカトリポカはムッとした顔で私に言った
アトラナンにも同じように伝えるように言われ
「さぁ夜も更けてきた、明日は俺が家にいるから
食事も俺が用意しようではなシロネン」
そういって保管庫から締め出された
そして私の姿が見えなくなるまで
テスカトリポカは私を見続けた
どんな顔をしているのかは怖くて見れなかった
風呂場につき、アトラナンに服を用意できたと声をかける
彼女は髪にこびりついた血が錆びてとれないので
服をおいて先に戻って休んでほしいと言ってくれた
けれど帰りに迷子になるといけないので
風呂から上がるまで一緒にいるとアトラナンに伝えた
アトラナンには感謝の言葉を伝えられたが
私の本心は違った
今は一人でいるのが怖かった
誰でもいいから誰でも一緒にいてほしかった
お風呂場は脱衣所も比較的暖かい
石材が地熱を心地よく和らげているので寒くない
寒くないはずなのに私は震えていた
寒くて寒くて仕方がなかった
私はなにか得体の知れない一面を
テスカトリポカの一面を見てしまった
床に座りながら強く握りしめたままの手平をあける
そこには一枚の布の切れ端があった
血のついてない布の切れ端
先ほど取り出した服の切れ端
切れ端にはトウモロコシの刺繍があった
刺繍は私が眷属達の服の裏に縫い付けたものだった
袋の中にあった服は私が眷属達に仕立てた服
他の誰も来ている筈がない流通するはずがない服が
どうして元の色がわからなくなるほどの血がついて
どうしてこの宮殿にあるのかわかりたくなかった
全部数えれていなかったけれどあの枚数は
私の眷属達の人数分と合致する
あの血の量からはもう生きていないことがわかる
目が熱くなる 鼻があつくなる 頭がいたくなる
口が熱くなる 目の前が 胸が熱くなる
私は声以外の何もかもをそのままにした
そのままに流し続けた 声も出しきってしまいたかった
でも憧れて焦がれる続ける身は何も出やしなかった
何もかも出し尽くしたいのに私は渇いて
最初から何もない、渇いた私からは何も出やしなかった
アトラナンのように目から涙も出なかった
何もない私は涙を流すことすら同じにしてくれなかった
結局アトラナンが出てくるまで私はうつ伏せに寝転がって顔を伏せていた
アトラナンには驚かれてどうしたのと心配されたが
「お化けが見えたから顔が上げられない」と無茶を通した
すると私がお化けが怖くて帰れないと信じてくれたアトラナンは
私の手を引いて後宮まで帰って、私の部屋に一つしかない寝具に一緒に寝た
「私がなれない場所で寝付けないから一緒に寝てくれると嬉しい」
「きっと私は怖くて泣いてしまうから」
彼女の包み込むような優しさは「大地」と「水」だからなのか
今は燃えそうに熱い私の焦げ付く体は不思議とふわふわとした
頭を撫でられながら、不思議な暖かさに瞼が重たくなった
商人が来るというのは伝え忘れたが瞼は閉じてしまった
心地よさの中でも私の憧れは機構を占め続ける
あぁなりたい
私はやっぱり
テスカトリポカになりたい
そうすれば
そうすれば仲間外れじゃないと考えたからーーーー。
同じはない 同じじゃない 同類がなき 一人ぼっちの女神さま