二次選考・セレクション   作:へるしぃーぼでぃ

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凪馬狼千切vs.二子斬鉄+1(前半)

 

 

「お前ら、いつまでウジウジしてんだ?」

 

ピキる馬狼のこの言葉に、同室の凪と千切は同時に視線を動かした。

──二次選考(セレクション)4thステージの4vs.4で糸師凛に敗れ、チームの要である潔世一を引き抜かれた彼らは失意のままその日を過ごしていた。

メシを食い、風呂に入り、日付が変わろうかという頃。

凪はずっとスマホを見ており、千切は入念過ぎるほどに膝のケアをし、馬狼はいつにも増して身の回りの物をキッチリ整えていた。

そうしてすべてを整え終えた馬狼が、ベッドの上から動かぬ二人にピキったのだ。

その言葉に千切が「あ?」と反応する。

 

「ウジウジなんざしてねぇよ。日頃のケアだ」

 

「それにしちゃ、昨日よりずいぶん長い時間そうしてるじゃねぇか。つーか度々手が止まってんぞ」

 

その指摘に千切が「うっ」と呻くが、直ぐに反論した。

 

「つかテメェだって、ズイブン長く掃除してたじゃねぇか。指差呼称、何回してんだっての」

 

今度は馬狼が呻く番だった。

実際、馬狼は忙しなく動き、整え終えた場所を何度も再確認したりとやけに無駄な工程を踏んでいた。

……──互いに、先の敗戦の動揺が見て取れた。

そんな中、ここまで一言も喋らなかった凪の声が響く。

 

「で、誰と戦う?」

 

二人が「は?」と凪に視線を向けた。

鋭い眼光二つにまったく怯む様子もなく、凪はスーパープレー動画を映すスマホを放って言葉を続けた。

 

「今俺らが居んのは3vs.()3のトコじゃん?……て事は、潔に追いつく頃には仲間が二人増えるから、どんな奴を仲間にしたら潔に勝てるかなって」

 

凪の言葉に、千切は呆れたように笑った。

 

「ハッ、もう再戦を考えてんのかよ。マジ切り替え早すぎだろ」

 

「そう?でもどうせ勝ってけば、潔とか凛に追いつくし。そんで次は勝つし」

 

片手を首の後ろにやりながら、ボンヤリとした雰囲気のまま勝気なセリフを言い放つ凪。

馬狼がその言葉に同調した。

 

「ああ、次は確実に負かしてやる。……だが実際、ブン取る相手は吟味しねぇとな。あの下まつげNo.1野郎……凛と戦うなら、生半可な味方は邪魔なだけだ」

 

「だな。とりあえず明日、このフロアに残ってる中で一番強そうな奴らを見つけっか」

 

落ち込んでいる暇などない。

先に二次選考をクリアした潔たちにリベンジすべく、三者はその身に熱を灯した。

 

 

 

──翌日。3rdステージフロアにて。

凪・馬狼・千切は早速めぼしい相手を探していた。

一通り見回した千切がボヤく。

 

「一番強そうなヤツっつっても、知らねぇ顔のヤツらの実力は計れねえな。どうすっか?」

 

馬狼がフンと鼻を鳴らす。

 

「だったらランキングが高ぇ奴だ。実際にTOP3は強かったんだ、ハズレはねぇだろ」

 

「確かにそれが一番分かりやしぃけど、……あんま高順位のヤツは居ねぇな?」

 

千切がキョロキョロ見渡すが、下一桁は皆無。目立つのはおよそ30位以上ばかりだ。これでは数字から『強いヤツ』を掘り出すのは至難を極める。

そこで凪が動いた。

 

「じゃあ、なんとなく雰囲気で」

 

彼は迷うことなく一直線に突き進むと、とある三人組へとぶち当たった。

 

「ねぇアンタ、俺らと勝負しない?」

 

「あ?なんや、藪から棒に」

 

凪が声を掛けたのは、ランキング69位の関西弁の男だった。その傍らには33位と77位が居て、ランキングを見る限りあまりパッとしないチームであった。

しかし関西弁の男から醸し出る“雰囲気”は、およそ順位では計れない異様なモノがあった。

だが関西弁の男は凪・馬狼・千切をジッと見た後、踵を返した。

 

「悪いけど、パスや。博打打つにはまだ早すぎる。行くでお前ら」

 

「ちゅーっす」「了解」と、彼の仲間は一言も反論する事なく関西弁の男に付き従って去っていった。

置いてけぼりの凪は「えー……」と呆然とし、馬狼と千切が「ハッ、逃げたな」「ま、他のヤツ探すか」と気を取り直す。

すると、今度は逆に声を掛けられた。

 

「僕とはどうですか?凪くん」

 

「え?」

 

振り向いた先、そこには前髪で目元が隠れた人物──ランキング63位の二子一輝が立っていた。

 

「二子!?」

 

「あぁん?目隠れ野郎か」

 

千切、馬狼がそれぞれ反応する。千切はともかく、一次選考で敗北に喫した馬狼も二子の事は記憶していた。

……が、肝心の話し掛けられた凪は頬をポリポリしながら「誰?」と呟く。

その反応に、二子は憤るでもなく嘆くでもなく、淡々と言葉を続けた。

 

「僕のことを覚えていないのはムリもありません。一次選考の一回戦のあの試合は、本当に何も出来ませんでしたから」

 

──【チームV:8-0:Y】

二子の脳裏に苦々しい記憶が蘇るが、しかしソレは過去のこと。

一次選考を生き残った今の彼には、あの時持っていなかった“武器”と“エゴ”……そして新しい仲間がいる。

 

「久しぶりだな、凪」

 

「ん、斬鉄じゃん」

 

二子の背後から歩いてきたのは、凪のかつてのチームメイト、剣城斬鉄だ。新BLランキングは53位。

斬鉄は中指一本でゴーグルメガネをクイッと頭良さげにチョイ上げすると、眼光鋭く凪を睨んだ。

 

「まさか、俺を置いて先に行ってる論理(ロジック)がマジだったとはな。……しかし、意外なメンバーで集まってるな。玲王はどうした?まさか負けて取られたのか?」

 

矢継ぎ早な質問に、凪は掻い摘んで経緯を話した。

話し終えた時には、斬鉄と二子の顔には驚愕が滲んでいた。

 

「凪、お前玲王にそんな事を言って……っ、いや、俺からは何も言うまい」

 

「……そうですか。潔くんはあの糸師凛と互角に渡り合って、引き抜かれていったと……」

 

凪たちの軌跡は壮絶なモノだったが、それを聞いても二子の意見は変わらなかった。

 

「なおさら僕は……凪くん、君が欲しい。糸師凛を倒すのも、潔くんを倒すにも、君の規格外の能力が不可欠だと今の話を聞いて思いました」

 

190センチを超えるフィジカル、シュート力、そして超絶トラップ。

使える人間が欲しい。二子は、今までのサッカー人生で最も有用な人材を入手し、潔を倒すビジョンを思い描いていた。

 

「ん、まぁいいよ。俺も斬鉄欲しいし」

 

凪は凪で、そんな二子の思惑など無視して話を進める。

千切が「おい」と声を掛けた。

 

「戦うのは賛成だけどよ、ブン取るヤツを勝手に決めんなよ。俺的には二子の方が必要だと思うんだけど?」

 

馬狼も口を挟む。

 

「待てよ、ならあともう一人居んだろ?ポストプレーできるヤツならソイツの方がいい」

 

この言葉に千切が「そういやそうだな。二子、あともう一人の仲間は?」と問いに、二子が「その人は今トイレに行ってます。斬鉄くんと元同じチームVの、海老名くんって人です」と紹介する。

 

「まぁなんでもいいや。早く潔に追いつきたいし、他に強そうなのも居ないし、さっさと()ろう」

 

どこまでも自分勝手なセリフを吐く凪に、二子は静かに闘志を燃やしてマッチングが成立した。

 

 

 

⬟ ⬟ ⬟ ⬟ ⬟

 

 

 

──“青い監獄(ブルーロック)”二次選考(セレクション)奪敵決戦(ライバルリーバトル)『3vs.3』……

 

【TEAM WHITE:凪・馬狼・千切】

【TEAM RED:二子・斬鉄・海老名】

 

センターサークル越しに両チーム、六名の視線が睨み合う。

負けるつもりは毛頭ない。勝って、強者を奪い先に進む。この先のさらなる強者を倒すために。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

凪誠士郎の宣言と共に、センターマーク上のボールが蹴り動かされた。

 

──KICK OFF!

 

「喰い散らすぜ!」

 

渡されたボールを馬狼照英がドリブルする。凪と千切はそれぞれ左右から、敵ゴールへ向かって走り出した。

その様子を視て、二子一輝は冷徹な目と頭で思考を巡らせる。

 

(予想通りの展開をしてきましたね!ならコッチも……!)

「斬鉄くんは馬狼くんを、海老名くんは千切くんをお願いします!」

 

二子の号令に斬鉄・海老名が動く。そして二子本人は凪に付き、両チームのマッチアップが決定した。

そして最初に激突するのはボール保持者(ホルダー)の馬狼と、剣城斬鉄。

 

「バカメガネか。蹴散らしてやる」

 

「俺はもうバカじゃない。二子に教えてもらったんだ」

 

馬狼は持ち前の突進力で突破しようとするが、斬鉄も初速スピードで追いつき抜かせない。体格も五分であり、勝負は早々に拮抗した。

 

「あぁん!?何を教えてもらったって?」

 

「教えてやろう。『バカ』を漢字で書くとな、そこには馬が含まれる。つまりお前の方がバカに近いんだ」

 

馬狼は「何言ってんだコイツ?」と蔑むが、斬鉄が「バーカの『ば』は馬狼のば〜」と口ずさみ始める。

馬狼のこめかみに怒りマークが浮かび上がった。

 

「上等だ、潰す!」

 

ムリヤリ敵を抜き去った馬狼、そこが()の狙い目だった。

 

「挑発ご苦労様です、斬鉄くん」

 

「なに!?」

 

勢いよく蹴り出されたボール、それを二子が奪い去ったのだ。馬狼が驚きに目を剥く。

遅れて千切と凪の叫び声が響いた。

 

「何やってんだ馬狼!」

 

「やば、自陣ガラ空きじゃん」

 

ゴールキーパーであるBLM(ブルーロックマン)こそ居るが、しかし1stステージをクリアしてきた二子にとってソレは障害足りえない。

ボールは危なげなくゴールネットを揺らした。

 

【WHITE:0-1:RED】GOAL!!

 

「チッ、小癪な手を使いやがって……ッ!」

 

「斬鉄、見ない間に性格悪くなったね」

 

馬狼の悪態に、凪の批判が重なる。斬鉄は少しバツが悪そうに頬を掻いた。

 

「ぬ、そうか?スマン」

 

「挑発は僕の指示ですよ。馬狼くんは相変わらずプライドが高いままで安心しました」

 

二子が悪びれもせず語る。

二子は過去の馬狼(チームX)との対戦でも、連敗してイラつく馬狼の隙を突いて勝利を得たのだ。

協調性がなく、絶対王政を敷く圧政の王。その プライドの高さを逆手にとった、二子の戦略である。

 

「僕は特別秀でた能力を持ってませんからね。使えるモノはなんでも使いますよ」

 

親指と人差し指で作った丸を目元にやり、凪たちを覗く。

今、二子の脳内ではすでにこの試合に勝つビジョンが明確に視えていた。

 

「クソ、相変わらず陰険な野郎だ」

 

「なんでもいいけど、次は点取るよ」

 

「だな。切り替えろよ馬狼」

 

──RESTART!!

 

再びチームWHITEからボールが蹴り出される。変わらず馬狼がドリブルし、同じく斬鉄がマッチアップした。

 

「俺は必殺仕事人、黙って任務を遂行する!」

 

「なら黙って抜かれてろ!」

 

肩を激しくブツけ合う二人。

両者の実力はやはり拮抗しており、簡単にボールは前に進まない。

そこを千切豹馬の声が一閃する。

 

「馬狼、俺に出せ!」

 

ドッ!と急加速する千切。

馬狼は不本意ながらも「ブチ抜けよお嬢!」とパスを出した。

その光景に、二子がボソリと呟く。

 

「それも想定の範囲内です」

 

「何!?」

 

千切が走り出した一歩目、そこを海老名修平がファウルにならない程度にタックルをかましてきたのだ。そしてすかさず体を前にねじ込んで両手を広げ、進路を妨害する。

ボールはタッチラインの外に転がっていった。

 

「テメェ……!」

 

「悪いな。アンタの速さ(スピード)は殺させてもらうぜ」

 

睨む千切に、元チームVの海老名が不敵に笑った。そこに二子が歩いてきた。

 

「千切くん、君はスピードが凄まじいらしいですね。海老名くんと斬鉄くんから聞きましたよ。……だからこの試合、君は走らせない」

 

二子の策は、単純。

海老名が千切を徹底してマークし、パスが出された瞬間、進路を妨害するというモノだった。

千切の足の速さを信頼するが故のロングパスは、少し妨害するだけで届かぬパスとなる。

動揺する千切を余所に、海老名が二子にスローインを放った。

 

──RESTART!!

 

「二子だっけ?中々やるじゃん」

 

ボールを持った二子の背後から、190センチの巨影が被さる。

サッカー歴半年の天才、凪誠士郎。そんな悠長に話しかけてくる化け物に、しかし二子は慌てる事はなかった。

 

「お褒めに預かり光栄です、天才さん」

 

「ボールちょうだい」

 

「イヤです」

 

振り向きざま、二子は股抜きで凪を抜き去った。凪は「うぇ!?」と間抜けな声を上げる。

 

「何やってんだクサオ!」

 

「いや、今更だけどデフェンスってどうやんの?」

 

サッカー歴半年という経歴と、玲王による過保護。そしてここ“青い監獄(ブルーロック)”という環境でしかサッカーを知らない凪は、デフェンスのデの字も知らない有様だった。

馬狼がフォローに入る。が、そうすると……

 

「行け!斬鉄くん!」

 

「任務遂行!必殺……」

 

二子のロングパスに、斬鉄が爆発的加速力でゴール前へ。そこは、彼の最も得意とする領域(テリトリー)──

 

「仕事人!」

 

【WHITE:0-2:RED】GOAL!!

 

かつてよりキレのある、ゴール右からの鋭角ミドルシュートが炸裂した。

凪が「あー、ゴメン」と謝罪に、「この才能ボンボンがッ」と馬狼が吐き捨てる。

さらに二子が追い打ちをかけてきた。

 

「凪くん。君はボールに触れなければ、ただの初心者だ。玲王くんという強力なアシストが居ないこの試合、君はボールに触らせませんよ」

 

凪は再びのマイボールをセンターマークに置きながら、静かにその言葉を聞く。

個々の能力としては確実に凪たちの方が強いだろう。だがその突出した能力は、二子の目と脳を前に完全に封殺されていた。

凪がボヤく。

 

「なんかさぁ……潔とか凛とか、目の前の二子とか、メチャクチャOS高性能じゃん?俺もあんぐらい考えないとダメなわけ?」

 

「ダメっつーか、ツケが回ってきたんだろうな。今まで潔とか、玲王に頼ってた分が」

 

千切が頬の汗をビブスで拭きながら、悔しそうに呟く。

今までは彼らの戦術に沿って、自分たちの武器を最大限(マックス)に使ってきた。いや、使わされてきた(・・・・・・・)

チームの頭脳が居ない今、例えるなら凪たちは潤滑油を失った巨大な歯車のようモノだ。パワーこそ秘めているが、その出力を十全に発揮できない状態。

凪が呟く。

 

「そーいや潔と話したな。この二次選考は、『1対1で勝つ強さ』が重要だって。つーかそれで馬狼に勝ったし」

 

「うるせぇクサ男。潔なんざ居なくても、俺が全部ブチ抜いてやる」

 

馬狼の発言に「だから、それが出来たら苦労しないだろ」「頭使え馬狼」と罵る二人。「あぁん!?」と喧嘩し始めるチームWHITEを尻目に、二子は勝利を確信していた。

 

「この勝負、いただきましたね。引き続き、作戦通りお願いします」

 

「ああ、粉砕骨折で行く」

 

「それを言うなら粉骨砕身だろ」

 

余裕の出てきたチームREDは、良い意味でリラックスしていた。試合前は天才・凪と戦う事に過剰な緊張があったが、その固さがほぐれてコンディションは良好状態にある。

二子の気持ちはすでに、次の試合へと傾いていた。

 

(あの凪くんを味方に出来たとあらば、プレーの幅が一気に広がる。僕なら、彼をもっと上手く使える……)

 

油断はない。しかし彼の認識は、ほんの少しだけ甘かった。敵が全員『天才』だという事を──……

ドン!とセンターマークにボールが勢いよく置かれる。

馬狼照英だ。彼の纏う雰囲気が変わった。

身構える二子に、馬狼の鍛え抜かれた太ももに血管が浮き出た。

 

「予告通り、ブチ抜くぜッ!」

 

──RESTART!!

 

「なっ!?直接シュートを!?」

 

キックオフからの一撃。

驚く二子を置き去りに、ボールがゴール前へ。そこに辿り着くのは、天才の一人。

 

「良い『パス』だ、馬狼!」

 

千切豹馬が走る、駆ける、疾駆する。

センターラインから直接加速してきた彼は、もはや誰にも止められない。

キーパーが弾いたボールを、千切はトラップして直接ゴールネットに叩き込んだ。

 

GOAL!!【WHITE:1-2:RED】

 

「オイ、パスじゃねぇシュートだ!」

 

「うるせぇ!決めてから言え!」

 

彼らの叫び声が飛び交う中、呆然としていた二子はハッとした。

 

(落ち着け!あんなのはマグレだ、次はゴール前に海老名くんを置いて対策する。それに次は僕たちのマイボールからスタートだ、問題はない)

 

あまりにも突飛なプレーに一瞬思考が散らばるが、直ぐに冷静(クレバー)になる。

二子は気を取り直して叫んだ。

 

「斬鉄くん!」

 

「任務遂行!」

 

──RESTART!!

 

斬鉄と二子のパスワークで中盤を支配する。デフェンスがザルな凪たちはこれだけで突破出来るハズだが……

 

「パス上手いね。けど……」

 

「イかせねぇよ!」

 

マッチアップする凪に加え、千切もボール保持者(ホルダー)に瞬時に駆け寄ってくる。

千切の俊足により、2対1の状況を常に作り続けられた二子は焦った。

 

「くっ!?海老名くん!」

 

たまらずボールを戻すが、そこには……

 

「そのボール、ゴチ」

 

「なっ!?」

 

馬狼がそのボールを奪う。

斬鉄をマークしていたハズの彼であるが、守備を捨ててその突進力で奪取してきたのだ。

そのまま馬狼は爆走し、彼の絶対領域である左29メートル圏内からミドルシュートが放たれた。

 

GOAL!!【WHITE:2-2:RED】

 

「オラァ!俺のゴールだ!」

 

「はいはい、良い子だ馬狼。後でよしよししてやるよ」

 

「完全に犬扱いだね。犬種、馬狼。エサ、ゴール」

 

瞬く間に同点。

最初にフィールドを支配出来ていたハズの二子たちは、この現実に愕然としていた。

斬鉄が呻き、海老名が慄く。

 

「やはり一筋縄ではいかないか。二子、どうする?」

 

「ヤ、ヤベェ……!?やっぱり速すぎるぜあの女顔野郎はッ」

 

海老名の震える声を余所に、二子は脳ミソをフル回転させていた。

 

(な、何が起きてる!?っいや、こんな時だからこそ冷静にっ!……この2点は、両方とも突飛なプレーから始まっている。そこから高い身体能力に任せた強引なプレーで点をもぎ取って……つまりは、ゴリ押しッ)

 

馬狼のミドルシュート・突進力。

千切のロングスプリント。

分かっていた。彼らには特別な才能があり、自分たちは能力的に劣ると。

だからこそ策を弄してきた。彼らが相手でも勝てる算段を用意してきたのだ。

それを、壊された。対策したハズなのに、力任せに全てをブチ壊された。

 

(……ッ認めない!才能が全てなら、僕はここまで生き残れていない!)

 

二子が心の中で叫ぶ。

試合はまだ【2-2】。絶望するには早すぎる。

 

「二人とも。勝つ気はまだありますか?」

 

静かな、しかし熱量の籠った二子の言葉。それに斬鉄が答えた。

 

「当たり前だ。勝たなきゃ任務遂行とは言えんからな」

 

「お、おう!まだ同点だ!まだまだこれから!」

 

海老名も叫ぶ。二子は真剣な表情で切り出した。

 

「その意気です。この試合、勝ちますよ」

 

 

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