二次選考・セレクション   作:へるしぃーぼでぃ

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烏乙夜+1vs.雪宮+2

 

 

 

時は少し遡り、凪たちが二子とマッチングする少し前。

最初に凪が目を付けた、とある男のセリフから引き継がれる。

 

「悪いけど、パスや。博打打つにはまだ早すぎる。行くでお前ら」

 

踵を返す男の声に「ちゅーっす」「了解」と仲間二人が後を追う。

白髪に黒のメッシュが入った方の男──新BLランキング33位が疑問を呈した。

 

「烏、別にアイツらでも良かったくね?イイ感じに強そうな雰囲気だったじゃん」

 

その言葉に隣の片目隠れの二股舌の男──ランキング77位も賛同する。

 

「そっスねぇ。俺らならどんな相手でも勝ち確だと思うんスけど、ソコん所説明お願いますよ」

 

先程は大人しく従ったが、別に従順なワケではないらしい。説明を求められたランキング69位──烏と呼ばれた男は、「あのなお前ら」とため息をついた。

 

「この二次選考(セレクション)、戦う相手を決めるんが最大の『キモ』や。さっきの奴らみたいに全員が強者のチームとヤっても旨みが少ないやろがい」

 

カラスはやれやれという風に両手を広げながら説明する。二股舌の男が「旨みと言うと?」と問うた。

 

「そら勝率の話と、敵を奪う事や。ええか?強い奴らが集まった強いチームは、倒すのがムズい反面、勝った時に三択の中から贅沢に人材を選べる。逆に弱い奴らが集まった弱いチームは楽に勝てるが、次のステージで躓く可能性が高くなる。足を引っ張る味方は時に、敵より厄介やからな」

 

淡々と説明する烏に、メッシュの男が挙手した。烏は視線だけで促す。

 

「だったら強い奴らの、強いチームと戦う一択じゃね?俺が居て負けるワケねーし」

 

「乙夜、このアホが」

 

鼻で一蹴され、乙夜は眉を吊り上げた。それに構わず烏が言葉を続ける。

 

「俺かてハナから負けるつもりはあらへん。……が、今の段階で、んなギャンブルかます理由があらへん。強いチームと戦うんは次のステージでや」

 

「なら弱いチームと戦うんスか?俺ァ失望しましたよ、俺らの伍号棟の最多得点者サマには」

 

二股舌の男が舌をチロチロしながら烏を蔑む。それに対して烏は、さらに蔑んだ視線で答えた。

 

「お前もアホや、日不見(ひみず)。ここまでヒント出して分からんか。……つまりこの3rdステージでは、三人の内の一人だけが強者のワンマンチームが狙い目って事や」

 

そこまで言い終えて、烏は突然歩き出した。

そのまま真っ直ぐ進むと、壁に背を預けて腕を組んでいる一人の男の前で立ち止まった。

そして宣戦布告する。

 

「ほな(アン)さん、俺とヤろうか」

 

「何かと思えば、不躾な人ですね。ま、いいですよ。丁度戦う相手が居なくて困っていたところですし」

 

烏が勝負を吹っかけたのは、新BLランキング23位の丸ネガネを掛けたイケメンだ。

順位だけで見るならば烏たちよりも上位の人間。だが烏は臆せず、むしろ不敵に笑みを浮かべた。

 

「お前のことは知ってるで、雪宮剣優。お前さんの居た棟での最多得点者で、その圧倒的な強さ故に対戦を避けられてるゆう事情も把握済みや」

 

烏はこの3rdステージにて、無闇に対戦は組まずに情報収集に徹していた。

伍~壱号棟に振り分けられ、自分は最底辺だという『設定』で戦わされていた一次選考。

この虚偽の情報を正すために、最も人の集まる3rdステージにて留まり、“青い監獄(ブルーロック)”の全体像を把握していたのだ。

そうして情報を精査していくと同時に、対戦相手の目星も付けていた、というワケだ。

 

「そんでお前さんが妥当やと判断した。かつての同棟の奴らから避けられまくって、対戦が組めへん可哀想な奴や」

 

「そうなんですよ。まったく、僕が強いのは事実ですが、それでこんな困った事態になるなんて思いもしませんでした」

 

雪宮はハァ、とため息をつくが、その表情はむしろ嬉々としていた。

 

「でも、お陰で強そうな人が話し掛けてきました。本当に強ければ歓迎しますよ、僕のチームに」

 

「アホ。お前が俺のチームに加わる側や、ボケが」

 

互いに悪い笑みを浮かべながら、彼らの行く末を懸けた勝負が決定した。

 

 

──烏チームWHITEvs.雪宮チームRED、マッチング成立!

 

 

 

⬟ ⬟ ⬟ ⬟ ⬟

 

 

 

その試合は烏旅人たち、チームWHITEボールから始まった。

 

──KICK OFF!!

 

「ほな行くで、あほんだら共」

 

「ちゅーす。速攻で終わらす」

 

そのまま乙夜影汰とパスを繋ぎ、瞬く間に前線へ。

そこへ迫る、チームREDに君臨する皇帝。

 

「そんな簡単にはいかせないよ」

 

雪宮剣優が烏と対峙(マッチアップ)する。

ドリブルする烏はチラリと彼を視た後、「ボケが」と一言零して背後の日不見愛基へとパスを出した。

雪宮が残念そうに全身から力を抜く。

 

「あらら。勝負するんじゃなかったのかい?カラスさん」

 

「誰がお前と真っ向から勝負するかい。自称、世界最強なんやろ?」

 

烏が集めた情報によると、雪宮はこれまでのサッカー人生に於いて1on1では負け知らずらしい。そして本人も豪語するのが『1on1世界最強』というあまりにもエゴすぎる自負。

雪宮はボールの行く末を視線だけで追いかけながら、やれやれという風に肩をすくめた。

 

「だってそうでしょ?それが現実なんだから」

 

日不見からゴール前へのロングパス。それを乙夜が華麗な動き出し(オフザボール)でチームREDの二人を抜き去り、ゴールを決めた。

 

GOAL!!【WHITE:1-0:RED】

 

「今のお前、最高にカッコ悪いで。そういうセリフは自陣の得点時に言ぃ」

 

手をヒラヒラ振りながら自陣に戻っていく烏。

その背中を、雪宮はゴーグル越しに冷たい眼差しで見送りながら呟いた。

 

「なら、そうさせてもらおうかな」

 

──RESTART!!

 

仲間からボールを受け取った雪宮剣優が、単独で敵陣に侵入してきた。

そして対峙する、烏旅人。両者ピタリと、絶妙な間合いで止まる。

 

「ま、一回くらい実力見させてもらおか」

 

「お手柔らかにどうぞ」

 

言葉が終わると同時、雪宮がドリブルする。……と見せかけて止まり、再度そこからドリブルで加速する。

 

「うおっ!?エッグい緩急直行(ロコモティブ)!?」

 

「井の中のカラスってね」

 

烏をいとも容易く抜き去り独走する。

だがチームWHITEには、まだ並々ならぬ曲者が居た。

 

「ちゅーす。通行禁止令発令」

 

乙夜影汰が立ち塞がる。

それに対して雪宮は「許可は求めてないよ」と強引に鋭角ドリブルで突き進み、蹴撃動作(シュートモーション)

 

「は?まだ俺居んだけど」

 

余裕で追いつく乙夜がシュート阻止に足を出す。

その完璧なコース切りに、しかし雪宮は笑って答えた。

 

「問題ない、っよ!」

 

ドッ!とフカしたキック。

普通の軌道ではない。浮いて落ちるシュートが、キーパーを翻弄してゴールネットを叩いた。

 

【WHITE:1-1:RED】GOAL!!

 

「警備がなってないよ。時給が安いからヤル気ないのかな?」

 

いけしゃあしゃあと雪宮の発言に、乙夜が「ウッゼ」とムッとする。

そんな光景を、烏は一歩下がった所から冷静に観察していた。

 

(アレが噂の無揚力(ジャイロ)シュートか。やっぱ、話を聞くんと実際に視るんは違うなぁ。想像より変化がデカい。……が)

 

雪宮の黄金パターン。無敵の1on1でブチ抜き、特異なシュート能力で決める。

その驚異の能力を目の当たりにした烏は、ひとつ確信した。

 

「余裕で勝てるな。後はアウトプットするだけや」

 

まだ各チーム1点ずつ決めただけ。この序盤で、すでに彼は勝利を予見した。

 

「ゆーワケで、行けや乙夜!」

 

──RESTART!!

 

「ブチ抜く、ナルシスト野郎」

 

怒れる乙夜影汰が駆け抜ける。

それに対峙する、雪宮剣優。

 

「エゴイストって言って欲しいな。“青い監獄(ここ)”ってそういう場所でしょ?」

 

シュババ!と滑らかに動く乙夜に、雪宮はスピードのゴリ押しで守備する。

性質(タイプ)は違えど性能(スピード)は互角。両者の視線が交錯する。

その戦局に(つんざ)く、鋭い声。

 

「乙夜!正面からソイツとヤり合うんは割に合わんで!」

 

烏がサイドを駆ける。

乙夜が「ナイス位置」とパスを出し、雪宮がボールに視線を送った瞬間、乙夜が動いた。

 

「アンタもナイス。俺から視線を外したファインプレー」

 

ビュ!と雪宮の裏から一気にゴール前へ。

烏からのセンタリングを、そのまま鮮やかにゴールへ叩き込んだ。

 

GOAL!!【WHITE:2-1:RED】

 

「これはやられたなぁ。意外とやるね」

 

「だったらも少し意外そうな顔しろし」

 

点を決められても笑顔を崩さない雪宮に、乙夜が訝しむ。

そこに烏も会話に参加してきた。

 

「気にすんなや乙夜。この状況でも余裕ブッこいてられる位の方が、この先味方として頼もしいやろ」

 

すでに雪宮を奪う前提の、この発言。

雪宮が「へぇ」と鷹揚に返した。

 

「じゃあ俺が勝ったら、『神さまの言うとおり』で奪う人を決めようかな」

 

──RESTART!!

 

味方からパスを貰い、再び単独突撃(ワンマンプレー)で攻めてくる雪宮。……に、今度は乙夜がマッチアップする。

 

「ブチ抜いてみろ、独裁者」

 

「独裁じゃないよ。俺が『絶対』ってだけ」

 

ドッ!と真正面の乙夜に向かってドリブル。

フェイントも何もない突撃に乙夜が「血迷った?」と疑問に、「それはないよ」と言葉と同時、瞬時にドリブルが切り返される。

 

(!?、コイツ、さっきよりも爆発的に速い!)

 

「ほら、抜けた」

 

乙夜の反応が半歩、遅れた。

小細工無しに乙夜を抜き去った雪宮は、しかし。

 

「烏の計算内っスわ」

 

横からスライディングしてきた日不見にボールをロストされる。

そしてこぼれ球(セカンドボール)は、この状況を予見していた烏が抜け目なくかっ攫った。

 

「よーっしゃボケコラ、速攻カウンターやで」

 

烏は鮮やかなフェイントとハンドワークでREDデフェンスを抜き去り、スパン!と鋭くゴールネットを穿った。

 

GOAL!!【WHITE:3-1:RED】

 

自陣に戻る途中、烏はニヒルに笑う。

 

「搦手は苦手っぽいな。俺ら相手にソレは致命的やで?」

 

「……カラスって動物はさ、あんまり可愛くないよね」

 

ほんの少しだけ雪宮の声音が鈍くなる。

それに機嫌を良くした烏は「俺は好きやで。アイツらホンマ頭良いねん」とこめかみを人差し指でトントン叩く。

雪宮の目が、ゴーグルの下でわずかに細められた。

 

──RESTART!!

 

三度、雪宮のドリブルが敵陣に斬り掛かる。

それに相対する乙夜、背後に日不見。そして周囲に烏の布陣。穴のないポジショニング。

それらを認めた雪宮は、ピタリとドリブルを止めた。

……どこか、彼の纏う雰囲気が変わった。

 

「ん?諦めた?」

 

訝しむ乙夜の言葉に、雪宮は行動を伴って返答した。

 

「諦め?生憎と、俺に一番似合わない感情だね!」

 

ギラリと視線を光らせたた雪宮が、直進で走る(ラン)

目の前の乙夜と激しく激突(デュエル)するドリブル。

 

「テメッ!?」

 

「どけ。俺には……──」

 

強引に抜け出す、眼に熱を灯した雪宮。

その先に待ち構えていた日不見をワンステップで避け、最短最速でゴールへ向かう。

 

「んな強引なドリブルで行かすかい!」

 

ガッ!と烏旅人の腕が、横から雪宮の胸倉を抑えた。

いくら強力なプレイヤーだろうが、人と激突しながらのプレーではたかが知れる。烏の動きは、シュート阻止には十分な働きだった。

だが、雪宮は止まらない。

 

「──時間が無いんだ!」

 

叫び声とともに、それでも強引に放たれたシュート。

ボールは左上のポストに向かい、急激に右へ落ちていく。

乙夜をブチ抜き、日不見を避け、烏の妨害を受けながらの無揚力(ジャイロ)シュートは、かつてないほどの軌道を描いてゴール右側へと吸い込まれた。

 

【WHITE:3-2:RED】GOAL!!

 

「君たちが強いのは認めるよ。……けど、俺はもっと強い」

 

これが、彼の居た伍号棟最多得点者。

これが1on1世界最強を自負する、唯我独尊な皇帝。新BLランキング23位、雪宮剣優。

雪宮は強気な視線を目の前の烏に向け、そう宣言する。

1on1世界最強という自負と、その証明。

それを胸に、雪宮は不屈の思いを告げたのだ。

……が、しかし烏の反応は想像していたのと違った。

 

「ほーん、俺の妨害に対して超速の振り(・・)で蹴った事で、あのエグい変化を生み出したんか。……ええやん。やっぱ仲間にすんならこんくらいの気概が欲しかったとこや」

 

「ま、抜かれてムカついてんのはマジだから、この試合はコテンパンに負かすけど」

 

冷静に分析する烏と、乙夜も指同士を絡めて手のひらを前に伸ばしながら、その身に熱を宿していく。

雪宮のプレーは確かに常人の域を超えていた。だが目の前の二人も、常人とはかけ離れた技巧を持つエゴイストたちである。

 

「ほな、少しヤる気出してくで」

 

──RESTART!!

 

「ちゅーす。忍法・変速ワンツー」

 

開幕、烏×乙夜のワンツーで駆け出す。

烏のハンドワークで雪宮を抑え、乙夜の動き出し(オフザボール)で敵DF二人を置き去りにする。

急激なテンポアップに、雪宮が対応にあぐねた。

 

「くっ!?」

 

「ほな、ココやろ」

 

烏は手で雪宮を制しながら、ドシュ!と鋭くパスを放つ。

パスの行先、そこにはゴール前に完全に抜け出した忍者の末裔、新BLランキング33位、シャドウストライカー乙夜影汰が。

 

「マジどんぴしゃ」

 

ボールは流れるような動作でゴールへと押し込まれた。

 

GOAL!!【WHITE:4-2:RED】

 

「まずいなぁ、あと1点か……」

 

さすがの雪宮も焦りが出てくる。……というより、半ば諦めたかのような声音だった。

1on1は無敵とはいえ、この戦いは3vs.3のチーム戦。自分を引き立てる便利なコマとして組んだチームメイトたちに、最初から期待などない。

この試合の勝敗は、もはや覆せないところまで進行していた。

 

「けど、黙って負けるほど俺は可愛くないよ」

 

──RESTART!!

 

不安の色を隠せないチームメイトからパスを貰う雪宮に、今度は烏がプレスしてきた。

互いの手が敵を押し込む。その最中、烏が話しかけてきた。

 

「もう終わりなん、分かっとるやろ?はよ大人しく傘下に下らんかボケ」

 

「それで『はいそうします』って、そんなエゴイストが欲しいのかい?」

 

雪宮の返答に、烏は笑って「ま、欲しくないわな、ンな奴」とボールを取りに来る。

そこを雪宮は俊敏に避け、一気に駆け抜けた。

やはり1on1では、雪宮に分がある──

 

1on1(ソレ)は俺の負けでいいわ。やが、試合には勝たせてもらうで」

 

「ちゅーす。烏ご苦労さま」

 

抜け出した雪宮のボール、そこを乙夜が盗み去る。

烏が抜かれるのは折り込み済み。すべてはこの一瞬の隙を狙った烏の策略だったのだ。

 

「いや、まだ終わってない!」

 

だが雪宮は食らいつく。

反転、からのドリブルする乙夜に追いつき、全身から熱を発してゴール前に立ち塞がった。

乙夜はそんな相手を前にして「終わりにすんのは俺の仕事じゃねーし」と後ろ足で横パスを出した。

 

「あ」

 

「ごっつぁん」

 

抜け目なくゴール前へ走り込む、新BLランキング69位『殺し屋』烏旅人。

敵の弱点を攻め潰すという無慈悲なプレースタイルを貫く彼は、雪宮たちチームREDの穴を的確に突き刺した。

 

GOAL!!【WHITE:5-2:RED】

 

勝敗は決した。

雪宮の皇帝戦法(エンペラースタイル)は非常に強力であり、この強者蔓延る試合でも我を貫き通せるほどに凄まじいモノだった。

それでも勝ったのはチームWHITE。烏率いる曲者の集団。

雪宮は天を仰ぎ、この結末を受け入れた。

烏がニヒルな笑みを浮かべて近付いてくる。

 

「さて、お前さんには俺らのチームに入ってもらうで。雪宮剣優」

 

「……うん、分かったよ。それとユッキーでいいよ、烏くん」

 

試合中の剣呑さはナリを潜め、朗らかな雰囲気の雪宮。

試合に負けたとはいえ、個人での局面では烏たちでさえも手玉に取るのだ。落ち込む理由などない。

反面、烏たちも試合内容自体は圧勝。

強力なプレイヤー雪宮を奪えたことにより、この先の4thステージでどんな敵だろうと倒せる準備ができた。

──後のTOP6に選ばれる内、三名をも擁するこのチームは、この時の青い監獄(ブルーロック)で最強のチームと言えただろう。

 

「ほな、サッサと次行くで」

 

「ちゅーす。もう無敵っしょ俺ら」

 

「困ったら俺に任せといて。なんとか出来るから」

 

誰も彼もエゴイスト。曲者たちに優れた剣が加わり、彼らは次のステージへと歩き出した。

 

 

 

⬟ ⬟ ⬟ ⬟ ⬟

 

 

 

雪宮が仲間に入った、その日の夜。

四人部屋となった新生チーム烏は、主に烏の情報収集のために、雪宮から彼の伍号棟での経緯を聞いていた。

 

「……というわけで、四試合で合計12点取って勝ち上がってきたんだ。もちろん、試合自体も全部勝ってるよ」

 

「一試合平均3点か。ほんまエグい得点率やな」

 

「ユッキーやるぅ」

 

雪宮の驚異の得点率に、素直に驚く烏と乙夜。

烏本人も8点と最多得点を記録しているのだが、やはり10点超えは並み居る(300名の)エゴイストたちの中でも突き抜けている印象だ。

烏は心なしか悔しそうに呟いた。

 

「俺の調べによると、最多得点者は全部で六人……、その内でも俺以外の五人が10点超えや」

 

点数で勝っている事に気を良くした雪宮は上機嫌に「で、どうせ俺以外の人の調べはついてるんでしょ?」と続きを促す。

 

「ああ。分かりやすく各伍号棟をA〜Eで分けて、得点順で並べんで」

 

気を取り直した烏はサラサラと、部屋に備え付けのホワイトボードに書き込んでいく。

 

「まずA棟の、最多得点者の中でもブッちぎりな奴……まぁ恐らく全員知ってる奴やろうが、新世代世界11傑(ワールドベストイレブン)の糸師冴の弟、糸師凛や。得点は15点」

 

少し角張ったイラストで、Aの下に糸師凛の似顔絵とその下に『15』の数字が書かれる。

同室の三人は黙って続きを待った。

 

「んで、次点で我らがユッキー、B棟にて12点や。お前らほんまゴール決めすぎやろ」

 

特徴的なメガネに輪郭がカクカクしてる似顔絵に「絵、上手いですね烏くん」と雪宮が素直に褒めた。

烏は得意げに「せやろ」とドヤ顔だ。

 

「そいでここからは横並びになっとって、ピッタリ10点共や。まずC棟の士道龍聖。D棟からは二人、凪誠士郎とかいう奴と、馬狼照英」

 

そして最後に「んで、Eの8点で俺や」と自画像を描いてペンに蓋をする。

こうして見ると烏が劣るように見えるが、逆だ。この五名があまりにも点を稼ぎ過ぎているのだ。

雪宮が糸師凛のイラストを楽しそうに見やる。

 

「まさか俺より上の奴を集めてくるなんて、中々やるね青い監獄(ブルーロック)

 

「ほんとソレ。俺の7点が霞むじゃん。コレも全部烏のせい」

 

「うっさいわ乙夜ボケ。俺かてお前と同棟のおかげで迷惑被ってんのや」

 

乙夜と烏のボヤきに、雪宮がおや、と反応した。

 

「おふたりは同じ伍号棟だったんですか。なるほど、だからあんなに連携が上手かったワケですね」

 

この施設に集められたストライカーたちは、総指揮の絵心甚八の独断だけで集められた烏合の衆だ。

そんな中でほぼ完成された連携を見せた烏と乙夜というホットラインの謎に、合点がいったと雪宮は頷く。

 

「話の流れ的に、二人は伍号棟では別チームだったんですよね?どっちが勝ったんです?」

 

雪宮の質問に、烏と乙夜は互いに顔を見合わせると憎々しげに言った。

 

「ドロー。イーブン。引き分けや」

 

「ちな【0-0】(ゼロゼロ)。だから俺ら最多得点戦線から落っこちてるワケ」

 

二人とも突出しているプレイヤーであるが、その実力は見事に拮抗していた。

Eの伍号棟、チームVvs.W戦。

烏が防いでは攻め、乙夜が攻めては防がれる。そんなイタチごっこをしている内に、試合終了のホイッスルが鳴ってしまったのだ。

雪宮が感嘆とする。

 

「なるほど。……話を戻しますが、最多得点者で知った顔は糸師凛くん以外、まったく知らない人たちですね。誰か知ってます?」

 

雪宮の再びの質問に、乙夜は「男にキョーミねーから」とつっけんどんな答え。

代わりに烏が答えた。

 

「馬狼っつーのは知ってるで。秋田の悪童学院高校の『ガチ悪童』っつったらチョイ有名や。ま、実際のプレーは観たコト無いんけどな」

 

悪童学院高校は得点数は多いものの、試合の勝利数は少ないために全国での知名度は低い。

実際に青い監獄(ブルーロック)でも、馬狼率いるチームXは彼を残して脱落している事から、馬狼はワンマンチーム気質だと烏は推測していた。

乙夜がベッドに横になり、ダルそうに呟く。

 

「んで、残り二人の士道と凪ってのは、烏でも知らないワケ?そんな無名の選手引っ張ってくるとか、マジ絵心のエゴセンサービンビンじゃん」

 

乙夜の言う通り、絵心の探知能力は本当に凄まじかった。

士道は暴力行為により停学処分を喰らっていたり、凪に関してはたった一試合のデータだけで招集を決定したのだ。

だが烏はその話を鼻で笑った。

 

「ハッ。確かにそら褒めたるが、俺らの敵にはならんやろ。無名は理由があるから無名なんや。もっぱらの『敵』は、糸師凛ただ一人や」

 

日本U-15クラブユース選手権を優勝に導き、現在の新BLランキングにおいても1位に君臨する天才。

名実ともに格上と言っていい存在に、「今からヤるの楽しみ」「強い人は大歓迎です。勝ったら気持ちいいから」と血気盛んなチームメイトたち。

烏は満足気に頷いた。

 

「ま、情報収集も終わったし、早いとこクリアしよか」

 

翌日には宣言通り、4thステージを速攻でクリアし、次のステージへと歩を進めた。

だが、彼らの自信はこの後の三次選考(セレクション)『世界選抜戦』にて、粉々に打ち砕かれることになる。

 

 

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